とある日...妖怪の山のとある民家にて...
「...あや?...あやや!?」
そこには机の書類を見て愕然としている射命丸文...彼女が持っている書類は、今月の新聞の売り上げと言う文字が記載されている...
文文。新聞...〇月週...右肩下がり...
文文。新聞...×月週...右肩下がり...
文文。新聞...△月週...右肩下がり...
と...散々なデータが書類に掲載されている...
「オーマイ!ニュースペーパー!!!!」
妖怪の山に文の叫びが響き渡る...
そして...ここは妖怪の山の中にある封印牢...文はそこに赴き、第0部隊のメンバーに大量の新聞を手渡す...
「さぁ!皆さん!文文。新聞の勧誘を宜しくお願いしまーす♪」
「「「ふざけんな!!!!」」」
そして第0部隊の叫びが響き渡る...
side毎乃葉
「あやや?つれませんね?どうしました?」
文は不思議そうに首を傾げている...よくもいけしゃあしゃあと!!
「こんな早朝に来て戯言とは良い身分ね文!!アンタは前に!このアタシに新聞の雑用させて上層部に怒られたの懲りてないのかしらぁン!!!」
「それどころか、同志毎乃葉だけでなく、私達まで雑用をさせるというのか!!」
「バラシて...手羽先ですかね?」
アタシ達が殺気を向けるが文は慣れたのか怯むことなく前へ進む...
「もうこの際...手段は選べなくなりました...私の新聞の部数を上げることができるなら!幾らでも上層部に怒られる道を選びます!!」
「うっ!?」
つい...気迫に押されて後退してしまったわ...このアタシが何てこと...
「さぁ!第0部隊!私の脚となってください!!」
まさか命令...この子ガチなの!?幾ら何でも命知らずでしょう!?
「良し!同志...止めてくれるな...ハチの巣にして剥製にしてやろう...」
「剥製づくりなら手伝いますよ!」
...部下達は殺る気満々ね...私用での殺生は始末書何枚分になるのかしら?
だが文は懐から写真を取り出す...
「私は暴力には屈しません!!ペンは剣よりも強しです!!万が一私の身に何か起きたら、これが幻想郷中にばら撒かれますよ!!」
「...」
写真を見てアタシ達は硬直する...
それには①博麗の巫女の服を着て神社の掃除をしているアタシ達...
②公共浴場で湯浴みをしているアタシ達...
③酔っぱらって一糸纏わず牢屋で爆睡しているアタシ達が映っていた...
②・③は隠し撮りとしても...何で黒歴史の①が写真として残っているのよ!!
「はぁ!?何でこれがここにあるのよー!!!」
「馬鹿な!?あの時確かにカメラの破壊を確認したというのに!!」
夜喪妓の言葉に文はフンと鼻を鳴らす...
「ふふふ!!バックアップは重要ですよ!?おかげで貴重な一枚を残すことができました!!」
文は得意げな顔をするが、睡煉が彼女の背後に周り羽交い絞めする...
「あや?」
「要するに...貴女を亡き者にすれば流出はしないということですよね?じゃあ!さっさと...逝きましょうか?」
睡煉が文の首に手術刀を当てるが、文は顔を真っ青にしながら口を開く...
「あやや!?そんな暴力は認めませんよ!!ここで私を亡き者にしても!!写真の流出は止まりません!一定時間以内に私の連絡が無かったら自動的に新聞入りするようになっています!!あまりこのようなことはオススメしませんよ!!」
「...ぐっ」
...この子...保険をかけていたのね...このまま文をボコっても流出は免れないみたいね...何てこと...
「...睡煉...解放しなさい...」
「ええ!?でも!!」
睡煉からは反論に近い言葉が出てくるけど...ここは従った方が身のためよ...
「いいから...大人しく頑張りましょ?人の記憶に残ってしまったデータこそ...隠蔽は途方もない作業になるのよン...」
このことには身に覚えがあるわ...実体験だけど...あの方に仕えていた頃...着せ替え人形にされた時があって...それが知っている人にそのことが知れ渡ってしまったことがあった...全員の記憶を改ざんするのに苦労したわ...
