東方天災手記   作:ベネト

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宴会partその2


お酒に負けない!

宴会から3日後...また博麗神社にて宴会が開かれる日がやってきた...

 

突如決まったこのイベント...当日の参加者も困惑の表情を浮かべているのだろう...

 

一方その頃...妖怪の山の牢屋では、天逆美羽と睡煉が昼から深いため息をついている...

 

それは勿論...この宴会と言う名の地獄の戦争についてだ...

 

...この戦争により博麗神社が墓標になるのか...それは誰にも分からないことである...

 

 

 

 

 

 

 

side美羽

 

「...ふぅ~」

 

妖怪の山の景色を眺めているのは良いわン...美しい景色だもの、それは見飽きないわ...けど...みるみるうちに時間が過ぎていくわ...

 

宴会の時が刻一刻と迫っている...

 

「はぁ~...何かこの待ち時間が嫌ですねぇ」

 

「...それはそうよ...前回みたいに散るのは勘弁よ」

 

気分は宴会と言う名の死刑執行を待つ囚人よ...

 

前回よりはある程度回復したけど...柚神の奴が出るには至らないわ...

 

 

「柚神様は...出ませんよね?」

 

「...そうね...アタシが至らない所為でね」

 

煙を吐くと、睡煉はくしゃみをする...煙がかかったかしら?

 

「あら?悪いわね」

 

「いいえ...気にしないで下さい...私は美羽様でも柚神様でも...どちらかいればいいですからね?」

 

睡煉は屈託もない笑顔をアタシに向ける...

 

...健気な子ね

 

この子の為にもアタシがしっかりしないと...宴会が何よ!!この天逆美羽様が!!恐れる必要はない!!

 

時計を見ると、約束の時間15分前...行かないと...

 

 

「死地に行くわよ」

 

「はいはい~!」

 

アタシ達は重い腰を上げて博麗神社へ向かう...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社...

 

 

 

どよーん

 

「う...」

 

神社に辿り着くと既に重い空気を感じる...この前とは大違いね...

 

「まだ誰にも会っていないのに...この重々しい空気とは...」

 

「...怯む必要はないわ...今回はお酒は抜いて来たし...前回とは違うはずよ」

 

アタシ達は境内へと足を運ぶ...

 

既に境内には何人か見知った顔がいるが...

 

 

 

「...」

 

「はぁ...何で私何だ...」

 

「うーうー」

 

そこには霧雨魔理沙...レミリア・スカーレットがいたが...2人共目が死んでいる...

 

3日開けたとはいえ...やはり辛いものは辛いわ...

 

 

 

 

「...今日は無事に帰れなそうね」

 

「...私が...アフターサービスはしますから」

 

...アフターサービスね

 

つまり現在進行形では助けてくれないみたいねン...乗り切るには、自分の実力のみという訳ね...

 

境内で死んだ目をしている連中を見ていると、神社から博麗霊夢が出てくる...

 

彼女はアタシの方まで近づいて、アタシを見つめている...

 

 

 

 

 

 

「...ふん...来たのね...美羽」

 

「...来たのねとは随分な言葉ね?...アンタが呼び出したんじゃない」

 

霊夢はアタシの言葉を無視して睡煉の方を見る...

 

 

「...こっちの方は初ね...アンタの部下かしら?」

 

「ご察しの通りよ...アタシの部下の一人睡煉よン」

 

アタシの言葉に睡煉は霊夢に会釈をする...

 

「睡煉です!宜しくです!」

 

「...宜しく...そういえば...柚神の奴の姿が見えないけど?」

 

霊夢は辺りを見回す...そういや...柚神の奴は欠席ってこと言ってないわね...

 

 

 

 

「あいつは欠席よ...前回の飲み会が効いたのよね」

 

「...ああ...確かに前回の飲み会の時...酒比べに負けて爆発するように消滅したわね...死んでないわよね?」

 

彼女は心配するような目でアタシを見つめる...

