博麗神社で開催されていた三日おきの宴会の黒幕...伊吹萃香と対峙する天逆美羽...
異変の解決まで、もう一息だが油断はできない...
萃香は強力な力を持つ鬼であり、かつて萃香を含む鬼の四天王を降した美羽は度重なる宴会により満身創痍...
天狗の最終兵器に勝ち目はあるのだろうか?
side霊夢
「いくぞ!天逆!!」
「どこからでもいいわン!」
二人は対峙した瞬間に戦闘を開始する!
先手は萃香がとり、彼女は美羽に向けて掌底を放つが、美羽は攻撃を受け流し彼女を投げ飛ばす...
「おっと!反応が早いな!」
萃香は空中で体勢を立て直し、美羽は刀を二本取り出して構える...
「軽い準備運動よン...この位で傷を負っていてはアタシの相手にはならないわ」
「...まだ本気じゃないからな!」
更に彼女達の妖力が上がる...
いい勝負と言ったところね...
「...動きにキレがないですね」
「!?」
私の横には、彼女の部下である睡煉が野菜スティックを齧りながら勝負を眺めている...
「...あれでキレが無いの?」
「...今の状態は必要最低限の力しか使っていませんね...体調もバットコンディションでしょうし...完全体には程遠いです」
「...充分強いと思うけど?」
「経験者は語るというものです...私は本気の○○様に完膚なきまでに叩きのめされて...それによりあの方の部下になったんですもん」
睡煉は肩をすくめて、境内の奥へと下がっていく...
...どこか聞き取れない部分があったけど、この子の言う通り美羽にはまだ本気の力があるみたいね
「分からないところばかりね...」
ふと彼女達の戦いを見つめると、萃香はどこから持ってきたのか分からない巨大な岩を持ち上げている!
「ちょっと!うちの境内にそんなもの持ってこないでよ!!」
「あやや...鬼の方々は相変わらず滅茶苦茶ですね~」
私の横では文が写真を撮っている...今はそんな場合ではないのに!
「そら!潰れてしまえ!」
萃香は美羽に向けて岩を放り投げるが、美羽は避けようとしない
「それで倒せるのかしらン?ふん!」
美羽は刀を振り、岩を両断する...
岩は綺麗な切り口で裂かれて、境内に落下するが、萃香が不意をついて美羽の至近距離に現れる!
「なっ?」
「中々の攻撃だが!お前さんを潰せば終わりだろ?」
萃香は美羽の額を殴りつけ、美羽は後ろへ叩き付けられる!
...今のはきつく入ったわ!
「美羽!」
「...ふふ...ふ...やるじゃない...の」
美羽は立ち上がるが、額からは血が流れており、目は虚ろだ...
「おや?完璧には当たらなかったみたいだな?」
せせら笑う萃香を見て、美羽はイラついたような表情を浮かべてスペルカードを取り出す...
「まぐれ当たりの癖にっ~!虚偽(ライヤーライヤー)」
彼女がスペル宣言をすると、光弾らしいものは出現せず、代わりに彼女の体が光に包まれる...
あれは...美羽のスペルカードではない!
「...あれは多分柚神のスペルカードね...他人の物を使えるなんて...」
紫は光を見つめながら、首を捻っている...
...確かに紫に言う通り、今回の美羽は前回とは違う気がする
自分の体術に加えて柚神の妨害能力を使うとなると、戦闘スタイルが全く違う...
睡煉は先ほど、完全体には程遠いと言っていたし...何が起きているの?
「...この光攻撃していいのか?」
萃香は美羽を包んている光に警戒しているのか、彼女に近づこうとはしない...
しばらくすると、光が止み中から美羽が現れ、彼女は髪を靡かせて不敵に笑う...
「天逆美羽...完全復活よン!」
彼女の姿は、傷一つない元の姿に戻っていた!
彼女は体をしなやかに伸ばしながら、萃香の方へと歩を進める...
「...傷がない...そのスペルの効果か?」
「...まぁ...そんなところね...緊急の時にしか使わないものよン」
美羽は刀を指で撫でているが、いつもの余裕そうな表情は全く出ていない...
緊急時?...美羽も追い詰められているのかしら?
萃香は再度戦闘態勢になり、拳を構えている...
