紅い霧異変の首謀者であるレミリア・スカーレットと対峙する、霊夢と柚神...
柚神の完璧なぞ存在しないという発言に激昂するレミリアとの戦いが今始まろうとしていた。
この異変の結末はいずこへ向かうのだろうか...
side霊夢
「巫女の前にまずはお前からだ!この...ロボアーミーが!!」
レミリアは柚神に狙いをつけて光弾を放つ...
柚神はそれを笑いながら避けて、スペルカードを発動する。
「ふふふ...では様子見と行きますか...虚兵(ホログラム・キャスト)」
柚神がスペル宣言をすると柚神の周りに大量の画面が現れ、中から次から次へと柚神が現れる!
「!柚神が増えた?」
「ええ...このスペルはワタシ自身を増やすことができます...まぁ色々と応用がききますのでね」
柚神は呑気にスコープをハンカチで拭いているが...彼女の周りの画面からは次々と彼女達が這いだしてくる...
その光景はそこかホラーに見えるし...レミリアの方も顔を青くしているわ...
13体目が出てきてた後、画面は消えて増えた柚神は一斉にレミリアの方を見る。
「ちょ...反則よ!!幾らなんでも増えすぎでしょ!!」
「戦いに卑怯もくそもありませんよ...さぁ!行きなさい!」
「畏まりました!!」×13
柚神達は懐から光り輝くナイフを取り出して、一斉にレミリアに襲い掛かる!!
「いやー!!!!こないでー!!」
「ぐ?」
「な?」
「あら?」
レミリアの方は半泣きになりながら槍を振り回し柚神達を撃退していく...
何やかんやであの大群を撃退していく彼女はすごいけど...
「不夜城レッド!!」
レミリアは魔力を放出し、周りの柚神を消滅させる。
あっという間に全滅ね?
強いと思ったのに柚神の力を過大評価しすぎたかしら?思ったより呆気ないわ...
「...大丈夫なの?...!」
「...配置を誤ったみたいね?」
柚神は少々苛立ったような顔をしながらハンカチを噛んでいる...
何故かさっきまでの敬語口調が抜けている...
これが彼女の地なのかしら?
こうしてみると...完璧に美羽と同じね...
「...ふ...ふん!!どうよ!やっぱり見掛け倒しじゃない!」
「...様子見と言ったはずだけど?とりあえず...貴女の実力は分かりました...」
柚神はレミリアに向けて拍手をし、新たなスペルカードを取り出す。
「その身体能力を削ぐ必要が出てきたわ...虚霧(ダウナー・ミスト)」
柚神の体から霧のようなものが放出され、辺りが霧に包まれる。
「...あら?」
何かしら?この霧から甘い匂いがするわね?
...何というか...何もかも忘れそうになる...
「っ!!って!!!」
いけない!!これは柚神の能力!完全に私が巻き込まれているじゃない!!
「柚神!!アンタ私がいることを忘れてない?巻き込むんじゃないわ!」
「...あ...大丈夫です...」
「何が大丈夫なのよ!!これの匂い嗅いでたら頭がぼーっとしてきたんだけど!?」
柚神は耳をふさいでいる。
「これで!勝負を決めますから!大丈夫ですよ!」
「...」
レミリアの方を見ると地上へ降り、目を擦って欠伸をしている...
私と同じくこの霧の香りを嗅いだ所為ね...
「...な...なによ...このぼーっとする感じは...」
「これで貴女はワタシの術中に嵌った...ワタシ自身は戦闘力は低いのでこうでもしないと仕留められないのでね...」
柚神は懐からナイフを取り出してそれを舌で舐める...
「...吸血鬼狩りというのは初めてですが...戦争に比べればあっという間ですねっ!」
彼女はナイフをレミリアに投げる...
レミリアの方はそれを寸でのところで避けるが体が思う様に動かないのかバランスを崩して転倒する。
「っ!」
「あらあら...無理に足掻かない方がいいですよ?下手に動くと可愛いお顔に傷がつきますからね...」
柚神は再度ナイフを取り出してレミリアに向ける...