 

死ぬはずがないわ...あいつはアタシと一心同体...消滅することなぞあり得ないわン!

 

「心配する必要はないわ...軽くエラー起きているだけよ...というより...何でまた宴会を?」

 

「何となくよ...やりたくなったのよ...」

 

霊夢はあやふやな返答をする...アタシとしても何か腑に落ちないわ...

 

「...まぁいいわ」

 

「ところでアンタ達が天狗の代表でいいわね?」

 

...何か足りない気がするわ

 

「待って...まだいるわよ!!文と椛の2名が来ていないじゃない!!!」

 

辺りを見回しても2人の姿がない...霊夢は何を言っているのよン!!!

 

彼女は溜息をつき頭を掻きながら懐から便箋を取り出す...

 

「...文がこんなのを送ってきたのよ」

 

「な...手紙?何でこんな!!」

 

アタシは便箋に書かれた文を読む...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(スミマセン!!!椛が捕まらなかったのと...今月の文々。新聞の締め切りが本日でして...欠席します!!!そこにいるはずの美羽とバニーちゃんは好きに使ってください!!)

 

と...書かれていた...

 

 

 

 

 

 

「...ふ...ふふふ!!...ふざけんなぁ!!!あの天狗がぁ!!!!」

 

アタシは便箋を握りつぶす...

 

あいつ!!!アタシらを囮にするとは!!!前回の飲み会で二日酔いになったというのに!!何て...酷い...ことを!!!

 

「美羽様...やっぱりアレ...唐揚げにした方が良かったのでは~?」

 

「アタシは肉は食べないのぉ...」

 

アタシらのやり取りを見て霊夢は溜息をつく

 

「文に良いようにされているのね...お気の毒様」

 

「ふふ...まさかの裏切りには驚いているわよン...今度の新聞売れると良いわね?」

 

アタシは天に向かい呪詛を吐き、大人しく霊夢に連れられて境内の端っこにあるシートへ座る...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ...あの天狗...覚えてなさいっ!!」

 

「いない者に言っても意味はないですよ...大人しく乗り切りましょうよ」

 

「...うう」

 

アタシは目の前に置かれている酒瓶を手に取り、それを御猪口に注ぐ...

 

今回だけは...無事に帰りたいわ...お酒がトラウマになるなんて...長い時を生きているけど初よ...

 

「あらあら?楽しんでいるかしら?」

 

「...」

 

アタシの目の前の空間が開いて、中から妖怪の賢者こと八雲紫が姿を現す...

 

薄ら笑いを浮かべており、疲れ切っているアタシとしては話したくない相手だわ...

 

 

 

 

「...楽しんでいるように見えるかしら?」

 

「あら?げんなりしている表情の貴女は珍しいから...つい...」

 

紫は扇子で口元を隠しているが...確実に笑いを堪えるような顔をしているわね...

 

「アンタも限界までやってみたら?前回適当に負けてたじゃない!」

 

「...私はいいのよ♪勝利よりも酔った人を見て笑うのが好きなの!」

 

より性質が悪いわ...

 

紫と話していると今度は八雲藍がアタシ達の方へ来る...

 

 

 

 

「紫様!お食事の用意が...何だ...負け烏もいるじゃないか...」

 

会って数秒でアタシに対する暴言...

 

こいつ...1回バラシタ方が良いかしらン?

 

「美羽様?...こいつ狐うどんにしちゃいます?」

 

睡煉が爪を伸ばして爪とぎをする...

 

「やめときなさい...アタシ肉は食べないし...本来狐うどんには狐の肉は入れないわン...」

 

「ふん!!ちゃちな兎妖怪程度に遅れは取らん!!」

 

藍は不快そうに鼻を鳴らすが、睡煉は笑みを崩して青筋を立てている...

