東方天災手記   作:ベネト

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日常編


暗殺者と狙撃手の一日

とある日、人里にて...

 

人里の甘味処には、第0部隊の夜喪妓・睡煉が茶菓子を食べて一息をついていた...

 

彼女達は茶菓子を食べる度に、頬に手を寄せている...

 

それもそのはず...彼女達の頬には赤く染まった手のひらの跡...真っ赤な紅葉が咲いていたのだから...

 

 

side夜喪妓

 

「痛っ!!!」

 

羊羹を口に運ぶたびに口に激痛が走る...いてて...同志毎乃葉に殴られた後がまだ痛む...

 

「あはは...夜喪妓さんも痛みますか?ソレ?」

 

同志睡煉の頬にも真っ赤な紅葉がある...奴も目の前の大福を食べようとする度に顔を渋くしている...

 

「...仕方がないだろ...敵前逃亡をした罰だからな...」

 

...これは私達が悪い...2日前の博麗神社の件...私達は同志毎乃葉を見捨てて逃亡を謀った...

 

流石にも、年相応ではない服装とトラブルに関しては私達とはいえ、キツイ物があった...

 

お陰で同志毎乃葉から手厳しい鉄拳制裁を受けたというものだ...あの時の同志は...いつも以上にヒステリック気味だったな...

 

「...ううう...口の中に大ダメージです」

 

「私も同じだ...」

 

睡煉は頬を抑えながら食事をしているが、姿がブレ始めている...

 

「姿を維持できないなら、ノーメイクに戻ったらどうだ?」

 

私の言葉に睡煉は私を睨む...

 

「...余り私の姿は晒したくないんですよ...あまりにも地味だし...痛っ!!!!」

 

そう凄む彼女ではあるが、大福を口にして飛び上がる...

 

「無理をするな...やるだけ努力の無駄だぞ?」

 

「...ううう...じゃあ少しだけ...」

 

睡煉の姿が変化し始める...メイク姿ではない...彼女の本当の姿をな...

 

 

うさ耳が消え、睡煉の真っ白な長い髪は肩までの長さへとなり、茶色く変色なる...

 

赤い軍服は真っ白になり、顔も変化していく、真っ白な雪のような顔の鼻のところに雀斑が現れてくる...

 

「随分と地味顔になったな同志睡蓮...」

 

「喧嘩売ってます?...もう...しばらく休憩です...」

 

同志睡煉は不機嫌そうに窓の外を見つめている...

 

ああ...拗ねてしまったようだ...冗談のつもりだったが...悪い子とをした...

 

「悪い悪い!ここは私が奢るから勘弁しろ!」

 

「...本当ですか?」

 

睡煉がジトーっと私を見つめる...うう、ネチッコイ奴だ...疑ることはないだろ?

 

しまったな...この状態のコイツが面倒なのを忘れていた...さっきの姿の陽気な性格から打った変わって元の性格の陰気になるんだったな...

 

その後...私は不機嫌になってしまった睡煉と甘味を食べて甘味処を後にする...

 

 

 

 

 

 

甘味処を出た私達は人里を観光する...同志睡煉はノーメイクのままだが...

 

「メイクはいいのか?」

 

「メンドイんでいいです...どうせ知りあいが今の私を見てもバレはしませんよ...」

 

睡煉は次の角を曲がる...

 

 

 

 

 

ドン!

 

 

「きゃ!!?」

 

「いて!!?」

 

案の定誰かとぶつかる...彼女は尻餅をつく...よそ見をしているからこうなるのだ...

 

「あひぃ!!!すみませーん!!!!」

 

同志睡蓮が逃げ帰るように私の後ろに隠れる...

 

「たく!!謝る態度ではないぞ!...すまん!大丈夫か?」

 

睡煉がぶつかった相手に手を伸ばそうとするが、相手が私に気づく...

 

 

 

 

 

 

「あ!!アンタ!第0部隊の!!」

 

「ん?」

 

相手をよく見ると、何時ぞやの逃亡玉兎こと...何たら麺類...確か...うどんげだった気がする...

