東方天災手記   作:ベネト

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異変へ...


第5章:4thミッション 侵略を阻止セヨ!
歪んだ月


竹林での話し合いから1週間が経過した幻想郷...

 

時は夜になり始めており月が出ようとしている...

 

今夜は月に一度の満月...妖怪が活発になる日である...

 

妖怪の山の牢屋では、天逆毎乃葉が恨めしそうに月を見上げている...

 

 

 

side毎乃葉

 

「とうとう...この日が来てしまったわねぇ」

 

窓の外の景色は幻想郷の夜の景色と、空に浮かぶ巨大な満月...とうとうこの日が来てしまうとは、覚悟していたつもりだったけど...決心が鈍るわぁ...

 

「はぁ...このアタシが何でこんなことを...」

 

「らしくないな...昔のお前らしくない」

 

「はぁ?」

 

キセルに火をつけて溜息をつくと、夜喪妓の声がして後ろを振り向く...

 

彼女はライフルを持ってアタシに向けている...

 

「...何よ?物騒な物をしまいなさいよ...アタシだってセンチになることはあるわ」

 

「気づかないお前が悪いのだ...私が引き金を引いていたら死んでたぞ?...昔のお前は、ドが付くほどの高慢で自信過剰だったはずだ...何故そこまで弱くなったのだ?」

 

...何か軽くディスられた気がするけど、彼女が言っていることは事実...アタシとしても...それは自覚はしているわ...

 

「...否定はしないわ...確かに昔みたいに考えなしに行動はしなくなったわね...色々と経験すると少し保守に入ってしまうのよねぇ」

 

「経験というのは敗北の事か?...例の博麗の巫女と言うやつにか?確かにお前が人間にやられたというのは俄かに信じられん」

 

「...まぁ...それもあるけどね...他にも色々と大切なモノも増えてしまったのよン」

 

...夜喪妓の言ったことも、もっともだけど他にもあるわ...

 

昔より...大切なモノが増えてしまったのよね...もう例外なく失いたくはない...命であれ、信頼であれ...ね...かなりやり辛いのよ...今回のお仕事はね...

 

 

 

 

 

 

「夜喪妓...さっさと準備なさいよ...早く終わらせてとっとと帰るわよ...」

 

「...本当にやるのか?それならいいのだが」

 

夜喪妓はライフルを下げてマントを翻す...

 

「ええ...今回のお仕事は、ボランティア...組織の事は関係ないから好き勝手に出来るというものよ...アンタも腕は鈍っていないでしょうね?」

 

「心配はない...私は私の仕事をするだけだ...」

 

彼女は眼帯をずらす...

 

「やる気のようね...じゃあ永遠亭に行くわよ...睡煉の奴も呼んで頂戴」

 

...こうなったらやるしかない...後悔はしないわ...

 

アタシ達は、永遠亭へ向かう

 

 

 

 

 

 

幻想郷の夜時間...

 

アタシ達は、永遠亭に辿り着き内部へと入る...

 

居間には、八意永琳様・そして蓬莱残輝夜様の2名と今回の主役である玉兎がいる...

 

輝夜様はアタシらを見て退屈そうな目で見つめており、玉兎の方は怯えた目でアタシを見つめている...

 

「時間通り来たのね...」

 

「ええ...約束通りには...で?これからどうしろと?少なくともワタシ達は知恵は出しませんが?」

 

永琳様は外に出て夜空を見上げる...

 

「...月の連中が入ってこれないように、こうするのよ」

 

彼女は天に向けて手をかざす...

 

特に変化のない事にアタシらは、それを漠然と眺めることしかできずにいた...

 

「...さっきからあの方は何をしているのでしょう?」

 

「...さぁな...茶番はさっさと終わらせてもらいたいのだが」

 

「少なくとも無意味なことではないでしょう...アタシらをわざわざ呼んだわけだしぃ...それ相応あるはずよン」

 

アタシは皆から少し離れてキセルに火をつける...

 

正直...物事を説明してくれないとアタシも動けないの...悪戯に時間を消費するのはアタシとしても不本意よン...

 

アタシはボッーと月を眺める...

 

 

 

 

 

 

「...げほ?」

 

月の異変に気付きアタシは煙でむせる...

 

...目の前の満月は...完全ではない...少しだけど欠けており、完全な満月とは呼べない物になっていた...

 

...確か今夜は満月よね?さっきまでは...こんなものではなかったはず...何でアタシの目には...変に欠けている月があるのよ?

 

「気づいたかしら?これで月の者達の進行を防ぐことが出来るわ...これを維持して夜明けまで待つだけよ...」

 

永琳様はアタシを見つめた後に淡々と答える...このヒトは何を考えているの?この幻想郷でこんなことをしたら大問題よ!

 

「!?...何を考えているのよ?こんな事をしたら、すぐにここの連中が気づくわ!」

 

「何をいきり立っているの?」

 

「やることのリスクが釣り合わないのよ!!貴女の目的は月の連中の進行妨害でしょうけど!この世界の連中がすぐに飛んでくるわ!!月を弄ったら妖怪も活発になるし!!デメリットしかないわ!」

 

「そのために貴女達がいるのよ...夜明けまでこの状態を維持してくれればいいの...」

 

「アタシらにそれを止めろというの!?」

 

「貴女ならできるはずよ...完璧な兵器なのでしょう?」

 

「ちぃ!!ぎぎぎぃ!!!」

 

...このアタシがここまで良いように使われるなんてぇ!!!何という屈辱よ!!...でも...断ることができない!!!

