とある日の青空が続く幻想郷にて...
多数の向日葵自生する太陽の畑には、とある者達がいた...向日葵に囲まれた民家の前には傘を刺したテーブルがあり、そこにはこの太陽の畑の主の風見幽香と天逆毎乃葉がいた...
「...」
「...はい...できたわ」
幽香は毎乃葉の前にハーブティーが入ったカップを置き、毎乃葉はそれを怪訝そうな顔で見つめている...
「...ねぇ?何でこのアタシを呼んだのかしらン?」
「独りでお茶会も飽きてしまったから...今回は貴女を呼んだだけよ...偶々に過ぎないわ」
毎乃葉の言葉に幽香はハーブティーの香りを確かめながら返答するが特に気にするような素振りはない
幽香の反応が薄い事に毎乃葉はコートの中から封筒を取り出す...封筒には大きな字で毎乃葉・太陽の畑で待つとのことしか書いていない...
「偶々ねぇ?こんな果たし状のような手紙を出しておいて...何が目的なのよン?このアタシに隠し事は効かないわよ...」
「頭が悪そうに見えて...随分と鋭いのね...」
幽香の言葉に毎乃葉は笑顔を浮かべて拳の骨を鳴らす...
「要件は何かしら?このアタシは気が短いから単刀直入に言ってもらわないと分からないわン!」
「今回は戦いの気分ではないわ...いいから座りなさいよ...」
「むぅー...何なのよ...」
毎乃葉は大人しく席に座り、幽香はテーブルに置いてある彼女の分のティーカップを指さす...
「冷めるわよ...」
「...」
毎乃葉はティーカップを目に着いたスコープのスイッチを入れ眺めている...
「...変なのは入っていないようね?じゃあ頂くわ!」
彼女がハーブティを口に含むと、幽香はクッキーの入った皿を置く...
「好き嫌いはあるかしら?」
「...肉類以外なら何でもOKよン」
「力任せな戦いかたなのに肉がダメなのね...」
幽香はティーカップを口につけながら、彼女を観察するように見つめている...
「...」
「...」
そしてしばらく沈黙の時間が過ぎる...
「...って!話をはぐらかさないでくれるかしら!いい加減要件を言いなさいよ!!アタシこう見えて忙しいのだけど!!!」
「...文の情報なら貴女は今日一日非番だと聞いているけど?何か用事でも?」
「ぐぅぅ...」
幽香に図星を突かれて言葉を切る毎乃葉...そんな彼女を見て幽香は溜息をつく...
「そんなに急かさなくてもいいじゃないの...せっかちね...」
幽香はティーポットを手に取りカップにハーブティを注ぎながら口を開く...
「...単純に貴女について興味が出ただけよ...そのためにわざわざ呼び出したのよ...私と実力は同格だし認めてはいるのよ...これでいいかしら?」
「!!このアタシに興味ねぇ...いいわよ!さぁ!何が聞きたいのかしらン!」
幽香の言葉にさっきまで不機嫌だった毎乃葉は打って変わって笑みを浮かべ、そして彼女の変わりように幽香は首を傾げる...
「あら?良いのかしら?」
「質問は受け付けるわン!!!一部例外はあるけど...何でも聞きなさいよン!」
毎乃葉の言葉に幽香はティーカップを口につけながら少し思考し...口を開く...
「まず最初に思ったのだけど...貴女...この前の戦いの時、本気出していなかったわよね?」
幽香の言葉に毎乃葉は首を捻る...
「本気よン?上からの指示で本来は100%の力は出していけないのに、今回は例外で100%よ?」
「...利き手を使わないのに?貴女は確かに力こそは出していたけど、全部の攻撃が利き手とは逆だったわ...バレないと思ったかしら?」
「あー...そういうことねン...」
毎乃葉は左手の手袋を外して幽香に左腕を見せる...彼女の左腕には痛々しい縫合の痕が残っており、幽香はそれを見て眉を顰める...
「怪我かしら?」
「ずっと昔に受けた傷よ...今は何とかなってはいるけど、戦闘に支障をきたすのよねン...あまり力は入らないし...細かい作業は苦手なのよン...」
毎乃葉は苦笑いしながら手袋を再びつける...
「なるほどね...それは能力で直せないのかしら?貴女の能力なら隠蔽はできるでしょう?」
幽香の言葉に毎乃葉は座ったまま椅子を倒して天を仰ぐ...
