この世界では存外超能力がありふれています   作:水代

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久々にぽんこつスレ最初から読み直しで時間がどんどんキンクリされていく不思議(


『アタシさん』

 

 学校の屋上に不良がたむろしているなんて、まさかまさかそんなの漫画の世界だけの話だ、なんて割と僕も思っていた時期がありました。

 

「でよー、アタシとしちゃ、それもありかと思ったんだがな」

 

 目の前で火の着いた煙草咥えながら、壁際に座り込んで僕に語り掛けてくる一部の隙も無いほどに染め上げたブロンドの髪を揺らすクラスメートの少女の話をしようと思う。

 

 『アタシさん』、僕は単に目の前の少女のことを内心でそう呼んでいる。

 別に一人称がアタシだからと言う安直な理由ではない。そこにはそれはそれは壮大な理由があるのだ…………多分。

 

 アタシさんはいわゆる不良だ。グレている。この学校でも珍しい存在である。別にこの学校は有数の進学校と言うわけではないが、近隣で最も偏差値の高い学校であり、そこに入学している、と言うことはアタシさんの学力も一般的に考えて中々の物であると言うことは察せられる。

 と言うか聞いた話によると、実家はとんでもない名家らしく、学園のアイドルと呼ばれる『彼女』とは違い、正真正銘本物のお嬢様らしい。そのお嬢様がどうしてこんなちょっと偏差値が高いだけの普通の学校で不良やってるのか本気で疑問だったのだが、どうにも中学までは割と普通のお嬢様だったらしい。ただ中学二年生と言う世界で一番頭の悪くなる多感な時期に色々悪い影響を受けてしまい、グレてしまったらしい。

 因みにアタシさん、先ほども言った学園一のアイドルと呼ばれる『彼女』とはなんと驚くことに幼馴染らしい。彼女の“お嬢様演技”は元を正せば昔のアタシさんの真似らしい…………想像するだけで寒気が走ったので考えないことにする。

 

 そんなアタシさんと僕の出会いは、やはり『彼女』との出会いを切欠としている。

 そして意外な事実、アタシさん意外にも…………いや元お嬢様だったなら別に意外でも無いのかもしれないのだが…………可愛い物好きであり、ぽっけの中からモンスター、略してぽっけモンとか好きな人らしい。その辺でけっこう趣味があった。やはりこの年代ならゲームとかみんな好きだよなあ、なんて思いながら自宅に帰ってからも時折無線通信で対戦とかしたりする程度の仲だ。正直、アタシさんは趣味パ過ぎて戦績はほぼ一方的なのだが。

 

 不良と言う単語にはどうしても怖い、と言う印象が付き纏うものではあるのだが、アタシさんはけっこう人当たりの良い不良だ。良い不良って言う言葉が最早意味が分からない感があるが、それは置いておく。

 とにかく、理不尽なことは言わないし、沸点もそれほど低くない。不良、と言うか、不良ぶってるだけの少女、と言った感じで僕としては嫌いにはなれないタイプである。

 

「んで? 買うの?」

 ふう、と煙草を吹かしながらアタシさんが主語も無く尋ねる。

「何のこと?」

「いやいや、何言ってんのさ、夏に出るって言う新作だよ、アタシとしても対戦相手がいなくなると楽しくないからね」

「レーティングバトルでもすればいいんじゃないの?」

「ああいうのはガチパ揃えた人ばっかだしねえ、アタシみたいな趣味パは正直敷居が高いんだよ」

 そんなものなのかな、と思いつつも、本人がそう言うのならそうなのだろう。相変わらず不良ぶってる割りに微妙に小心者だ。

 

 ふう、と一本、吸い終わった煙草をぴん、と指で弾く。

 

 すると煙草が空中でふらりと一回転し…………()()()()()()()()()()()()()

 

