時は過ぎ...博麗神社での3回目の宴会が開かれる日がやってくる...
妖怪の山の牢屋では、ベットの中で毛布に包まったまま、そこから動こうとしない天逆美羽の姿があった...
宴会まで後数時間...彼女に残された時間は余りない...
side美羽
「...宴会...やだ...お酒...やだ...飲み比べ...やだ...人間やだ!」
アタシは痛む頭を抱えながら現実逃避をする...
もうこれ以上は、アタシとしては非常に精神衛生上宜しくはない!!
この世界おかしいわよ!!何で兵器にお酒で勝てる人間がいるのよ!!何で頻繁に宴会開くのよ!!何でアタシがこんな目に合わなければならないのよ!!!
「...うう...頭痛い」
「あらら...弱気な美羽様も珍しいものですね」
どこからか睡煉の声が聞こえるけど、返答する気にも起きないわ...
今日は植物のように生きていたい...誰にも関わらず時を過ごしたい...
バン!!!
「美羽ー!!宴会ですよ~!!」
響くは...やかましい天狗こと...文の声...
今一番聞きたくない声が部屋の中で響く...アタシはその声を無視して寝返りを打つ
「...」
「何で無視するんですかー!!宴会の時間です!!行きますよ!!今日は私も行きますから!」
文は毛布を引っぺがそうとするが、アタシがそれを許さない...
「嫌!!!今日はアタシは欠席!!アンタが行きなさいよ!!この前休んだでしょう!!!」
「それはそれ!これはこれです!!私もやけ酒したい気分なんですよ!!新聞は売れないわ!椛にはぶん殴られるわ!!」
完全にアンタの都合じゃないの...
というか...もみちゃん...とうとうキレたのね...
「アンタの気分何て知ったことではないわン!!アタシは今回は休むの!!もうこれ以上は限界なのよ!!」
「それは許しません!!私は1人では宴会には行きたくない派なんですー!!」
文が毛布を剥ぎ取り、アタシを御姫様抱っこする!!
「良し!連行準備完了!!」
「待ってヤダ!!睡煉!!コイツをばらしなさい!!」
「仰せのままにー!!」
睡煉は手術刀を持って文にジリジリと近づくが、文は青い顔をしながら毅然とした態度をとる
「お...脅しには乗りません!!美羽!貴女の安っぽいプライドは宴会ごときで消滅してしまうものなのですか!!」
「っ!!」
...アタシのプライド?
「誰が安っぽいだー!!!」
睡煉が殺意を向けるがアタシは手で制す...
「睡煉...アンタの事ではないわン...でもアタシのプライド?アンタに何が分かるの!!?」
文に威圧をするが、文は臆することなく口を開く...
「...少なくとも貴女と初めて会った時は、貴方は怖い物知らずの高慢な天狗だと思ってました...ですが今の貴女は何です!最近はヘタレているじゃないですか!」
「ぐっ?」
文の言葉が胸に刺さる...確かに彼女の言葉は間違ってはいない...昔はこんなことに臆するなんて有り得なかったのに!
...考えてみれば...確かに最近のアタシは...昔と比べて...心も体も弱くなった?
あ...あれ?いつからアタシは弱くなったの?
「ぐ...ぐぐぐっ!!」
「...あや?どうしました?」
「...下ろしなさい!!」
文の腕を振りほどいてアタシは床に着地し、思考を巡らす...
まずいわ...頭が久しぶりにコンガラガッテきた...
「美羽様...爪噛むの良くないですよ~」
「お黙り!!!」
睡煉の言葉を一蹴して、考えをめぐらす...
ワタシは...兵器よね?生まれた時から...確か...
(...ダメだ...基準にも満たない...及第点以下だな)
(予算をかけた意味がないな...)
(適当に使って使いつぶせば?)
「っ~!!!!」
ワタシは完璧なのよ!ワタシは最恐なのよ!!
だから...そんな言葉を向けるな...ワタシを...否定するなっ!!
「美羽!!血が出てます!!爪噛むにも程が!」
「黙れぇ!!!」
...急な言葉に、感情の赴くままに怒鳴り声をあげてしまった...
「ひっ...」
「み...美羽様...」
...目の前には怯えた表情の文と睡煉の姿がある
まずいわね...久しぶりに感情が高まったわ...
「...悪いわねン...少し混乱したわ...」
「あ...あやや...それだけの迫力があるのに...宴会から逃げるのはないですよ~」
文は青い顔をしながら茶化す...
