紅魔異変後の異変の再発生がないか紅魔館に潜入した天逆美羽と柚神...
柚神の能力でうまく変装した二人であったが紅魔館のメイド長である十六夜咲夜により正体を看破されてしまう...
任務の失敗覚悟する美羽ではあったが咲夜の仕事を手伝ってくれるなら正体は黙っておくという交換条件により再度潜入捜査を開始する...異国の文化を知らない美羽達が紅魔館の仕事ができるかどうか...それは誰にも予測がつかない...
side美羽
アタシ達は咲夜に連れられて長い廊下を歩いている...
正直...任務失敗を覚悟したわン...本当に続行できてよかったわ...流石のアタシも大量の始末書をやるのはもう勘弁だもの...
(まずどうします?)
柚神がアタシの頭の中に囁くけど...もう決まっているわ...聞かなくても分かっているクセに...
「とりあえず...やることはちゃんとやるわよ?で?アタシ達は何をすればいいのかしら?」
咲夜はアタシ達の方を見て僅かに笑みを浮かべる...
「...頼もしいわね...流石は妹様とお嬢様を倒しただけはあるわ...」
「ふん...アタシ達は完璧だもの...当然よ!」
完璧...それがアタシ達の存在理由だもの...
廊下の奥に大きな扉があり咲夜はそれのノブに手をかける...
「では頼むわよ...まずここ...」
咲夜が扉を開けるとそこは...
「...あ...ここは...」
目の前にはいつぞやの大きな図書館...そういえばここでパチュリーと魔理沙と戦ったわね...
「...まずは...ここの図書館の掃除をお願いするわ...前回の異変の時に滅茶苦茶になってしまったし...」
「...確かにねン」
よく見ると本棚が破壊されている箇所がちらほら見受けられる...まだ完全に元に戻ってはいないみたいねン...
「あらあら...随分と破壊が進んでいるようで...」
柚神は辺りを観察するように見回し咲夜の方はアタシの方をじっと見つめる...
「どこかの誰か達が図書館で大暴れしたからよ...おかげで未だに掃除が進まないわ」
「ええ...うちの美羽がご迷惑おかけしました...」
柚神はぺこりと頭を下げる!!!
何でアタシの所為!?
「ちょ...ちょっと待ちなさいよ!!!確かにアタシが大暴れしたのもあるけど魔理沙が本棚をドミノ倒ししなければもっと被害は抑えられたはずよ?」
「大多数は貴女の仕業でしょ...美羽」
図書館の奥から今度はパチュリーが現れる...何だか不機嫌そうな顔をしている。
「あら?この前ぶりかしら?」
「ええ...何でそんな恰好の貴女達がいるか分からないけど...図書館の掃除に来てくれたのかしら?」
パチュリーは咲夜の方を見る...
「ええ...パチュリー様...職場体験のようなものです...今回はこの2人に紅魔館の仕事をやっていただこうと思いまして」
「なるほどね...レミィからは何も聞いてないけど...とりあえず図書館の掃除を任せるわ」
この大きな図書館の掃除ねぇ...まぁ...すぐに終わるわね...
「柚神...」
「はいはい...少し失礼しますよ」
アタシの合図で柚神はパチュリーの方へ移動し頭に手を当てる。
「な...何よ...早く掃除を...」
「...大体の過去のデータは分かりました」
柚神はパチュリーから手を放し図書館を見つめ能力を発動する。
荒れ果てた図書館はみるみるうちに変化していく...倒れてたり破砕した本棚は元通りの形となり元の場所へと戻り、落ちていた本は元の本棚に収まっていく...
それを見ている咲夜とパチュリーはその光景をポカンとした表情で見つめている。
「な...何が起きたのよ?柚神の能力?」
パチュリーは本棚を慌てて調べている...
「本の所定位置までちゃんとなっている...一体何をしたの?」
「柚神の情報を操作する程度の能力よン...これで大体の物は柚神が覚えていれば元に戻るわン」
柚神の方はスコープをハンカチで拭いている。
「...貴女の頭の中を見させていただいただけです...その光景をそのままやっただけですから...貴女が本の場所を覚えていたおかげで早く済みましたね...」
「...そういえば貴女うちの門番に化けたり出来たわね...」
「ええ...短い期間でしたらその人の姿を一度見れば大体模倣はできますよ?...生きている者・存在するものは全て情報となりますからね、ワタシ自身も例外ではありません」
「情報ね...なら?私の姿も貴女にかかれば思い通りに変更出来るのかしら?」
...何かしら?咲夜の奴、異様に柚神の能力に興味を持っているわね?あまり他人には興味を示さないような感じだったけど?
柚神は首を振る...
「残念ながら...他人の体というのは見た目の情報が固定化しているので例外はあります...傷などを受けた場合に元の状態に戻すことや身体能力を一時的に弄ることは出来ても姿そのものを変更・身長を増やす・胸を大きくするといったことの物理的なことまでは不可、それに生物の場合は生きている者のみですね、体の機能が停止した時点で不可です...モノはともかく生きている者については制約がある以上、ワタシの能力はそこまで万能ではありません...」
「...そうなの?残念ね...」
「何が残念なのよン...」
「...知る必要はないわ」
咲夜は少し気落ちでもしたのかそっぽを向く...
