妖怪の山を後にした、天逆一行は...夜喪妓が先導の下、とある場所へとたどり着く...
そこは幻想郷の名所の1つ...広大な竹林が生い茂るところである...迷いの竹林...
彼女達は、その竹林の入り口に立つ...
side毎乃葉
「ここだ...ここに奴がいる!」
夜喪妓は目の前の竹林を指さしながら、キセルを咥える...
まさか...あの人がここにいるとは、アタシとしても予想外ね...とっくのとうに、地の果てまで逃げ切っていると思ったいたのに...
「ここにあの人が...忌梗の仇です!!夜喪妓さん!!中の案内をお願いします!!」
睡煉は意気込むが、それに対して夜喪妓は浮かない顔をしている...
「...いや...皆で探そう?私としても...この中の構造が分からないんだ」
「どういうことよ?アンタの目なら...こんなところ迷うはずないじゃないの?」
アタシの言葉に夜喪妓は目を反らす...
「...ここは空間が歪んでいるとしかいいようがない...どういう仕掛けか分からないが、同じところをグルグル回ってしまうんだ...長い間同じ景色を見てきたんだ...もう一人で彷徨うのは嫌だ...」
夜喪妓は泣きそうになっている...
御気の毒ね...長い年月竹林で遭難していたみたいだし、彼女の精神的ストレスは計り知れないわね...
「...ならアタシが先導するわ...ちゃんとついてきなさいよ」
「え?大丈夫ですか?」
睡煉が心配そうな声を出すが、アタシには問題ないことね...
「...大丈夫よ...空気の流れがおかしいわね...辿っていけばどこかしらに着くでしょう」
アタシ達は竹林の中へと入っていく...
仮に夜喪妓が言っていた通り、あの人がいたら...アタシはどうすればいいのかしらね?過去の恨み言の一つでも言えば良いのかしら?
2時間後...
竹林を進んでいくと、ある民家へたどり着く...
一般的な和装建築ね...しかしこんなものが何でこんな辺鄙なところにあるのかしら?
「ここかしら?」
「ああ!間違いない!!私の目はあいつを捕らえている!!奴はこの屋敷にいるぞ!」
「忌梗の仇ですよ!」
夜喪妓と睡煉は意気込むけど、アタシはやる気が出ないわね...
「やり辛いわ...」
古風な屋敷みたいだけど、夜喪妓の言う通り中から犇々と感じるわ...嫌なあの気をね...
「...とりあえず中に入りましょう...最初は話すだけに留めておけば...」
中に入ろうとすると、中からとある人物が出てくる...
「あ...」
中から出てきたのは、薄紫色の長い髪をした女の子...
紺色のブレザーに...頭から生えた長いうさ耳があるわね...これには見覚えがあるわね...地上のウサギではないわ...
「はぁ...何で玉兎がここにいるのよ」
「ひっ!」
玉兎はアタシを見るなり、怯えた表情をして後ずさりする...
「ま...まさか!追手がもう来ているの!?いやああ!!」
そのまま玉兎は、屋敷の中へと逃げていく...
「あらら...逃げてしまいましたね?」
「敵前逃亡は死あるのみだが?」
睡煉は笑い、夜喪妓は不服そうに煙を吐く...
大方...夜喪妓の殺気に気づいて逃げたという感じかしら?...でもそれだけでは無いみたいね?追手とか言っていたし何に怯えているのだろうか?
「...中へお邪魔しましょう?会って話さないと...」
びゅ!
風切り音を感じアタシは飛んできた物を手で弾き落す...
「同志毎乃葉!」
「大丈夫ですか!?」
「ええ...直撃はしなかったわ」
弾いた物を見ると、そこには矢が1本地面に刺さっている...
ちょっと反応が遅れたら危なかったわね...確実に頭狙っていたし...懐かしきかな...あの時の事件以来じゃない
「久しぶりだというのに...随分な挨拶ですね...八意××様...いえ八意永琳様と言った方が宜しいかしら?」
屋敷の方を見ると、そこには長い銀髪をして赤と青の衣装を身に纏った女性がいた...
八意永琳...あの時と変わらないわ...このヒトの事は忘れることはなかったわね
「...まさか貴女達がここへ来るなんてね」
彼女は口を開くが、殺気を収めるつもりはないみたいね...悲しいわね
夜喪妓の方を見ると、怒りで顔を歪めている...
「この反逆者が!!同志に向けて矢を射るとは!!」
「落ち着きなさい夜喪妓...アタシが何とかするわ」
夜喪妓を手で制し、アタシは永琳様の方へ向かう、彼女は再度矢を振り絞っている...
「...それ以上近づいたら貴女達でも!」
何かを警戒しているのかしら?アタシだけではなく、部下たちの方も含まれている?
さっきの玉兎も...アタシ達に酷く怯えていたし、別の何かに警戒しているのかしら?
「...月の報復でも恐れているのですか?」
「...それで貴女達が来たんでしょう?」
永琳様は、矢を向けたまま言い放つ...
ビンゴね...今更...月の連中が動くわけないじゃない...
