東方天災手記   作:ベネト

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戦闘導入編...


ザ・テリトリー

歪んだ月が照らす幻想郷...迷いの竹林では、朝が来るまで狩りが続行される...

 

紅魔館組を退けた睡煉・夜喪妓を見届けた毎乃葉は、永遠亭の近くでスコープを弄りながら笑みを浮かべている...

 

彼女はキセルの煙を吐き出し、スコープの電源を切って歩を進める...

 

 

 

 

 

side毎乃葉

 

「...中々の感じじゃないの!」

 

紅魔館組のレミリア・スカーレット・十六夜咲夜を降すとは、アタシの可愛い部下達も中々やるじゃない!!

 

少し危ない感じがあったけど睡煉!!良く陽動したわ!!!更に夜喪妓!!貴女の正確な狙撃も惚れ惚れするわ!!!この調子で他の奴らも倒してもらいたいわぁ!!

 

このまま狩りを行ってくれれば、このアタシが動くことなく異変は終了するわ!!...このまま...終わってくれれば...

 

アタシは懐中時計を取り出して時間を見る...

 

 

 

 

「でも...おかしいわね?」

 

あれから時間が、かなり経過したと思うけどぉ...月が...沈まない?この時間なら月が、あの場所にあることはおかしいのだけど?

 

 

この異変は月が沈むまで続行されるはず...幾ら経過したも沈まないとなると、こちらとしても異変を終えることはできないわ...

 

「おかしいわね?八意様がこんなミスを犯すはずがないわ...」

 

地上に堕ちても月の賢者だった八意様にミスはありえない...ということは第三者の妨害でも入っているのかしらね?

 

...全く余計なことをしてくれるわぁ...考える限り...月が沈んでしまったら、この異変の黒幕を見つけられないと踏んだのでしょうねぇ...余計なことをしてくれるわ...

 

「...事をうまく運ぶことなんてできるわけないわね...月の天才でもこうなるのだもの...」

 

やっぱり...このアタシが動く必要があるわね...

 

「前途多難ね...このアタシも本格的にやらないとねぇ...大丈夫...本気ではいかないわ...」

 

...今回は...これでいいわよね?

 

アタシは体を2つに切り離す...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side美羽

 

「...ふぅ...久しぶりにこっちの姿に戻ったわねン!」

 

アタシが目を開けると目の前にはもう一つのアタシ...柚神の姿が目に映る...

 

彼女は目を開いてスコープをハンカチで拭いている...

 

 

「アタシとしては...変わらないわ...一人芝居しているみたいになるわぁ」

 

...いつもとは違うアタシと同じネットリ口調...普段の敬語口調はどうしたのよン?

 

 

「いつものアレはどうしたのよン?アタシはともかくアンタは、あの方に女らしくしろと言われたのでしょう?」

 

「...失礼しました...流石のワタシも、毎乃葉から分裂する時はキャラがブレてしまいますのでね...」

 

柚神は口調を戻して笑みを浮かべる...

 

久しぶりな感じの所為で...柚神と話すのは少し変な違和感があるわ...彼女が言った通り一人芝居をしているような...ねぇ...

 

 

 

 

 

「...とりあえず...アタシらも動くわよ...流石にも睡煉達に全てをやらせるのは荷が重いしぃ...」

 

「そうですね...しかし...月が動かないとなると...やれる者も限られるはずでは?」

 

「...確かにねぇ」

 

時を操る能力を持った十六夜咲夜は睡煉達が排除したし...彼女の線は除外した方がいいわねン...

 

つまり!!!彼女以外の者が妨害をしているということ...残りの者で、こういうことが出来るのは大体絞ることができるわぁ!!

 

「つまり犯人は!」

 

「八雲紫ですか?確かに彼女なら...できるかもしれませんね」

 

「...何で先に言うのよぉ!!アタシがせっかく考えてたというのに!!!」

 

...でも柚神と意見が一致したということは、彼女である可能性が非常に高いということ...なら優先的に潰していかないとねン!!

 

「...じゃあ...夜喪妓の奴に連絡をお願いねン!」

 

「はいはい...分かっていますよ」

 

柚神は、空間にモニターを展開して夜喪妓につなげ、しばらくするとモニターに夜喪妓の姿が映り始める...

 

 

「聞こえますね...夜喪妓」

 

柚神が語り掛けると、モニターに映る夜喪妓も反応を示しているわぁ...

 

「む...どうした?同志毎乃葉!?何かあったか?」

 

彼女はライフルを担い通信機を更に耳に近づけている...

 

...流石の彼女でもアタシが今、美羽・柚神になっていることは気づいていないわねン!

 

「その名は現在のワタシの正式名称ではありませんよ?」

 

「...その口調?同志柚神?...なら!今は体を分けているのか...」

 

彼女はキセルに火をつけ、その顔は懐かしむような表情を浮かべている...

