自身の本気の力を出した天逆の活躍により、3日起きの宴会異変を起こした黒幕...伊吹萃香は倒された...
しかし、博麗の一行の眼前には未知の姿をした天逆の姿...
自身を毎乃葉と呼んでいる者は、霊夢達一行へと近づいてくる...
side霊夢
「...」
私の目の前には急に現れた者こと...天逆毎乃葉がいる...
美羽と柚神が消えて、代わりに、このヒトが出て来たけど一体どうなっているの?
毎乃葉は私を見て、ふふんと鼻を鳴らす...
「どうしたのかしら?この完璧で美しいアタシに見惚れているのかしら?」
「違うわよ!!説明を要求するわ!アンタ美羽よね?その力は何なの?」
「そうです!!私だって理由をお願いします!!貴女のその姿は天狗の組織は知りませんよ!?」
私の横に文が来て異議を唱えると、毎乃葉は不機嫌そうに手袋を弄っている...
「...一気に言われても分からないわ...質問なら一つずつお願いするわ...」
「じゃあ!私の質問に答えなさい!アンタは誰なの?美羽?それとも柚神なの?」
「その質問は認識がずれているわね...今のアタシは美羽でもあり柚神でもある...」
「?」
「分かりやすく言うと...元々天逆美羽と天逆柚神は元々一つの存在ってこと、それがこのアタシ天逆毎乃葉なのよねン...ほら一応美羽の時の名残が残っているわぁ」
毎乃葉は、左手の手袋をずらす...
そこには、美羽の時と同じ酷い縫合の痕が残っている...
...つまり...あの2人は元々1つだった存在だというの?1つの存在を分けるなんて...何を考えているのよ?
次の質問をしようとすると、紫が手を挙げている...
「私からも質問よ...」
「おや?賢い妖怪の賢者様でも質問はあるようねぇ?」
毎乃葉は嫌らしい笑みを浮かべているが、紫は全く動じていない...
「...何故自身の力を分散させる必要があるのかしら?あの時の戦いで、その姿だったら左手の怪我は負っていないはずだけど?」
「...深い理由はないわ?只の癖なのよ」
...癖?幾ら何でも...力を分けるということは、それなりのリスクがあるというのに...
「お仕事上の問題よ...当時のアタシは上から与えられた戦闘に関する仕事ともう一つ...とある方の身の回りの世話もしていたのよね...アタシの体は1つ...仕事は2つ...手が回らないから仕方なくね...」
...仕事ね...そういえば彼女の昔話は聞いたことがないわ...質問したというのに更に分からない事が増えたわね...
「質問は以上かしら?」
「...美羽がアンタの事は分かったけど...未だに柚神のイメージがあるから納得が出来ないわ」
毎乃葉はクスクス笑う...
「ふふ...柚神の方のアタシも素は美羽と変わらないわ...只あの方が女らしくしろというから、あの口調になったに過ぎないのよね...」
あの方?そういえば誰かに仕えていたと言っているけど...
「...じゃあ...そのあの方って誰?」
「...言う必要はないわ...もう仕えてないし?...にしても?」
毎乃葉は私の至近距離まで近づき、舐めるように私を見つめている?
「!?」
「随分と質問が多いわね?このアタシに興味を持ってくれたのかしら?」
「何でもないわ!」
「つれないわぁ...まぁ...この姿なら今度は遅れは取らないわ...次戦う時は覚悟しときなさいよン」
...殺気らしいものは感じないけど...嫌な威圧感があるわ
それに、甘いお香のような匂いもするし何かクラクラする...
紫が私の前に割って入る...
「...幾ら強力な力を持っていたとしても...害なす者なら容赦はしないわ」
「あらあら...怖いわねぇ...少なくとも、その考えは杞憂よ...前に言ったでしょう?このアタシは生きているだけで満足なの...これ以上のことは望まないわぁ」
毎乃葉は、踵を返しキセルを咥えて睡煉の方を見る...
「睡煉!お暇するわよ...」
「はいはいー!毎乃葉様ー♪」
彼女達はそのまま神社を後にする...
天逆毎乃葉・天逆美羽・天逆柚神...
全員同一人物というのは分かったけど、ややこしいわね...
言葉では、生きること以外には興味はないとは言っていたけど...その言葉も怪しいものね...
妖怪の山封印牢...
自分たちの自室に戻って来た、毎乃葉はベットに腰を下ろして天井を見上げる...
「...久しぶりに元に戻ったけど...やはり疲れが溜まるわね...」
「毎乃葉様!復帰祝いに一本どうですか?」
睡煉は酒瓶を差し出すが、毎乃葉は首を横に振る...
「...ううん...明日にしましょう?今日は久しぶりに本気を出したから疲れたわ...悪いけど後処理お願いね...」
そのまま毎乃葉はベットに横になり、すぐに寝息を立て...睡煉はビンを片づけて敬礼する...
「...ゆっくりとお休みになってくださいね♪」
睡煉は他の牢へと向かい、封印牢の中は再び静寂に包まれる...
一方その頃...
幻想郷に存在する大きな竹林こと、迷いの竹林...
その竹林の中から、ヨロヨロとある者が中から出てくる...
「...やったぞ...やっと外に出られた...」
その者は、長い雪のような白い髪・薄汚れた緑色の軍服のようなものを身に着けており、目には眼帯のような物を右目に張り付けている...
彼女は力なく、その場に倒れて真っ黒な幻想郷の夜空を眺めている...
「...やっと...タケノコ生活から抜け出せる...ずっと竹林の中だったんだ...もう緑色の景色は...まっぴらだ...」
その者は眼帯を外して遠くを一通り見つめた後、それを元に戻す...
「...同志よ...私もすぐに向かう...待ってろ...」
その者は何かを見つけたのか、その方向へと歩を進める...
事態は好転する...
それが運命かどうか...それは誰にも分かることではない...
物語は動き出す!
ではこれにて