柚神は咲夜の方を見る。
「次はどうします?」
「...予想以上に早く終わったわね...じゃあ厨房に戻るわよ...」
アタシ達は図書館を後にし厨房へ戻る。
厨房へと戻ると咲夜はポットとティーカップを用意し始める...今度は何をしたらよいのかしらね?
「次は何をするのよン?」
「毎日15:00はお茶の時間だからそれの用意ね...貴女たちはお茶の用意をしてくれるかしら?」
「お茶の用意ですか?ではワタシが...」
柚神はお茶の葉が入った瓶を持つがアタシはそれを止める...
「ストップ!それはアタシがやる...」
「え?でも...」
「いいから!!!」
柚神に料理をやらせたら大変なことになるわ...それはもう過去に経験済みよ...お吸い物が汚水物になるくらい柚神の料理の腕は最悪だわ...料理を口に入れただけで意識を失うなんて自分でもここまで酷いとは思わなかったわ...
アタシはポットのお茶の葉と水を入れてカートに乗せる...
クッキーを持った咲夜が怪訝そうな顔をする...
side咲夜
「ちょっと!幾らなんでも紅茶はお湯を使うのよ!」
私は美羽がしたことを確認する...カートの上には湯気が出ていない紅茶があるだけ...幾らなんでもこんな手抜きは私としても許せないわ!
美羽は悪びれもせずに紅茶のポットを指ではじく...
「...ああ...悪いわね...アタシのお茶の作り方はこんな感じなのよン...大丈夫よ温かいから」
「?」
私はポットに触れる...
...温かい...丁度良い加減ね...何で?確かに美羽は水を紅茶ポットに入れたのに?
「...貴女の能力かしら?」
「それだけではないけどね...アタシの能力は...見せた方が早いわン...これ持って...」
私は美羽からポットを受け取る...まだ温かいわね?
「これで何が分かるのよ?」
「いいから...」
美羽がポットに触れるとポットのお湯は今度は冷たくなり始める...
「...今度は冷水に?」
「戻すことも可能よ!」
今度は温かくなってくる...ポットの液体の温度の上昇・下降が激しすぎるわ...
私はポットをテーブルに置いて能力の関係性を考えを纏める...
なら...美羽の能力は...
「上昇と下降...それを調節する能力かしら?」
「理解はできたみたいね...でも半分外れ...アタシの能力の名前は(力の増幅と減退と調節する程度の能力)...これがアタシの力よ」
「増幅と減退...」
「ええ...あらゆる力を調節することができるアタシだけが許された能力...気温・重力・火力あらゆることに応用が聞くわ...まぁ...使いどころ間違えると大変なことになるけどね...」
ボン!!
ポットが弾け辺りに熱湯が飛び散る...
「...危ないわね」
「ね?とりあえず柚神~元に戻しなさーい!」
「はいはい...」
柚神が空間を弄るとポットは元に戻る...
...美羽の能力はどこまでも増幅できるみたいだから一歩間違えば大変なことになるわね
「とりあえず?できたみたいだしどこでお茶会するの?」
「...中庭よ...その前にお嬢様と妹様を呼ばなくてはね...」
「分かったわン...では行きましょう」
私達はお嬢様を呼びに行く...
しばらくお嬢様の部屋へと続く廊下を進んでいく私達...後ろについてくる美羽と柚神を見ると美羽は退屈そうにあたりを見回し柚神は窓の景色を眺めている...
冗談半分で仕事をやらしてはみたけど一通りはできるみたいね...少し彼女達を見くびっていたかしら?
ガッシャーン!!
何やら破砕音が響く...お嬢様の部屋の方からみたいね?
美羽と柚神は同時に首を傾げる...
「何よ今の音?」
「何です今の音?」
「...何となく想像がつくわ...気にしなくてもいいわよ」
私はお嬢様の部屋の戸を開ける...
そして私達の目に映るものは...
「お姉さま!何で私のプリン食べたのよー!!」
「プリンに名前書いときなさいよー!!!」
部屋の中にはとっくみあいの喧嘩をしているレミリアお嬢様とフランドールお嬢様...
どうやら昼食に出したプリンの件で喧嘩しているみたいだ...
「...何よこれ?」
「只の姉妹喧嘩よ...気にしなくていいわ」
「...姉妹喧嘩?これがですか?」
柚神は部屋を指さす...
破砕した家具・天井・床・窓...確かに人間の姉妹喧嘩ならここまで被害は広がらないでしょうが...お嬢様たちが吸血鬼...そうもいかない...
「...いつものことよ」
「...大変ね...これでは部屋を修理するのも一苦労...ごふ!!!」
美羽が飛んできた壺に被弾して倒れる...
部屋を見るとお嬢様達の喧嘩がエスカレートし始めている...
「あの時だって!私のプリン黙って食べたくせにー!!」
「490年前の話を持ち出すんじゃないわ!!」
...飛び交う壺・皿・ベット・戸棚...ああ...戻すこちらの身にもなってくださいな...
