宴会?...それは仕事なのかしら?
夏が始まっている幻想郷...
今年は、前回の異変により、冬が圧倒的に長く春が異常に遅れた年である...
そんな暦の乱れにも気にせず、本日も妖怪の山での日常が始まる...
天狗の里の封印牢では、本日非番の天逆美羽と柚神・睡煉の三名が昼間からお酒を飲んで小さな宴会をしていた...
次の異変が来ることを、予期もせずに...
side柚神
「...ほれほれ~!もっと行きなさい!睡煉!!」
「あは...余裕ですよ♪」
ワタシの目の前には、美羽が睡煉にお酒を注いでいる光景が映る...
本日は貴重な非番だというのに、ワタシ達は真っ昼間から早い宴会を楽しんでいる...
駄目兵器...真っ只中ですね...この光景は...
「柚神~!杯が空よ~♪」
「頂きます...」
美羽も完全に出来上がっている...まぁ...ワタシ達の仕事は秘密裏に問題を解決することが仕事ですもの...
こういう何もない日が本当に暇なのでしょう...正直ワタシとしても暇だ...
「ふぁぁぁ...私は少しお眠ですね」
睡煉は、壁に寄りかかりドライ人参を口に入れる...
「あらあら?もう終わり?夜喪妓とか忌梗はまだ持ったわよン♪」
「あの人達とは一緒にしないでくださいよ!!夜喪妓さんの酔った姿なんて見たことないですし...忌梗に関しては...無表情で何を考えているか分からないし!!」
「おほほ...早くあの子達とも杯を交わしたいわ...」
美羽は寂しそうに持っている杯を見つめる...
分かりますよ...大事な部下ですもの...
生きている可能性が分かれば...早く会うことに越したことはない...
...だだだ
...足音が聞こえる...歩調からして...文ですかね?
「...文が来ました...睡煉隠れなさいな」
「うぃーす」
睡煉は姿を変えて白烏の姿になり、美羽の肩に留まる...
そして牢屋の戸が一気に開かれる...
「あややー!!美羽!暇ですかー!」
そこには、いつもどおりの姿の射命丸文の姿...
彼女はワタシと美羽を見つめながらニコニコしている...
「暇よン...だからここで屯っているの」
「右に同じく」
「あやや...既に酒浸りとは~...これは丁度いいですね♪」
文はニコニコと笑みを浮かべながら跳ねている...
何でしょう...この笑みは嫌な予感しかしない...
「...新聞の手伝いはしないわよ?この前...上層部にこっ酷く怒られたでしょう?」
「...う」
文は笑みを崩す...
確かに文は美羽に自分が出版している新聞の売り込みをさせていましたね...
それが上層部にバレて、怒られたということは聞いています...
確かに...兵器である我々を、そのようなことで使うのは頂けない...
「...うう!!反省してます!!ですから今度は椛にさせます!!」
「...反省してないじゃない!!もみちゃんが可哀想でしょう!?」
反省の色は見えませんね...残念ですが、もみちゃんには少しの間生贄になってもらいましょう...
しかし...この天狗は何でここに来たのでしょうか?
「...ここに来たということは...何かお仕事ですかね?」
ワタシが文に問うと文は首を横に振る...
「いいえ?...今日は暇そうな貴女たちに宴会のお誘いをしに来たのですよ!!」
「...宴会?」
美羽が聞き返すと文は頷く...
「ええ!!本日の夕方に博麗神社で宴会を行うことになったのです!!ですから!私と椛と~天逆双方には出席する予定を立てているんですね~」
「...宴会ねぇ...面白そうだけど...他にも誰か来るのかしら?」
「...そうですね?紅魔館・白玉楼・八雲・その他人間でやるみたいですね!!」
「あらあら...随分と多いわね...しかし...何でアタシらが参加なのよン?」
「それは私が霊夢さんに頼んだのですよ!!貴女たちも幻想郷を知って日が浅いですし...もっと交流を深めてもらいたいと思いましたね!」
「...ふぅん?まぁ...感謝するわン?」
美羽は、疑問に思いながらも感謝の意を述べる...
