天逆一行はマヨイガにてかつての部下である睡煉と合流する...
部下と合流できて感激する彼女ではあったが本来の目的である長い冬の原因を突き止めるには及ばなかった...
そして彼女達は吹雪荒れている幻想郷の空を飛ぶ...
異変の解決にむけて...
side美羽
「すごい吹雪ですね~?これではこの世界の生態系が狂ってもおかしくはないですね」
「...ええ...アンタのいう通りよ...まぁ...とりあえず...今の仕事はこれの原因の究明だから...協力おねがいね」
アタシは睡煉に言うが彼女は不服そうに首を傾げる
「ん~?私としては~...美羽様が何でわざわざここまでするかが疑問なんですけど...」
「...仕事は選んでられないの!!そう思うなら!アタシのために頑張りなさいよ!!」
「それはそのつもりですー!」
睡煉は頬を膨らませて賢明に辺りを見回す...
彼女がぶらぶらさせている左うさ耳には外れかかった装置が埋められている...
「それって受信器かしら?」
「ん?そうですけど?」
アタシが尋ねると彼女はどうでもよさそうにうさ耳を掴んで受信機を確認する...
だけど...その装置にアタシは少しだけ...希望を見出しているわ!!
「それで...他の子の居場所って分かったりしないかしら?確か貴女たちの標準装備だったはずだけど?」
「あ~...」
睡煉は言いづらそうに眼を背ける...
「...何か問題でもあったかしら?」
「...実はこれ壊れているですよね~...爆発の以前から調子悪くて...直そうかなと思ってたら...アレが...」
...やっぱり...うまくは行かないわよね...
「せめてメンテナンスくらいはちゃんとしときなさいよ...」
「それは重々承知です...地上で遭難して連絡できなかったんですから...」
睡煉はアタシを見つめた後...帽子を目深にかぶりなおす...
「...彼女達なら平気ですよ...」
「...ん?」
「だから!他のメンバーです!!簡単にくたばるわけないですし!!どこかで生きてますって!!美羽様が心配するほどないですよ!」
「...ん」
...少し気を使わせてしまったかしら?
駄目ね...これじゃあ...完璧とはいえないわ...
しばらく進んでいくと魔法の森の上を通過する...
ここは...調べるだけ無駄ね...広いし迷いそうだし...柚神のデータから...特に変わったものはなかったわ...
「見た限りめぼしいものはなさそうですね...」
「そうみたいね」
...今回の異変は目的が分からなすぎるわ...これではどこから手をつけていいかすらままならないわ...
「...困ったわねこのままじゃ本当に手詰まりだわ」
「場所を変えた方がいいですかね?」
「その方がいいわね...柚神...次の場所をサーチして」
さっさと次を見つけないと...このままじゃ...時間を無駄にしてしまうわ...
「いえ?ここに来たことは決して無駄ではないと思うわよ」
「...」
声のする方を見るとそこにはアタシ達を見下ろす金髪の少女がいた...青のワンピースに白のケープを身に着け...彼女の周りには洋風の人形が彼女を守るかのように浮いている...
明らかに能力者...困ったわね...あまり戦闘をするのは好ましくないわン...
「お次はどちら様?アタシ達はお仕事で忙しいのよン」
「私はアリス・マーガトロイド...只の通りすがりよ...お仕事ね...天狗とうさぎの妖怪が何をしているのかしら?」
「上層部からの指示です...この長い冬を何とかしろという勅命を受けているのが現状ですね...」
柚神の話にアリスは薄ら笑いを浮かべる...
「行き詰っているように見えるのは私だけかしら?」
「何が言いたいのよン!...喧嘩なら買うわよ?仕事が思う様に進まなくてイライラしているのよン!!」
「...天狗組織に属しているにしては...随分と短気なのね?どこぞの新聞記者を見習った方がいいわ」
「文の奴は関係ないわ!!管轄が違うのよ!アタシ達は!!」
...イライラして疲れてくるわ!これはわざと煽っているのかしら?
アタシに興味を持ったから近づいて来たって感じみたいだけど困るわね...
余力は残しておきたいんだけど...戦わないといけないみたいね...
「美羽様!私が行きますよ!」
睡煉が手を挙げてアタシの前へと出てくる
「アンタは戦闘向けではなかったはずだけど?」
「いいじゃないですか!!久々の睡煉の戦いを見てくださいよ!」
睡煉はアリスと対峙する...
「では!前座としてこの睡煉がお相手します!!」
睡煉は笑みを浮かべて手を広げながらアリスの方へ向かう...
「貴女が相手ね...一番弱そうなのが来たわね」
アリスの言葉に睡煉は頬を膨らませる
「失礼ですねー!!これでも私はそれなりの実績はあるんですよ!!少なくともお姉さんのような人間には遅れはとりません!!」
「...そう?」
アリスが手を動かすと睡煉の周りに人形が一瞬で配置され睡煉は身動きが取れなくなり動きを止める...
「にゃ!?」
「...その割には周りが見えていないわ...これで終わりよ」
「うぎゃあ!!!」
人形から光線が放たれ睡煉は被弾し爆発四散する...
sideアリス
「...スペルを発動する必要もなかったわね」
辺りには爆発による砂煙が舞っている...
今の子弱かったわね?何に実績があるか分からないけど...隙がありすぎるわ...
