東方天災手記   作:ベネト

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短い導入編...


存在意義

迷いの竹林にて、異変に加担した天逆美羽・天逆柚神を倒した博麗霊夢と八雲紫の2名...

 

彼女達は、夢想封印で発生した爆発により、深い煙が舞っている竹林を見つめている。

 

心の中では倒したと確信している霊夢ではあるが、相手は強力な能力を持つ天逆...そんな簡単に倒せるはずのない実力者である以上、気が抜けない状況が続いていた...

 

 

 

 

side霊夢

 

「...」

 

私達の前には、煙が舞っている竹林の光景...柚神の笑い声が聞こえなくなったから、手ごたえはあるけど油断はできないわ...

 

「心配する必要はないわ...確実に倒したはずよ...流石の天逆でも...貴女の術に耐えられるわけないもの...」

 

「それはそうだけど...」

 

次第に煙が晴れ始め、竹林の光景が映る。

 

 

目の前には、天逆柚神も美羽も消えており、その代わりにボロボロの姿で蹲っている、本来の彼女達の姿の天逆毎乃葉がいた...

 

「はぁ...はぁ...」

 

息絶え絶えだけど、左右の緑と青の瞳は鋭いまま私達も睨みつけている...気絶までは行かなかったみたいね...流石というべきかしら?

 

「あら?意外にも頑丈ね?直撃だったから気絶したと思っていたのだけど?」

 

「...美羽と柚神はアタシの半身達よ...完全に直撃した柚神の方はともかく...美羽の方は...ある程度余力があって良かった...ごほ!!」

 

毎乃葉は口に手を当てて咳き込む...流石の毎乃葉でも、私の夢想封印を直に食らえばこうもなるわね...

 

「頭は冷えたかしら?先に進んでもいいわよね?」

 

「...勝手にしなさいよ...敗者には構っている暇はないでしょう...」

 

毎乃葉は意気消沈でもしたのか...竹に腰掛けてキセルをつけてうつむいている...随分としょげているわね?それに...何だか自棄になっている気がするわ?

 

「霊夢?先に行くわよ?」

 

「...少し待って」

 

私は先に進もうとする紫を止めて、毎乃葉へと近づく...

 

 

 

 

「何?まだ何か用なのン?もうアタシは...これ以上何もしないわよ...」

 

「ここで燻っている暇はないでしょう?アンタも来なさいよ...今回の異変は嫌々だったのでしょ?このまま負けっぱなしでいいのかしら?」

 

私の言葉に毎乃葉は諦めたように笑みを浮かべている...

 

「勝つ見込みがないのよ...このアタシは...永琳様に逆らうことなぞ、永遠にできないのよ...あの方の能力で運命を変えられてしまった以上...アタシは抗う事なんてできないの...完璧兵器には程遠いわ...あの方に認められたことだけが...アタシの存在意義なのにっ...」

 

卑屈になっているわね...毎乃葉の主の能力は分からないけど、彼女がここまで諦めに入るとなると相当強力なものなのかしら?

 

「運命は変えられるわ...自らの未来は自分の手で切り開くことができるのよ」

 

「アンタはあの方を知らないわぁ...分かったように言わないで欲しいわン...」

 

ああ!!もう!!卑屈になったらなったで面倒ね!!

 

「アンタ!!完璧な兵器なのでしょう!!私はアンタの実力は認めているのだから!!」

 

「...!?...え?」

 

毎乃葉は驚くように私を見つめている?なんというか?少し元気になったみたいだけど?

 

 

 

 

「認めて...くれるの?」

 

「は?何をよ!?」

 

「アタシの事...認めてくれるのよね?」

 

何か様子が変わったわね?...何でか知らないけど...思ったことは言うべきかしら?

 

「...アンタの実力が認めているわ...これは嘘ではないわよ」

 

「...そう」

 

毎乃葉は後ろを向き、体を震わせた後、煙を吐いて私の方に振り向く...

 

「悪かったわねン...これからアンタ達を全力でサポートするわ...」

 

「...?ええ...頼むわよ」

 

「まさか...霊夢が説得するとは思わなかったわ...貴女にしては珍しい事をするわね」

 

紫が私の横に来る。

 

「気まぐれよ...次行くわよ...」

 

「気まぐれねぇ...確かに毎乃葉が入ってくれたら異変が楽になるけどね...」

 

私達が話していると、毎乃葉が竹林の奥に進み始める。

 

 

 

「永琳様の所へ案内するわン...ついてきなさい!」

 

さっきとは打って変わって毎乃葉がイキイキとしているわ...何がそんなに嬉しかったのかしら?

 

「足は引っ張るんじゃないわよ?」

 

「五月蠅いわねぇ...これからは本気で行くわ...アンタの言う通り、自らの運命は自分で開く...」

 

 

 

 

 

 

 

ぼご...

 

 

 

 

 

鈍い音がしたと思ったら...私達の前を歩いていた毎乃葉の姿が消え、そして変わりに大きな落とし穴が一つ出現する。

 

「いやあああああああああ!!!!へぶ!!!!」

 

そして...穴の中から毎乃葉の悲鳴と派手な落下音が響く...

 

...これが彼女が言っていた運命に逆らえないという事なのかしら?

 

私と紫は落とし穴の淵にしゃがみ込み中を覗く...

 

深い穴の中では、痛みに悶絶している毎乃葉の姿があった...

 

「...た...たす...」

 

「霊夢...」

 

「分かっているわ...これからも前途多難ね...」

 

これからの道が大変ね...

 

 

 




短いですがここまで...

ではこれにて

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