幻想郷の夜の空に浮かんだ歪な月が照らす竹林にて...
天逆と博麗霊夢と八雲紫の戦いの幕が開かれる...
天逆柚神の妨害戦術により技を封じられた博麗の巫女一行であるが、この状況を逆転できるだろうか?
side霊夢
「±符(ヴァイオレンス・ウェブ)!!」
美羽が薙ぎ払う動作をすると、衝撃波がこちらへと放たれる!
「っ!」
それを避けるが、衝撃波は辺りの竹を一直線に荒々しく破壊しながら飛んでいく...避けるのは簡単だけど、威力が高いわ...防いだりするのはやめておいたほうがいいわね...
「さてさて...どうする~?霊夢?」
私の横の空間が開き、紫が上半身を出す...
「どうするもないわ...彼女達を倒さないと先に進めないじゃないの」
「倒す以前に技が使えないと、どうすることもできないと私は思うわ...」
紫の言う通り、こちらの技が使えないのは不利な状況ね...
この状況を作り出している天逆柚神は、美羽の後ろで静観している...戦いに参加する気がないのかしら?
「あらぁ?狙いが甘かったわねン?」
「慢心しないで下さいよ?今はこちらが有利なのですから」
「分かっているわよン...ちゃーんと狙い撃つわ!そぉい!!」
美羽が再び衝撃波を放つが、私達はそれを再度避ける...
柚神に注意されているのにも関わらず狙いが相変わらず甘いわね...この程度なら何とかなるわ...
「この状況を変えるには柚神を倒すしかないわね...」
「なら!私に任せて!」
紫がスキマの中に消え、柚神の背後に現れて光弾を放つ!
「おっと!?」
紫の放った光弾は柚神の肩を掠める...狙いは良かったけど、ダメージを負わせることにはならないわね...
「むー!...なら!当たるまで狙い撃ちで!!」
「ちょ!!美羽!!!何とかしてください!!」
紫が追撃しようとするが、柚神は美羽の背後へと逃げて距離を取る...
「はいはい...分かっているわよン!」
美羽は紫に向けて衝撃波を放つが、紫はスキマの中へ避難してこちらへ戻ってくる。
「やっぱり駄目だったわ」
「でしょうね...」
やはり柚神を潰すことは難しいわね...本人も警戒しているし、悉く戦闘を避けようとする...戦闘に関しては美羽に任せっきりなのがありがたいけどね...
向こうを見ると美羽がキセルの煙を吐きながら、眉間に皺を寄せている...
「うーん...中々当たらないわね...効率が悪いわン...仕方ないわ...技を変えようかしら?±符(エアライド・ソニックブーム)」
美羽がスペルを宣言すると、彼女自身が光線の様に飛んでくる!
「さぁさぁ!!夜喪妓よりアタシの方が速いわよ!!」
「っ!!」
「...」
私達はそれを回避するが、何とか目で追える程度...さっきの攻撃よりも厄介だわ...
「ほらほらー!!追撃行くわよン!!」
美羽は更にスピードを上げてUターンして戻ってくる!!
彼女の動きを止めなくては!
「夢符(封魔陣)」
私は向かってくる美羽目掛けて大量のお札を放つ...
お札は、みるみるうちに美羽の体にまとわりつき、彼女の体はお札の弾丸と化している...
「...うっとおしいわね...はぁぁぁぁ!!!」
美羽は攻撃を中止して、お札を弾き飛ばす...やはり美羽相手を拘束するのは難しいわね...
「もらったわ!」
紫が彼女の僅かな隙を狙ってレーザーを放ち、美羽の肩にヒットさせる...弱い攻撃だけど、彼女は肩を抑えている...
「...ちっ!!」
「貴女相手だもの...隙をつくのは当然よ」
「フン...でもこっちだって...アンタらを捕まえたわ♪はぁ~♪」
ぶ...ぶぶ...
美羽が煙を吐くと、私達の周りの空間に歪みが起きる!?
その歪みは線状になっており、私達の周りを鳥籠のように幾重も取り囲んでいる!!
「...囲まれたわね」
「おほほほほ!!!このスペルは只の突撃ではないわ...アタシの高速スピードで裂けた大気の層が弾け飛ぶ無差別攻撃!ほらほら!ボーっとしていると...」
「...!?」
辺りを見回すが、逃げられる場所がない!!結界は封じられているし!!どうすれば!!!
「弾け飛んでしまうわよン!!!!」
美羽が叫ぶと辺りの空気の層が一斉に弾け飛び、大量の振動波が飛び出してくる!!
...ダメ...避けられない!!
大丈夫よ...霊夢...
「!?」
目を開けると、私は美羽の背後に移動していた!?美羽の視線の先には破壊つくされた竹林の地面の光景がある...さっきまで私がいた場所?
「ゆかりんを忘れてないかしら?」
「紫!」
私の後ろでは紫が抱き着いている...そう...彼女のスキマで移動されたのね...これは柚神の妨害スペルに封じられていないわ...偶には役に立ったわね...
「霊夢~!私をほめてー!」
「はいはい...良い子!」
紫の頭を軽く撫でると、美羽が私達の存在に気づき、ワナワナと体を震わせている...
「な!!決まったと思っていたのに~!余計な事で水を差さないでもらいたいわ!!」
「貴女達がそれを言うのかしら?妨害行為をしている以上...言われる筋合いはないわ」
「ぐぐぐぐ...ぐ!!!」
美羽は反論できなかったのか、ワナワナしているだけ...
