風見幽香との戦闘により、天逆毎乃葉と別れた第0部隊のメンバー夜喪妓・睡煉は指定された通りに三途の川方面へと向かう...
まだ異変の原因であるという証拠には確定していないが、彼女達にはやるしかない...上官である毎乃葉の命令は絶対なのだから...
side夜喪妓
「...」
「夜喪妓さん~?本当に良いんですかね?」
同志睡煉が先程から私に尋ねてくる...全く...何回聞けば気が済む?
「くどい...同志の命令だぞ!!私達は僅かな手がかりの三途の川に向かうしかないんだ!」
「...それで情報がなかったら?次はどこへ?」
「...」
それは最悪の場合だ...考えたくもない...同志がいない以上...情報操作を使った異変の調査が出来なくなっている...
それに私は幻想郷の事も把握できてはいないし、私の目もそこまで探索には向いていない...次の調査が難航するかもな...
「同志睡煉...先の事は考えるな...目先の事だけに集中しろ」
「...うう...当たってくれれば」
私達はとりあえず目的地へと急ぐ...当たってくれよ...同志の命令を無碍にしたくはないんだ...
しばらく進むと目的地である三途の川に到着する...第一印象としては何か嫌な場所だ...
霧に覆われた暗い大きな河が広がる空間...これでは昼か夜かも判別がつかないな...それに私の目には見える...幾多あまたの霊達がこの空間を漂っている...あまり私としてもこの空間は好きではない...
「陰気な場所ですねぇ...」
「ああ...」
同志睡煉の言葉を聞きながら私はキセルに火をつける...
霊的な場所はあまり得意ではない...私の殺めた者達が私を狙っているような錯覚を見せる...同志睡煉もそうだろうな...
「...で?来たはいいのですが...この後どうします?」
「...」
...見た限り殺風景な風景しかない...情報を得ようにも現地の者がいない以上どうしようもないな...恐れていた事態が発生だ...
「どうします?次はどこへ?」
「待て...まだ手がかりがないと決まったわけでは!!」
私は眼帯を取って辺りを見回す!誰でもいい!!誰か...いれば!!
「...?」
辺りを探索していると、10メートル先の岩場の影に人を発見する!!
「ビンゴだ...」
第一現地人発見だ!!残りは情報を聞き出すのみだ!!!
「見つけたぞ!同志!!10メートル先の岩場の影に隠れている!捕縛しろ!」
「はいはい...分かりましたよ~」
睡煉の姿が消え、しばらくすると叫び声が響き渡る...
「ぎゃああー!!?何だい!!?もう勘弁しておくれよ!!!アタイはもうボロボロなんだからー!!!」
...ふむ...速い御手前だな...獲物は声からして女性か...
私はその方向に歩を進める...
「夜喪妓さーん!!捕まえましたよー!!」
「助けてー!!」
私の目の前には、同志睡煉と羽交い絞めにされている第一現地人...
現地人の方は赤い髪を二つに纏め、薄紫色の着物を身に着けている...
ふむ...只の人ではないようだ...まぁ...この場にいるのだから何かしらの種族だろうな...
私は第一現地人に近づく...
「...まずは名前を聞こうか?」
「は!?何だい!!いきなり不躾な連中だね!!名乗るならお前らから名乗れ!!」
...反論されてしまう...だが彼女が言っているのも確かのようだ...
「失礼...私の名は夜喪妓...そして君の後ろにいるのは私の同志睡煉だ...これで満足か?」
「...やっぱり仲間だったのかい...早く解放しておくれ!!アタイは紅白と白黒にボコられて消耗しているんだよ!」
現地人は解放を望むがそうもいかないな...紅白に白黒...霊夢と魔理沙か...
「...ふむ...情報提供感謝する...幻想郷の巫女がわざわざ来ているとなると...今回の異変はこちらでビンゴのようだな?」
「...あ」
現地人はしまったと言った顔をする...異変に対して何か知っているようだ?
「何か異変について知っているようだな?私達の仕事もそれの調査なんだ...教えてくれれば助かる...」
「し...知らないね!!異変?何のことだい!!?」
「...はぐらかすのか?博麗の巫女が来たという事は100%ここは異変に関わっているということだ...あまりしらばっくれるのはオススメしない...私自身も気が長い方ではないからな...」
「う...ううう!!」
「現地人よ...名前を聞こうか?君の名前が分からないと交渉がし辛いのでな...前にも言ったが...あまり時間をかけるな...私の気は短いのでな...」
「分かった分かったよ!!名前は小野塚小町!!今回に関しても教えるからアタイを助けておくれ!!」
陥落...第一現地人の名は小野塚小町...覚えておこうか...どうやら勝利の風はこちらへ向いているようだ...残りは情報を貰って帰還するだけだ...
「ああ...助けてやるとも...では...聞こうか?今回の異変に関して教えてくれ」
「その言葉嘘はないね?...季節外れな花の異変だね?あれはアタイ達が悪いんじゃない...周期的に起こるものなのさ...」
「周期的にですか?私は長年この世界にいましたけど...今回の事は知りませんよ?」
同志睡煉が言うが小町は口を開く...
