東方天災手記   作:ベネト

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霊夢に敗北した美羽のお話です



油断大敵

博麗霊夢に敗北した天逆美羽は射命丸文に連れられて妖怪の山へと帰還する...

 

ダメージが大きかったのか?彼女は目を覚ますことなく深夜まで時を刻む...

 

 

 

 

side美羽

 

「...ん」

 

目を開けると...長年見慣れた無機質な牢獄の風景が目に映る...

 

身を起こして記憶を整理すると、忌々しい現実がにじみだしてくる...

 

アタシは...あの巫女に負けたということ...

 

能力を使っていないとはいえ、地に伏したのだから...

 

この完璧だったアタシが敗北...

 

 

「...」

 

人間に負けたということは悔しいけど...あれは完全な敗北ではない...

 

あの子の邪魔さえ入らなければこんなことには!!

 

 

 

 

 

 

 

「柚神!出てきなさい!!」

 

アタシが暗い牢獄に向けて言い放つと声が響く...

 

(ええ...畏まりましたとも...しかし...ワタシは...貴女の為を思ってやったことなのですが?)

 

アタシの胸が光りだして牢獄の隅に光が照射される...

 

その光は人型へと変化していく...

 

灰色の長い髪にアタシと同じ黒の軍服...

 

緑色の目に片方の目にはスコープをつけており、彼女はアタシにお辞儀をする...

 

 

 

 

 

 

「...天逆柚神...参りました...おっと!スコープに曇りが」(あまさか ゆうがみ)(通り名:パーフェクト・ミリタリースタッフ)

 

柚神はスコープを取り外して悪びれもなくハンカチでそれを磨いている...

 

「反省することはないの!?アタシの戦闘を邪魔して!!」

 

彼女はスコープのレンズを光に透かして眺めている...

 

 

 

 

 

 

「...反省?いえ?ワタシは貴女がやりすぎないように止めただけです...落ち度などありません、昔と変わらず手加減を知りませんからね...ワタシがしっかりしないと貴女は破滅しかねませんから」

 

「アタシが...破滅ですって!!?」

 

「...ええ...幻想郷の守護者である、博麗の巫女を貴女が相手するとなると幻想郷が滅びかねません...ですからワタシが止めたまでです...」

 

柚神はスコープをつけてアタシを見つめる...

 

「後先のことはよく考えた方がいいですよ?貴女の力は強大すぎる...」

 

「小言はいいわ!貴女の力の方もどうだと思うけどね!!」

 

柚神はハンカチを出して再度スコープを磨く...

 

「やれやれ...困りますね...」

 

昔からの付き合いだけど、どうもこの子は気に障るわ...

 

「...とりあえず貴女はこの状況を理解しているのかしら?」

 

「ええ...体を通して大体の話は頭に入りました...説明は要りませんよ?」

 

「それならいいけど...」

 

まぁ、頭は良いし余計なことは言わなくともいいかしら?

 

 

 

 

 

柚神は今度は部屋を見回す...

 

「...以前から気になっていたのですが...掃除してます?」

 

「うっさい!!!乙女の事情に詮索するんじゃないわ!!」

 

「...お互い乙女という年は過ぎましたが?」

 

「ぐぐぐっ!!柚神~!」

 

柚神は薄ら笑いを浮かべて壁に寄りかかる...

 

「...しかし...今後の貴女の任務はこの幻想卿での荒事に着手することになりますね...体はなまっていませんか?」

 

「...制約がかかっているけど問題はないわ...どんな問題でもアタシにかかれば...」

 

「油断大敵です」

 

「は?」

 

柚神は真剣な面持ちでアタシを見つめる

 

 

 

 

 

「...先ほどの博麗の巫女との闘いを見ましたが、これがもし本当の殺し合いなら貴女は死んでいますよ?長い封印で勘が鈍ったのですから慢心は控えませんと...」

 

「貴女が邪魔しなければ!!」

 

「ワタシが着手する前に戦いの結末が決まっていました...貴女の負け...それを認めてください...」

 

「能力に制約が!!」

 

「...自身の力を過信しない!」

 

「...」

 

...負け...負け...負け

 

アタシの負け?

 

 

 

 

 

 

 

side柚神

 

「そして...その左腕も本調子ではないのですし...もう少し控えめに行動を...」

 

「...」

 

黙り込んでしまいましたね?少し小言が過ぎましたか?

 

「ふぅ...これ以上は何も言いませんよ?自身の敗北をちゃんと受け止めてください...」

 

牢獄の外を見ると誰かがこちらにやってきますね...

 

「ふむ...」

 

空間にホログラム画面を映し出すと、こちらにやってくるのは天狗の文の姿が見受けられる...

 

「まだ...正体を知られるのは宜しくありませんね」

 

能力を発動してワタシの体を透明にしてその場をやり過ごす...

 

 

そして牢獄に文が入ってくる...

 

 

「...美羽?目が覚めましたか?驚きましたよ?まさか霊夢さんに挑んで敗北するなんて...」

 

文が美羽に近づき、様子をみると美羽の方は体を震わせる...

 

 

 

 

 

 

 

「...うっく!!」

 

「あや?」

 

「ぐやじいよ!文ー!!何でアタシが人間に負げるのよー!!」

 

(...うわ)

 

まさかの大泣き...余程負けたのがショックだったのでしょうか?

 

全く...これがワタシと...

 

 

(...文に任せましょう...とりあえず...データの収集でもしましょうかね)

 

美羽に任せるとなると些か不安が残ります...

 

ワタシに出来ることはワタシがやることにしましょう...

 

その場を後にして外へと向かう...

 

屋敷の外を出ると真っ暗な空が眼前に映る...

 

空に瞬く星たちはワタシと深淵の闇に光を照らす...

 

「...」

 

幻想卿ね...

 

幾多数多の犠牲の下に誕生した楽園...

 

うまくやっていけるといいのですがね...

 

 

 

「...杞憂ですかね?とりあえず一日使うとしますかね」

 

暗い森の中をワタシは歩を進める...

 

 




新作つくるのも気晴らしになりますね...

ではこれにて

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