「ふふ...ご安心を...ワタシ達は、あの事件以降、除名処分になってしまいましたので...組織とは関係はないのですよ」
「...除名処分?」
「ええ...任務の失敗により、第0部隊は壊滅...生存も困難だと判断された次第です...元々必要とされてませんでしたし...」
「生存困難?...そういえば...第0部隊は4人編成だったはず...1人足りないわ」
永琳様はアタシ達を見回している...誰の所為で、こんなことになっているか分かっていないみたいね...
「忌梗は殉死しました...あの時の爆発によってね...」
「死んだ?...そんなはずは...」
何やら信じられないような顔をする彼女だが...ここまで鈍いとは驚きよ
「ええ...今回は...あの時の恨み言の一言でも言おうとして、ここまで来た次第です...そうでしょう?八意永琳様?」
side永琳
「恨み言ね...」
目の前にいる毎乃葉は、笑みを浮かべながら、こちらへと近づいてくる...弓に力が入るけどまだ放つことはできない...
表情からは敵意を感じはしないけど、彼女の能力は自分の心も隠蔽できる物...油断はできないわ...
「同志!私達も助力するぞ!」
「必要だったら動きますよー!」
彼女の後ろにいる部下も彼女ほどではないけど危険に変わりないわ...
連続殺人鬼と国家転覆は謀った者だもの...注意しなくては...
「...貴女の恨み言は何?」
「ええ...ありますよ?言いたいことは山ほどありますがね」
毎乃葉は、インカムのマイクを弄っている...何気ない動作だけど油断できない...
「...まず1つ...忌梗の死について...それに関しては許すことはできません...何回謝っても許しません...」
「...彼女が死んだのは予想外なの...でも言い訳にはしないわよ」
「2つ目...ワタシの部下も傷つけたことは許すことはできません...死にはしませんでしたが...長い年月苦しんだ者もいます...」
「...否定しないわ」
彼女は3本指を立てて、笑みを浮かべる...
「3つ目は...あの方の期待を裏切ったこと...何故咎人に手を貸した?何故あの方の心を踏みにじった!?」
声が乱暴になってきたわね...そうだ...この子はあの子の...使用人だったわね...
「...私が決めたことだもの...それに他の子に迷惑はかけたくなかったからよ...」
「...」
毎乃葉は次に言う事を考えているのか、こっちを見たまま沈黙する...
まだ言いたいことは沢山あったでしょうに...一番被害を被ったのはこの子だから...
「...貴方にも済まないとは思っているわ...私をどうしたって構わないわ...でもこの先へは絶対に進ませないわ...」
「貴女をどうしようと...如何にもなりません...あの方は貴女を慕っていましたし...手は出しませんよ...蓬莱の薬を服用した貴女は...ワタシの手をもってしても殺すことなぞできませんから...」
「そうよね...」
蓬莱の薬...それは月の禁忌の薬品...それにより私の身はもう滅びることはないわ、あの子の罪は私の罪...だから私も被らなくてはならないから...
毎乃葉は、私から離れて踵を返す...
「!?」
「今日の所は帰還します...もうお会いすることはないと思いますがね」
まさかの撤退?彼女からの報復があると思ったいたのに?
彼女の部下も驚きの表情を見せる...
「お...おい!!いいのか?」
「そんなぁ...忌梗の仇を討ちましょうよ!」
そんな部下に毎乃葉は肩を竦ませる...
「言ったはずよ...恨み言の1つ言うくらいとね...悪いけど...どうしても手出しはできないのよ...」
どうしても...ね
内心では、鉄拳制裁をしたいというのが彼女の本音だろうけど、相変わらず命令には忠実みたいね...
毎乃葉は私の方を見る...
「そういえば...忌梗の死は予想外...その言葉の意味は何です?」
毎乃葉の言葉に、後ろの彼女の部下達は体をびくつかせる...
「そ...それは」
「ううう...」
小さい声の所為か...毎乃葉には気づかれてはいないみたいだ...何だ彼女達内緒にしていたのね...
言うのはやめろと言いたげな目をしているけど...説明を求められたら、言うしかないわ...
「それは...」
がらららら...
「双方喧嘩はやめなさいよ!うるさくて昼寝もできないわ!」
永遠亭の戸が開き中から、長い黒髪をし桃色と赤の衣装に身を包んだ人物事...私の主である蓬莱山輝夜が中から出てくる...
毎乃葉は輝夜を見て、驚いているのか口を半開きにしている...
「まさか...一緒にいたとは...」
「あれ...貴女...あの時の!まさか追手が来たの?」
輝夜は私を見つめるが、私は首を横に振る...
「...一応月とは関係ないとは言っているわ...本当か分からないけどね」
「ふーん...とりあえず...ここでもなんだから中に入って話でもしましょうよ...もしかしたらお願いを聞いてくれると思うし...」
輝夜は小声で私に耳打ちするが、うまくいかないと思うわ...仮にも敵ですしどうすることもできないわ...
「とりあえず...中へ入りなさい...この先の話はそっちの方がいいわ」
「ええ...分かりました...」
毎乃葉は、手を組んでやや警戒しているような表情を浮かべており、後ろの部下は溜息をついている...
私達は永遠亭に毎乃葉達を入れる...
こちらの問題が片づけれるなら試すべきかしら?...うまくいけばいいのだけどね...
次回もお話回...
ではこれにて