「あやや~♪毎乃葉は物覚えがあって助かりますよ~」
「今回限りよン...とりあえず今あるデータは没収させてもらうから...それと...アタシ達も何かしらの報酬があっても罰は当たらないわよねン!」
「報酬ですか?何です?」
アタシは写真を見る...前々から気にはなっていた問題だけど...思い切ってやってもらうのもいいかもねン!
「封印牢にお風呂つけてもらえるかしら?イチイチ公衆浴場へ行くのは面倒なのよ...」
「...それくらいならOKですね!」
文から手を差し出されアタシはそれを握り返す...取引は成立ねン!!
「おほほほ!!嬉しいわ!文!」
...メキメキ
思いっきり握った文の手からは不穏な音が聞こえ始める...
「うぎゃああああ!!折れる折れる!手が折れます!!暴力反対ですー!!!」
「はいはい...」
文を解放し、アタシは部下達を見る...彼女達は不服そうな顔をしている...
「おい!同志!!いいのかこれで!!」
「そうですよ!!これはちょっと悔しいですよ!!」
「落ち着きなさいよン...いいじゃないの...お風呂が出来ると思えば...」
部下達を宥めてアタシは文が持ってきた書類を纏める...内容は、新聞の契約書みたいね...
アタシは手拍子をして、辺りを落ち着かせる...
「はいはい...とりあえず各自契約を頑張っていくわよン!!」
「えー!」
「納得できませんよー!!」
ごねる部下達の背中を押して封印牢を後にする...とりあえず、やるべきことはしましょうかねン?
side睡煉
「はぁ...どうしてこんな面倒なことを...」
私は紅魔館へ向けて足を運ぶ...私の担当はあそこですか...あまり気が乗らないのですよね...あまり見知った関係でもありませんし、契約を取れるかどうかですら微妙です...
紅魔館の門の前に着陸すると、門番の美鈴が私の存在に気づく...
「...あら?貴女は...確かあの天狗の?」
「どーもです...ちょっとお時間宜しいですか?」
私の言葉に美鈴は首を捻る...
「うーん...今はちょっと...図書館の方で立て込んでまして...」
「うん?図書館?」
何かあったのでしょうか?せっかく来たのに契約が取れないのは少し嫌ですね...
「ええ...いつもの泥棒退治ですよ...
「泥棒退治?」
私が聞き返すと、美鈴は困ったかのような顔をする...
「白黒もとい...霧雨魔理沙...彼女がパチュリー様の図書館の本を盗んでいくのですよ...それも複数回...お陰で図書館の方でパチュリー様達が応対中なのです」
「へー...それは困りますね」
...霧雨魔理沙...確か竹林の異変の時にお相手した方ですね...まさか手癖が悪いとは思いませんでしたよ...これでは新聞の勧誘どころでは...
「...いや...これはチャンス?」
この状況をネタにすれば勧誘できるかも!!ここで魔理沙を撃退すれば...新聞の勧誘を受けてくれるかもしれませんね!戦闘は...まぁ何とかなるでしょう?
私は美鈴に向き合う...
「じゃあ!!私も手伝いますよ!!私もそれなりに戦えますし!」
「え?良いのですか?」
美鈴は驚いた顔をするがすぐに不審そうに私を見つめる...
「うーん...ですが何か企んでいませんか?貴女の気が真っ黒なのですが?」
「あらら...まぁ怪しむのも当然ですか...でも心配は無用ですよ...ちょっとした取引をしていただければ私は満足なんです!」
「私の一存では決められないんですよ...そういうことなら咲夜さんに言ってくださいね?」
美鈴は大人しく門を開く...あのメイドか...まぁ何とかなるでしょう!
「じゃあ!頑張ってきまーす!」
私は門を通り、図書館の方へ向かう...
図書館の戸を開けて中に入ると私は足を止める...
「うひゃぁ...これは酷い...」
床に散乱する本の数々...破壊しつくされた本棚の数々...黒焦げになっている使い魔らしき人...激しい戦いの後のようです...
奥に進むと破壊音が更に響き渡る...そこに足を運ぶとそこには魔理沙と咲夜の戦いが行われていた...
