猛吹雪により白銀の世界と化した幻想郷...
天逆美羽はいつまでも終わることのない冬の異変の勅命を受け幻想郷を飛ぶ...
side柚神
「さぁて!!黒幕をぶっ飛ばすわよン!!!とりあえず片っ端からやっていけばいいわね!!」
開口一番...美羽の口からとんでもない言葉が飛び出す...
早速テロでも起こそうとでもいうのでしょうか?
「あの?美羽?黒幕はともかく片っ端からとは?」
「何言ってるのよン!!怪しいと思った者は片っ端からやるのよ!アタシの腰の痛みの恨み晴らしてやるわ...」
美羽が拳を鳴らす...
この脳筋が...これではいつまでたっても黒幕へはたどり着けませんよ!!
それどころか多数の冤罪被害者を出してしまうでしょうが!!
「幾らなんでも無差別は非効率では?もう少し頭を冷やした方が?」
「アタシは!アンタの拷問に近いマッサージを10分近くやったのよ!?この怒りは誰にぶつければいいのよ?」
...完全に怒りで目が曇っていますね...これはダメです...ここまでになると美羽は止められません...ワタシは良く知ってますから
「この左腕の切断の痛みよりもやばかったわ!!」
美羽は左腕の縫合の傷をさする
「...それは盛っていますよね?」
「...う...うん...盛ったわ...これが一番痛かったわ」
美羽は罰が悪そうに顔を青ざめて目を反らすが何かを見つけたのかそれの方向を見る
「アタイはサイキョー!誰にも負けないー!」
美羽の目線の先にはいつぞやの氷精ことチルノがいた...
冬...氷...異変...
単純な美羽の思考回路の事はワタシには頭に入ってますもの...次に彼女がやることは...
「犯人みーっけ!!!」
美羽はもはや狂気に満ちた表情を浮かべてチルノの方へ接近する...
「あ?」
「おらぁ!!」
美羽が拳を突き出し振動波を出すがチルノは辛うじてそれを避け...初めてワタシ達の存在に気づく...
「げ...お前らあの時の...」
「久しぶりじゃない♪チルノ♪この異変アンタが犯人よね?とりあえず冬を解除するか殴られるか...どちらかを選びなさい♪」
流石単細胞...話を聞くまでもなく犯人扱いとは...
チルノの方も困惑の表情を浮かべている...
「い...異変?アタイ何のことかわからない...」
「アンタが犯人でしょ?氷の妖精だもの...長い間冬にするくらいできるじゃないの!?完璧のアタシの推理は間違いないわ!!」
...何が完璧ですか...冬=チルノ...だと無理矢理考えたでしょけど...あまりにもガバガバすぎます...
「でも...アタイは知らない!」
「しらばっくれるんじゃないわ!!アタシの拳が火を噴くわよ!?」
美羽の奴...完全にチルノを犯人扱いしてます...
ああ...ダメだ...この単細胞が主導権を握っていると終わるものも終わらなくなります...
「少し黙ってなさい」
「ごふ!?」
私はすぐ近くにあった石で美羽の頭を殴る...
美羽はそのまま冷たい雪の草原に倒れこむ...これで話がスムーズに進みますね...
「え?美羽が...倒れた...」
「大丈夫です...これで丸く収まりましたよ」
「でも...雪原が血まみれで...」
チルノは倒れた美羽を指さす...
彼女から流れた血により雪原が血に染まってますが気にはしません!!!
私はそっと彼女に近づいて瞳を見る...
少し恐怖に染まっていますが...問題はないでしょう
「少し質問をします...貴女はこの長い冬の原因を知っていますか?」
「...し...知らない!」
チルノは焦るかのように返答しますが...瞳を見る限り嘘は言っていないみたいです...
嘘はついていない...これだけの情報があれば充分...彼女は異変に関わっていないし黒幕も知らないということだけわかりました...
「これで質問は終わりです...うちの美羽がご無礼を働きましたね...ではワタシ達は失礼しますよ」
「お...おう」
ワタシは美羽の体を引きずりその場を後にしようとするが辺りの気温の変化に足を止める...
「...」
(お待ちなさいよ...せっかく来たんだし私の相手もしてもらわないと...)
透き通るような声...チルノのものではない別の声...誰かいますね...
しばらくすると辺りが吹雪き始めて中から一人の女性が出てくる...
薄紫色のショートヘアに白い防寒着のような服...
この人が来て更に気温が下がりました...
「どちら様で?」
女性はワタシを見て口を開く
「私の名はレティ・ホワイトロック...冬の妖怪といったところかしらね?」
レティと名乗った女性は軽く息を吐く...