「睡煉ー!返事なさーい!!」
白い軍服に身を包んだ天狗は青い顔をしながら煙に向かって叫んでいる...
恐らくこの中では一番強いのはこの人で間違いないわね...
隠しきれていない力を感じるし...この人なら魔法の実験になるというものね!
砂煙が晴れてくる...
あの子からの反撃が来るかもしれないけど...殺気も何も感じないわ...
「...?」
砂煙が完全に晴れ私の目の前には倒れているはずの彼女が跡形もなく消えている光景だった!
魔力は調整したはず...消滅するまでの力は出していないのに何故!?
白いのを見ると体を震わせて青い顔を更に青くしている...
「...あ...あ...アタシはまた...部下を...死なせたというの?...まだ...つもる話も聞いていないと...ぶ...ぶぶぶっくくくっ!!」
彼女は白目を剥いて口から泡を出して倒れる...
...何か悪いことをしてしまった気がする...私だってまさか消滅するとは思っていなかったわ!!
彼女の横の黒い軍服の者はスコープをハンカチで拭きながら観察するかのように彼女がいた空間を眺めている...
こっちの方はあまり力を感じないけど...何か嫌な感じがするのよね...私のすべても見透かされているような目線を感じるわ...
「...ふむ...なるほど」
「あ...貴女は冷静なのね...そこの白いのは気絶しちゃったけど?」
黒いのはどうでもいいかのように目を閉じる...
「美羽がこうなのもいつものことです...長年の付き合いですからね...それよりも貴女...アリスといいましたよね?」
「ええ...そうだけど?何?」
黒いのはスコープを目に着けて私を見つめる...その緑色の瞳は何かを見透かしているような雰囲気をだしている...
「...油断しないほうがいいですよ?...睡煉は人懐っこい子ですけど...」
「っ!」
黒いのが言い切る前に私の体に違和感が起き私は動きが取れなくなる!
「な...」
誰かに羽交い絞めさせたかのように体が動かなくなる!もがこうにしても...力が強い!!
辺りには誰もいないというのに!!何が起きているの!
「お姉さん...捕ま~えた~!」
「っ!!!!」
背後の何もない空間から先ほどの睡煉と呼ばれた子の声が聞こえる!!
後ろを肩越しに見つめていると...背景の景色が少しずつぶれ始めてきている?
「...な...何が起こって...」
「お姉さん私の能力を甘く見ていたみたいですね...」
声が再度聞こえると同時に私の背後にはいつの間にか睡煉が私を羽交い絞めしていた...
「...う」
このまま上海達で迎撃してもいいんだけど...彼女と密着しすぎているから...私にも光弾の被害が及びかねない!!
黒いのが言っていた油断というのは...この子の力のことだったのね!!
「...何かの能力持ちかしら?」
「そうですね~...言いますと~私の能力は(姿を自在に変化させる程度の能力)なのですよね...隠密作業には便利なんですよね」
睡煉は体の半分を消す...
今の私には左半身がない酷い映像が映っているけど...本当に消えたわけではないみたいね...
細胞を弄って透明化させたというべきかしら?
「随分と面白い能力を持った部下を持っているじゃない...」
黒いのにいうと彼女は首を傾げる...
「...余裕そうですね?本当に気を付けた方がいいですよ?...さっきの話の途中ですが...睡煉は人懐っこいですが...」
「これでも何人も殺めている...連続殺人鬼なのですからね...」
「!?」
黒いのの話を聞き終わった後...首筋に冷たいものを感じる...
今まで気が付かなかったけど...私の首にはタガーの刃が当てられていた...
「お姉さん~?私はこう見えて~...本当に沢山の人をバラした...大量殺人鬼...大量殺人兎なんですよね~こういう戦闘はある程度踏んでいるんですよね...」
「う...」
...力量を図り損ねたかしら?
この中では一番弱いと踏んでいたけど...本人のいう通り実績はあったみたいね...
...なら...私も少し力を入れた方がいいかしら...
「!...睡煉...戻りなさい」
黒いのがいうと私の後ろにいた睡煉は黒いのの下へと戻る...
「...何です?これからがいいところなのに!」
睡煉は地団駄しながら抗議をするが黒いのは気にせずに空間に画面を表示させてそれを眺めている。
「...時間がかかりすぎましたね...これでは今後の任務に支障がきたします...他のところへ向かいますよ」
「えー...美羽様はどうするんですか?」
黒いのは倒れている美羽を一瞥して彼女の体を担ぐ...
「そのうち起きるでしょう...こうなれば他の方法をとりましょうかね」
「他の方法ですか?」
「...ええ」
そういうと黒いのと睡煉はそのまま森の中へ消えていく...
「...」
...あの中で一番やばそうだったのは...美羽という天狗だったけど...あの黒いのも同等ね...
あの人私が少し魔力を高めたのに気付いて睡煉を退かせた...戦闘全体を把握する力に長けているみたいね...
「...まぁ...いいわ...少しは実験が出来たし...」
私は吹雪いている空を見る...
この冬も長いわね...
あの黒いのが何を考えているか...何となく予想がつくわ...
それに...もしかしたら...あの天狗...
「...まさかね...物理的に無理よね...さて...上海達を回収して戻りますか」
...私は上海達を回収して自宅へ戻る。
軽い睡煉の能力説明でした
ではこれにて