「はは!!随分と疲れているみたいだな!」
「ぐぐ...この白黒!!!」
咲夜は負けじとナイフを投げるが、魔理沙はそれを避けて彼女に向けて八卦炉を向ける...
「これで終わりだ!!!」
光弾が咲夜に向けて放たれ、彼女は避けることが出来ず被弾する...
「きゃあああ!!!」
被弾した彼女は私の近くに吹き飛び地面に臥す...どうやら決着はついたみたいですね...
「んー...出番はなさそうですね...」
「ん?あ?お前...毎乃葉の部下か?」
魔理沙は私に気づいたのかこちらに向けて笑みを浮かべる...
「ええ...どーもです...新聞の勧誘に来たのですが...どうやら強盗の現場に立ち会わせたみたいで...」
「強盗とは失礼だな!!私は死ぬまで借りていくだけだ!パチュリーにはいつかは返すさ」
魔理沙は奥の本の山を指さす...本の山の中からは誰かの左腕が飛び出している...恐らくこの図書館の主のパチュリー・なんたらが埋もれているでのでしょうね...どうやら負けてしまったみたいです...
「はぁ...せっかく契約がとれると思ったのに...」
「契約?文のところでバイトでもしているのか?」
「ちょっと...色々ありましてね...新聞の契約が取れればと思って来たのですが...丁度泥棒騒ぎがありましたし...退治すれば契約取ってくれるかな~と思ったのですがね?」
ガシ...
脚を掴まれる感触がして私は足元を見る...そこには咲夜が荒い息を吐きながら私の脚を掴んでいた...
「え?何です?」
「新聞の契約...取ってあげるわ...だから...あの白黒を...退治してくれるかしら?」
...んふふ!!少し話せば反応すると思ってましたよ!!ここまで私のシナリオ通り事がうまく運んでいるようです!!...でも念のため確認を...
「嬉しいですね!!...でも本当に良いのですか?」
「...この際手段は選べないわ...だからさっさと!仕事なさい!!」
私のごねた質問にじれったく思ったのか咲夜が声を荒げて了承する...契約確定ですね!!
「了解でーす!」
咲夜の了承を得た私は手術刀を回しながら魔理沙へと向かう...
「おいおい!!そんなのありかよ!!」
「あはは...目的が一致した感じです...大人しく狩られてもらえると助かりますよ♪」
私の言葉に魔理沙は不服そうにスペルカードを構える...
「お前には前の戦いでは勝ったからな...もう小細工は私には通用しない!」
「小細工何て使いませんよー...今日は本気でやらせてもらいますから...」
私は姿を元に戻し、髪をかき上げる...魔理沙は急な私の変化に驚きの表情を見せている...
「なっ!?お前...その姿?」
「...私にこの姿をさせるんだ...悪いけど仕事は確実に遂行させてもらうから...」
私は手術刀を持って彼女へと向かう...
軽く...20分あれば上々だろ...
同時刻...人里にて...
side夜喪妓
「...はぁ...契約ってどうとればよいのだ?」
人里の甘味処で私は緑茶片手に溜息をつく...
全く同志毎乃葉め...こんなことを承諾しやがって...確かに牢屋に風呂がつくのはありがたい...イチイチ公衆浴場へ行く手間が省けるからな...だがこんな雑務は私は不得手なのだ...全く余計な仕事を振ってくれたものだ...
「同志睡煉は紅魔館に行ってしまったし...私はどうしたものか...あまり知りあいがいないのだが」
博麗神社に向かっても契約は無理だな...あそこには金の匂いがしない...
かといって妖怪賢者のところに行くのも気が引ける...どちらかというと敵対勢力だからな...
永遠亭は...論外だ...
「せめて一件さえ取れれば帰還することができるのだが...どうしたものか...」
私が途方に暮れていると甘味処に新たな客が来店する...
「ん!?おい!夜喪妓ではないか!!」
「あ?」
声のする方を向くとそこには、買い物籠片手の人里の守護者こと上白沢慧音がいた...
「...久しぶりだな慧音...この前ぶりか?」
「ああ!!あの時は妹紅が済まなかった!」
慧音は私に頭を下げる...別に気にしてはいないのだが...