「ふぅ...確かにアンタの言う通り...逃げるのはアタシらしくないわ...少し一人にしてくれないかしら?...睡煉...アンタも席を外してくれる?」
「ええ!!分かりましたー!」
睡煉は一目散に牢を出ていくが...文はじっとアタシを見つめている...
「...逃げないで下さいね」
「逃げないわ...時間になったら向かうわよン」
「...待ってますよ」
文は、そう言うと牢から出ていく...
「...はぁ」
キセルに火をつけてベットに座る...
やっぱり済んだ事とはいえ、やっぱり駄目ね...アレを思い出すと感情が高ぶるわ...
トラウマになっているのかしら...アタシの出生とはいえ、話せるものではないわン...
「...」
(...君は...私の大切な友だ...生まれのことなぞ気にすることはない...そうだろう?○○〇〇?)
「...ふふ」
...こういう時に...あの方が言葉を投げかけてくれたわね...今となっては懐かしいわねン...
「...ふー」
...もう...聞ける言葉ではないけど...この言葉でアタシの人生は変わったというものかしら?
まだ長い人生...アタシらしく進んでいかなきゃ駄目よね?
「さぁて!!アタシも負けていられないわン!!...宴会が何よン!!いざとなったら本気出すわー!!」
アタシは自室を後にして博麗神社へと向かう...
博麗神社
「...ああ」
博麗神社へと降り立つと、そこはもう...重い雰囲気を醸しだいていた...
目のチャンネルがおかしいのかしら?いつもの博麗神社より、黒い霧が立ち込めているわ...何でしょう?怨念的何かを感じるわね...
「...」
「...」
そしてシートで寝かされている、魔理沙・レミリアを発見する...
3日の猶予があるとはいえ、飲み比べのダメージが残っているはず...お気の毒さまよ...
アタシと同じく死地を経験した仲間よ...彼女達は頑張ったわ...何連続か分からないけど...死なない程度には頑張ってもらいたいわ...
「あら?来たわね美羽?」
声の方を見ると、そこには霊夢がいたわ...
相変わらず血行の良い顔をしている...宴会のダメージはなさそうね?...この子本当に人間なの?
「こんにちわン霊夢...アンタも好きね?こうも宴会を開くことは一生に無いと思うわ?」
「...私も何故開きたくなるか分からないわ」
霊夢は微妙そうな表情を浮かべてアタシから目を反らす...
...元の原因がこれとは...何かのきっかけがあるのかしら?
「...理由が無いのに開催するとは...アタシとしても理解ができないわねン?何となく...嫌な予感がするわ...」
「...奇遇ね...私も異変だと思い始めた頃よ」
彼女は言うが...信憑性に欠けるわぁ...この子が異変を起こしている可能性もあるもの...何かの決定的な証拠が欲しいわね...
「ふん...案外異変を起こしているのはアンタかもしれないわね?」
「っ!!」
霊夢はアタシに掴みかかる...
あら?少し問題発言だったかしら?
「アンタね!!!」
アタシの服を掴む彼女の力が強まってくる...人間並みだけど...力強いわねン?アタシ好きよ?強い子...
「あら?失言だったかしらン?でも怪しいのはアンタしかいないのよね?」
「私だってこの衝動には迷惑しているの!!...私だって...被害者なのよ」
霊夢が俯く...
被害者ね?...アタシ達を飲み比べで潰した癖に...何を言っているの?
「どちらかと言うとアタシらが被害を被っているはず...」
「私だって!!大変なのよ!!この宴会開くのに!幾らかかっていると思っているのよ!!」
「...え?」
この言葉は予想外ね?...まさかの資金の話になるとは...
「...ン~?てっきり紫辺りが...資金の援助をしてくれると思っていたけど?」
「...あいつがそんなことしてくれるわけないじゃない!!うう...私だって...宴会を盛り上げるために...神社の少ない予算を削って持て成したというのに...」
「...ごめんなさい」
...何故かアタシが頭を下げる結果になってしまった
...でもこの子の姿を見ていると、アタシの方が申し訳ない気分になるわ
「アンタが謝っても意味ないわ...それに今日の人数が少ないし...」
「...」
...辺りを見回すと
八雲・西行寺組はいない...
紅魔館の方もレミリアと咲夜しかいない...
山も...文と睡煉しかいないし...今までで一番人が少ない宴会となっているわ...