しかしワタシは美羽とは違う...物事の裏を見ませんとね...
「...実際の所?何か貴女にメリットがあるのでは?」
「!!」
文はワタシの言葉に驚くような仕草を僅かにする...
抑えていたみたいですが...ワタシの目はごまかせない
「わ...私にメリット?私は善意で皆さんに場の提供を...」
「...そうですか?ワタシ達を紹介するには構いませんが...態々椛を連れて行くとなると話は別の意志を感じますね...彼女は本日山の警備の仕事が入っているはずですが?」
「あはは...私は...ふふふ!!」
文は口を押えて笑い始める...
「...何がおかしい?」
「あやや...失礼しました...椛を用意したのは...私の身を守るためですよ...」
「身を守るとは何よ?」
美羽はキセルに火をつけながら杯に酒を注ぐ...
「まぁ...念には念ということですよ...私は新聞のネタ探しに絶対に出席しないといけませんし!万が一のことがあったら困りますからね?」
「...万が一とは何よ?たかが宴会でしょう?」
「時に宴会が牙をむくときだってあるんですよ...何となく私の第六感が働いただけですので...保険をね...」
文は鞄から書類を一式揃えた後踵を返す...
「では♪お待ちしてますよ~!」
そのまま彼女は牢屋を出ていく...
宴会が牙をむく?第六感?彼女は何を言っているのでしょうか...
「...あらら...スケジュールが狂ったわね?」
美羽は酒を飲みながら一息をついている...
「行く気ですか?」
「誘われた以上行かないと駄目でしょう?何とかなるでしょう?アタシがいればね!」
...やれやれ...相変わらずの自信過剰...何が起きても知りませんよ?
「...時間つぶしに将棋でも指します?」
「いいわね!」
ワタシ達は酒を飲みながら将棋で時間を潰すことにした...
何か嫌な予感がしますが...問題はありません...
夕方~
「...28連勝...ざっとこんなものですね...」
「何故よー!!!!」
美羽が将棋盤をひっくり返す...
とりあえず...暇つぶしにやった将棋はワタシの全勝ですね...
美羽はこういうのには向いていない...本人が一番分かっていると思いますがね...
やはり!こういうもので弱者を弄ぶのは本当に気持ちが良いものですね♪
「ぐぐ...」
「夜喪妓とどっこいどっこいじゃないですかね?貴方の手は毎度ながら単調すぎる...」
「...夜喪妓さんは...ルールすら分かっていないですからね...」
「もういいわ!!アタシはこういうの得意ではないの!!!うう...アタシより弱い人いるのかしら?」
...多分いないでしょう
正直...人里の子供達でも美羽は負けるでしょう...
...とりあえずこれくらいにしておきますかね?
「そろそろ宴会の時間です...行きますよ?」
「...分かってるわン!!睡煉!アンタはそのままの姿で参加なさい!アタシは始末書を書くのはもう嫌よ!」
「はいはいー!」
ワタシ達はそのまま博麗神社へと向かう...
博麗神社...
博麗神社へたどり着くと、そこには既に人がごった返している...
流石は、幻想郷...人と妖怪が宴会をするという光景は中々ありませんね...
「ははは...これはすごい...」
「色んな人がいるじゃない!紅魔館に...白玉楼など...」
美羽は燥いでいるみたいだが、とある人物がこちらへ向かっていることに気づいて口を閉じる...
「...あら?まさかアンタらも来るとはね」
ワタシ達の目の前には、紅白の巫女こと博麗霊夢...
「お久しぶりね?」
「ご無沙汰です」
霊夢はワタシ達を交互に見た後、お祓い棒で境内の方を指す
「面白いのが来たじゃない...宴会が楽しみね」
「お手柔らかに頼むわね~」
「同じく...」
ワタシ達が境内に入ると、少し視線を感じます...
