東方天災手記   作:ベネト

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会話編スタート...


白玉楼でのお茶会

異変の調査で白玉楼へと足を運んだ天逆美羽と睡煉の2名は大きな白玉楼の庭の奥で西行妖を発見し、それを調査していた...

 

しかし調査も一段落したころで、八雲紫の式神である八雲藍の襲撃に遭う...

 

過去に敗北を喫した美羽にとっては一触即発の危険な状態になったが、八雲紫の登場により、それも無事に収束する...

 

 

紫の案で一時停戦となり美羽達は白玉楼に招待される...今後の未来について話し合うために...

 

 

 

 

 

side紫

 

白玉楼の屋敷へついた私は美羽と睡煉の2名を中へと入らせる...

 

彼女達は少し警戒したように辺りを見回していたが、何もないと分かったのか中へと入っていく...

 

 

 

「ここって禁煙かしらン?」

 

美羽が私の方を振り向く...そういえば彼女はヘビースモーカーだったわね...

 

幽々子とかは煙草とかは吸わないし...ここはご遠慮を願おうかしら?

 

 

 

 

「一応禁煙よ...ここの主は吸わないの」

 

「あら...残念ね」

 

美羽は大人しくキセルをしまい奥へと進んでいく...

 

思ったより大人しいわね...敵対さえしなければ話が分かる人物みたい...

 

あの時はお互いポジションが悪かったわね...

 

 

 

 

 

 

居間にたどり着くと、この屋敷の主である幽々子が満面の笑みを浮かべて私達を出迎える...

 

 

「あら!紫いらっしゃい!!」

 

「ええ!急に来て悪いわね」

 

幽々子は私の後ろにいる美羽と睡煉の方を見つめる...

 

 

「...お客さん?」

 

「...天狗の組織所属の天逆美羽と彼女の部下の睡煉よ」

 

私が彼女達の説明をすると彼女達は頭を下げる

 

 

「どうも...天逆美羽よ」

 

「よろしくですー!」

 

「ええ!宜しく~」

 

幽々子は二人を見て笑みを浮かべた後、私の方を見る。

 

嬉しそうね...あまり客が来ないから話相手でも欲しかったのかしら?

 

 

 

 

「ここにお客様が来るのも久しぶりじゃない!話し相手が来てくれてありがたいわ~!」

 

「喜んでくれて何よりよ...台所を貸してもらえる?藍がお茶を出すから...」

 

「ええ!好きに使ってちょうだい!でも悪いわねぇ...本来なら妖夢がするんだけど...彼女今はノックダウン中なのよね...」

 

妖夢がノックダウンね...過労で倒れたのかしら?

 

 

 

美羽の方を見ると湯呑片手に庭の枯山水を眺めている...

 

 

「...気にいったのかしら?」

 

「...まぁね...山でもこういうの見れないからねぇ」

 

美羽は私の方を見ずに返答し湯呑に口をつける...

 

 

 

 

「...そろそろ本題に入らない?アタシに話があるんでしょ?」

 

「いいのかしら?」

 

「アタシもそこまで暇ではないの...そしてできるだけ単刀直入でお願いするわン...」

 

単刀直入ね...私としては沢山聞きたいことがあったのだけど...

 

 

 

 

 

 

 

「...じゃあまず1点目...貴女の目的は何なの?」

 

「アタシの目的?それがアタシに聞きたいこと!?」

 

美羽は不服そうな顔をするが、これは重要なことよ...彼女が本気でやったら私や霊夢でも勝ち目はないわ...

 

「...少なくとも貴女は、こき使われている身分ではないはずよ!実力は充分...その気になれば貴女一人で独自の組織を立ち上げることだって...」

 

「権力・名声なんてアタシにはイラナイものよ...」

 

美羽つまらなそうに火のついていないキセルを咥える

 

...彼女の性格からして執着している物だと思っていたけど...違うみたいね?

 

 

「貴女が好きそうな物だと思ったけど?」

 

「アンタはアタシがどんな奴に見えているのよン」

 

美羽は苦々しげに私を見つめ縁側へ歩を進めて空を見上げる...

 

 

 

 

「アタシにはそんなの...必要ない...只生きていれば...それでいいの...」

 

「生きていればね~!生きるって良いものよ!!美味しいものとか沢山食べられるし!」

 

幽々子が茶々を入れるが美羽はその言葉に頷く...

 

これもまた意外ね...てっきりキレると思ったのに...

 

「それも間違ってはいないわン...時計の針が進めば昼夜は逆転し、四季は巡る...その時の発見もあるというものよ」

 

 

 

「随分とセンチになっているわね」

 

「...それがアタシの唯一の願いだからよン...認められなくても良い...只存在さえ出来れば...何も...」

 

美羽はキリキリとキセルを噛んでいる...その顔は怒りと悲しみが混じったような顔をしている...

 

「貴方の出生に関しては私が言うことではないわ...とりあえず権力には興味はないということね...」

 

「何度言わせるのン...」

 

美羽は懐中時計を取り出して時間を眺めている...

 

 

「あまり時間は無いわ...質問はこれで終わりかしら?」

 

「...後一つ...質問というより提案があるわ」

 

...私は手を挙げて彼女を見つめる

 

こっちが私の本当に聞きたいこと!!

 

 

 

「早く答えなさいよ...」

 

美羽は私の方を向かずに懐中時計のねじ巻きを回している...

 

「...貴方は...故郷に戻れたら戻るのかしら?」

 

「!?」

 

彼女は懐中時計をしまい私を見つめる...

 

「故郷?」

 

「私の力なら...送ることができるわ...まぁ...これは貴女の返答次第だけど...」

 

美羽は目を泳がしながら考え込んでいる...

