お酒異変が解決された翌日...
妖怪の山では、いつもと変わらない朝の陽ざしが差し込んでいく...
いつもとは変わらない風景だが本日は違う...
妖怪の山の封印牢に、とある者が訪れているのだから...
「やはり...ここにいるか...」
その者は封印牢の戸を開けて中に入り、毎乃葉がいる牢の戸を開けて中に入る...
「すー...すー...」
毎乃葉は寝息を立てているだけ...
その人物は、その姿を観察しながら首を傾げている...
「...同志の本気の姿か?久々に見たが...警戒が薄い...平和ボケでもしているのか?」
その人物は、ライフルを構えて毎乃葉に向ける!!
「まぁ...撃ってみれば分かるだろう」
ズガーン!!
封印牢にて銃声が響き渡る...
「うぎゃああああ!!痛いー!!!」
そして...弾丸が直撃しベットの上から転げ落ち悶絶している毎乃葉を見て、その者は呆然とする...
「む...む?てっきり前みたいに避けると思っていたが?」
「何です!?今の銃声は!!」
となりの牢屋から睡煉が飛び出し毎乃葉の牢へと入り、その者の姿を確認する...
「え?貴女は!」
「久しいな同志睡煉...やっと合流できたな...しかし?寝起きとはいえ...本来の姿をさらけ出すのは頂けないな...」
その者に言われて、睡煉は不機嫌な顔をしながら現在の姿からバニーの姿へと変える。
「う~...お久しぶりですけど...何で銃声が?」
その者は、今もなお悶絶している毎乃葉を見つめている...
「...いや...昔のノリで寝起きドッキリをやったら...この結果に」
「いやいや!!何です!その物騒なドッキリは!!」
彼女達が騒いでいると悶絶していた毎乃葉も身を起こす...額からは出血...手には、ライフルの銃弾が握られている...
「早朝から五月蠅いわぁ!!!ヒトの頭に銃弾とは随分なことね!!どこの回し者...よ?」
毎乃葉は、その者を見て口を閉じる...
「久しぶりだな!同志毎乃葉よ!!待たせてしまったな!」
「...ア...アンタ...夜喪妓!!」
夜喪妓と呼ばれた少女は、キセルを咥えて、それに火をつける...
「本当に済まないな...第0部隊...ナンバー1の私が遅れをとるとは...」(夜喪妓 (よもぎ)通り名:ロンリースナイパー)
夜喪妓は済まなそうな顔をするが、毎乃葉は俯いたまま...彼女を抱きしめる...
「ふ...ふふふ!...このアタシにプレゼントが来るなんて!」
「...プレゼントか?...すまん用意していたのは...情報ぐらいだが?」
困惑する夜喪妓に、毎乃葉は更にきつく彼女を抱きしめる...
「アンタが帰還してくれたことが...アタシにとってのプレゼントよ!うくっ...うう...」
嗚咽を漏らす毎乃葉の頭を夜喪妓は不器用そうに撫でることしかできなかった...
「...すまん...同志...」
15分後
「...ふぅ...早朝から泣くのも久しぶりね」
さっきとは打って変わり、毎乃葉の笑顔を振りまき...夜喪妓をジッと観察している...
夜喪妓の格好は...手入れの届いていない銀色の長い髪...ボロボロの緑色の軍服・灰色のマントをつけ...くたびれた眼帯をつけている...
「少しみっともないわ...」
毎乃葉が手をかざすと、夜喪妓の体が光に包まれ、新品同様の軍服にマントになり、夜喪妓は自身の体を念入りに確認している...
「便利だな...その力は」
「当たり前よ...このアタシは完璧だもの!」
毎乃葉の言葉に夜喪妓は怪訝な顔をする...
「その割には随分と堕落していたみたいだな...前の同志なら、さっきの銃撃は寝ていても避けれたはずだが?」
「それを言わないでよ...長い間封印されてたし...久々にこの姿に戻ったんだから!」
夜喪妓はふと、毎乃葉の左腕を見つめ、目を見開く...