紅魔館組からは畏怖の視線...白玉楼からは興味の視線...八雲からは、良く分からないごちゃごちゃした視線が来る!!
この視線は、昔を思い出すわ...
「あやや!!来ましたね!こちらですよー!二人とも!!」
「天逆様ー!こちらです!」
遠くのシートには文と椛がおり手招きしている...
「約束通り来たわよン~...で?もう始まる感じ?」
「ええ!準備は出来ましたし!そろそろかと!皆さまの分もちゃんと用意してますよ!」
文はお酒が入った2つの杯を指さす...
辺りを見回すと酒の封を開けて既に杯についでいる人がチラホラといる...
これは遅刻ぎりぎりでしたかね?
「では遠慮なく...」
ワタシが杯を取ると美羽は文の方を向く
「文...もう1つ貰えない?」
「...?お二人分は揃えたはずですが?」
文の言葉に美羽は肩に留まっている白烏化した睡煉を指さす...
「アタシの烏も飲むのよ...お願いね?」
「...あやや...それは失礼しましたね」
文は睡煉の分の杯を用意してそれに並々とお酒を注ぐ...
「...やりました♪」
睡煉はそれに飛びついてお酒を煽る...
小声で人語を話している...全く...変身しているのですから...バレないようにしないといけないのに...
文はそれには気づかなかったみたいですが...睡煉の飲みっぷりに唖然としている...
「あやや...良い飲みっぷりですね」
「アタシの烏だもの当然よ...」
美羽が酒を飲んでいると隣のシートからとある人物が美羽の横を座る...
「おう!飲んでいるか!?」
美羽の隣に座ったのは霧雨魔理沙...
彼女は美羽の杯に更に酒を注ぐ
「あら...久々じゃない?魔理沙」
「何ちまちま飲んでいるんだよ!ほら向こうは凄いぜ?」
魔理沙の指す方向には、一升瓶を片手に酒を一気飲みしている霊夢とレミリアの姿があった...
「レミリア!私についてこれるかしら?」
「...紅魔館の主としてっ!!」
...あの飲み方は危ない気がしますが大丈夫でしょうか?
「あの飲み方は明日に響くわよ?」
「...まぁ!気にするな!お前も参加するんだからよ!」
「...は?」
魔理沙に手を引かれて美羽が連行され霊夢達の方へと向かう...
「よお!私らも混ぜろよ!」
「私ら...ってアタシも参加なの?」
「2升目突入!...って!魔理沙に美羽?何でアンタ達まで!?」
霊夢は急に来た魔理沙・美羽に驚くが酒瓶を渡す...
「アンタらも参加なのね!なら付き合いなさいよ!」
「おう!すぐに追いつくぜ!!」
「...まぁ...いいけど...さっさと終わらせるわン」
魔理沙と美羽は酒瓶の酒を一気飲みし、それを空にする...
「ふぁぁ!!やっぱり効くぜ!」
「...美味しいわン」
「あらら~すごいわ!」
「ほらほら!美羽ー!貴女は完璧な兵器でしょうー!」
あっという間に空にしてしまった彼女達に拍手と茶々が響く...
そして霊夢は更に酒瓶を彼女達に渡す...
「早いわね?でも勝負はこれからよ!ほら!レミリア!ボーっとしない!」
「...ええ...やるわ...この吸血鬼である私が負けるわけないもの...遊んであげるわ!」
「面白くなってきたぜ!!よし!こうなれば天辺を目指すぜ!!」
「...軽くだけど...エンジンが温まってきたわン!このまま走るわよ!!」
4名の酒バトルが今開催される...
結果は何となく見えていますが...ワタシは宴を楽しむことにしましょうかね!
ワタシは自分の分のお酒を注いで、その余興を観察することにした...
次回も宴会は続く
ではこれにて