東方天災手記   作:ベネト

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日常編


健康診断と話し合い

迷いの竹林にて...

 

永遠亭の病室には、八意永琳と天逆毎乃葉の2名がいた...

 

「はい!毎乃葉...我慢なさい!」

 

「ひぐぅ!」

 

「はい!力を抜いて!!うまく刺さらないわよ!」

 

「もう無理!!!痛いもの!!!」

 

「はいはい...残りは抜くだけよ...辛抱なさい!!」

 

「はぁ...はぁ...はぁ...」

 

 

永琳が施しているのは、毎乃葉の腕に刺さる注射器による採血...毎乃葉は、涙目でじんわりと来る痛みに耐え忍んでいた...

 

 

 

 

side毎乃葉

 

「はい!お疲れ様...これで大丈夫よ」

 

「...痛い!!もう!!!何で、このワタシが健康診断なんか受けなければならないのよ!!」

 

アタシは、もらった脱脂綿で注射されていたところを抑える...

 

急に呼び出されたかと思ったら、まさかの健康診断を受けろ?

 

ったく!!注射なんて、月で兵器として働いていた時以来よ!!あまり良い思い出はないというのに...

 

永琳様はアタシから抜いた血を試験管に詰めている...

 

「貴女の健康状態を見る必要はあるわ!あの子の従者だもの...私が担当する以上、責任はちゃんと持つわ!」

 

「余計なお世話よン...」

 

「もう一回注射されたいかしら?」

 

「...勘弁してください」

 

永琳様から離れて、アタシは窓を開けてキセルに火を灯そうとする...

 

 

「駄目!!病室は禁煙よ!」

 

「...そうでした」

 

大人しく火を消す...帰ってから吸うべきね...これはアタシが悪いわ...どうしてもイライラすると、無意識にやってしまうわ

 

「ソレ...やめたらどう?健康に悪いわよ?」

 

「ワタシから...楽しみを奪うというのですか?」

 

...禁煙?そんなことできるわけがないわ!!一回...試したことはあるけど、一日...いや半日持たなかったわねン...

 

「試しに一日やってみたら?あの子に会わせる時には健康体で送る必要があるからね...」

 

...会わせるねえ?たとえ...それが可能だったとしても、このアタシが会うことはないでしょうね、それに、幾ら月の賢者とはいえ、月を裏切った以上難しい問題よ...

 

「無理を言うじゃないの?無駄な努力はしない方がいいわ...アンタも...このアタシもねン...」

 

「出来るか、出来ないかは私が決めるわ...」

 

「無理だと思うけどぉ...まあいいわ...じゃあこのアタシはここで...」

 

アタシが病室を出ようとすると、彼女が止める...

 

 

 

「待ちなさい...まだ終わっていないわ」

 

「今回は採血だけでしょう~?これ以上何を?」

 

「その左腕の外傷も見ておく必要があるのよ...」

 

永琳様の言葉に、このアタシは無意識に左腕を隠す...ちっ...やっぱりコレもか...

 

「あまりこっちの腕は見せたくないのだけどぉ...」

 

「いいから!!」

 

永琳様の強い語気にアタシはしぶしぶと椅子に座りなおし、手袋を取る...

 

アタシの左手首には、見慣れた雑な縫合の痕が残っている...永琳様は傷を見て顔をしかめている...

 

「酷い処置ね...」

 

「仕方ないでしょう?月面戦争で負傷して重傷で能力は使えなかった上に、月から地上へと逆戻りをしてサバイバル生活・そして封印よ?」

 

...正直傷を治すことに専念できれば、こんな傷残るはずはなかったのだけど...あの時のアタシは美羽だったし、柚神の方は消滅してしまったからどうしようもない...柚神を戻すのにかなりの時間が掛かったし仕方がないわ...

 

「...昔並みの力は難しいかしら?」

 

永琳様はアタシの傷を観察している...

 

「戦闘は...無理ね...力は入らないし、負荷がかかると傷が疼くのよン...」

 

アタシの体...色々な任務で無事な箇所が無い位傷ついたけど、この傷とは一生背負っていかないといけないくらい分かっている...日常生活は困らないけど、こっちが利き腕だから少し不便なのよねン...