「同志!この左腕は!!怪我をしたのか?」
「まぁ...ちょっとヘマをしただけよン...気にする必要はないわン...」
夜喪妓は何か言いたげな顔をするが、これ以上の追求は無粋だと判断したのか目を反らす...
「まぁ...元気そうで何よりだ...同志睡煉もあの事故でよく良く残ったな...」
夜喪妓は睡煉の方を向き、睡煉は目を反らす...
「...それもそうでしょうよ...私達が死ににくいの貴方だって知っているでしょう?」
「...ああ...確かに」
夜喪妓はキセルを吹かして天井を見ながら答える...彼女達の会話を聞いて毎乃葉は首を傾げる...
「死ににくい?...確かにアンタ達は特殊な生まれだけど?そうだったかしら?」
「こっちの話だ...気にするな同志よ...」
夜喪妓が煙を吐くと、毎乃葉は目を輝かせながら夜喪妓に近づく...
「そういえば夜喪妓!何か他にプレゼントあるのよね?確か情報とか言っていたし!」
「...ああ...2つあるな...良い情報と悪い情報がな...」
夜喪妓は、毎乃葉を見つめる...
その表情は、お前に覚悟があるのかと言いたげな表情だ...
毎乃葉は、深く息を吐いて口を開く...
「...まず悪い方をお願いするわ」
「...ああ...悪い方の情報はいたってシンプルだ...忌梗の奴の生存が絶望的だということだ...」
夜喪妓の言葉を聞いて、毎乃葉は体を震わせ、睡煉は驚きの表情を浮かべる...
「そんな!忌梗が?どうしてそんなことが!」
「ああ...残念ながらな」
夜喪妓は軍服のポケットから、装置を取り出す...
それは、睡煉が耳につけている装置と同じものだ...
「...それは睡煉と同じものよね?」
「ああ...だがこいつのとは違って壊れてはいないぞ...ちゃんと持ち主がどこにいるか通信することはできる...ここへ来る前に一通り通信はしたが...同志忌梗の奴はどこ探しても反応はない...」
「...それって」
毎乃葉の言葉に、夜喪妓は頷く...
「...あの爆発で跡形もなく消滅してしまったとしか考えられないな」
夜喪妓の言葉に、部屋の中は静寂に包まれる...
それは僅かな希望が粉々に砕け散ったことを意味するのだろう...
気まずい中、毎乃葉が口を開く...
「...覚悟はしていたわ...元々アンタたちの生存だって絶望的だもの...ねぇ?良い方の情報を教えてくれない?」
「...もう一つの方もシンプルだ...私達第0部隊が散り散りになった原因...あいつの居場所が分かったということだ!!」
夜喪妓の言葉に毎乃葉・睡煉の顔が険しくなる...
双方とも...そのあいつといういう人物について心当たりがあるからだ...
「...え?あの人の居場所が?」
「というより...あいつ表記はやめなさいよ...仮にも...立場は上よ?」
毎乃葉の言葉に、夜喪妓は不服そうに鼻を鳴らす...
「ふん!!...立場などない!!罪人を手助けし!私達に手を下した奴だ!!同志でも何でもないだろう!!」
彼女の言葉からは怒気を放っている...
毎乃葉は、それを察してか笑みを浮かべて口を開く...
「...ふふ...良い顔ね夜喪妓...確かにそうね?このアタシの顔に泥を塗ったわけだし...確かにアタシとしても部下を傷つけられた憤りはあるわね...」
毎乃葉は立ち上がり、翼を広げる...彼女の体からは濃厚な妖気が発し...牢屋内を包み込んでいる...
「夜喪妓!案内なさい!!あの時の文句ひとつでも言ってやりたいわ!」
毎乃葉の号令に夜喪妓と睡煉は笑みを浮かべている
「ああ!承知した...久々の仕事だ...私に続け!」
「私もそれなりに文句言いたいです!!それと!忌梗の仇です!」
意見が一致したのを確認した彼女達は牢屋を後にする...各個人が抱えていた、憤りを放つために...
大切な仲間の仇をとるために...
次回のための布石です
日常編はまだ続く
ではこれにて