日が差し込み新たな日を告げる幻想郷の朝...
新たな朝を迎えた妖怪の山の牢獄では、宴会から6時間が経過しているというのに悲痛な唸り声がまだ響いている...
牢獄の一室で、酒バトルでの敗者である天逆美羽がベットの上で顔を真っ青にし横になっていた...
side美羽
「う...うう...」
牢獄の中に日が差し込みアタシは、布団を被って日光を遮断する...
今日は何もしたくない...酒の飲みすぎで気持ち悪いし...頭がガンガンする...
まさか...このアタシが霊夢にまた敗北するとは...ショックではあったけど...それを上回る二日酔いの所為で薄まってきている...
「柚神...リペア...」
じ...じじじ...
アタシの体から火花が散るような音が出る...
ちっ...やっぱり使いものにならないわ...集中しないとアタシの能力は使えない...
しばらく能力が使えないし...具現化することもできなそうね...
「あはは!柚神様の方は消滅してしまいましたか!?」
枕元の方には睡煉がアタシを見下ろしている...
こいつ...アタシを置いて宴会から逃げたくせに!!
「敵前逃亡は認められないわ...それに声を押さえてぇ...頭がガンガンするの」
「まぁ...あれだけ飲めば当然ですよ...それに敵前逃亡ではありません!戦況が一変したので撤退しただけです」
「...ものは言いようよン」
睡煉と交わしていると...廊下から誰かの足音が聞こえてくる...
「睡煉...誰か来るわ」
「はいはい!」
彼女が烏の姿へなると、足音が部屋の前で止まる...
バァン!!!!
「おはようございますー!!!美羽ー!生きてますかー!!」
思いっきり開かれた扉の騒音!!そして開幕早々の文の大きな声!!
この2種類の騒音がアタシの頭を激しく響かせる!!
「ぐぉぉぉ...!!」
アタシは布団を深くかぶる...ダメっ!!このままじゃ壊れちゃうわ!!!
「あやや?美羽?どうしました?」
「声を押さえてぇ~...二日酔いなのによン...」
「あやや...貴女とあろう者が...敗北とはー」
「...ふん!何とでも言いなさい...アタシは今日はもう無理...」
文を追い払おうとするが、彼女は手紙をベットの上に置く...
「...何よ?これは」
「...トドメを差す気はありませんでしたが...貴女にとっては仕方ないことですね」
「何よ...」
アタシは手紙の封を破いて中に張っていた便箋を手に取る...
「...は?」
便箋の中にはアタシの予想していなかったことが書かれていた...
(3日後...博麗神社で宴会開始...昨日のメンバーは確実に来るように!)
と書かれていた...
文の方を見ると半笑いでアタシを見つめて辺りを見回す...
「残念ですが...その手紙に書かれている事が全てです...3日後も参加してくださいね!!」
「嫌!!アタシも昨日は酷かったのよン!!!」
「私だって行きたくはありませんが...便箋の端を見てください...昨日のメンバーの名前が書かれていますよ?」
...よく見ると...便箋の端には、昨日参加したであろう名前がびっちりと書かれていた...
「...あ...ああ」
「仕事だと思って諦めて下さいね♪...ところで柚神さんは?」
文は辺りを忙しなく見渡す...
さっきから落ち着かないのは、柚神がいない所為かしら?
「柚神はいないわ...昨日の飲み会で再起不能になったのよ...能力が使えないし呼び出せないわよ?」
「あやや?逃げちゃいましたか...だったら猶更貴女が行かないと!」
文はアタシの腕を引っ張る!!
「っ!!!離しなさい!!」
「駄目ですよー!!貴女を連れて行かないと私が怒られます!!」
「違っ!!その前にっ!!」
こいつ!!アタシの左腕を伸ばしているっ!!このままじゃ古傷が開いてしまう!!
「ほらほらー!!行きますよー」
「い...痛いっ!!」
「これ以上の無礼は流石の私でも許せませんねぇ?」
「あや?」
突如響く睡煉の声に文の動きが止まり、アタシは彼女の手を払いのける
彼女の機転には助かったけど!今は文がいるから出て来てはダメだというのに!
「はぁ...はぁ...睡煉!何をしているの!!勝手に能力を解除...」
文の方を見つめるとそこには、文の首筋に鋭い鉤爪を当てている睡煉の姿があった...
「あやや...何です?このバニーちゃんは...」
「天逆様大丈夫ですか?とりあえず~この人は私がバラシて夕飯に出して置きますので~」
睡煉の明るい口調で物騒な言葉に文は顔を青くして冷や汗を流す...
「あややや!!!美羽!!何とかしてくださいよ!!このままじゃ私が夕飯の焼き鳥にー!!!」
...お肉は好きじゃないし、文が消えるのも後々と厄介ね...
「睡煉...爪を抑えなさい...」
「...はいはい~」
睡煉は満面の笑みを浮かべて文を開放し、文は荒い息を吐きながら壁まで移動する...
side文
「はぁ!はぁ!!!」
...私は壁まで移動してバニーちゃんから距離を取る
さっきまでこの子いなかったのに!!どこから現れたんですか?それに私を今晩の夕食にって!物騒すぎます!!何も悪い事してないのに!!