 

「...ちゃち?この私をっ!!安っぽいですって!!!」

 

怒りの所為か...睡煉の体が色々な動物に変化したり戻ったりしている...ああ...こいつ睡煉の地雷踏んだわ...

 

紫も藍も...睡煉の豹変に驚きの表情を浮かべている

 

 

 

「え?どうしたの?何か怖い...」

 

「というより...怒るところズレている気がするが?」

 

「...睡煉にちゃちという言葉は禁句よ...ほら!落ち着きなさいよン!!アンタは最高傑作でしょう?」

 

「う...ううう!!!」

 

睡煉は唸りながら烏の姿になり、アタシの頭の上に留まる...

 

...ぷい!

 

「ああ...へそ曲げちゃったわ...こうなると面倒なのよね...」

 

「あらあら...何か悪いわね」

 

紫は頭を下げるが、彼女が悪い訳ではないのよね...

 

「アンタが悪い訳じゃないわン...説明し忘れたアタシが悪いのよン」

 

「藍は後で折檻しておくから...」

 

「え!?紫様!!」

 

紫は藍の尾を引っ張って霊夢の方へ向かう...

 

後は彼女に任せましょうかね...

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらあら~?飲んでいるかしら~?」

 

「...」

 

紫が消えたと思いきや...今度は西行寺幽々子がアタシの前に...

 

今日は色々と巻き込まれるわね...

 

「今日は静かに飲みたいのよン」

 

「つれないわ~良いじゃない!!ワイワイした方が楽しいわよ!」

 

幽々子はアタシの手を引いて、人だかりがある場所へと案内する...

 

 

 

 

「...」

 

そこには酒樽が沢山積んてあり、その前の敷物には死んだ目の魔理沙・レミリア...そして楽しそうな顔をしたフランの姿があった...

 

「何で...また」

 

「うー!咲夜ー!助けてー!!」

 

「うふふ!!楽しいじゃない!お姉様!」

 

まさか...この光景は...

 

「ねぇ...アタシは参加しないわよ!」

 

「そんなこと言わないの!!今回は私も参加するんだから!!」

 

幽々子は強制的に、アタシを座らせ...隣に座る...

 

辺りには、アタシ達を見つめる他の者達の視線!!これじゃあ逃げるに逃げられないわ!!

 

 

「幽々子!何でアタシなの!霊夢とか紫がいるじゃない!!」

 

「...どうせ...宴会はまた続くもの...今のうちに慣れておいたほうがいいじゃない?」

 

「続くって...何が...」

 

「第3回!!飲み比べ大会の開催です!!」

 

幽々子に問いただすが、アタシの声は大音量によりかき消される...

 

 

 

 

 

声の方を見ると...そこには紅魔館のメイド...十六夜咲夜がいた...

 

彼女はマイク片手に、言葉を続けている

 

 

「本日の飲み比べ大会に参加する...命知らずはこちらー!!白黒の大泥棒!!霧雨魔理沙ー!!」

 

「...何で強制参加!?それに私は泥棒じゃねえよ!!」

 

...いや...紅魔館の図書館で本を盗んでいることは本当でしょうが...

 

 

「次ー!!紅魔館の当主こと!!我が主レミリア・スカーレットお嬢様!!本日の勝ち筋ですー!!」

 

「咲夜ー!!助けなさいよー!!!そしてドサクサに紛れてハードル上げないでー!!」

 

...もう半泣きじゃない...それにあのメイド...その姿を見て楽しんでいるわ

 

 

「次ー!レミリアお嬢様の妹様ー!!この宴会をぶち壊せー!!フランドール・スカーレットお嬢様ー!!」

 

「わーい!!!」

 

...屈託のない純粋な笑顔...素敵ね...

 

 

 

「次ー!!白玉楼の亡霊姫!!その胃袋はピンクボール!!西行寺幽々子ー!!」

 

「ご飯なら負けないけどね...お酒はどうかしら~?」

 

...ピンクボールって何よ?

