東方天災手記   作:ベネト

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会話編


臨時業務

 

本日も雲一つない青々とした空が果てしなく続く幻想郷...

 

木々は青々とした葉が生い茂り、蝉の鳴き声が響く灼熱の夏がまだ続いている...

 

 

 

 

 

幻想郷の神社こと...博麗神社の縁側には、紅白の巫女こと博麗霊夢と白黒の魔法使いこと霧雨魔理沙が冷茶を飲みながら他愛もない会話を楽しんでいた...

 

 

 

 

 

side霊夢

 

「あちー...ぜ...」

 

「夏はこんな物よ...」

 

私達は縁側で強い日差しと蒸し暑い気温に耐えながら...夏を満喫する...

 

これで何回目の夏かしらね?...毎度ながら鬱陶しい事この上ない季節だわ...

 

 

「霊夢...冷茶おかわり...」

 

魔理沙はカラになった湯呑を私に突き出す...

 

「賽銭箱にお金が入っていないわ...飲みたきゃ追加料金を...」

 

「じゃあ...いらね...」

 

魔理沙は帽子を脱いで、それを団扇のように使って扇いでいる...

 

「...けち」

 

残り少なくなった冷茶を飲み干し私は憎い太陽を見つめる...

 

...今日も日差しがきついわね...残りの時間...どうやって過ごそうかしら...

 

 

 

 

 

 

「...ん?」

 

太陽に何か黒い点が...?

 

それが少しずつ大きくなってきている!!

 

キィィィーン...

 

風を切る音まで...何かがこっちに近づいてくるわ!!?

 

「おい...何だあれ?」

 

「襲撃者かもね...構えて魔理沙!」

 

私達はスペルカードを構えて襲撃者を迎え撃とうとする!

 

 

 

 

 

 

が...

 

 

黒い点の正体は境内から、かなり離れたところに着地し、私達の方へダッシュで向かう...

 

その人物には見覚えがあった...

 

 

「こんにちわン!!!文々。新聞の勧誘に来たわー!」

 

私達の目の前には謎の天狗こと、天逆美羽がそこにいた...

 

彼女はいつもの服装に大きなバックを肩にかけ、私達に新聞を渡そうとしている...

 

その新聞には見覚えがあるわ...天狗の記者こと射命丸文が発行している新聞ね...

 

美羽は笑顔のまま新聞を突き出している...

 

 

「何の用よ...美羽」

 

「...新聞の勧誘だけどぉ?」

 

「いや...何でアンタが文の新聞を配っているのよ...」

 

私の言葉に美羽は憎々し気な表情を浮かべ始めている...

 

「暇なら手伝えと文に言われたのよン!!!アタシの本来の仕事ではないのに!!!」

 

「ご愁傷様だぜ...」

 

文は元々そういう感じよ...部下に自分の仕事をやらせるのは珍しいことではないわ...

 

 

「組織に入っていると色々と大変ね...そういえば柚神はどうしたの?アンタ達いつも一緒でしょ?」

 

美羽はキセルに火をつけて空を見上げる

 

 

「あの子の存在が組織にバレると非常に面倒なのよ...アタシとしても説明し辛いし...」

 

「そうかぁ...でも柚神の存在はバレているはずだぜ?」

 

魔理沙の言葉に美羽はキセルを地面に落とす...

 

 

「...は?それってどういうことよン!!」

 

「これだ...」

 

魔理沙は懐から幻想郷縁起を取り出して、とあるページを美羽に見せる...

 

そのページには美羽と柚神の事に関することが書かれており、美羽はそのページを見て震えている...

 

 

「な...何よ...これ!!いつの間にこんな!!」

 

「幻想郷の歴史家には隠し切れないみたいね...どういうルートか分からないけど、いつの間にか情報を掴んでいるのよね...」

 

まぁ...情報を提供したのは私だということは内緒にしときましょ...

 

「ぐぐぐ!!柚神の奴!!また!隠蔽し忘れたわね!!!説明が非常に面倒なのにン!!」

 

美羽は爪を噛みながら目を泳がせている...

 

 

説明が面倒ね?只柚神の事を説明すればいいのに...美羽は何を嫌がっているのかしら?

 

 

「お前の妹にしとけば良いんじゃないか?」

 

「...柚神は...アタシの家族ではないわ...只の戦友よ」

 

只の戦友ね?

 

...しかし姿形が美羽と柚神は瓜二つだというのに、わざわざ他人とするとは...何か事情でもあるのかしら?

 

 

 

「アンタも只の天狗ではなさそうだし...何か事情でもあるのかしら?」

 

美羽は落としたキセルの埃をふき取り再度咥える...

 

「...あまりのヒトの事情に首を突っ込むことは感心しないわン...この話は終わりでいいでしょう?」

 

...話す気はない...か

 

私としては興味はあったけど...これ以上はやめておいた方がいいわね...

 

私は彼女に冷茶の入った湯呑を渡す...

 

 

 

「...!?何よン」

 

「私からのご褒美よ...こんな暑い中...文の仕事回されて疲れているでしょ?」

 

美羽は困惑したような顔をするが、すぐに笑みを浮かべる...

 

「ふふ...じゃあ!お言葉に甘えようかしら?...ついでに新聞は...」

 

「それは要らないわ」

 

「...残念ね」

 

美羽は私の隣に座り、冷茶を口に含む...

 

前よりは刺々しさが無くなったみたいね...少なくとも敵として出なければ友好な人物なのかもしれないわね...

 

魔理沙の方は美羽を観察するようにジロジロと見つめており、美羽は視線が気になり始めたのか、お茶が飲みづらそうだ...