「無理よン...このアタシの能力も万能ではないわ...アタシの左腕は兵器としてはもう死んでいるのよン...」
「?」
幽香は疑問を浮かべ、毎乃葉が口を開く...
「アタシの能力...生物に関しては体の機能が停止したところには作用しないのよン...左腕以外の部位だったら隠蔽はできるけど、兵器として機能が停止してしまった箇所に関してはどうしようもないわン...」
「すぐ治せばよかったのに...」
幽香は不服そうに言うが、毎乃葉も不服そうな顔をする...
「諸事情あって能力が使えなかったのよン...あの時のアタシ...弱っていたし切断された左腕を戻すのだけで精一杯だったのよン...」
「残念ね...完全での貴女の戦いは拝めそうにないわね...」
「ふん...この話はもういいでしょう?まだアタシの機嫌が良いから質問には答えてあげるわン...」
毎乃葉は手袋をつけて椅子を座りなおして幽香の方を向く...
「次ねぇ...この前の戦いの違和感がなくなったから...次はどうしようかしら?これは流石にも貴女の機嫌を損ねるかも...」
「何でもいいわよン?」
毎乃葉の言葉に幽香は口を開く...
「貴女...天狗ではないでしょう?」
「...」
幽香の質問に毎乃葉は口を閉ざしたままになる...そしてホログラムを出してデータを眺めている...
「...貴方からは人為的に創られた力を感じるわ...そして...」
「...やはり貴女は頭が良いようね...妖怪の山の連中はアタシが危険度の高い天狗だと思っていたようだけどねン」
幽香の言葉に毎乃葉は返答する...彼女はホログラムを消して幽香に笑みを浮かべる...幽香は言い残した言葉を紡ぐ...
「...貴女からは妖怪の気というよりも神に近い気を感じるのよ...書物を確認して貴女の正体に気づくことが出来たわ...」
「このアタシの正体ねぇ?わざわざ確認までするとはご苦労なことねン...」
毎乃葉は別にどうでもよさそうな反応を示し、幽香は口を開く...
「貴女の正体は天逆毎...天狗や天邪鬼の祖先とされる女神...そうでしょう?」
幽香が言葉を言い切ると、毎乃葉はパンパンと彼女に向けて拍手をする
「おほほほ!!!正解よ!このアタシの正体に気づくとは貴女見どころあるわぁ!!!」
毎乃葉の反応に幽香も確信を持てたのか余裕の笑みを浮かべ始める...
「私も驚いたわよ...そんなものがこの幻想郷にいるとは思わなかったもの...」
「生きていると何が起きるか予測がつかないのは当然でしょう?アタシのような存在がいてもおかしくは無いわン!」
毎乃葉はキセルを咥えて満足そうに煙を吐き、辺りにはお香のような香りが漂う...
「でも一つだけ疑問が残るわ...貴女の正体は分かったけど、人為的に創られたような違和感があるのよ...それに関して...」
「その質問にも答えてあ・げ・る♪確かにこのアタシの正体は天逆毎だけど...天然物ではないのよね?」
「天然物?」
毎乃葉の言葉に幽香は疑問を浮かべる...
「その書物に書いてあったか不明だけど、天逆毎はとある神霊の闘気から生まれた存在...そっちの方がオリジナルの方なのよねン...でもアタシの方は貴女が言う通り人為的に創られた養殖物...こういう風に言えば理解できるかしら?」
「女神を人為的に創ることができるのね...」
「理論上は可能よ...でももう無理でしょうね...とっくに研究は頓挫してしまったし、この世にいる天逆毎は2人ということになるわね...」
「その研究って何よ...」
「...」
幽香の言葉に毎乃葉は言葉を切る...
「...その質問は答えれないわねン...少々ペラペラ話過ぎたかしら?」
毎乃葉は懐中時計を取り出して時間を確認し、席を立つ...
「お茶の方はご馳走様ねン!!そろそろ時間だから失礼するわ」
「お粗末様...暇つぶしにはなったわ」
「おほほ...紫とかには言っては駄目よン!このアタシを認めてくれたヒトにしか教えないのだから!」
毎乃葉はキセルの火を消し、その場から消える...幽香は毎乃葉がいたところをボーっと眺める...
「いつの間にかに懐かれたのかしら?悪くはないけど...」
彼女はポツリと一言洩らして、その場を後にし、太陽畑のティータイムも終わりを告げる...
日常編でした!
毎乃葉の正体が話される日でした
ではこれにて