この世界では存外超能力がありふれています   作:水代

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『彼女』

 

 

 学校物創作あるある①学園を支配してる生徒会。

 学校物創作あるある②鉄腕シェフのいる学食。

 学校物創作あるある③学園のアイドル。

 学校物創作あるある④実態が不透明な部活。

 学校物創作あるある⑤一般生徒に開放された屋上。

 学校物創作あるある⑥覗き穴のある更衣室。

 学校物創作あるある⑦理事長の子息子女。

 学校物創作あるある⑧昼休み人が押しかけ売り切れ続出する購買のパン。

 

 以下延々と続く。

 

 

 酷く唐突ではあるが。

 僕以外の超能力者を紹介したいと思う。

 

 僕のクラスメートの女の子。上品な雰囲気で、一部ではお嬢様と呼ばれている彼女だが、実際にけっこう資産家の娘らしい。

 二年生で初めて同じクラスになったのだが、最初の印象としては綺麗な子だな、とだけ。

 まあ基本的に僕は二次元に傾倒しているわけではないが、現実の女子にそれほど幻想抱いているわけではないので(主に家族のせいで)周囲が彼女を持て囃していようとそれほど気にはならなかった。

 

 彼女を初めて深く知ったのは僕が超能力と言う存在を知ってからである。

 

 初めて彼女の言動に違和感を覚える。

 それは些細な物。日常における会話の一つ一つ、行動の一つ一つに拭いきれない違和感を覚える。

 

 余り引き伸ばすことに意味が無い故に、あらかじめ言っておいてしまおうと思う。

 

 精神干渉、それが彼女の超能力だ。

 

 と言っても、本人曰くそれほど強烈なものでは無く、軽い暗示程度。

 簡単に言えば彼女のあらゆる言動を好意的に見なされる、と言ったものだ。

 僕が覚えていた些細な違和感の正体とはつまりそれ。

 彼女が言動の中で犯した些細なミス、それが無意識で修正されていたのだろうが、超能力の発現を切欠としてそれを意識的に感じ取るようになっていたのだ。

 

 まあここまで言えば察しの良い人なら気づくかもしれない。

 

 つまり本当の彼女とは。

 

「…………面倒くさーい! もう何なのあの先生、一々こっち確認しないと喋れないの? バカなの? 死ぬの?」

 

 屋上でぐでーと体を投げ出しながら散々に先ほどまで授業をしていた教師を罵倒するのが現在この学校一のアイドルと噂されている彼女である。

 

 聞いた話によると。

 

 元々彼女の家は資産家でも何でもないただの一般家庭だったらしい。それが父親がたまたま企業で一当てして、一気に資産家の仲間入り、そして唐突に一般人からお嬢様へジョブチェンジした彼女にはそれ相応の振る舞いが求められたらしい。

 中学の時はそれなりに有名なお嬢様学校に通っていたらしいが、高校を機にこちらに一人引っ越してきたらしい。

 自由な生活っていいよねえ、とは彼女の言である。

 

 もうすぐ四月も終わり、これから夏へと移行していくシーズンではある。

 とは言え、屋上は吹き曝しになっており、あちこちから風が吹き付けてきており、それなりに冷える。

「クラスに戻らないの?」

「んー? ああ、キミかあ。もうちょっと待って、今お嬢様ぱわーじゅーてんしてるから」

 今でこそお嬢様である彼女だが、元はただのパンピー。悲しきから、三つ子の魂百まで。一度染みついたパンピー根性はそうそう簡単には覆らないのである まる

 お嬢様パワーとはつまり、彼女がこの学校でお嬢様然と振る舞うために必要な“えねるぎー”なのだ…………らしい。

 一度その正体を知られてからは、彼女もう僕の前では取り繕うことすらしなくなったからか、割と気怠げで面倒そうなその表情を見せるようになったのだが、ぶっちゃけた話、僕からすればいつものお嬢様然とした彼女より今のほうが付き合いやすいのも事実である。

「それよりキミ、パニパニはもうクリアしたの?」

「ああ、あれ? 昨日徹夜でやってきたよ、ほら」

 学生服のポケットから携帯ゲーム機を取りだし、電源を入れて画面を表示する。

 

 曰くのパニパニ、パニッシュメントパニックとは、今流行りのアクションゲームだ。

 主人公は聖職者で、グールやゾンビ、バンパイアに溢れかえった街中を探索していく。

 カソリック調の神父服を来た神父が何故か大剣片手にばったばったと亡者をなぎ倒して行ったり、弓矢を手にバンパイアにスナイピングでヘッドショット決めたり、でかいハンマーかついでグールを叩きつぶしたりと、割となんでもありなゲームだ。正直このゲームの主人公は聖職者と言う名の別の何かであると言うのがもっぱらのネットでの評判である…………小型とは言え四輪車片手で引きずって挙句投げつけるような聖職者はたしかに聖職者と言う名の別の何かだった。しかもあれシステム的には武器扱いになってるし。

 最大四人まで協力プレイもできるのだがそこまでいくとこの主人公の言う教会とは世界征服でもする気なのではないだろうかとすら思えてくるレベルで蹂躙ゲーとなる。

 

 発売前からグラフィックや操作性能で評判も上々で、僕はアクションゲーもそこそこ好きだったので買っていたのだが、彼女相当にやりこんでいたらしい。

 

「お、一通りクリアしてるね。じゃあ裏ダンジョン一緒に行こうよ」

 

 すっとスカートのポケットから同じゲーム機を取りだすあたり、やはり彼女にはお嬢様は似合わないと思う。

 

 まあそれはそれでも良いのかもしれない。

 

「裏ダンジョン…………この街ホント、どうなってるんだか」

「あはは、まあアクションゲームにそんな細かい設定求めても仕方ないよ」

「フリーアクションだからけっこう移動範囲は広いけどね、まあ中々に作りこんであるとは思ったかな。設定ぶっ飛んでるけど」

「それは私も思ったよ」

 

 楽しそうにゲームを起動する今の彼女のほうが、正直教室で見慣れている彼女より、よっぽど生き生きとしているのだから。

 

 だから、それでいいのかもしれない。

 

 

 




キャラ紹介

『彼女』

お嬢様の皮をかぶった庶民。学園物創作物あるあるの一つ、学園のアイドル。現実に存在するとは…………と思わせて、実は超能力のお蔭。
と言ってもそれほど大した能力でも無いので、根本的には彼女自身の努力の成果とも言えるのかもしれない。
本性はややダウナー。因みに主人公とはゲーム好き仲間。幼馴染がいる。


次回>>『アタシさん』

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