 

そのうどんげが私達の前にいた...

 

「永遠亭の玉兎か...何故お前がいる?」

 

「お仕事よ!人里で置き薬を販売しているの!そういうアンタらも何をしているのよ!夜喪妓に睡煉!!」

 

うどんげの言葉に同志睡煉は驚きの表情を浮かべる...

 

「ええ!?何でこの姿の私に気づいたんです~?」

 

...私も驚きだ...まさか睡煉の姿を見破るとは...

 

「夜喪妓が居れば、その相方が睡煉だって予測はつくわ!それにアンタの玉兎の姿は元のモチーフは見たことがあるのよ...随分と地味になったじゃないの...」

 

うどんげの言葉に睡煉が懐から手術刀を取り出す...

 

「おい...麺類...私の容姿をディスったら兎鍋にすんぞ...コラ...こちとら連続殺人鬼なんだよ...お前をバラすことくらいは簡単にできるんだよ...」

 

殺気駄々洩れの睡煉に負けじとして、うどんげの方も身を乗り出す...

 

「ふん!!幾ら凄んでもアンタ自身はさっきの行動を見た限り、虚勢に過ぎないわ!幾ら自分を偽りで固めてもアンタの弱さは隠せないわ!!!」

 

うどんげの言葉に同志睡煉は顔を真っ赤にする...どうやら図星だったようだな...今のこいつは分かりやすい...

 

「黙って聞いてれば~!!」

 

「...やめろ...ここでは問題を起こすな...」

 

同志睡煉を後退させ、うどんげと対峙する...

 

「お前もここでは問題を起こさせてくれるな...八意に叱責させられるぞ...」

 

「...分かっているわ...まだ仕事は残っているもの...じゃあ失礼するわ」

 

うどんげは、荷物を持って消える...

 

まさか...知りあいに会うとはな...

 

「行くぞ...睡煉」

 

「うう...あいつ...覚えてろ...」

 

私は睡煉を宥めながら、再度人里を探索する...

 

 

 

 

 

 

 

side睡煉

 

「...はぁ」

 

...最悪だ...私のノーメイクを、知っている者に見られるとは思いもしなかった...

 

それも...あのうどんげ...言いたいことを言いやがって...何が私が弱いだ...虚勢だ...好きで偽りで身を固めている訳ではないというのに...

 

(...ダメだ...及第点以下だ)

 

(...せっかく生きた成功例だというのに...戦闘能力が皆無に近い...)

 

(悪いけど...こいつは廃棄だな...どうせ兵器としては役に立たん...)

 

...失敗作か...確かに言えているかもね...

 

 

 

 

 

 

「...同志...どうした?さっきからボーっとしているぞ?」

 

「気分が悪いだけですー!」

 

...夜喪妓さんには悪いが、今日はもう何もする気が起きない...帰ってベットの中で眠りたいくらいなんですから...

 

「む!おーい!夜喪妓じゃないか!!」

 

突如響く声に私達は足を止める...声のする方向には、青い服に身を包んだ、白い長い髪をした女性がこちらへと近づいてくる...

 

...確か夜喪妓さんの話では、人里の守護者...上白沢慧音とか言っていたな?負傷した夜喪妓さんの手当をしてくれた人らしい...

 

「...ああ...慧音か...この前ぶりだな」

 

夜喪妓さんは、こちらへやってくる慧音に向けて、にこやかな笑みを浮かべている...

 

「ああ...で?お前たちはどうしたんだ?人里に何か用なのか?」

 

「只の息抜きだ...別に問題は起こしたりしない...人里の守護者様の厄介にはならないさ...」

 

「別にそういう風に言う気はなかったのだが...」

 

夜喪妓さんの言葉に慧音は不服そうな顔をする...夜喪妓さんも不味いと思ったのか、顔を強張らせている...

 

「冗談だ...そういえば...この前の、あの子は元気にしているか?同志毎乃葉にズタボロにやられたんだ...後遺症でも残ってないと良いのだが...」

 

「後遺症何か残らないよ...こちとら不死だからな...」

 

誰かの声が響き、その方向を向くとそこには、店から出てくる長い白髪をした赤いモンペを身に着けた少女が出てくる...