「全く...美羽様に無礼を働くからですよ~」
睡煉の姿が変化し白い烏になり彼女は美羽の頭の上に留まる...
「私は悪い事してません!!只美羽を宴会に連れて行こうと!」
「してるじゃないですか...美羽様の左腕を引っ張るなんて...」
「あや?」
睡煉の言葉に私は美羽の方を見る...
美羽はベットに座りながら、左腕を抑えており、左腕には酷い縫合の痕があった...ああ!そういえば!!
「あ...ああ...いやん!!古傷が開いちゃうわ」
美羽は、わざとらしく傷を舌で舐めている...
「あやや!!?すみません!!そんなことする気じゃ!!」
「いいわン...悪気があったような感じではなかったしね...お陰で酔いが醒めたわ...」
美羽は私の前に来て、右手を壁にあて私を覗き込むような体勢を取る...美羽は女性にしては大きいから私が壁ドンされている気分になります...
「あやや~私のお手柄ですね!」
「凄い痛かったけどねっ!!」
めき...
私の横の壁を見ると美羽が右手を当てていた壁に大きなヒビが入る...
「...あやや!!冗談ですよー!!」
「そうね...冗談の方がアタシも怒らなくて済むわ」
美羽は満面の笑みを浮かべる...そして頭の上の烏こと...睡煉がカァカァと鳴く...
「と...ところで...その子は何者ですか?確か...上層部にはそんな情報は...」
「知らないはずよ...だって言ってないもの」
「ふぇぇ!?」
美羽は開き直った態度で睡煉の首元を撫でている...柚神さんの時に報告しなくて始末書だったのに懲りてない!!
「そんなことしたら!始末書!」
ばき!!
「...嫌よ♪」
壁が...ヒビから穴へと進化した...
「わ...私を脅す気ですか!!?私は脅しには屈しませんよ!」
「脅しではないと思うわぁ...アタシは貴女の命を救ったじゃない♪つまりこれはイーブンよ」
さっきのアレですか!!そんなことで始末書をイーブンなんて出来ません!!
「さ...さっきのは私一人でも何とかなったかと...」
「へぇ?そうなの?」
美羽は嫌らしそうな顔をし...睡煉は烏から人型へと戻って医療用のメスを持って打ち鳴らしている...
「どうします?とりあえずバラしますか?」
「やめておきなさい...後々の処理が面倒になるだけよン」
「み...美羽はともかく...この子には遅れはとりませんよ!!」
私は毅然とした態度を貫くが美羽は溜息をつく...
「やめときなさいよン...この子こんな身形だけど...一応連続殺人犯なのよ?」
「うえ!?」
...れ...連続殺人犯?何でこんなのが美羽の下に?
「うう!!それは言わない約束じゃないですかー!!」
「どうせ言わなくてもバレるわよ...大体アンタはヒト殺しすぎなのよ...」
「...100人からは数えてませんけど」
睡煉はいじけるような素振りを見せる...こんな少女が...連続殺人犯とは...
「で?文?これに関しては始末書は無しでいいわよね?今後も部下を探していくから宜しくとのことで!」
「み...認められま」
がららららら...
背後から何かが崩れる音と冷たい風が吹き...後ろを見ると、灰色の景色が...幻想郷の景色に変わってます...壁さん...さようなら!
「わ...わかりましたよ!!!とりあえず!!その件の始末書はやりませんよ!!!」
「いい子ね♪アタシ好きよ♪話の分かる子...」
「その代わり!宴会には出てくださいね!!霊夢さん何故か貴女の事気にいっているみたいですし!!」
「ええ?どういうことよン?」
「知りません!失礼します!!!」
私は牢を逃げるように飛び出す...とりあえず連れてくることは出来そうです!この欝憤は椛で晴らします!!
「あらら...ここからの景色は眺めが良いですね」
「...やり過ぎたわ」
牢屋にポッカリ開いた大穴から幻想郷の景色を眺める、美羽と睡煉...
美羽はキセルを取り出して火をつける...
「宴会ねぇ...気が進まないわ」
「3日後は壁の花を決め込むのがいいのでは?」
「ふぅ...あの濃い連中がそれをさせてくれるわけないじゃない...嫌だけど」
美羽は、煙を吐きながら大穴に手を当てる...
「参加よン...」
刹那...大穴は元通りの壁に戻り、元通りの牢屋の風景に戻る...
「あらら...良い景色でしたのに...」
「...ふん!これじゃ寝れないわよ!」
美羽はベットの上にあった帽子を被って牢屋の戸を開く...
「...人里にご飯食べにいくわよン」
「はいはい~!御供しまーす♪」
彼女達は昼食をとるため、その場を後にする...
3日後...彼女達はまた宴会という死地へ足を運んでいく...
それが大惨事の幕開けとも知らず...
宴会からは逃げられない
ではこれにて