レミリアの方は戦意を喪失でもしたのか蹲ったままだ...
「これでチェックメイトです...」
「させるわけないでしょ!」
「っ!?」
刹那...柚神の帽子が弾き飛ばされ、彼女は驚いて後ろへ後退する...
そして柚神と対峙しているのは銀髪の少女...
館内にいた妖精たちと同じ格好をしているけど...人間みたいね...
どうやらこの人が柚神の戦いを妨害したようだ...
でもどうやって?
「さ...咲夜?」
レミリアはその少女の方を見て顔を輝かせながら名前を呼ぶ...
どうやらその少女の名前のようね...
「お待たせしました...お嬢様...咲夜只今参上しました...」
咲夜と呼ばれた少女はレミリアの方を見て微笑む...
対照的に柚神は驚きの表情を浮かべているが...
「...何故?確か貴女は...さっきワタシが...」
「お嬢様が危険な目にあっているのに...寝ているわけにはいかないわ」
咲夜は柚神に向けてナイフを放ち、柚神の方も負けじとナイフで反撃をする...
「おっと!」
咲夜の姿が消えて柚神が放ったナイフは壁に突き刺さり、咲夜の方は柚神の背後にまわっていた。
「能力を使わなかったら大したことはないわね...」
「ぐ...なら...もう一度!」
柚神は辺りに画面を出して展開する!
「させるわけないでしょ?」
咲夜の姿が消えたと思った瞬間に柚神が出した画面が次々と爆発して消滅する。
「ば...馬鹿な?」
「貴女の能力は謎だらけで厄介なものよ...でも発動するタイミングが遅いから...幾らでも潰せるわ!」
咲夜が指を鳴らすと柚神の周りにナイフが現れ、彼女の体を切り裂きいていく...
そしてナイフの1つが彼女の左腕を貫き、柚神は刺された左腕をかばいながら後退する。
「柚神!アンタ!大丈夫なの?」
「ぐぐぐぐ!!!!」
彼女は私の言葉に反応せず、ハンカチを取り出すがそれを傷に当てるのではなく噛みしめる。
「あー!もう!!むかつく!むかつく!!!何で妨害ばかり入るのよー!!!もう少しで完璧に終わるはずだったのにー!!!」
彼女は悔しそうにハンカチを咥えてビローンと伸ばしている。
こうしてみると美羽に瓜二つね...
そんな柚神を見て咲夜はせせら笑う。
「地が出ているわよ?もうお得意のマジックは終わりなのかしら?」
「ワタシの能力はマジックではないわ!」
柚神は時計を取り出して時間を確認する。
「...時間のかけ過ぎね...このままでは美羽が...」
「アタシが何なのよン?」
「!」
声のする方を見ると美羽が入り口の方におり、キセルを吹かしていた...
彼女は大広間に入り、私を見つけると軽く手を振る。
「あら?お久しぶりじゃない?」
「柚神の話の通りアンタも来ていたのね...」
「...つれないわね...せっかく会えたのに...」
美羽は軽く伸びをして辺りを見回している...
着ているものはボロボロだが彼女に関しては余裕そうだ...
美羽は柚神の方へ歩を進めて笑みを浮かべる。
「随分偉そうなこと言っていた割には無様じゃないかしらン?」
「...うるさいですよ...これからが本番です」
柚神の言葉に美羽は肩をすくめる。
「傷だらけで何を言っているのだか...とりあえず戻りなさいよ...ちょっと仕事を任せたいのよ」
「...!」
美羽が柚神に手を差し伸べると柚神の姿が光の粒子となり美羽の体に取り込まれていく...
「柚神は?」
「...アタシの体の中...この子は無理するからね...少し充電させないとねン...それに頼みたいこともあったし...」
美羽はキセルを咥えながら咲夜とレミリアの方を眺めている...
彼女達も急に現れた美羽に警戒しているようだ...
「...また...新手ね」
「...援護します」
臨戦態勢になっている彼女たちを見て美羽はキセルの煙を吐き出しながら溜息をつく...