「別に構わない...気にするな...向こうも悪気はないのは分かっている」
「...そうだな...で?今日は1人か?何でここに?」
慧音は単刀直入に聞いてくる...かなりストレートに聞いてくるのだな?
「...何...仕事の一環だ...新聞の契約を任されてな...どうしようか途方に暮れていたところだ...」
私が契約書を見せると慧音は笑みを浮かべる...
「ははは!!軍人が文屋の真似事か?」
「...不本意だが...同志毎乃葉の命だ...断るわけにはいかんからな...」
「仕事熱心だな...それは感心だ...」
慧音は契約書を眺めた後、私の方を向く...
「契約結んでもいいぞ!私でも良ければな!」
「本当か!!」
まさかの行幸!!これはありがたい!!これで胸を張って帰還できるというものだ!!
...だが?無理強いは...流石にも気が引けるな...向こうは大なり小なり私に気遣っている...このことを弱みに付け込むのは頂けん...
「契約はありがたいが無理は言わないぞ?」
「構わないよ!今度の授業での内容として使わせてもらえれば私も助かるからな!」
「うむ...それは助かるというものだ!」
...ふふふ...どうやら杞憂だったか...では改めて...交渉を!!
「ちょっと待ったー!!」
「?」
声の方を向くと、そこにはいつぞや同志毎乃葉にボコボコされた者こと藤原妹紅が現れる...
彼女は私と慧音に割って入り私を睨みつける...
「お前!!慧音に何をしようとしているんだ!?」
「妹紅?ちょっと何を?」
「慧音は黙って!ここは私が何とかする!」
何か言おうとする慧音を妹紅は黙らせる...どうも私はこの子には敵対されているようだ...
「...別におかしなことをしようとはしていない...少し新聞の契約について話し合っていただけだ」
「新聞だと!?どうだかな!!海賊みたいな目をした奴の話を信用できるわけないだろ!」
「...私の目のことか?」
...全く無礼な奴だ...好きでこんな目になったのではないのだがな...
(やめろ!!まだ私は使える!!まだ鍛冶はできるはずだ!!だ...だから!!手術はやめてくれー!!!)
(私の目...私の目がぁ!!!!)
...嫌なことを思い出してしまった
この子は...少々痛い目をみないと分からないようだな...余りヒトの気にしていることをストレートで物言うのは宜しくない...
「何ボーっとしているんだ!!」
妹紅は私を煽るように言葉を発するが...問題ない...
「...」
すでに彼女は私の射程圏内...残りはライフルを構えて彼女の頭に照準を合わせてトリガーを引くだけという簡単なお仕事だ...
大丈夫死にはしない...私も彼女も不死であるからな...軽い喧嘩になるだけだ...
「ふん!!!」
ごっ!!!
私はライフルを構えると同時に妹紅が地面に沈む...?まだトリガーは引いていないのだが?
「...妹紅は無礼を働いて済まない」
慧音の方を見ると額を摩りながら、倒れた妹紅を抱えている...妹紅の方を見ると額に大きなたんこぶが出来ている...
「別に構わないが...何が起きた?」
「教育的指導だ!」
慧音は自身の額を指さす...ほう?まさかの頭突きで不死者を仕留めたというのか?能力を抑えているとはいえ、私の目でも追えないとはな...
「とりあえず...新聞は良い方向で検討させてもらう!すまん!妹紅を家まで送らなくては」
慧音は書類に判子を押して、妹紅を背負って寺子屋へと帰っていく...
「...紆余曲折はあったが、契約はとれたか?」
...だが頭の火が消えて助かった...同志たち程ではないが...私も熱くなるタイプだからな...ここは人里...問題を起こす訳にはいかないからな...
「感謝するよ...人里の守護者」
私はライフルをしまい、書類を持って妖怪の山へと帰還する...
迷いの竹林...永遠亭にて...
side毎乃葉
「永琳様!新聞の契約をお願いします!!」
医務室にてこのアタシは永琳様に土下座をする...正直新聞の契約を取れるのはここしかないわン!!仕事を了承して契約が取れませんでしたー!になれば部下に示しがつかなくなる!!