その息は白く...辺りの大気を少しだけ凍らせる...
一応...この人もこの異変には該当しますかね...
ワタシはスコープの倍率を上げて彼女の瞳を観察する...
「もしかして...貴女はこの長い冬の問題に関係しているみたいですね?」
「いえ?何が原因か分からないけど...満喫はさせてもらっているわね」
...変化なしか
嘘は言っていませんね...しかし何でこのタイミングで姿を現したのでしょうか?
何か嫌な予感が...
「失礼...ではワタシ達はこの辺で...」
ワタシ達が去ろうとするとワタシの横を鋭い氷柱が通り過ぎる...
「まだ何か?こちらは色々と忙しいのですが?」
「こちらにはまだ用はあるわ...チルノの話を聞いてたけど...貴女たちこの長い冬の異変を解決しようとしているみたいじゃない?」
「ええ...一応仕事ですので」
「...それはまだ駄目よ...せっかくこうなったんだし...もう少し長くてもいいじゃないの!だから少し眠っててもらいたいのよね」
レティはスペルカードを取り出す...
ふむ...関係ないのに巻き込まれましたか...
ワタシとしては時間を浪費するのはあまり宜しくはないのですがね...
「美羽出番ですよ?」
ワタシは美羽を揺さぶるが...彼女はぐでっとしたまま...
ああ...そういえば...ワタシが昏倒させたままでしたね...
と...いうことは...この荒事はワタシが担当ですか...
「はぁ...こんなことだったら美羽を気絶させるべきではなかったですね...」
「もう遅いわよ!...見た限り貴女の方は戦えなそうだしね...」
レティは余裕な表情でワタシを見ますが...ワタシもそれなりに戦えるのですがね...何がいけないのでしょうかね...
「とりあえずは無駄な時間は取りません...矛盾(リバース=リバース)」
ワタシはスペルカードを発動させる...
さて...どこまでやりますかね...
sideレティ
「さて...とりあえず氷漬けにしときましょうか」
私の目の前には黒い軍服の女性と足元で虫の息になっている白い軍服の女性...
さっきの光景を見る限り、そこの白いのは直情型...
ゆったりとした仕草が目立つけど...この中では一番素早く動ける方ね...昏倒していて助かるわ...
チルノに突っかかってきて...あまり気が長い方ではないみたいだし...
そしてそこの黒いのは...慎重...チルノや私の瞳の動きを確認して真偽を図っていた...
頭はよさそうだけど...さっき白いのの頭を殴るときの動作が鈍い...
こっちの方は戦闘向けではないようね...
彼女は目につけたスコープをハンカチで拭っている...
「やるなら早く始めましょう?こっちも時間が限られているので...」
「ええ...分かってるわ...とりあえず貴女たちはここでかき氷よ!寒符(コールドスナップ)」
黒いのへと氷弾が放たれる...幾多の氷弾は黒いのを囲む!
「綺麗な弾幕です...ですが...避けられる範囲ですがね!」
その氷弾を抜けて私に一気に近づく!
「!!」
速い!!鈍そうな子と思ってたのに!!これは!!
私は彼女から距離を取るが彼女は私に手を向ける...来るわね!!
「来るのかしら...」
「ええ...ただしワタシの方からは来ませんがね...」
「え?」
ごっ!!
私の背に衝撃が走り私は体勢を崩す...
「え?被弾?」
私の背後を見ると何もない空間から光弾が出現しこっちへと向かってくる!!死角から攻撃とは姑息なまねを!!
私はそれを避けて彼女から更に距離を取る
大した速度でも威力もないけど...不意打ちにしては驚いたわ...
「死角から攻撃とは随分と卑怯なまねね...」
「ふふ...ワタシのスペル矛盾(リバース=リバース)は全てにおいて逆に作用するんですよね...こんな風にね!」
黒いのが前方下に手を向け私は辺りを見回す...
そして私の後方上部かの空間から光弾が発射される!!
「くっ!!」
...彼女の言う通り手の方向を逆の空間に光弾が発射される!!
私が避けると光弾は彼女の目の前で消滅する流石にも自分の光弾が当たるわけないか...
「ふふ...今のうちに慣れないと怪我しますよ?」
再度彼女はあらゆる方向に手を向けて逆方向に光弾を放つ...
「そうね...」
大した威力・速度もないから...数をこなせばすぐに体が慣れてくる...
変則的だけど...慣れれば何とかなるわ!
「あら?全部避けましたか?」
大量の弾幕を避け15分が経過する...
