上層部から新たな任務を渡された天逆美羽と睡煉は前異変の発生源である白玉楼へ向かう。
内心ここには向かいたくはなかった美羽ではあるが、調査をしなければ始末書の地獄が待っているため、向かうざるを得ない...
果たして今回のお仕事も解決するのであろうか?
side美羽
白玉楼へついたアタシは、門の上でキセルに火をつけて思案にふける...
調べた限りでは、ここはあの妖怪の賢者の友達の屋敷らしいわ...
あのスキマと知り合いならばアタシとしても、あまり会いたくはないわねン...
「ふぅ...睡煉...とりあえず庭の奥へ向かうわよ?」
「奥ですか?屋敷の方ではなくて?」
烏の姿になって頭に乗っている睡煉は首を傾げる...
「前回の異変の原因を調べたほうが早いわン...」
「原因ですか~?私としても検討がつかないというか?」
「...そういえば...確かアンタはあそこにはいなかったわねン」
とりあえず...柚神の奴が手に入れた情報だけで事足りるわ...でも、あまり時間はかけられないわね...あのスキマ妖怪が来たら色々と面倒なことになるわ...
「迅速にやるわよ...早く仕事終わらせて帰るわン」
「了解です!」
アタシ達は内部の者に気づかれないように、庭の奥へ進んでいく...
日本庭園の奥にたどり着くと、そこには大きな枯れた木が一本立っていた...
ここが霊夢達が今回の黒幕である西行寺幽々子と戦った場所...
「アタシ集中するから...何かあったら宜しくー♪」
「了解!!」
睡煉はアタシの頭から離れて近くの木の枝にとまる...
さて...ここからがアタシのお仕事!柚神のデータと照合しないとね...
「...」
対象...枯れた木こと...西行妖...
古くから存在する桜の木の化け物...現在は休止中というより、封印がかけられているわね...
で~も...封印されていても力を感じるわ...これはアタシであってもキツイわね...
この様子だと...相当な数を殺めていることは確定...
...封印をかけたのは、やっぱり八雲紫か...何となく予想はついていたわ...
「大体のことは分かったわね...睡煉?大丈夫よね?」
「ふぁぁ...だいじょうぶです...」
早くも寝に入りそうじゃないの...
「...睡煉?寝たらどうなるか分かっているわよね?」
「!!大丈夫です!!起きてますよ!」
...どうだか...この子は少々マイペースなところがあるのよね...警戒心はあの3人の中で一番薄いし...
「とりあえず...やりますかねン」
...異変の内容
今回の黒幕である西行寺幽々子が発端...
庭師の魂魄妖夢に春を集めるように命ずる...か
春を集めるね...どういう原理かは不明だけど、集めれば集める程幻想郷は冬になっていくみたいね...
この世界何なのよ...
異変を起こした理由は西行妖の開花と言ったところかしら?アレの封印が解かれたら幻想郷の生き物がどのくらい死ぬのかしらね?随分お淑やかに見えるけどテロ紛いなことをするのねぇ...
「美羽様!危ないです!」
「っ!?」
突如来る睡煉の言葉に反応し、アタシはその場から飛びのく...
少し頬に痛みがあるわね...少し反応が遅れたかしら?
「随分な挨拶ねぇ...」
「何をしている天逆...」
アタシの目の前には金髪のショートヘアに同色の9本の尾をし、導師服に身を包んだ九尾の狐...八雲紫の式神こと八雲藍がいた...
「...お久しぶりねぇ?あの時の戦い以来かしら?」
「ふん!お前の存在があの時の戦いの戦況を変えたんだ...迷惑だったってことしか私にはない!」
「アタシとしてもアンタらのことは迷惑でしかなかったわン」
コンパクトを取り出して顔を確認する...
左頬にわずかに切り傷が出来ているわね...まぁすぐに治るわ...
「しかし...いきなり攻撃とは不躾ね?アタシじゃなかったら危なかったわよ?」
「幽々子様の屋敷に無断で入るお前がそれを言うか?首を掻き切るようにやったに決まっているだろう...今度はその左腕だけでなく四肢もやってやろうか?」
「...」
そういえばアタシの左腕を切断したのはコイツだったわね...あの時の借りを返していないし...
side藍
美羽は薄ら笑いを受かべて、キセルに火をつける...