「とうとう集団でバックレがでたわね...伸びているのが2名となると...本日開く意味がないわよねン?」
「それはそうだけど...この衝動が...」
衝動ね...霊夢に人的作用が掛かっているのは、確実ねぇ...
「...愉快犯がいると言うべきかしらぁン?」
「何かの対策を考えないとね...紫の奴がいれば苦労しないんだけど」
十中八九...八雲の連中は、面白がっているんでしょうね...アタシとしても余り時間はかけたくない...
...仕方ないわ...久しぶりにやるしかなさそうね...
side霊夢
「時間をかける必要はないわン...アタシがやる...」
「...え?アンタが?」
美羽の方を見ると彼女は空間を弄り出しており、彼女の周りには色々な物が書かれている画面が映っている...
これは美羽の戦友の天逆柚神の能力!!
美羽の能力は、これではなかったはず!
「何でアンタが柚神の力を使えるのよ!」
「...答える必要はないわン...アタシは完璧だもの...できるものはできるもの...」
美羽は我関せずといった感じで画面を見つめている...
...聞くのは今度にした方がいいわね...今の最優先事項は、この異変の愉快犯を見つけ出すことだもの...
彼女の見ている画面を見ると、そこには何かの地図が書かれていた...
...この地形は見たことがあるわ!博麗神社の周辺じゃない!
「これって!博麗神社の周辺?」
「ええ...犯人を見つけるには便利なのよね...どこに誰がいるかすぐに分かるわ」
美羽は画面を弾くと、境内が映っている部分に8つ分のカラフルな点が映り出す...
「...これは?」
「...アタシが知っている奴がどこにいるか示しただけよン...この赤白がアンタ...金白黒は、そこで伸びている魔理沙...水桃がレミリアといった感じでね...」
...色で身体的特徴を現しているわね
...ということは、私の近くにいる灰白黒は...美羽かしら?境内近くにいる睡煉が...白茶?
「...睡煉って子はどちらかというと、紅白だと思うけど?」
「睡煉はアレで合っているわ...今は彼女の話は良いでしょう?それより...ここ」
美羽が指さす所には神社の前にある...金紫の点...
「これが犯人!!?」
その点がある方を見るが...そこには誰もいない?
美羽はその方向を見て煙を吐く...
「...多分紫の奴でしょうねン...この状況を見て面白がっているんでしょう...とりあえず放置で...」
金紫...紫の奴か...
画面の金紫の点が、こちらへと近づいてくる...
「酷いわ!!放置はないでしょう!?」
スキマが開いて、紫が首を出す...
「こちとら...時間が惜しいのよン...犯人じゃないなら...黙ってなさい」
「酷い!!」
紫はハンカチを口でビローンとするが、美羽は冷たい目で見る...
「...どうせ犯人は知っているのでしょう?」
「...何でそう思うのかしら?」
紫はハンカチをしまい、スキマから身を出したまま美羽を見つめる...
その表情はいつも通りの胡散臭さを醸し出している...
「ただのアタシの勘よ...邪魔するなら容赦しないわ」
「...邪魔はしないわ...精々犯人捜しを頑張りなさいな...見つかるなら...ね」
「...ふん!できるわ...このアタシに掛かれば...そんなこと造作もないわン」
美羽は画面をジッと見ているが、私はあることに気が付く...
「...ここにいる8人は映っているけど...犯人らしき人物がどこにもいないじゃない」
ここにいるのは、私・魔理沙・レミリア・咲夜・紫・文・美羽・睡煉の8名全員...美羽の画面には、他に人物が映っていない...
美羽は不機嫌そうに、煙を吐く...
「アタシの知っている奴...っと言ったはずよン?てっきり知っている奴が犯人と思ったけど...どうやら全く知らない奴が今回の黒幕ね...」
美羽が画面を弾くと、境内の地図に橙色の点が多数現れる!!幾ら何でも多過ぎよ!
「待って!そんなにいるわけ!?」
「いるのよねン!でも...実質には1人かしら?隠れてないで出てきなさいよぉ!」
美羽が乱暴に手を振ると、虚空に衝撃波が走り何も無い空間から少女が現れる!
「うわ!!」
少女は尻餅をつく...橙色の長い髪をしており、頭頂部には大きな角が2本ある...特徴からして...まさか!