「まぁ...60年に一回程度の事だから普段生活している分には気にはならないさ...でも今回はアタイら死神のキャパを越えるものだったから...長引いているんだよ...」
「ふむ...君が死神か?ではそのキャパの内容を聞こうではないか」
小町は少し考えた後口を開く...
「...思ったより...今回は死神の許容量を超える幽霊達が出現したのが原因だ...処理できなかった幽霊が幻想郷中に広まって、そこらへんの花に憑依して咲き乱れた...それで今回の異変が起きたんだよ...」
「本当ですかぁ?」
「嘘は言っていない!!!だからそのナイフを下ろしておくれ!!」
「...同志...武器を抜くな...穏便に済ませろ」
...原理は不明だが...瞳孔の開き具合で嘘は言っていないようだ...彼女の話が本当なら今回の事は只の事故ということで間違いはないだろうな...報告書には書ける分には情報が集まったというものだ...
(夜喪妓?いいかしらン?)
...頭の中で同志毎乃葉の声が響く...連絡してくるということは幽香との闘いは終わったのか?
「...ああ...聞こえている...そちらの問題は終わったのか?」
(...ええ...問題なくねン...それよりも情報を掴んだのかしら?アタシに教えてよン!)
「ああ...実は...」
私は聞いた情報を同志毎乃葉に教える...
~~~
(んん...ええ...把握したわン!つまり一定周期で起きる事故みたいなものなのよねン?)
「そんな感じだ...」
(おほほほ!!ご苦労様♪残りは情報を纏めるだけねン!では帰還してOKよン!...アタシはちょっと休んでから戻るわ...)
...急に同志からの通信が途絶える?...何となく想像はつくが...無理はしないでもらいたいものだ...
「...分かったとりあえず情報提供感謝する...ではこれで失礼を」
私と同志睡煉はその場を後にする...長居は無用だ...残りは本拠基地に戻って書類の準備を...
「待って!!アタイを助けてくれるんだろ!!?」
小町が私の脚にまとわりつく!?
「何だ!?もう終わっただろ?もう帰っていいぞ?」
「駄目だ!!このまま紅白と白黒をほっておいたらアタイが映姫様にお仕置きを受けちまう!!!アタイを助けて!!」
何だ?何か嫌なお使いを頼まれそうだ?
「...私がする必要性はない...諦めてお仕置きを受けろ...」
「さっきアタイを助けてくれるって言っただろう!!?約束は約束だろう!!」
「約束っていつ?...あ」
(分かった分かったよ!!名前は小野塚小町!!今回に関しても教えるからアタイを助けておくれ!!)
(ああ...助けてやるとも...では...聞こうか?今回の異変に関して教えてくれ)
(その言葉嘘はないね?)
...ああ!!交渉で頭がいっぱいだったから、そういえばそういうことを...
「...確かに言ったが...それとこれは...」
「世の中ギブアンドテイクだろう!!!だからアタイは情報を教えた!!だから頼むよー!!!」
「だから...それは私達に関係のない...」
「嘘をいうのか!!!お前たちが死んだら三途の川に叩き落としてやるー!!!」
...死後の脅しなのか?そういえばこいつ...死神だったな...やろうと思えばやれるのか?
...しまった...道理で交渉がうまい具合に進むと思ったら...この為か...今度は私が押されている...いう事を聞く義理はないが...これでは私のフェアプレイ精神に反する...
同志睡煉を見るが、彼女は肩を竦めている...
「あらら...これはうまいことやられましたね...夜喪妓さん」
「ううう...すまん...ぬかった...」
「仕方ありませんよ...すんなりと情報を話してくれましたし...これ位しても良いでしょう?...それに私と貴女は荒事には慣れているでしょう?」
...やることは決まったか...なら仕方あるまい...
「向かうぞ...早く仕事を終わらせる!」
「ええ...分かっています」
...私達は三途の川の先を進み、博麗の巫女一行を追う...
最終的に交渉失敗だ...次回は気を付けていこう...
一行...鈴蘭畑にて...
「げほ!!」
そこにはボロボロの状態の風見幽香と天逆毎乃葉がいた...
両者とも地に伏せており...勝負は引き分けになったようだ...
「なかなかのパワーね...貴女...組織の中間管理職で収まっているタマではないでしょう?」
「...アタシはこの状態で満足しているのよン...権力は望んでいないわ」
毎乃葉は木に寄りかかりキセルを咥え指から火をつけようとするが、それは不発に終わる...
「力を使いすぎたかしら?」
「...それはそうよ...残りの妖力は残っていないのでしょう?」
幽香が力なく笑うのを見て彼女はキセルをしまう...
「貴女とは二度と戦いたくないわン...このアタシでも手に余るわ...」
「それはどうも...次は私が勝つわ!」
「...勘弁してよン...はぁ...夜喪妓・睡煉...後は任せたわン...」
こうして鈴蘭畑の戦いは幕を閉じる...
だがまだ異変が完全に終わっていないことを彼女は知らない...
まだ異変は終わりません
ではこれにて