こいつは生かして置いたら非常に不味い...現在としても...体から霊力があふれ出ているし...
「...やるのか?来ないならこっちから行くぞ?」
「あはは...ちょっと頭に来たわね?...今までキレなかったアタシに勲章を与えたいわ...」
「ブチ殺すわよ...妖怪狐!!」
美羽は床を踏みつけて石畳を破壊する...殺気が駄々漏れだ...
しかしこちらとしても好都合だ...紫様からは戦闘は禁じられてはいるが...身を守るためならば、それは別の話だ!!
「十二神将の宴!!」
「ヴァイオレンス・ウェブ!」
私達はお互いのスペルを発動する!
「お止めなさい!!!」
「!」
「...」
突然の声に私達はスペルを中止する...
この声は聞き覚えがある...
この声は...
「藍?私は一応指示はしてあるはずよ...天逆には手を出すなとね?」
スキマが開き私の主である八雲紫様が出てくる...
「しかし!!」
「二度は言わないわよ?それと一歩も動かないでね」
「...はい」
...これ以上はやめておいた方がいいか...このままでは私がお仕置きを受けてしまう。
紫様が天逆の方を見ていると彼女はキセルの灰を地面に落とす
「戦いの邪魔をするとは...相変わらず無粋ね」
「それは貴女もやったことでしょう?」
「ふん」
天逆は不服そうに鼻を鳴らし、キセルを咥え、そして紫様は木にとまっている白い烏の方へ向かう。
「そして貴女も攻撃をやめてくれたら助かるわ...藍の非礼は謝るわ」
紫様は白烏に頭を下げる?何でそんなものに?
「...何ですか?バレていましたか?」
「!!」
白い烏は形を変えて少女へと姿を変える...
赤い軍服に白い髪...そしてうさ耳のついている...
「ええ...貴方も美羽と同じく殺気が駄々漏れだったからね」
「あらら...これでも頑張ったつもりなのですが...」
少女が能力を解くと彼女の右腕の爪がどんどん現れていく...
「...!」
その鉤爪は私の首元まで来ていて触れる一歩手前だった...気づかなかった...いつもの間にこんなことに?
「その首...美羽様の左腕のようにふっ飛ばしてあげるつもりでしたが...」
「...この子の非礼は謝るわ...だから手を引いてくれるとありがたいわ...」
「睡煉...ここは引きなさい...今回の仕事には殺しは入っていないわ」
睡煉と呼ばれた少女は黙って爪を元に戻す...
「...仕方ありませんね♪美羽様の命令ならば猶更です♪」
睡煉は帽子を取り、うさ耳を撫で笑みを浮かべているが目は全く笑っていない...
「しかし...他の2名なら私の様にはいきませんね♪私は一番優しいですからね」
...2名?こいつの他にも天逆には部下がいるというのか?
一見大した力はなさそうに見えるが..戦闘慣れしているのは確かみたいだ...この私に気づかれずに攻撃の射程圏内に入ったのだから...
紫様は睡煉の頭を軽く撫でた後、天逆の方を向く...
「...少しお屋敷でお話でもしましょう?お茶くらいは出すわよ?」
「断るわン...大体の仕事は済んだし残りは報告書をまとめるだけだもの...」
天逆は乗る気ではないが、紫様は話を続ける...
「...貴女の今後の事でもあるの...もしかしたら貴女の本当に望んでいる結果が得られるかもしれないわよ?」
「...アタシが...望んでいること?」
天逆は僅かに紫様の話に食いつく...それを見た紫様は僅かに笑みを浮かべる...
「時間はあまりとらせないわ...少し話すだけよ」
「...少しだけよン」
天逆は少し迷ったような顔をした後承認し...紫様はそれを見た後こちらを向く
「藍...お客様を白玉楼に招待よ...お茶の準備をしてあげて」
「え...」
「早く」
「はい!!」
私は白玉楼の屋敷へ向かう!!
何であいつを招待するんだ!?紫様の考えていることが理解が出来ない!!
だが...やるしかない...今の奴は...お客様だ...
だが...白玉楼で暴れたら...どうなるか分かっているんだろうな!!天逆!!
私は心を消してお茶の準備を始める...
藍様の登場でした
ではこれにて