欠けた月光が照らす迷いの竹林の景色にて...
竹林にある永遠亭の外では、八意永琳が夜空を見ながら溜息をつく...第0部隊の全滅、そしてリーダーである天逆毎乃葉の反旗には彼女は気づいていた...
彼女は自身の頭脳をフル回転させ、策を練る...大切な者達との未来を繋ぐために!
side永琳
「...毎乃葉...まさか貴女が歯向かうとはね」
正直彼女の性格からして、あり得る事とは思ったけど...まさか本当に歯向かうとは思わなかったわ...
...彼女には、あの子の能力が効いている...この行為はデメリットしかないと彼女も理解しているというのに...どういう風の吹きまわしかしら?
何か...彼女の意志を変えることでもあったのかしら?
「師匠~!本当にこれで大丈夫なんですか?」
「うどんげ...貴女は貴女の仕事をしなさい...それ以外のことを気にする必要はないわ」
私の後ろには、不安気に私を見つめている鈴仙・優曇華院・イナバの姿がある...
こちらの戦力がない以上、彼女にも戦ってもらう必要があるけど心もとないわ...
幾ら月で戦いの経験のある彼女とはいえ、第0部隊と天逆を倒した幻想郷の住民に勝てるかどうかは微妙なところね...
「あと...うどんげ...悪い知らせよ...天逆毎乃葉が反旗を翻したわ...悪いけど次の足止めお願いね」
「わ...私がですか!?」
うどんげは青い顔をするが、これは仕方のないことよ...
天逆の裏切りは予想外...第0部隊もフルメンバーだったら、こんなこと起きなかったとは思うけど...彼女達が居ても少し楽になったくらい...うまくいかないものね...
「仕方ないわよ...第0部隊も全滅何だから...」
「うう...あの怖いヒト達まで...元々あのヒト達は何ですか!?あんな物騒な傭兵みたいなヒト達!私は月にいた時は知らないですよ!」
うどんげはヒステリック気味に私に質問をする...そういえばこの子には教えていなかったわね...
「第0部隊は...元々存在しない組織なのよ...貴女が知らないのは当然よ」
「元々...存在しない?」
「ええ...第0部隊のメンバーは元々...月の国家に反逆を行おうとした大罪人よ...メンバー全員がリーダーである天逆毎乃葉に倒されて入隊した結果になっているわ...」
「月を相手に!?幾ら何でも無謀ですって!!何でそんなことを!?」
「...うどんげの言う通り、確かに無謀なことね...でも彼女達のそうさせたのも...月なのだからね」
「え?」
うどんげは首を傾げる...この子は知らないみたいね...月の国家の違法なことをね...
「...人造神霊プロジェクト...第0部隊はそのプロジェクトに関わっていたのよ...」
「人造...神霊?それは...一体?」
「...神霊...月の有力者にも何人かは居たと思うけど...その驚異的な存在を人為的に誕生させようとしたのが...このプロジェクトの内容よ...予算との折り合いがつかなくて頓挫してしまったけどね...」
「神を...人為的に?そんなの無茶です!!幾ら何でも...」
「出来たのよ...短い期間だったけど...人造神霊は確かに誕生したわ...彼女達の存在こそが何よりの証拠となるわ」
「そんなことって!」
うどんげは信じられないような顔をするが...事実なのだから仕方がないわ...
...実質...第0部隊のメンバーはとある神霊を元に造られたクローン...本物には力は程遠いけど、高い戦闘能力を秘めているわ。
「かいつまんで話したけど...それが第0部隊の事なのよね...」
「じゃあ?天逆ってヒトもですか?」
急に天逆の事を言われて私は口を閉ざす...彼女の事は説明がしにくいわね...
「...彼女は...別の意味で違うわね...」
...天逆も人為的に創られた存在だけど、彼女の場合は特殊過ぎるわ...とある神霊を作ろうとしたら別の存在が出来てしまったという感じだもの...
...おかげで失敗作の烙印を押されて、誰からも相手をされなかったのだもの...初期のあの子はやさぐれていたし、何と言うか可哀想だったわね...