「...小細工を覚えたみたいだな...あの時の乱暴なお前とは全く違うぞ」
「...時と場合によるのよン...あの時のアタシは目につくものを倒せば良かったのよね...しかし現在アタシは仕事の他にも情報収集もやってるから、体が1つでは全部終わらないのよン?...今のアタシは色々とやることがあるのよン...」
「それはつまり本気を出していないと言っているようなものじゃないか!」
萃香は、怒りの表情を浮かべる...
実力者だけあって、手加減されるのは自身のプライドが許さないのでしょうね...戦闘が得意な鬼の種族だけあり、それは頷ける...
しかし美羽は首を横に振る...
「...一応本気は出したいけどねン...それは問屋が卸さないわ...本気を出そうにも柚神の奴が復活しないとそうもいかないのよ」
柚神が復活しないと駄目?何故彼女が関係あるの?あくまで美羽の話だというのに...
「お話はここまでよン!とりあえず!さっさと終わらせないとねン!」
美羽は萃香に向けて走り刀を振り、対する萃香は、それを鎖で防ぐ...
「少しは追い詰めた感じだな!」
「あ?」
萃香の言葉に美羽は、言葉を投げ返す...
「長年の経験だが攻撃を見れば分かるんだよ...お前...少しずつだが焦って来てるだろ?刀の太刀筋がブレてきているよ...」
「このアタシが焦りね...アンタの勘違いじゃないのかしら!」
美羽は萃香を弾き飛ばして後ろへと下がる...
しかし...萃香の言う通り美羽に疲れが見え始めているわね...もう肩で息をしているし...
そういえば...かつて美羽と戦った時、考えてみれば私の陰陽玉1発が直撃してノックダウンしていたわね...
能力で回復したとはいえ、鬼の一撃を受けた以上...彼女の余裕はないのかもしれないわ...
萃香は美羽を見つめた後、姿勢を低くして拳を構える...
「...久々にこれをやるか...鬼の本気を見せてやるよ!」
彼女の拳からは妖力が高まっている...
これは、大技をやるみたいね...
美羽の方は、黙ってその光景を見つめているだけだ...
「あら?大技かしら?防がないとねン」
美羽は結界を張るが、その光景を見て萃香は笑みを浮かべる
「それでは私の技は防ぎきれないぞ!天逆美羽!!三歩壊廃!」
萃香は拳に力を高めて、美羽に殴りかかり、その攻撃は美羽の結界に直撃する...
「...あら?力が強いわン?」
「お前は確かにすごいよ...だが!舐めていると足下すくわれるぞ!!」
萃香の攻撃の質はが上昇し、美羽の結界にヒビが入る!
びき...
「な!?」
「これが鬼の力だ!天逆!!」
萃香の拳は結界を砕き、障壁の向こう側にいた美羽の腹部を捕らえる!!
「っ!!!ぐ...ぐ...」
「吹っ飛べ!!」
力が更に上がり、美羽の体は境内へと飛ぶ...
「ぎゃあああ!!」
彼女は神社内にあった狛犬の像に叩き付けられた後、境内へと落下する...
...これは勝負あったわね
「...鬼の一撃が入ったわ...流石の美羽でも戦闘不能ね...」
「戦闘不能...果たしてそうかしら?」
紫からの否定的な言葉が耳に入る...
鬼の一撃よ?流石の私でも、あの攻撃は防ぐことはできないわ...
「幾ら何でも勝負ありよ...」
「いえ...動揺が見られないわ...」
紫の方を向くと、彼女が境内にいる睡煉の方を見つめている...
睡煉は、手に持った酒瓶の酒を飲み干しながら、黙って倒れている美羽を見つめている...
その表情は、何かに期待しているような顔をしている...
「...あの子の部下があの態度よ?全く焦りの表情を見せていないわ」
「...」
...確かに睡煉には焦りの表情は見受けられないわ...まさか!あの攻撃を受けてなお!美羽は戦闘不能に陥っていないというの?
「...文確認!」
「ええ?私がですか?」
「いいから!!」
無理矢理だけど...文を向かわせて確認を取る...
文は倒れている美羽をジッと眺めた後、体を触る...