 

「懐かしむのは後ですよ...残念ながら戦況が変わりました...すぐに体勢を整えてください」

 

「...時が進んでいないのだろう?分かっている...犯人は私の方で片っ端から打ち抜けばいいのだからな...」

 

「犯人の目星はついていますよ...この時間を止めているのは八雲紫...貴女の役目は彼女を撃ち抜くことですよ」

 

「ほう!ターゲットが分かったみたいだな...で?どうする?あの妖怪賢者の相手となると流石にも睡煉のバックアップはできなくなるが?」

 

夜喪妓は眼帯をずらして眼をこする...

 

「構いません...睡煉に伝えてくださいな...ワタシ達の役目は夜明けまで、この状況を維持することですからね...」

 

「ああ...伝えておく...そっちの指揮は任せた...私の方も次のお客さんの相手をしなくてはいけないからな」

 

通信が切れる...

 

...次のお客さんねぇ...まぁ...夜喪妓なら問題ないわ...

 

独りで国家転覆を謀ったのだもの...彼女を倒すなら国1つでも持って来なさいよ...

 

 

「...とりあえず...夜喪妓は大丈夫ですね」

 

「なら...アタシらはこの周りを警戒するわよ!夜喪妓がある程度やれれば、この戦況も変わるってものよン!」

 

アタシは拳を打ち鳴らし、柚神は時計を見て頷く...

 

「ええ...早急に終わらせましょう...大丈夫ですよ...アタシにできないことはないわ」

 

「...分かってる」

 

アタシ達は獲物を探すために竹林に歩を進める...大丈夫...よね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻...

 

竹林から10km離れた幻想郷の草原...

 

その草原に生えている巨木の頂上には、天逆の部下の一人である夜喪妓がスコープのついていないライフルを構えて迷いの竹林の方向を見ていた...

 

「とりあえず...睡煉に連絡を...」

 

彼女は通信機の電源を切り、竹林に向けて弾丸を数発打ち込む...

 

それを終えた彼女は、キセルの火を吹かす...

 

「...とりあえずこれで良い...そろそろ出てきたらどうだ?私は逃げも隠れもしないが?」

 

彼女は後方に向けて叫ぶ...

 

「...大きな力を感じたと思えば」

 

「油断しないで霊夢...」

 

夜喪妓の後方には、彼女のターゲット、八雲紫+博麗霊夢がいた...

 

 

 

 

 

side霊夢

 

私の目の前には、緑色の軍服・灰色のマントに身を包み、片目に眼帯をつけた長い銀髪の女がいた...

 

紫が言っていた怪しい竹林に向かう時、突如銃声が聞こえたからこの場所へ来たんだけど...ビンゴと言うべきかしら...深夜にこの場所で屯している以上...明らかにこの子は怪しいわね...

 

「アンタがこの歪んだ月の黒幕かしら?」

 

「いえ...霊夢...黒幕ではないわね...その協力者と言うべきね」

 

紫は私の言葉に訂正を入れるが、彼女は気にすることなく高笑いをする...

 

「ははははぁ!!!こちらから出向く必要がなくなったというわけだ...感謝する!妖怪の賢者+α!」

 

目の前の子は高笑いをしながら、手にした猟銃を担ぐ...

 

私を+αって何よ?紫のおまけではないんだから...

 

「出向くってどういうことよ?」

 

私の言葉に紫は私の前に出る

 

「...そのままの意味でしょうね...もっとも彼女の目的は私みたいだけど」

 

「...紫が?」

 

「その通りだ!妖怪の賢者!貴様がいては...この異変がスムーズに進まないのでな...この場でリタイアしてくれると私達としては助かるのだ...」

 

...スムーズに進まない?...まさか...私達の時止めがバレているというの?

 

「...それを教えた者がいるのかしら?」

 

「...何故そう思う?」

 

「...貴女の服装よ...とある天狗とよく似ているわ...それに、その天狗の部下と貴女から感じる力が同じなのも引っかかるわ...貴女...毎乃葉の部下なのでしょう?」

 

「紫それって!!」

 

...あの子が毎乃葉の部下?この部下が異変に関わっているということは...毎乃葉が今回の事に関わっているというの!?...彼女が異変に関わるなんて!!

 

「毎乃葉が?...嘘よね?」

 

私の言葉に彼女はキセルを吹かしながら、せせら笑う...

 

「バレるのも時間の問題だ...情報を渡しても別に構わないだろう...確かに、この異変の参加は毎乃葉が決めたことだ...そして妖怪の賢者の言う通り...私は同志毎乃葉の部下...第0部隊隊員ナンバー1夜喪妓だ...」

 

夜喪妓と名乗った女性は、私達をジッと見つめている...明るい橙色の隻眼は、私達を逃がさないように捉えている...何か彼女の目は危険だと私の勘が告げているわ...

