東方天災手記   作:ベネト

19 / 78
6ボス・EX終了


お仕事後の一服

幻想郷に蔓延した紅い霧は、博麗の巫女+その他により収束に向かう...

 

異変の首謀者であるレミリアを倒すのを見届けた博麗霊夢は、呑気にキセルを吹かしている天逆美羽のもとへ向かう...

 

 

 

 

side霊夢

 

「...ふぅ」

 

「...」

 

広間の端っこでキセルを吹かしている美羽...

 

性格に難があると思ったけど...実力は確かなようね...

 

私は彼女へ向かう...

 

 

 

「ふぅ...何か用?」

 

「アンタ...本当に何者なの?天狗の組織に属しているみたいだけど、実力・性格から考えて使われている側ではないと思うわ...」

 

「何者かと聞かれてもねぇ...アタシは生まれてこの方ずぅーと使われている側だからね...」

 

「?」

 

「分かりやすく言えば兵器よ...兵器は使用者がいて初めてその性能を発揮するわン」

 

...確か柚神が自身のことを兵器に例えていたわね

 

「柚神もアンタと同じようなことぼやいてたわね...綻びが出るとか...完璧なぞ存在しないとか...」

 

私の言葉を聞いた美羽は僅かに不機嫌になる。

 

 

 

 

 

「あの子...まぁ...いいわ...言っていることは事実...ゴホッ!!」

 

美羽は急に口を押さえる...

 

彼女がふさいだ手からは血が流れ出している!?

 

「アンタ!大丈夫なの?」

 

「こほ...何...問題はないわン...ここへ来る前にキツイの一発食らってしまったからね」

 

美羽は口についた血を拭いお腹を押さえる...

 

薄暗くてよく見えなかったが美羽の白い軍服のお腹の部分には血で赤く染まっていた...

 

まさか...こんな傷を受けた状態でレミリアと対峙したの?

 

 

「そんな状態で...」

 

私は玉座に倒れているレミリアを見る

 

満身創痍だというのにあのレミリアを一撃で倒したとなると...美羽の実力が計り知れないわ...

 

 

「心配はいらないわン...現在進行形で柚神がアタシを治療してくれているからねぇ」

 

「柚神が?...ああそういえば...」

 

確かレミリアと戦う前に柚神は美羽に吸収されたわね...

 

柚神の能力は分からなかったけど、彼女なら治療の一つや二つ出来ると思うのが自然と頷けてしまう。

 

美羽は体を伸ばし地べたに座ったままキセルを再度咥える。

 

 

「まぁ...アタシのことは気にしなくていいわン...博麗の巫女として危険かどうかの確認なのでしょう?」

 

「...まぁそんなところよ」

 

 

美羽はボーっと天井を見上げる

 

 

「...アタシは権力やら快楽何てものは興味はないわ...前もって言っておくけど貴女のお世話にならないわン」

 

「本当に?」

 

私が聞き返すと美羽は溜息をつく

 

 

「本当よン...アタシは...生きていることだけで充分満足しているの...」

 

「...なら...アンタの言葉を信じるわ...でも万が一...変なことを起こしたら...」

 

「...分かっているわ...その時はね...けど貴女は本気のアタシに勝てるかしらねン」

 

「一回は勝ったわ」

 

「...邪魔が入らなければよン」

 

美羽は立ち上がり窓の方へ向かう

 

 

 

「では失礼するわン...初めての任務だし色々と疲れたわ...」

 

美羽は窓を蹴破って大空へ飛び出していく...

 

天逆美羽に天逆柚神ね...

 

少し厄介な存在が現れたけど...何とかなるかしら?

 

 

「...とりあえず...この異変の後始末をしないとね」

 

私は伸びているレミリアを叩き起こすことにした...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖怪の山...

 

美羽の牢屋...

 

天逆美羽は天狗の里の自身の牢へ帰還し、ベットの上に寝そべる...

 

「痛っ...本当に...きついの食らったわね...」

 

美羽は自身の腹部に手を当てて息を整える。

 

 

 

 

しばらくすると美羽の体が光り出し、柚神が彼女の体の中から飛び出してくる...

 

柚神は疲れが溜まっているかのように、飽き飽きとしたような目で美羽を見据える

 

 

 

「リペア完了です...本日は安静にお願いします」

 

「...ご苦労さま」

 

美羽は柚神の方を見ずに寝ころんだまま...

 

柚神はスコープを外してハンカチで拭く...

 

 

「珍しいですね...貴女が重症を食らうとは...」

 

「...力量を図り損ねただけよン...それなりに本気で行ったけど...ノーダメージでは無理があったわン」

 

軽く答える美羽だったが彼女はその時のことを思い出す...

 

フランドールのレーヴァテインを食らう光景...

 

自身の体が壊れていく時の恐怖...

 

何百年ぶりに彼女は死を覚悟した...

 

 

美羽は左手首にある縫合の痕をさする...

 

かつて一回死にかけた美羽...

 

激痛...

 

鉄の臭い...

 

冷たくなっていく体...

 

虚ろになっていく心...

 

その時のことを鮮明に思い出したのだから...

 

 

 

 

 

 

「...少し寝るわン...後の処理は任せたわン」

 

「...承知しました...体を休めてくださいね」

 

しばらくして美羽が寝息をたて、柚神はスコープを付けて窓の外を見つめる。

 

 

 

「...貴女に消えられるとワタシも困るのですよ...ワタシも...あの方もね...」

 

彼女のスコープに映るのは幻想郷を照らす月...

 

曇った彼女たちの心を照らすのだろうか...

 

これにて幻想郷を騒がせた異変は終了を告げた...

 

彼女たちの初めての任務も無事に終わったのだ...

 

 

 

 




次回日常編

ではこれにて

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。