「中々の実力者みたいだけど...フランドールと比べて能力値が劣る気がするわぁ...」
「!?...フランがなんだって!?」
美羽の言葉にレミリアが反応する...
「ん?」
「お前!フランに何をしたと聞いている!!」
激昂するレミリアに美羽は耳をふさぐ...
「...そんな大きな声出さなくてもいいじゃない...あの子とは軽く遊んだだけよ?アタシの勝ちで終わったけどね?」
美羽は欠伸をするがレミリアはワナワナと震えている...
話が見えないけど、美羽の奴何かやらかしたのかしら?
「...貴様...咲夜!フランの様子を見に行って!!」
「しかし!お嬢様!この者の力は!」
咲夜はレミリアに反論するがレミリアは首を横に振る...
「行って!これは命令よ!」
「...畏まりました」
咲夜が消え、レミリアは美羽と対峙している...
「何?アタシ疲れてるんだけど?」
「私の妹に手を出した以上...嫌と言っても相手してもらうわ!」
レミリアは槍を出して美羽に向ける...
美羽はキセルをしまい...私の方を見る...
「悪いわね...霊夢...人の獲物を捕る趣味はないんだけど...向こうはアタシに狙いを定めちゃったわ...」
「...別にいいわ」
私が許可すると美羽は拳を鳴らしながら笑みを浮かべる。
「感謝するわ...アタシとしても物足りなかったしいいかしらン!」
美羽が両手を広げると彼女の体には力が集まっていく...
「スピア・ザ・グングニル」
レミリアの方はその状態の美羽に怯むことなく槍を投げる...
美羽はそれを見て笑う薄ら笑いを浮かべるだけだ...
「アタシ相手にそれはないわ」
美羽は槍を素手で掴み止める...
レミリアの魔力が籠ったものをいともたやすく止めるなんて...
「!!馬鹿な!!」
「もっと強くなってきなさい!!±符(ヴァイオレンス・ウェブ)」
美羽が薙ぎ払う動作をすると衝撃波が放たれレミリアに着弾する...
「げふ!」
レミリアはそのまま置いてあった玉座ごと後ろへ倒れて動かなくなり、衝撃の余波を受けたのか周りの窓ガラスが一斉に割れる...
キラキラと光るガラスの破片が宙を舞うのを見て美羽は天井を見上げる...
「これでお仕事終了ね...後は任せたわぁ...霊夢」
美羽は壁の方へ近づいて座りキセルに火をつける...
吸血鬼である彼女を...一撃で倒すなんて...
天狗組織か...
とんでもないものを隠し持っていたみたいね...
side咲夜
時を動かし私はお嬢様の妹であるフランドール様が幽閉されている地下室にたどり着く...
すでに部屋の扉は破壊されているし、ここで戦闘が行われていたことは容易に想像がつく...
妹様の安全を確認しなくては!!
「妹様!」
私は意を決して部屋へ入る。
部屋の中は破壊の限りをつくされており、原型がない...
これでは!妹様の安全が!!
「!...!?」
「...」
部屋の隅を見るとぼーっと虚空を眺めている妹様を発見する...
「妹様!ご無事で!!」
「...咲夜?ここに来たの?」
妹様はボーっとしたような顔をしながら私の言葉に反応を示す。
普段は活発な妹様がここまで沈みこんでいるとは!
あの天狗!一体何をしたの!!
「お怪我はありませんか?」
妹様の体を確認するが外傷らしいものはない...
妹様も首を横に振る
「ううん...私は大丈夫...遊び疲れただけだから...」
「遊び?でございますか?」
妹様の遊び...
そういえばあの天狗...妹様と戦ったわりにはダメージが少なかったし、まだ余力を残していた感じもしていた...
私が相手した柚神よりももしかしたら...
「...」
「咲夜...」
「何でしょう?」
妹様は私の体を抱きしめる
「あのお姉さん怖い...」
...妹様の体が震えている
あの天狗の本気を見たようね...
私達はとんでもないものと戦おうとしていたのだろうか...
震える妹様を私は抱きしめる...
この異変は私達の負け...
とんでもない者が来てしまったわね...
紅魔郷終了
ではこれにて