 

 

「最後ー!!今回のダークホース!!!自称完璧の兵器!!天逆美羽ー!!ポンコツなりに頑張ってくださーい!!」

 

「待って!!ポンコツって酷いわ!!!それに自称完璧って!!」

 

 

「さぁ!!本大会のルールを説明しまーす!!」

 

咲夜はアタシを無視して、ルール説明をし始める...

 

うぐぐぐ!!このアタシがっ!!こんなことに!!

 

 

「...」

 

気づくと...アタシの前には酒が注がれた3号枡が山盛りに積まれていた...

 

「...とりあえず!ぶっ倒れるまで飲んでくださいー!!」

 

司会が雑になってきている...

 

「何が大会よ...何が飲み会よ...飲み会って何よ...」

 

アタシの言葉が聞こえたのか幽々子が耳打ちする...

 

「うふふ...ブツブツ言っても仕方ないじゃない?ポンコツ扱いが嫌なら貴女の力を見せつければいいじゃない~?」

 

「...はぁ...考えても仕方ないわね...この美羽様の実力を見せてやるわー!!」

 

アタシは帽子を脱ぎ捨て、最初の枡に口をつける...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間半後...

 

 

 

 

 

「...げほ!!!」

 

「...あ...頭が...」

 

「うー!!!!」

 

「うふふふ...うぷ!!!!」

 

いつの間にか...アタシ・魔理沙・レミリア・フランがバケツに頭を押し付ける結果になった...

 

そして勝負席には平然とした表情の幽々子がいる...

 

 

「あらあら~!?勝っちゃったわ」

 

...ふふふ...頑張ったのに!!結局こんなっ!!

 

「...うぷ!!」

 

アタシは思考を停止させ、その後の宴会はバケツと友達になっていた...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会後...妖怪の山の封印牢

 

「...うう」

 

「ほらほら!!しっかりしてくださいよ!○○様!!」

 

何とか...妖怪の山の自室までやってきたアタシは、睡煉に支えられながらベットへ座り込む

 

前回よりは、マシだけど...辛い事には変わりはないわ...

 

 

 

「げぷ...しばらくは何もいらないわ...」

 

「調子に乗るからですよ...上には上がいるんですから...」

 

「...何も言い返せないわ」

 

アタシはふとベットに置かれた便箋を手に取る...

 

 

「こんなのあったかしら?」

 

アタシはそれの封を開ける...

 

そして、その行動に後悔した...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3日後...博麗神社で宴会を開きます...強制参加)

 

 

「...夢よね?」

 

「夢ではないと思います」

 

睡煉の言葉にアタシはその場に蹲る...

 

こんなの絶対におかしいわ...

 

 

 

 

 

一方その頃...博麗神社に霧が立ち込める...

 

その場には八雲紫がおり、彼女は霧の中で目を閉じ、博麗神社からの手紙を出す

 

「...これは貴女の仕業ね」

 

紫の言葉に、霧から笑い声が辺りに響く...

 

(にゃははは!!!バレた感じ?)

 

「...こんな愉快犯がやりそうな異変だもの...貴女位しか思いつかないわ」

 

(そう?まぁいいじゃないの!!面白い奴が出てきたしさ!)

 

「...面白い奴?」

 

(あの天狗もどきだよ...あいつの慌てふためく姿は笑えるだろ?)

 

霧から聞こえる言葉に紫は溜息をつく...

 

「...あまりちょっかいは出さない方がいいわ...一応危険人物なんだから」

 

(は?いいじゃない!...今度はあいつに負けないもんね!!)

 

霧から声が聞こえなくなり、辺りから霧が晴れていく...

 

 

 

博麗神社の境内に残った紫はスキマを開く...

 

「...あの人は本気じゃないわ...もっと恐ろしい存在なのよ」

 

そう言い残し紫もその場から消える...

 

 

 

 

 

 

 

 




次回異変の着手

ではこれにて

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