 そして煙草の先端、火の着いていた部分がくしゃり、と宙で潰れて、そのままアタシさんが手に持っていた携帯灰皿の中へと一人手にふわりふわりと落ちてすぽりと入ると、灰皿の蓋が触れてもいないのに閉まる。

 

「相変わらず便利そうだね、その()()()は」

「いや、アンタが言う? それを」

 アタシさんの言葉に、僕は苦笑で返す。

 

 

 一般的な意味での超能力は意外と狭い範囲に定められている。

 その種類は大別して二つに分けられる。

 

 知覚、情報に関するESP。

 そして物体、物質に関するPKだ。

 両方を総称してPSIと呼んだりもするのだが。

 

 アタシさんは純粋な意味で超能力者である。

 

 ある意味『彼女』の超能力もESPに近いが、厳密には精神を操作する超能力と言うものは定義にないため、一般的な意味での超能力とは別物扱いになるのだろう、僕の時間停止など猶更だ。

 

 そんな中、アタシさんは正真正銘、一般的超能力の定義に当てはめてみても間違いなく超能力者と呼べる。

 

 分類はもう分かるだろう、念動(テレキネシス)、もしくはサイコキネシスとでも呼べば良いだろうか。

 

 分かりやすく言えば、触れることなく物体を移動させる能力だ。

 

 割とポピュラーなまさに超能力らしい超能力だが、僕が知ってる限りこれを使えるのはアタシさんだけである。

 触れることも無く遠くの物体を動かせるなんて便利な能力だと思うのだが、アタシさん曰く“便利なようで不便な能力”らしい。

 まず第一に、距離は視界内ならどこでも、ただし遠くなるほど…………正確には肉眼で見づらくなるほど精度も落ちていくらしい。因みにアタシさんの視力検査の結果はCだ。普段はコンタクトらしいが、偶に眼鏡をかけているのを見る。なんでも生まれつき視力が弱いらしい、と言っても近づければはっきりと見えるし、精々一メートルくらい離れるとぼんやりとしだす程度らしいのだが、眼鏡をかけたりした時には使えない、本当に肉眼で物を見ている時だけ発動する能力らしいので、視力が弱いのは痒いところに手が届かないようで不便らしい。

 第二に、動かせる物体の重さだが、感覚的には自分の両手で支えている感じらしい。なので自分実際に持てる重さ以上は持てない、と言う制限がある。だったら最初から自分で持てばいいだけなので、便利なのか不便なのか困る、と言うのがアタシさんの言。

 因みにもっぱら、教師から煙草を隠すのに使っているらしい。

 何と言う超能力の無駄遣い…………まあ二度寝のためだけに時間止めてる僕が言えることではない、本当に。

 

「それはそうと、いっちょやる?」

 にぃ、と笑って取りだしたるは携帯ゲーム機、この幼馴染組、当たり前のように学校に携帯ゲーム機持ってきてるけど、どうなってるんだろう。なんてまあ。

「いっちょやろっか」

 僕も持ってきてるんですけどね(笑)

 

 

 このあとガチパでめっちゃフルボッコにした。

 




キャラ紹介


『アタシさん』

不良ぶってるけど、別に本人不良になりたいわけではなく、単純に反抗期アピールで髪染めてるだけの実は不良じゃない不良風な少女。実家の両親は素直で可愛く優しい愛娘の突然の反抗に泣いて崩れ落ちた。因みに現在は親子で停戦中。
念動力とか言うくっそメジャーな超能力持ち。もう説明とかいらんだろ、ってレベルだが実際使えるかと言われると授業中に落っことした消しゴム拾うのに便利なくらいの能力。
何気に主人公って一番チートくさいよな、って思うけどあいつ二度寝の時か、遅刻しそうな時くらいしか使わんから、まあ全員五十歩百歩だよなあ、としか言えない。
グレても昔からの趣味は変わらず可愛い物好き。任天堂に怒られそうな名前のゲームとか熱中してる。


何故か一番紹介が長くなった属性てんこ盛りの少女。


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