「...ノックダウンですね...伸びてますよ?」
「あれ!?」
...まさかの美羽のノックダウン宣言!?
てっきり伸びたふりをしていると思ったのに!
私達を見て萃香は笑っている...
「あははは!!流石の天逆でも私の一撃は耐えられなかったか!!これで勝負ありだな!!」
美羽が負けるなんて...これは予想外ね...
次は私が何とかしないと...
私はお札を構えて萃香へと向かう...
「...全く...予想外なことはあるものね?」
「!?」
突然透き通るような声が響き、その方向を見る...
私の視線の先には、地面に臥したまま光り輝いている美羽の体があり、そこから声が出ている...
「この声...美羽?でも彼女は...」
私の言葉に紫は首を振る...
「いえ...もう一人いるじゃない...同じ声を持つ者が...」
同じ声...それに該当する人物は1人しか!
「...ここまでやられるのも...もはや何年ぶりかしら...」
美羽の体から幽霊の様に柚神が出てくる...
前回の宴会以来かしら?随分と久しぶりね?
彼女は私達の方を見ずに長い髪を振って萃香を見据えている...
その双眼は鋭くなっており、いつしかの共闘した時を思い出すわ...
「...少しアンタを見くびっていたわね」
「...もう一人の天逆か...今度はお前が相手か?」
萃香は柚神の存在に驚いているみたいだが、すぐに拳を構える...
だが柚神は肩をすくませて、足下で伸びている美羽を見つめている...
「...アタシ個人ではどうしようもないわ...力技で組み伏せられるのが関の山よ...でも...」
「追い詰めたご褒美にアンタだけに...本気を見せてあげる♪」
柚神が手を下げ美羽の体に触れると、彼女の体から霧のようなものが出てきて、霧に包まれてしまう...
あの周辺だけ霧が濃い...内部が全く見えないわ...
萃香は拳を鳴らし、その光景をワクワクしたような面持ちで見つめている...
「何かの準備か!!...なら私も迎撃に入る...」
「必要はないわよ?」
萃香に対し声が響いた瞬間に、霧から何かが飛び出して彼女を弾き飛ばす!?
「な?見えな...」
「見る必要もないわね...大人しく跪きなさい!」
萃香の体は体勢を変えることも許されずに、そのまま境内に叩き付けられる!
「がは...」
「あら?...速い幕引きだったわ?完璧というのも考え物ね?」
萃香を叩き付けた者は彼女の傍らに着地し、彼女を一瞥した後、耳についている機械のような物と片目に着けていたものを外す...
長い灰色の髪...青と緑色の目をし、白と黒が入り交じったスリットの入った軍服・背には夜の闇に近い黒い翼を付けた者...
でも...このヒトは...美羽でも柚神でもない...別の者?
「...一体何者なのよ...このヒトは?美羽でも柚神でもないじゃない!!」
私以外の他の者も、その光景を見て戸惑いの表情を浮かべている...
只一人を除いては...
「ウフフ!!久々に見ましたが...やっぱり惚れ惚れしますね~」
唯一睡煉だけは、その光景を見て喜びの笑みを浮かべている...
その者は睡煉に近づいて、優し気に口を緩ませている...
「言ったでしょ?アタシは完璧だってね...ふふ...もっとも...ギャラリーの方々はアタシに驚きの表情を浮かべているけどね?」
その者は紫を見つめ、対して紫はいつもの胡散臭い笑みを消して、警戒の表情を浮かべている...
「...それが貴女の本気なのね...美羽」
「美羽?」
あれが美羽だというの?姿は似ているけど...体から発せられる力は全くの別物よ!?
美羽と呼ばれた者は、紫に指を振る...
「その名は、この状態のアタシの正式名称ではないわねぇ...案外無礼なのよ?ヒトの名前を間違えるというのはね?」
その者は嫌らしい笑みを浮かべている...
前言撤回...やっぱり美羽だわ...どことなく彼女特有のねっとりとした口調が混じっているし...
美羽(仮)は後ろ手を組んで私達を見据えて口を開く...
「...アタシの名は天逆毎乃葉...史上最恐の完璧なる兵器の名前よン♪」
(天逆 毎乃葉(あまさか ことのは)通り名:人造○○の司令官)
次回萃夢想終わり!
ではこれにて