 

 

 

 

「地位も名誉も要らないと言っていた彼女が、この異変に参加するメリットが無いと思うけど?」

 

「メリットなぞ存在しない...むしろデメリットだらけだ...今回の件は同志毎乃葉の主の師匠の命令なのだからな...奴も従うしかないということだ...」

 

夜喪妓は不服そうな顔をする...

 

「貴女も不服みたいね...」

 

「...私達も従うのは反対だ...だが仕方あるまい?将の手となり足となるのが、駒である私達の役目だ...」

 

夜喪妓は私達に銃を向ける...

 

「さて...話は終わりだ...ここで退場を願おうか!」

 

ダーン!!!!

 

彼女は私達の足元に威嚇射撃をする...

 

「話し合いでは解決しなそうね」

 

「...時間の無駄だ...貴様らまとめて相手をしてやる...さっさと来るがいい」

 

夜喪妓は濃厚な殺意を体から放出させる...

 

私と紫を同時に相手するなんて...自信過剰かと思ったけど...この殺気...場数を踏んだ奴特有の気だわ...

 

「霊夢...油断は禁物よ...毎乃葉の部下とはいえ...実力が未知数よ」

 

「分かっているわよ!」

 

私達は戦闘態勢を取り、夜喪妓へと向かう!

 

 

 

 

 

 

一方竹林にて、

 

夜喪妓と別行動することになってしまった睡煉は、地面に打ち込まれた弾丸を見て溜息をついていた...

 

 

side睡煉

 

(私・別件やる・お前・勝手にやれ)

 

「...随分と...抽象的な...」

 

弾丸文字を見て私は溜息をつく...つまり...夜喪妓さんは他の仕事が出来たから、私とは別行動するという意味で受け取って構わないのですかね?

 

しかし...これは少し痛いですねぇ...別行動するとなると私が苦戦を強いられてしまいます...

 

 

 

 

「あーあ...紅魔館組を退けた後...次どうすればいいのでしょう?異変の加担も楽ではないです」

 

「紅魔館組を退けた?異変の加担?どういうことだ?」

 

「うぇ!?」

 

後ろから話しかけられ、心拍数が上昇です!!...私はそっと後ろを向く...

 

「お前睡煉だよな?何で毎乃葉の部下のお前がここにいるんだ?」

 

「それよりも...異変の加担ってどういうことよ?」

 

そこには、いつぞやの白黒魔女といつぞやの七色人形遣いの姿...ここにいるということは...異変の解決に来たということですね!ちくしょうー!!

 

...というより...今の独り言を聞かれたー!!!...いや...まだ白を切ることはできるはず!!

 

「あはは...何の話だかさっぱりですねー!!」

 

「いや...自分の言葉には責任持ちなさいよ...異変の加担ということは、あの歪んだ月に何か関わっているのかしら?」

 

「毎乃葉の部下であるお前がか?...まさかとは思うがお前の上司も関わっているんじゃないのか?」

 

2人から怪しい目で見られる!!これじゃ隠しきることがー!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

side魔理沙

 

「こいつ...怪しいな」

 

私達は目の前で、顔を青くし冷や汗を掻きながら目を泳がせている睡煉を観察する...

 

こいつがこの異変に参加したというのは、俄かに信じられねえが...さっきの独り言は嘘を言っているようには見えない...

 

歪んだ月...アリスの話を聞く限り、幻想郷中の妖怪達が月に中てられて狂暴になる可能性があるらしい...

 

それを止めようとして、怪しいこの竹林に来たところ、誰もいない竹林でブツブツ言っているこいつを発見したというわけだ...

 

こいつが異変に関わっているとなると、こいつの上司である天逆毎乃葉も異変に関わっているんじゃないか?

 

「毎乃葉もこの異変に関わっているんだよな?」

 

「あははは...」

 

睡煉は、顔を青くしたまま俯く...

 

これは肯定したということでいいな...毎乃葉が後にいるとなると事の重大さが分かってくるぜ...

 

私はアリスとアイコンタクトを取る...

 

「...あの天逆がいるとなると...この異変は少し苦労するわね」

 

「分かっている...とりあえずここにいるコイツを片づけて奥に進む...」

 

 

 

 

「あーあ...失言に気を付けていたんですがねぇ...」

 

「!?」

 

突然睡煉が顔を上げて気怠そうな顔をしながら、私達の方を向く

 

「確かに貴女達の言う通り...天逆様と私達第0部隊は、この異変に関わっています...私達としては不本意な参加ですけどね...」

 

「...不本意?じゃあ何の為に!?」

 

「答える必要性がないです...私もお仕事に入れせてもらいますよ...天逆様からここに来る奴らを撃退するように言われていますのでー!」

 

睡煉は、手術刀を持って私達を威嚇する...

 

「話は平行線ね...」

 

「だな...なら...力尽くで話してもらうしかないな!」

 

私達は戦闘態勢を取り、睡煉へ向かう!

 

 

 




次回戦闘!

ではこれにて

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