「美羽!!いつまで時間を掛ける気?このままではいつまで経っても帰れないわよ」
遠くにいる柚神は飽き飽きとした表情で声を荒げており、美羽はそれに反応する...
「五月蠅いわね!!!アンタも協力しなさいよ!!」
「ワタシはこの維持で精一杯なのよ!!!」
何やら喧嘩しているわね...本人たちは自分自身なのに...こうしてみると、一人芝居をしているような錯覚を覚えるわ...
「全く...チームワークが良いようで悪いわ...」
「...」
「紫?」
紫の方を見ると、彼女はいつもの胡散臭い笑みを浮かべている...心なしか余裕が出ているみたいね?
「どうしたのよ?」
「ふふ...見つけたわ...彼女達の妨害戦術の穴をね...」
...戦術の穴?
柚神が妨害して、美羽が柚神に被害が出ないように立ちまわる戦術だと思うけど、どこにそんな穴があるというの?
「どういうこと?」
「まぁ...見てなさい...彼女が完璧ではないことを証明するわ...貴女にも協力してもらうわよ?」
紫は私にあることを耳打ちして、彼女達の方へと近づいていく...
「あら?何か良いことでも思いついたのかしらン?」
「この状況を逆転できる方法はないと思いますがね?」
「虚勢を張っているのも今のうちよ毎乃葉...貴女自身が分かっているのでしょう?この作戦の穴をね」
紫の言葉に彼女達の顔から笑みが消える...
「何を企んでいるのかしら?やはりアンタは油断ならないわ!消し飛ばせてあげるわ!!!」
美羽が高速で紫へと飛んでくる!
「今よ!!美羽を捕縛して!!」
「夢符(封魔陣)」
紫の言葉通り私はスペルを再度発動する!!
紫からの指示は...美羽の動きを少しの間だけ止めておくこと...紫が何を考えているか分からないけど私は私に出来ることをするまでよ!!
大量のお札は美羽を再度包み込んで彼女の動きを止める...
「またこれ!?うっとおしいわね!!!この程度アタシを止めることなんて...」
美羽は先ほどと同じようにお札を弾き飛ばす...
紫が至近距離にいることも知らずに...
「なっ!?」
「この作戦の弱点は美羽!貴女よ!!」
紫は美羽を背負い投げして、地面に叩き付ける!
「ごほ!!?...この程度でこのアタシが倒れるとでも...っ!」
美羽は体勢を整えようとするが、彼女の眼前にスキマが開かれる...
「ゼロ距離なら...貴方でも避けられないでしょう!!」
ばしゅ!!ばしゅ!!!
スキマから容赦ない光弾が発射され、美羽にクリーンヒットする!!
「ぐぁぁ...」
美羽はそのまま後ろ向きに倒れ、動かなくなる...
「美羽!!あのバカ!!!油断して!!!」
「残りは柚神のみ!!紫!!」
私は無防備な柚神へ追撃しようとするが、紫が手で制す...
「!?」
「これで私達の勝ちよ...毎乃葉」
勝ちってどういうこと?まだ柚神が残っているというのに!!
「...勝ち...って?」
「ぐ...ぐぅぅ!!!」
柚神は顔を真っ青にしながら爪を噛んでいる...何なの?妙に焦っているみたいだけど?
「どういうことよ...紫?」
「もう...彼女は詰んでいるのよ...変に小細工をするから自分の首を絞めてしまったのよ...策士策に溺れるとはこのことを言うのかしら?」
「小細工って...技の使用禁止かしら?それが何で...」
紫は溜息をつく...
「はぁ...鈍いわね...柚神は私達の技を封じるためにスペルカード(スペルジャマー)の維持を続けなくてはいけないの...攻撃役の美羽が倒れた後...彼女に攻撃手段はないわ...能力を解除しても、彼女1人では技を取り戻した私達に勝ち目はないわ」
「...あ」
...確かに柚神の奴...攻撃に参加していなかったわね...あれは戦闘に参加する気が無いのではなくて出来なかったのね...美羽が倒れた以上...彼女にこの状況を変える力が残っていないというわけか...
「ぐ...ぐ...」
柚神は目を泳がしながら爪を噛み続けている...必死にこの状況を変える方法を考えているみたいだけど...紫の言う通り詰んでいるみたいね...
「さぁ!!どうするのかしら!!散り際を決めなさい!天逆毎乃葉!!!」
「...」
紫の言葉に柚神は爪から流れる血を舐めながら俯く...
「本気を出していないとはいえ...このアタシが!!!またも敗北を決してしまうなんて!!!何てザマよ!!!あの方に認められた!!このアタシが!!!!」
柚神はスペルカードを解除し、彼女の周りにある画面が一斉に消滅する...
それと同時に私の体に力が戻ってくる...
「調子が戻ったわ」
「私もね...とりあえず...引導を渡す役目は霊夢に譲るわ」
紫は私を前に押す...
「屈辱よ...このアタシが...ここまで...あああ...あははは!!」
柚神は完全に自棄になっているわね...理由はあったみたいだけど、せめて...後が引かないように一発で終わらしてあげるわ!!
「神霊(夢想封印)」
煌めく光の弾が柚神に向かい彼女を包み込み...
「...」
彼女の笑い声が消えて竹林に静寂が訪れる。
次回をお楽しみに
ではこれにて