 

このヒトには見覚えがある...毎乃葉様にボコボコにされた蓬莱人だ...確か名前は藤原妹紅だっけ?

 

夜喪妓さんは妹紅を見て、笑みを浮かべている...

 

「ほう?流石は私達よりも良い蓬莱の薬を使っているだけはあるな!同志にボコボコされたとは思えない程だ!元気そうで何よりだな!」

 

「ちっ...褒めているのか貶しているのか分からねえ奴だ...」

 

「ははは!!これに懲りたら復讐なぞやめることをオススメする!」

 

夜喪妓さんの言葉に妹紅は目を見開く...

 

「お前にとやかく言われる筋合いはない!!」

 

「妹紅!やめろ!」

 

慧音が夜喪妓さんに掴みかかりそうになる妹紅を抑えるが、夜喪妓さんは戦闘態勢にならない...

 

「ん?何か不味いことでも言ってしまったか?」

 

「ああ!見事に言ってくれた!お前に私の気持ちなぞ分からないってことがな!!」

 

「...訳アリか?それは済まない...私は思ったことは口にするタイプでな...こればかりはどうすることもできないな?」

 

「夜喪妓さん...少しお口チャックしましょうか?」

 

私は夜喪妓さんに、口を閉じるように言い聞かす...このヒト地味にどストレートで物事を言うからな...今回みたいにトラブルになりかねない...

 

妹紅は少し落ち着いたのか、慧音を振り払う...

 

「ちっ...」

 

「妹紅!!...すまん!夜喪妓!」

 

慧音が頭を下げるが、夜喪妓さんは手を振る...

 

「いや...こちらの落ち度だ...頭を下げるのはこちらかもしれん...」

 

夜喪妓さんは、妹紅に頭を下げる...

 

「こちらの非礼だ...申し訳ない」

 

「ふん...」

 

妹紅は不機嫌そうに、そっぽを向く...空気が悪いな...ここは退散するのがベストかと...

 

私は夜喪妓さんに耳打ちをする。

 

 

 

「...夜喪妓さん...そろそろ人が集まって来そうですし...この辺で撤退しましょう?」

 

「確かに...この位にしておくか...帰る頃には日が落ちるだろうしな...」

 

夜喪妓さんは辺りを見回す...誰に見られているか分かりませんからね...

 

「では!私達は失礼する!ではな!慧音に妹紅!次回は茶菓子でもつまみながら談話でもしよう!」

 

「...失礼するね?」

 

「ああ!今回は済まない!」

 

「...」

 

私達は彼女達と別れて、妖怪の山へと帰還する...

 

 

 

 

 

 

妖怪の山へ帰ってきた私達は、封印牢を開けて毎乃葉様の牢をそっと見る...

 

「...すぅ...すぅ...うーん...メ...さま...」

 

毎乃葉様は部屋のベットの上で寝息を立てており、完全に寝に入っているみたいだ...

 

私達はホッと胸を撫でおろす...

 

「とりあえず...朝になればいつもの同志になるな...」

 

「...帰ってからも折檻とか勘弁ですよ」

 

...とりあえず、今日一日は平和に終わりそうです...残りは、自室のベットで寝に入るだけですね!

 

私は自分の牢の前に立ち、夜喪妓さんに会釈をする...

 

「じゃあ!また明日です...」

 

「ああ!またな!」

 

夜喪妓さんに挨拶をし、私は自室へと入る...

 

 

 

 

 

「...はぁ...疲れた」

 

私はベットの上に倒れこむ...任務はないとはいえ...色々なことがあった...頭が疲れた...そんな一日かもしれない...

 

「...」

 

だけど...少しだけど...嬉しいこともあったかな?

 

これは胸の奥にしまっておくことにしよう...

 

「...」

 

睡魔に襲われ...私も寝に入る...

 

今日はいい夢を見れそうかも...

 

 

 

 




久々の更新...

ではこれにて

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