「...話はここまでにしとくわよ...うどんげ行って来なさい」
「え...でも...勝てるわけ」
「大丈夫よ...天逆が貴女に危害を加えることはできないわ...あの子の言葉によって私には逆らえないようになっているもの...貴女もこちら側だから対象にはなるでしょうね...」
「あの子って...誰ですか?」
「...」
私はうどんげの耳元でとある名前をつぶやく...
「え?あ...あの方が?」
「そういうこと...だから問題はないわね」
「それなら何とかなるかもしれませんね!!行って来ます!!」
うどんげはさっきとは打って変わって意気揚々と部屋を出る...
「さて...うどんげに止められるかしらね?」
一方その頃...永遠亭近くの竹林にて...
博麗霊夢+八雲紫と途中参加の満身創痍の天逆毎乃葉が永遠亭に向かう...
敵は少なく、スムーズに進む道ではあるがそうもいかない...待ち受ける罠の数々が彼女達を待ち受けていた...
落とし穴に落ちた回数×9・ブービートラップに引っかかった回数×10・金タライが直撃した回数×8...
全てピンポイントに毎乃葉が被害を被る結果になってしまった...
運命に逆らうのは、容易いことではないということなのだろう...苦難の数々が彼女に降り注いでいた。
そして身も心もすり減らした彼女が歩を進めた先には、誰かが捨てたであろうガムが地面に落ちており、彼女はそれを踏み...そしてとうとう崩壊する...
side霊夢
「もう嫌あああああああああ!!!」
自分のブーツの底を見た毎乃葉が膝から崩れ落ち泣き叫ぶ...
とうとう崩壊したわね...先程から色々と罠にかかっていたし...
「毎乃葉...先に進みなさいよ」
「嫌ああああ!!!やっぱりアタシは!!運命に逆らうことなんてできやしないわぁ!!!あの方の言葉には逆らうことなぞ出来ないのよンー!!!」
毎乃葉の目から噴水の如く涙が流れている...
さっきの威勢はどうしたのよ...いつもとは違って一気に弱気になったわね?
でも...毎乃葉に障害が起きているのも、また事実ね...
さっきから罠にかかっているのは毎乃葉本人のみ...彼女に何の能力がかかっているかは分からないけど、彼女の言う通り運命に悉く嫌われているみたいね...
「霊夢...毎乃葉を置いて先に進んだ方が良いと思うわ...このままでは何と言うか...」
紫も苦言を発する...
足手纏いと言わなかっただけ、彼女の有情なのかしら?でも...彼女の実力を考える限り、足手纏いということはないわね...
「待ちなさいよ...置いていくこともできないわよ...」
私はザメザメと泣き叫んでいる彼女に近づく...
「ほら...泣いている暇はないわよ...」
「だってー!!!」
毎乃葉は子供のようにぐずついている...こうして見ると、実力は兎も角...中身は子供みたいね...
今考えてみれば、所々子供っぽい所があるし...
「アンタ...自称最恐の完璧な兵器なのでしょう?こんなことで挫けてどうするのよ?それじゃあ認めてもらうのは...」
「嫌あああ!!アタシをもっと認めてよ!!!」
毎乃葉がピタリと泣き止む...
その顔は青くなっており、どことなく恐怖を感じているみたいだ...
...何となく毎乃葉の扱いも分かって来たわ。
認める...という言葉に彼女の過剰に反応しているのは確かね...さっきの話の時だって何で急に心変わりして私達に同行したのか、理由はこれみたいね...
「承認欲求の塊ね...」
紫がつぶやく...
「承認欲求?」
「...簡単に言うと他者から認められたいという欲求が毎乃葉は強いみたいね...彼女の過去に何があったか分からないけど、余程寂しい思いをしたのじゃないかしら?」
他者から認められたい...か...
「...毎乃葉...立ちなさいよ...まだ終わってはいないわよ」
「うう...」
泣き止んだものの毎乃葉は、不安気に辺りを見つめている...
「運命に勝つんでしょう?これ位でへこたれてどうするのよ?」
「...」
「アンタが完璧ならそれを証明しないと!!」
私は彼女の背中を押す...
