東方天災手記   作:ベネト

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これでこの異変も終わりです


嫌なデータ

西行妖から離れた桜の木々が生い茂る空間...

 

そこにはこの異変の偵察にきた天逆柚神と後ろに立つ...妖怪の賢者である八雲紫の2名がいた...

 

西行妖の方を見たまま表情を歪ませる柚神と対称に笑みを浮かべる紫...

 

その空間の空気は少し重苦しくなっていた...

 

 

 

 

 

side紫

 

「あらあら?人と話をするくらいはこちらを向いたらどう?」

 

私は柚神に言うが彼女は視線を動かすことなく西行妖の方を見ている...

 

「...書類作成のための観察をしないといけませんので...しばらくこのままを許してよ」

 

柚神の声は僅かに棘を感じるわね...まぁ仕方ないわ...

 

 

「あの天逆が...今では天狗の組織に仕えているとはね...驚きよ」

 

「...」

 

「...生きているとは思わなかったわ...美羽と一緒に派手に爆発したのに幻想郷縁起を見たときは驚いたわ」

 

「...あの時は死ぬつもりだったし...生きていること自体がワタシの最大の誤算なのよ」

 

柚神は画面を忙しなく動かした後一息ついたのかスコープを外す...

 

「悲しい存在ね...」

 

「どうとでも言え...元々必要とされていなかったもの」

 

柚神は初めて私の方を向く...

 

その顔は明らかに...敵意むき出しな怒りの表情を浮かべている。

 

 

「言葉が乱れているわよ...」

 

「五月蠅いな...今は公私を分ける必要もないわ...今のワタシにあるのは私怨だけよ」

 

柚神は殺気を出すがすぐにホログラムを出してそれを確認する...

 

 

 

「...睡煉の戦いは終わりましたか...回収に行きませんと...」

 

彼女はホログラムを消す...

 

「...睡煉...あの赤い兎かしら?随分と良い部下を持っているじゃない」

 

「...ワタシには過ぎた部下です...今のワタシは組織に使われる存在...ワタシにとって...大事な子ですから」

 

柚神は木から降りて私から離れる...

 

 

「...あら?西行妖はいいのかしら?」

 

「...見なくてもすぐに決着はつくでしょう...では失礼...ワタシはまだやることが山積みなのでね」

 

彼女は姿を消しいなくなる...

 

 

 

「やることが山積みね...本当に中間管理職になってしまったみたいね...」

 

私は西行妖の方を見る...

 

あの桜は絶対に満開になることはない...今回の異変は大事にはならないわ...

 

しかし...天逆か...あの様子だと本気は出していないみたいだけど...危険な存在であることには変わりはないわ...

 

それに彼女に部下がいたことは驚きね...パっと見ただけだけど...明らかに能力以外の何かの力を持っているのは確定ね...

 

「...前途多難かしら...でも警戒しておくことに越したことはないわ...」

 

私はその場から離れ一度屋敷へ帰還する...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃白玉楼 門前...

 

天逆柚神がそこに辿りつくと彼女の体が光だし...中から天逆美羽が姿を現す...

 

「おや?遅いお目覚めで...」

 

「...悪いわねン...少し変な幻覚を見ていたわン」

 

美羽は具合が悪そうな顔をしながらキセルを出して火をつける...

 

 

「幻覚ではありませんが?それに睡煉も健在ですし気にすることは...」

 

「アタシは!あんな思いはご免なのよ!!!」

 

美羽は柚神に掴みかかる...

 

柚神は溜息をつき美羽を見つめるだけだ...

 

 

 

「少しは肩の荷を降ろした方がいい...睡煉が健在だったことが分かれば他の子も生きている可能性が少しは上がったと思いますが?」

 

「...」

 

美羽は俯き柚神は彼女の手を払う...

 

「今までの馬鹿みたいな過剰な自己評価はどうしたのです?完璧なのでしょう?」

 

「過剰評価ではないわ...アタシは...完璧なのよン!!!アタシの名は!天逆○○!!!才色兼備な!完璧な兵器なのよ!」

 

美羽が高らかに宣言するとドタバタと鳴り響く足音が彼女達に近づく...

 

 

「お待たせしましたー!美羽様ー!柚神様ー!」

 

彼女達の部下睡煉の声...美羽は睡煉の方へ指を向ける

 

「遅いわ!睡煉!!さっさと帰るわよン!!」

 

「あはは!すみませんー!ちょっと苦戦しましてー!」

 

「...」

 

睡煉の姿を見て美羽は硬直する...

 

彼女の視線の先には血まみれの睡煉の姿...彼女は全く気にはしていないみたいだが、第三者の目では重傷者としかいいようがない...

 

 

「す...睡煉...大丈夫なのですか?」

 

「ええ♪少し切られましたが拳一発でノックアウトしてきましたよ~」

 

心配する柚神に対して彼女は軽い言葉で返す...

 

「まぁ...いいです...美羽早く帰還しますよ...帰ったら書類を...美羽?」

 

「...ぶくく」

 

案の定美羽は泡を吹いて失神していた...

 

柚神はそれを確認すると彼女の前に立つ...

 

 

 

「さっさと帰還するわよ!こらー!!!」

 

バシンー!!

 

柚神の目覚ましビンタが炸裂し美羽の体は門に叩きつけられる...

 

だが柚神の努力空しく頬に大きな赤い紅葉をつけた彼女は起きる気配を見せなかった...

 

「はぁ...最後の最後まで締まらない!」

 

「あちゃ...クリティカルヒット入っちゃいましたね...」

 

「帰還するわよ...これから説明もしないといけませんし」

 

「はいはい!」

 

柚神達は美羽を抱えて妖怪の山へと帰還する...

 

これでこの異変も無事に終わったはず...

 

多分...

 

 

 




次回日常

ではこれにて

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