とりあえず...喧嘩を止めないと他にも被害が...
私が部屋に入ろうとすると空気が急に重苦しくなり...私はもちろん喧嘩をしていたお嬢様達も動きを止める...
「...?」
その発生源の方を向くとそこには額から血を流しながら鬼の形相で立っている美羽の姿...
彼女はキセルを持ち出して火をつける...
「...こら...餓鬼ども...静かにしなさいよン?喧嘩なら外でやりなさいよ...他人が被害被るのよ!こんな風に!!」
美羽は自身の血まみれの額を指さす...
お嬢様達は美羽の迫力に押されたのか床に正座している...
「...あ...貴女はこの前の天狗!!何でここに!」
「ひっ!!あの時のお姉さん!!何でここに!!」
どうやらお嬢様達は美羽達の正体に気づいたみたいだが美羽は気にしないみたいだ...もう当初の予定はどうでもよくなったのかしら?
「アタシの鉄拳制裁を食らいたくなければオトナシクしときなさい...いいわね?アタシこう見えてかなりプッツンしやすいからン」
「はひ!!」
お嬢様達は大人しく首を縦に振る...
すごいわ...お嬢様達の喧嘩を収束させるとは...
美羽は私の方を向く...
「とりあえず...お茶会は始めるのかしら?」
「...ええ...一応毎日やっているし...」
「では...早くしましょう?アタシとしてもここにいられる時間は限られているし...柚神!この部屋の修正まかせたわ」
「ええ...図書館よりは早く終わりそうですね」
美羽は柚神に指示をしてカートを押して中庭へと向かい...柚神の方は私の体に軽く触れた後部屋の中へと入る...
「さぁ!お嬢様達!行きますよ」
「うん...」
「...はい」
意気消沈しているお嬢様達を連れて中庭へ向かう...
中庭ではいつも通りパラソルが指してあるテーブルでお茶会を行う...
お嬢様達はいつもよりか静かに紅茶を口に運んでいる...やはり美羽が怖いのだろうか?
美羽の方は屋敷の入口の方でキセルを咥えたままボッーと空を眺めており上の空状態だ...
レミリアお嬢様は遠くにいる美羽を見ながら私に耳打ちする...
「ねぇ...咲夜何であの人がいるの?」
「異変の再発防止に来たみたいですよ?私達があれをやらないようにね...」
「やらないよ!?やらないわよ!!」
お嬢様は首を横に振る...まぁ...あれだけ被害が出れば当然よね?
美羽も天狗の上層部から調べてくるように言われたみたいだし自分の意志ではないことは分かるけど...
美羽程の存在が使われる立場というのは少し疑問が残るわね?実力は充分なのに...
「...」
「...咲夜...お茶」
「!!はい!只今!」
私はポッドを持ってお嬢様のカップにそそぐ...考えるのは後...今は私の仕事をやらないとね...
お茶会が終わり厨房へ戻る私と美羽...
彼女は歩きながら何か手帳に記している...
「何それ?」
「帰ってから報告書に書くことを纏めているのよ...とりあえず再発はないとやっておくわ...」
「へぇ?何を根拠に?」
「...ここの当主様の言葉を見れば充分よ...必死にやらないと言っていたじゃない」
「あら?聞いてたの?」
「...聞いていないわ...見ただけよ...アタシは口形で何言っているか理解できるのよン」
「器用なものね...」
美羽の姿が変わりこの前の姿になる...彼女は手帳をしまって黒い翼を広げる...
「...柚神の力も消えたみたいね...じゃあ...ここにいるのも悪いし退散しますかねン」
「あら?帰るの?」
「まだ帰ってからの仕事があるのよ...お暇するわ」
「また手伝ってくれるのはありがたいけど?」
「...壺投げられるのは勘弁だけどね」
美羽はそう言うと姿を消す...
廊下には彼女の黒い羽根が数枚落ちているだけだ...
「...天逆美羽と天逆柚神ねぇ」
...見た目はよく似ている姉妹みたいに見えるけど...どこか姉妹にしては違和感があるのよね?
「そういえば...柚神の力は他者の身体的特徴は変更できないのに...何で美羽はできるのかしら?」
少し私の方でも調べておくべきかしらね?
16:55
幻想郷の空の彼方に夕日が沈み...妖怪の山へ目掛けて天逆美羽は一直線へ飛ぶ...
「任務完了ですかね?」
彼女の横を並走するように柚神が現れ美羽はキセルの火をつける...
「...まだ終わらないわ...報告しないとアタシの仕事が増えるのよ...本来私はデスクワークに向いてないのに...」
「ワタシも手伝いますから...そのためにワタシがいるのですからね?」
美羽は少し笑みを浮かべて口から煙を吐く...
「それもそうね...今も昔もアンタの代わりに台所へ立つのもアタシの役目だし」
「...ワタシだって...多少は...多分...」
「...いいからアンタはアタシが出来ないことをなさい...それがアタシらでしょ?」
「確かにそうですが...腑に落ちない...です」
美羽達は談笑しながら帰還し...本日の任務は無事終了する。
次回軽いオリキャラ紹介
ではこれにて