「...幻想郷に鬼がいるとは...驚きね...」
...鬼...幻想郷では無い存在だと思っていたけど...生まれて初めて見たわ...もっと筋骨隆々なイメージだったけど...
「...私は知っていたわ...だって古くからの友人ですもの」
紫は悪びれもせずに笑う...この顔は明らかに異変の原因を知っていたみたいね...
鬼の少女は、辺りを不安そうに見回している...
「な!?私の力が!?」
「一時的に解除してもらったわぁ...霊夢...この子がこの異変の黒幕...さっさと退治なさいよン」
美羽はキセルを吹かして、その場から去ろうとするが、鬼の少女が美羽の服を掴む...
「悪いけどさ!相手してもらうのはお前なんだよ...天逆美羽!」
「...何でアタシなのよン?」
美羽は面倒くさそうに少女を見ているが、少女は敵意むき出しだ...
「もう少し遊んでいるつもりだったけど!お前には私との勝負を受けてもらう!!あの時の屈辱忘れないぞ!!」
「...?...どの時よ?アタシも色々と戦っているからぁ...イチイチ覚えていないわン」
「お前は覚えてないのか!!?鬼の四天王を1度に相手したというのに!!」
少女の言葉はショックを受けたような顔をし、美羽は困ったかのような表情をする...
「...覚えていないわ...因みにアンタのお名前は?...それを聞いたら思い出すかも...」
「...伊吹萃香だ!これで思い出しただろう!!私達を瞬殺して...鬼の歴史に傷をつけたのはお前が初めてだ!!」
伊吹萃香...それが彼女の名前か...
しかし、美羽は退屈そうにキセルを吹くだけだ...
「...悪いけど思い出せないわね...鬼を瞬殺したのは覚えているけど...」
美羽は煙を吐いた後、言葉を続ける...
「...正直...あの時さ?とある奴にボコボコにされてイライラしていたのよねン...その憂さ晴らしに偶々バカ騒ぎしているのを止めたに過ぎないわ...アレは戦いのうちには入らないわ...それに...」
バシ!!
美羽の言葉が終わる前に、萃香からの拳が放たれるが...美羽はそれを右腕を出して防ぐ...
「戦いのうちに入らないだと!?」
「行き成り不意打ちとは酷いわね...」
美羽は萃香を弾き飛ばすが、彼女は向かってくる...
「戦った相手の名は覚えておくはずだ!!礼儀すらないのか!?」
萃香の攻撃を美羽は弾く...
「...アンタの価値観を押し付けないで...それに覚えておく必要はないの...」
「...イチイチ負かした者のことなんて...覚える必要ないでしょう?」
「てめぇ!」
萃香からの三度目の攻撃...
その攻撃は美羽の顔を逸れるが...彼女の頬に傷をつける...
「...何よ?やる気?」
「本来の目的通り...その長くなった鼻をへし折ってやるよ!お前がどれだけ強くても!それは井の中の蛙だってな!!」
萃香が言い放つと、美羽はキセルを消して私の方へと来る...
「...霊夢...この子はアタシがやる...手出し無用よ」
「...元々アンタが怒らしたんじゃないの...」
「強者というのは疲れるわね...巻き込まれただけだというのにねン」
美羽は再度萃香へと対峙する...
両者はすでに戦闘モードね...
「潰して地の味を覚えさせてやる...天逆美羽!」
「...へぇ~...このアタシをね?出来るものかしらン?...マジで潰すわよ...」
美羽と萃香の妖力が高まり、辺りの空気が重くなる...
異変の黒幕は現れたけど、状況が更に悪くなった気がするわ...血の舞う宴会は避けたかったわね...
「紫...アンタ今回の事初めから知っていたでしょう?」
「ううん!知らない♪」
紫は満面の笑みを浮かべて否定する...この顔は...確実に嘘をついているわね...
「...美羽が負けたら次は私ね...っ?」
...美羽の方を見ると...嫌な悪寒を感じ背筋が震える
あいつが実力者なのは分かっている...
でも今のあいつは...今までとは何かが違う?
相棒の柚神の力を使うことができることも今までとは違うし...
妖怪よりも嫌な未知の力を彼女は隠している...何か分からないけど、私の勘は...確実に何かを告げている...
「...天逆ね...アンタ一体何者なのよ」
...今回の異変でアンタの力・正体を見切ってやるわ!
おまたせしました
目を怪我してPCできなくなっておりました
また少しずつ投稿していきます
ではこれにて