 

 

 

「...何よン?」

 

「いや?すごい久しぶりだと思ってな?前回会ったの紅魔館の異変だろ?お前普段は何をしてるんだ?」

 

「ア...アタシのこと?」

 

美羽は急な質問に首を傾げるが、口を開き始める...

 

 

 

「...主に上層部からの仕事の勅命が来なければ出撃することはないわね...オフの時は山の景色を楽しんだり...天狗の里で美味しいものを食べたりしてるわね...」

 

「文のように山から出てこないんだな...お前みたいな奴は何かと興味を持つ方だと思ったが?」

 

美羽は冷茶を飲み干し...キセルに火をつける...

 

 

「ソレは柚神の役目よン...あの子の役目は外部の情報を集めることだもの...昔から決めていることだからねン」

 

「そうか...意外にもインドア派なんだな?」

 

「インドア派ではないわぁ...アタシの方は体を動かすのが大好きなのよン!でも...効率よく情報を集めるには視野を広く持たないとね...」

 

...話を聞くたび美羽と柚神の関係性が分からなくなるわ

 

美羽は私の方を見てクスリと笑う...

 

 

 

 

「ふふ...何なのよ霊夢?変な顔でアタシを見て?」

 

「変な顔って何よ!...アンタたちのことを考えたら頭が絡まっただけよ!少し考えていたけど、アンタたちのことは分からないわ...」

 

「細かい事は考えなくてもいいじゃないの...頭が疲れるだけよン」

 

美羽は口から煙の輪を出して空をボーっと眺めた後、時計を見つめる...

 

 

 

 

「...少しお邪魔しちゃったわね...そろそろ山に戻らないとねン...お茶御馳走様♪」

 

美羽は空へ飛びあがり妖怪の山方面へと消えていく...

 

 

「色々と読めない奴だわ...」

 

「...いや?私は何となく分かった気がするぜ?」

 

魔理沙は煎餅を齧りながら返答する...

 

「あの短い返答で何が分かったのよ?」

 

「案外美羽と柚神は似たもの同士かもしれないってことだぜ!」

 

「...そこは分かっているわよ」

 

私としては危険人物ではないとは思うけど、持っている力が強力なのよね...

 

少なくとも仕事の時以外は大人しいみたいだし...警戒する必要はないわね...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖怪の山...牢屋...

 

 

牢屋に辿りついた美羽が自室に入ると、そこにはベットの上で寛いでいる文がいた...

 

「あやや...遅かったですね?」

 

「人の部屋で何をしているのよン?」

 

美羽はバックを床に落としてベットで寝ている文の前に立つが彼女は一行に動く気配を見せない...

 

「いつまで寝てるのよン!」

 

「私の新聞勧誘とれましたか?」

 

「...とれるわけないでしょう!急に言われたんだものぉ!!」

 

美羽が溜息をつくと文は身を起こし厚い封筒を取りだす...

 

「残念ですね~!予約が一件でも取れたら!この件はチャラにしようと思ったのですが...」

 

「何よ...チャラって!!アタシはちゃんと仕事をしているわン!!!何かミスでもしたかしら?」

 

 

 

文は封筒から書類を取り出し、笑みを浮かべる...

 

 

「いえ...お仕事はちゃんとやってくれていますね...でも...隠し事はいけませんねぇ~!」

 

「...か...隠し事?」

 

「...天逆...柚神さんでしたっけ?何で隠していたんです?」

 

文の一言で美羽の顔からは血の気が消える...

 

「...は?」

 

「何でこんな優秀な人物を隠していたか...疑問ですね!上層部も貴女の隠蔽には大層お怒りです...」

 

美羽は口からキセルを落として文に掴みかかる!

 

 

「待って!隠蔽ではないわン!!!言う必要がなかったから言わなかっただけだわ!!」

 

「優秀な人物を自分だけの駒に使うのはいけませんねぇ~!!ということで...」

 

文は封筒から書類を全て取り出す...

 

 

 

 

「始末書50枚...本日中に提出をお願いします♪」

 

「...ご...50枚!!!何で!!!言わなかっただけじゃない!!!」

 

「...まぁ...半分は隠蔽に対してですね...もう半分は文々。新聞の購読数を増やせなかったペナルティとしてです♪」

 

「ふざけんじゃないわ!!!隠蔽はともかく!アンタの新聞に関しては絶対に書かないわ!!!」

 

美羽は顔を真っ赤にし拳を握る...流石の彼女でもそのような横暴は許すはずがない...

 

文の方は、嫌らしい顔をしながら書類を手で弾いている...

 

「あやや...これでも私は頑張って弁明したほうですよ?本来は始末書200枚の所...私が頑張って減らしてあげましたのに...」

 

「に...200!?」

 

あまりの多さに美羽はその場に蹲る...

 

文は彼女の肩にそっと手を置く...

 

 

「1/4にしてあげたんですから...お願いしますね?50枚」

 

「...嫌!!柚神!!来なさい!!アタシのアシスタントを!!...あれ?」

 

美羽は柚神を戻そうとしたが...彼女が戻る気配がない...

 

 

 

「無駄ですよ?彼女は現在、新人歓迎会に出ていますもの...主役が抜けることは許しません♪」

 

「...うぁああああん!!!!柚神~!ヘルプ!!!アタシじゃどうにもならないわー!!」

 

牢獄内で美羽の泣き叫ぶ声が響く...

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ...

 

 

「柚神さん!さぁさぁ!!飲んで下さいな♪」

 

「ああ...すみませんね...椛...」

 

椛にお酒を注がれながら柚神は、この宴会の空気を楽しんでいた...

 

普段裏方に回っている彼女にとっては目立つ事はなかったためか...自分が祝福されることに喜びを感じていた...

 

美羽がどんな地獄を受けているか知らされないまま...

 

 

 

 

 

 




柚神バレる...

ではこれにて

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