永琳様は私を呆気にとられた様子で見ていたがすぐに我に返る...
「え...ええ!いいわよ!一部くらい!だからそういうのやめなさい!!」
彼女は無理やりアタシを立たせる...
「ありがとうございます!!感謝するわン!!」
早くも契約完了ね...残りは結果を文に知らせて今日の仕事は終わり!!
「ああ...でも条件はあるわよ?」
「条件?」
心の中でウキウキになっていたアタシは永琳様の方を見る...条件って何?変な条件でも付けられたらとんでもないことになるわン...
「少し進んだ話になるけど...そのうち貴女に頼み事をする時が来るかもしれないわ...その時に私の手となり足となってくれるかしら?」
頼み事~?何か面倒なことでなければいいけど?
「...この前みたいな異変は嫌よ?」
「そういう類ではないわ...安心なさい」
永琳様はきっぱりと言い放つ...まぁいいわ...そのくらいなら...
「...ええ!では契約成立ねン!」
アタシは書類を纏めてその場を後にする...
妖怪の山...
妖怪の山に帰還したアタシは、文の家のポストに書類を投函する...これでお仕事は終わり!!黒歴史は闇に葬られ、封印牢にはお風呂が作られていい事づくめよ!!
「おや?同志毎乃葉も終わったのか?」
「ン?」
後ろを見ると、そこには夜喪妓と睡煉の2人がいた...睡煉の方は...珍しく素の姿ね?
「どうしたのよン?睡煉...アンタがその姿でいるのは珍しいわねン?」
「泥棒退治を頼まれましたので...」
「泥棒退治?」
...新聞の勧誘に行ったはずなのに...何でそんな依頼を?
「ええ...某白黒の魔法使いに少々お灸をすえただけです...ちゃんと契約はとってきましたとも...」
睡煉はポストに書類をねじ込む...白黒って魔理沙のことよねン?あの子泥棒やっていたの?怖いわねン...
「ご苦労様かしら?で?夜喪妓の方は?」
「同じくもらってきた...少々喧嘩になりそうだったが問題ない...」
彼女もそのままポストに書類をねじ込む...喧嘩ねぇ?とりあえず...怪我らしいものはしていないみたいだし...無事に仕事は終えたようね...
まぁ...文に言われた通り契約は持ってきたし、文句は言われないわね!!これで足りないとか言ったら焼き鳥の刑に処すわン...
「...んふ!!有能な部下を持って幸せだわン♪...そうだ!!今日はアタシの奢りでご飯に行くわよン!!」
「良し来た!!!」
「...感謝です」
アタシ達はそのまま妖怪の山を後にして、この前の屋台へと向かう...
「...」
でも永琳様...アタシに頼み事とか言っていたけど...何なのかしら?
永遠亭にて...
八意永琳は誰もいない診療室で独りアルバムを眺めていた...
アルバムの中には、かつて彼女が月の賢者だった時にいた弟子たちの日常写真が並べられている...
「とりあえず...毎乃葉には言質をとったわ...残りはあの妖怪の賢者が変なことを考えなければいいのだけどね...」
彼女が思い浮かべるは、幻想郷の母こと八雲紫、神出鬼没の彼女に対して何らかの警戒を持っているのだろう...
「...杞憂ならいいけど...こういう時は絶対何か起きるのよね...」
彼女はアルバムから写真を2枚手に取る...
1つは月にいる弟子の写真...もう一つはとある者と並んで映っている天逆毎乃葉の写真...
これを見て彼女は笑みを浮かべている...
「...でも既に手ごまは揃っているわ...残りは私の采配次第ということね...」
彼女が写真をアルバムに戻すと診療室に入る者がいた...長い薄紫色髪をしたうさ耳少女こと...鈴仙・優曇華院・イナバだ...
「師匠!夕ご飯できましたよ!」
「ええ...すぐに向かうわ」
永琳はアルバムを棚に戻し、診療室電気を消してその場を後にする...
誰も予測のつかない水面下で起きている戦い...それの火蓋が切って落とされるのはいつの日か...
久々の投稿です...長くなり過ぎました
ではこれにて