「少しトリッキーだけど普通の弾幕ごっこと変わらないわ...貴女のやることは全てが逆になる!貴女が前方に光弾を放てば私の後ろから光弾が来て貴女の方へと戻る...それさえ理解できれば問題ないわ...」
「おや?理解が早いようで...」
黒いのは悠長にスコープを拭いている...
自分の力が理解されたというのに...随分と余裕そうね...
でも...この子と長い間戦うのは禁物ね...次に何が起こるか分からないもの!!
私は彼女へ向かい距離を詰める!!
黒いのは私に手を向けて迎撃に移っている
この状態なら!!私の背後一直線に来るわ!!
「これでは終わらないわ!!」
私は背を氷結させる!!
軽い防弾チョッキみたいなものだけど、これでなら黒いのの攻撃を耐えて本体を撃つことができるわ!
「...思い込みとは恐ろしいものですね」
「え?」
黒いのを見ると彼女の手から光弾が放たれていた!?
そんな!!彼女の攻撃は逆に作用するはずなのに!!
とっさに避けようとするが自分で至近距離まで詰めてしまったのでもう目の前...避けられるはずもなく私は被弾する!
「ぐ...ああ!!」
私が落下し黒いのは私の前へと降りてくる...
「そんなに威力はありませんが...きついところに当たりましたし...動かない方が賢明ですね」
「あ...貴女なんで?貴女の弾幕は逆に作用するはず?」
黒いのは私に向かって微笑むだけだ...
「思い込みで行動するからですよ」
「...どういうこと?」
黒いのは空間にボードを出して指示棒でそれを軽くたたく...
ボードには黒いののスペルの細かな説明書きがされている...読む気にはなれないけど...
「ワタシのスペルはおっしゃるとおり!光弾の発射が逆になるものです...貴女は最後の一瞬それが来ると思っていたはずです...私がスペルを解除しているとも知らずにね」
「...解除...そういうことだったのね」
スペルの解除...つまり初めの状態に戻してたのね...うまい具合に嵌められたわね...
「そういうことです...ワタシがいつまでもそれをしてるとお思いですか?スペルの解除をすれば光弾は通常通りに発射されるのですよ...15分緩い弾幕で貴女が信じるまでね」
「...随分と意地が悪いわね...回りくどいことばかり...」
黒いのは嫌らしい笑みを浮かべて肩を震わせる
「ふ...くく...元々がそうですからね...他社を困惑・混乱・惑わせるのは楽しくてしかたがありませんっ!!...やっぱり...変えれたと思っても地は変わらないものよね...」
黒いのは私に近づいて私の額に手を当てる...
きついのもらったし...もう限界ね...これ以上動けないわ
「何?とどめを刺す気?」
「痛くはありませんよ...少し眠ってもらいましょうか?...目が覚める頃には春が迎えているでしょう」
「残念ね...そのまえに貴女の名前を教えてくれないかしら?名乗る前に戦いを始めてしまったからね...」
「名前ですか...そうですね...天逆...○○ですね...」
...可愛い名前ね...今度は...負けないわ...
私が意気込むと同時に強烈な睡魔が私を襲い視界が暗転する...
天逆○○...覚えたわ...
side柚神
「...しまった」
ついつい...本名を言ってしまいました...
美羽の奴が五月蠅いです...バレないようにしときましょう...
私は眠りについたレティを木下へ移動させ気絶している美羽を叩き起こす
「美羽!起きなさい!!!次行きますよ!!次!!!」
「...うぁ?」
美羽は目を開けて血まみれの額に手を当てる...
「...!!!な...何でアタシが血まみれ!!」
彼女は怯むが記憶が安定してきたのかワタシに掴みかかる
「暴力反対です...」
「何が暴力反対よ!!!アタシを石で昏倒させたくせに!!!...っ!!いたた...」
美羽は蹲って頭の傷を回復させる...
少し強くしすぎましたかね?耐えられるくらいには手加減したはずですが?
「話を円滑に進めるためです...冤罪を作るわけにはいきませんし...」
チルノの方を見ようとするが姿は無し...逃げてしまったのでしょうか...
「せめて口頭で注意でいいじゃない!!アタシだって聞き分けはあるわ!!」
「...理性より本能で動くのが何を言っているのですか...ワタシは充分そこのところは理解しています」
「...う」
美羽は言い返せなくなったのか言葉を切る...
とりあえずこれは終わりですが...まだ仕事を終えるには早いです...
異変の黒幕が誰かもわかっていないのですからね
「行きますよ美羽...」
「分かってるわよン...」
ワタシ達は吹雪の中を再度飛ぶ...
ゆっくり...情報を集めていきますかね...
とりあえず完了です
ではこれにて