 

明らかな動揺...即決で返答しないということは...迷いがあるみたいね...

 

 

 

 

 

 

 

「...アタシは」

 

「答えが出たかしら?」

 

彼女は5分ほど考えた末に口を開く...長考だったわ...せっかくのお茶が冷めてしまうわ

 

「...ア...アタシは...戻りたくないわ」

 

「随分考えた結果がそれかしら?」

 

彼女は目を反らす...

 

 

 

「...居場所なんて無いわ...元々必要とされていなかったし...ここで終わるのも一興よ...睡煉...帰るわよ」

 

美羽は湯呑を机に置いて睡煉を急かすが幽々子が彼女の前に立つ...

 

「待って!とっておきの水羊羹があるの!!それを食べてからでも遅くないわよ!?」

 

「時間が無いのよン...」

 

美羽は面倒そうな顔をするが幽々子が強制的に座らせる...

 

 

「せっかく紫が連れてきたお客様なんだから途中退席は私としてもあまり喜ばしくないのよ!」

 

「せっかくの御厚意何ですし...受け取らないと無礼ですよ...美羽様」

 

睡煉の方は水羊羹を受け取る気満々のようだ...

 

気乗りしてない美羽は根負けしたのか大人しくなる...

 

 

「...食べたら帰るわ」

 

「ええ!それがいいわー!」

 

しばらくすると台所から藍が出て来て人数分の水羊羹をちゃぶ台に置く...

 

見た限り...緑色だけど?

 

 

「抹茶かしら?」

 

「ええ!人里人気の抹茶水羊羹よ!新品の冷蔵庫で冷やしておいたからヒヤヒヤよー♪」

 

「てっきり氷室に保存していると思ったけどぉ?」

 

美羽が首を傾げるが幽々子は反論する

 

 

 

「この季節...氷室があまり冷たくならないのよ...だからこの前香霖堂で買ったの」

 

「ふーん...じゃあ頂くわ」

 

「私としてはどうでもいいものですけどね!」

 

美羽と睡煉は楊枝で水羊羹を一指しして口に入れる...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...ん?」

 

「...んー!美味しいです!!」

 

睡煉は美味しそうに頬張っているが...美羽は表情を曇らせている

 

「?抹茶が口に合わなかったかしら?」

 

美羽は首を横に振る...

 

 

「いえ...美味しいけど...本当に冷蔵庫に入ってたの?どっちかというと...生温かいわン」

 

「生温かくても美味しいですがねー」

 

「アンタだけよン」

 

 

 

「え?」

 

幽々子は羊羹を口に入れる...そして美羽と同じく渋い顔をする...

 

 

「...冷たくないわ...あれ?確か...冷蔵庫に確かに私は...」

 

「藍?これはどこにあったの?」

 

藍に問うが彼女は御盆を持ったまま台所を見る...

 

「指示通り...冷蔵庫の水羊羹を...」

 

美羽は立ち上がり、台所へ歩を進める...

 

 

 

 

「おい!天逆!!台所は客人禁制だぞ!!」

 

美羽は藍の言葉を無視して冷蔵庫の扉を開けて中を確認した後に深々と合掌する

 

「...ねぇ?この冷蔵庫ぶっ壊れてるわ...」

 

美羽の言葉に幽々子は信じられない顔をする

 

「ええ!!!?だってこの前買った...のに...?」

 

美羽は冷蔵庫を開けて中に手を入れる

 

 

「...残念ながら...内部も冷たくないわ...他の食材は諦めたほうがいいわン」

 

彼女がそう言うと幽々子は膝から崩れ堕ちる

 

 

「...そんな...まだ色々なものがあったのに...」

 

「ざっと...何かの部品がイカレタのでしょうねン...それで内部の温度が上昇してこの有様って話かしら?」

 

「買ったばかりなのに...」

 

幽々子はショックを隠せないような顔で冷蔵庫を恨めしそうに見つめ美羽は火のついていないキセルを咥えながら頭を掻く...

 

 

「アタシは機械には疎いのよン...うちの技師がいれば何とかなるけどねン...」

 

「その技師はどこに!」

 

幽々子は希望に満ちた顔をするが美羽は首を横に振る

 

 

「...残念だけど行方不明なの...現在捜索中よン」

 

「ううう」

 

美羽は水羊羹を食べ終えた睡煉の方へ向かう

 

 

「帰るわよン」

 

「はいはい!!しかし残念ですね...忌梗がいれば、こんなの新品同様になるというのに...」

 

「できないことはできない...それでいいじゃないのン...では失礼するわ」

 

美羽と睡煉は姿を消す...

 

 

その場に残っているのは項垂れた幽々子だけ...

 

 

「紫様...天逆の件はとりあえず?」

 

「保留よ...余計なことはしなくていいわ」

 

「...分かりました」

 

藍はそのまま食器を片づけに居間へ向かう...

 

「...戻りたくない...か...でも随分と長考したわね?何か大切なモノでもあるのかしら...」

 

私はとある戦いを思い出す...

 

そこには重傷を負いながらまだ私達に挑み続ける○○を思い出す...

 

(ここから先は通さない!!!アタシを認めてくれた人を!!守る!!アタシの命に代えても!!)

 

...あの長考は、それかしら?...認めてくれた人ね...

 

今回はとりあえず収穫はあったわね...天逆が思ったより話を理解できる者で助かったわ...残りはまた今度お話しましょうか...

 

 

ね?認められない英雄さん?

 

 

 

 




久しぶりに投稿...

転勤があるので更新が遅くなります

ではこれにて

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