 

「触診だけど...一応は傷の方は完治しているみたい...少々の後遺症を除けばだけどね...でも傷を消すくらいは出来るわよ?何回か通院してくれれば...」

 

「必要はないわン...見慣れたモノだし...ないと逆に違和感を覚えるのよン...」

 

何百年、この傷とともにしていると思っているのよン...別に直したところで、時間が無駄になるだけよン...

 

 

 

 

「貴女個人の事は聞いていないわ...あの子にこの傷を見せたら、悲しむことくらいわかるでしょう?」

 

「...」

 

痛い所を突くわね...それくらい想定の範囲内よ...

 

睡煉・夜喪妓とも再開した時も、彼女達はこのアタシの腕を見て驚いていた...いえ...悲しんだというべきかしら?これがのちに再開する忌梗・あのお方も同じ反応をすることは予測できるわ...

 

 

 

 

 

 

「...って!!...会うことを前提に進めないでくれない!?このアタシは戻らないと何回言っているのよ!!」

 

「強情ね...」

 

危うく口車に乗せられる所だったわ...このヒト相手だと油断できないわン...いつ嵌められるか分からない...

 

「当たり前でしょう!?あのお方は月では位が高いの!!月の負の遺産であるアタシが戻ったら立場が危うくなるわ!それくらいわかるでしょう?」

 

「...」

 

永琳様は、それ以上の追求をしなくなる...これでいいわ...アタシが本来存在してはいけないモノだってことくらい分かっているはず...

 

「では...日が沈むし失礼するわねン...とりあえず傷は兎も角...禁煙の方は考えてみるわン...」

 

アタシは永遠亭を後にする...

 

 

 

外に出ると、すでに日が沈んでおり、三日月が幻想郷の夜を照らしている...竹林の風景も静かで荒んだ心が落ち着くわ...

 

「良い...雰囲気...煙が欲しくなるわン」

 

月での生活も、それなりにやりがいはあったけど、こうやって風景をのんびり眺める時間はなかったわね...毎日が生きるのが精一杯な死と隣り合わせな生活だったもの...

 

「...まぁ...月で暮らすよりも...ここの方が良いってものもあるけどね...」

 

アタシは、翼を広げて妖怪の山へと向かう...

 

生きていくことができれば充分...これ以上は求めないわ...これは欲求のようなものだけど、静かに生活できれば...アタシは...

 

 

 

 

 

 

 

妖怪の山...封印牢

 

牢についたアタシは封印牢の戸を開けて中に入る...

 

牢屋の廊下には、キセルを吹かして座っている夜喪妓の姿が目に映る...

 

「ん?同志?遅い帰りだな?」

 

「...」

 

夜喪妓は口から煙を満足気に吐く...これはアタシへの当てつけかしら?

 

「夜喪妓...アタシは今...健康診断後...禁煙を頑張ろうとしているのよ?見せびらかさないで欲しいわ...」

 

「ああ...失礼...禁煙とは...頑張ってもらいたいものだ...」

 

彼女はキセルの火を消す...だけど...他人ごとね?

 

「...ねぇ?アンタも禁煙やってみない?」

 

アタシの言葉に夜喪妓は、不服そうな顔をする...

 

「健康診断がどうであれ...私は関係のないことだろう?自分の事は自分で頑張れ...」

 

「...分からない?禁煙は大変なのよ?一人より二人がいれば頑張れると思わないン?」

 

「道連れだと!?私は関係ない!!やるなら一人で頑張れ!」

 

「駄目!一緒に頑張りましょ!」

 

「ふ...ふざけるなよ...」

 

アタシは夜喪妓のキセルを取り上げて、禁煙に専念する...どこまでできるか...楽しみね...

 

 

 

 

 

 

 

5時間後...

 

 

「やっぱ無理...吸おう...」

 

「我慢が一番のストレスよねン...」

 

短い禁煙宣言...前回よりも持たななったわ...やっぱ無理だったわン...無理のない生き方...それがいいわ...

 




次回次の異変!

ではこれにて

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