「待って!...って!!」
毎乃葉が踏み出した先には、大きな落とし穴が口を開ける!
落ちそうになる彼女ではあったが、体勢を変えて何とか踏みとどまる...
「...あ...危ないわね!!アタシではなかったら落ちていたわ!」
「だからよ...アンタは今...運命に逆らったじゃないの!アンタは運命に逆らう力がある!!怯えていたら異変は終わらないわ!!」
「え?今のが?...このアタシが運命を?...うう...」
毎乃葉はキセルを出して火をつけ一服する...
その表情は目を泳がしながら、考え事をしているような顔をしているわ...必死に頭の中を整理しているみたいね...
「...そうよね!!このアタシがこの程度でへこたれるわけないじゃないの!!!おほほほ!!!」
彼女はさっきとは打って変わって高笑いをしている...さっきの弱気な態度からいつもの強気な態度にまでになるとはね...
「霊夢...」
紫が私に話しかける?
「何?」
「さっき...毎乃葉が落とし穴に落ちなかったから良かったけど、落ちていたらどうするつもりだったの?」
「落とし穴の件はたまたまよ...今は気にすることはないわ...」
...正直...落とし穴は私としても予想外の事だったけど、良いようになってくれて助かったわ...
このままうまくいけばいいのだけどね...
「待ったー!!!そこまでよ貴女達!!」
「!?」
竹林の奥から聞こえてくる声に、私達はその方向を見る。
竹林の向こうには、紺色のブレザーを身に着け、薄い紫色の髪をしたうさ耳の少女がいた...
見た目を見る限り、向こう側の者みたいね...
毎乃葉も気づいたのか彼女を驚いた顔で見つめている...
「あら?アンタは確か...永琳様の...」
「鈴仙・優曇華院・イナバよ!!!天逆!!!何で師匠を裏切ったのよ!!!アンタこの先にある運命が怖くないの!?」
鈴仙と名乗る兎は毎乃葉に対して苦言を発するが、毎乃葉は涼しい顔をするだけ...
「このアタシを認めてくれたから...協力をしただけよン?裏切りも糞もないわ...」
整然と返答している彼女だけど、私が立ち直さなかったらどうなっていたのかしら?
鈴仙はワナワナと震えている...
「裏切りじゃないの...それにアンタの主の○○様は!!」
「主は関係ないわよン?...それ以上余計な事を言うなら...アタシも手を出すことになるわン!」
毎乃葉は私達を見つめる。
「この子アタシがやるわ...先に行ってて頂戴...」
「...頼んだわよ」
「すぐに終わるわ...」
毎乃葉はそれだけを言うと鈴仙の方を向く...
...ここは任せた方がいいかしら?幾ら毎乃葉とはいえ、この子に苦戦は強いられないでしょう...
「紫...先へ行くわよ」
「ええ...時間は無いわよ」
私達は、彼女達を置いて先へ進む...
任せたわよ...毎乃葉...
side毎乃葉
「あ...他の行っちゃった」
「...」
霊夢達は永遠亭へ向かうみたいね...それは結構よ...残りは任せたわ
玉兎は追いかける気はないみたいだし、あくまでアタシの足止めだけに来たのかしら?
少々お粗末だとは思うけどねン...
「...ふぅ」
...しかし...このアタシも少々崩壊しすぎたわね...色々と弱い所を見せてしまったわン...
認めてもらいたいのは事実だけど、心の中に閉まっておくべきだったわ...
「まあいいわ!!来なさい!!毎乃葉!!今の貴女だったら私で充分よ!!かかって来なさい!!」
玉兎は自信気に何か言っているわ...
...少々調子に乗っているわね...アタシが矯正してあげようかしらン?
「いいわよぉ...その代わり簡単に潰れないで欲しいわね」
アタシは力を放出させて彼女へ向かう。
...運命ね
この子がアタシに課せられた運命なら...アタシも全力を持ってやらないとね...
...そうですよね?主?
以上...
次回うどんちゃんと戦闘編
ではこれにて