 

「爪を噛むのは行儀が悪いわよ...」

 

「黙ってくださいぃ...今すごい葛藤と戦っているのよン」

 

永琳様に背を向けてアタシは思考を開始する。

 

 

 

 

とりあえず...異変は始まってしまったし止めようがないわ...これを朝まで維持となると長丁場は確実ねぇ...

 

満月が歪んだことにより、妖怪の活発化・狂暴化は避けて通れない注意事項ね...まぁアタシらには問題のない事だけど...

 

問題は...幻想郷の住民は確実に異変に気づくでしょうね...どれくらいくるか大体は分かるけど確実な事ではないわ...

 

①博麗神社の巫女こと博麗霊夢...

 

幻想郷の巫女であるから、確実に異変に関しては鼻が利くはず...あの子と戦うとなると油断は絶対にしてはいけないわね...

 

②霧雨魔理沙

 

2つ前の異変ではお世話になった子ねぇ...咄嗟に何をしてくるか分からない以上油断はできないわぁ...油断した所為で酷い目にあったわ...

 

③八雲紫

 

妖怪の賢者・幻想郷の母と呼ばれている妖怪...100%こいつの出陣は確定ね...更に式神の八雲藍も来るから一番厄介な部類になるわ...

 

アタシの左腕が使い物にならなくなったのも、こいつらのおかげだし...絶対に油断はできないわぁ!

 

④紅魔館一同

 

吸血鬼事...レミリア・スカーレット...確定ではないけど、来る可能性があるわね...夜の時間だし彼女が動ける絶好の環境ねぇ...更に御付きのあの時を止めるメイドも来そうだし、面倒だから相手したくないわ...

 

⑤白玉楼

 

西行寺幽々子とその庭師のコンビも来る可能性が非常に高いわ...白玉楼に関してはデータが集まり切っていないのもあるから安易に戦うことはできないわ...

 

 

 

 

...結論...全て油断は禁物ねぇ...

 

「はぁー...アタシが何をしたというのぉ」

 

「どうする毎乃葉?共に行動するか?」

 

夜喪妓が意気込んでいる...何だかんだでやる気にはなったみたいだけど、この子はどっちかというとアタシより睡煉と共に行動した方が強いと思うのよね...

 

「アンタは睡煉と共に行動...そしてアタシとは別行動でお願いするわ」

 

「...ああ...了解した」

 

「夜喪妓さんとですか...足を引っ張らないように気を付けませんと!」

 

「じゃあ...早く行きなさい...地形を理解した方がアンタ達にとっては利点にはなるでしょう?」

 

2名は頷いて、竹林の中へ消える...さぁて...アタシもボヤボヤとしてられないわ

 

「...悪いわね」

 

それを見送った後、永琳様から声がかけられる...

 

「悪いと思うなら...こっちのことは完璧にこなして頂戴!」

 

「分かったわ...」

 

永琳様から離れてアタシも準備をしに竹林へ向かう...

 

 

 

 

「全く...何でこんなことになったのかしらン?」

 

キセルの火を再点火して、アタシは夜空に浮かぶ月を眺める...

 

...完璧な満月ではない歪んだ月...まるでそれはアタシを示しているのかしらぁ?

 

アタシもまた...完璧ではない兵器だものね...

 

 

「...今夜は程々にやるわ...大丈夫よね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃...博麗神社...

 

同時刻...その神社の巫女こと博麗霊夢は布団の中で眠りについていた...

 

異変の事は全く気付いていない彼女ではあったが...とある者がそれを許さなかった...

 

空間が割れて中から鍋とお玉を持った手が現れる

 

「霊夢ー!!異変の時間よー!!起きなさいー!!」がんがんがんがん!!

 

「...」

 

けたたましく鳴る騒音...流石の彼女も寝ることが出来ずに身を起こす...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「五月蠅いわー!!!」

 

「うぎゃああ!!」

 

彼女が放った光弾はスキマを突き抜けて音の発生源へと命中する...

 

 

 

side霊夢

 

「はぁ...何よ...一体!」

 

私はスキマに手を入れて中から黒焦げになった紫を引きずり出す...

 

「れ...霊夢...ゆかりんは...只起こそうとしただけで」

 

「普通に起こしなさいよ!!普通に!!」

 

紫から手を離し、私は寝間着から普段着へと着替える...

 

さっき紫は異変だといっていたけど...こんな夜に何が起きているというのよ!

 

「はい!これで満足!?で?何の異変が起きているのよ!」

 

「...あれよ」

 

紫は外を指さす...

 

そこには、神社から見える巨大な満月があった...しかし寝ぼけた頭でも違和感に気づくことが出来た...

 

 

「何よこれ?」

 

その月は淵が削られ歪んだ満月となっており、いつもの満月とはかけ離れていた...

 

紫は力なく答え始める...

 

「はい...これが異変よ...このままでは幻想郷中の妖怪が狂暴化するのは目に見えているわ...早急に対処しないと」

 

...確かに紫の言う通り...この状況は不味いわ...只の愉快犯か...それとも別の目的があるか...今回の目的が分からないわ...異変の首謀者を探すとなると骨が折れるわね...

 

「...とりあえず月が出ているうちに解決できるかしら?」

 

「ふふ...こんな異変...夜を止めてでも今夜中に解決するわよ」

 

紫は空間に術をかける...

 

「今夜中ね...?」

 

突如...毎乃葉の顔が頭に浮かぶ?何で彼女が思い浮かぶのよ...

 

「どうしたの?行くわよ?」

 

「...ええ...何だか嫌な予感がするわ」

 

 

私達は眠い目を擦りながら神社を出る...

 

 




異変開始です

ではこれにて

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