世界が俺に輝けと囁いている   作:凡人9号

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明かし

校門前で立っている轟先生と目が合ったが、あれヤバい。この間年齢聞いた奴に向けられた目だ・・・俺、死ぬのかなぁ。

 

「お、おはようございます轟先生」

「おはよう星遠君。何か、言う事は?」

 

え、なに。なんすか。俺怒られる様なことしてないはずなんすけど。進路希望は提出したし無遅刻無欠席だしテストでは平均点越えだし、非の打ち所がない平凡な少年なのになにが悪かったんだ。

 

「ウチの焦凍を夜遅くまで連れまわしてよくそんな、何言っているのか分からないって顔出来るわね。夜ご飯まで食べさせて」

「え?家には連絡入れといたって言っていましたけど」

「私は、聞いてないわ」

 

この先生暴君真っ青じゃないですかーやだー。おまけに「私は」って強調しやがって!なんて教師だ!

 

「まあそれは良い。何はともあれ、進路希望なのだが。今のまま行けば受験勉強などもせずに合格は出来る成績だろう。だが、あそこで良かったのか?もっと上も狙えるだろう」

「受験勉強頑張って入っても勉強についていけなくなったりするのもいやなんで」

 

俺が提出した進路希望は家から近い平凡な高校。無理して入ってフラッシュライト出来なくなるのはつらいかなー。

アレだ、ゲーム好きな奴が難関校に受かってゲームして落ちこぼれルートに入ったり、頑張ってついて行ったけどゲーム出来なくてストレスたまったりするアレ。アレがいやなんだ。

 

「・・・まあ本人が決めた事だ。口うるさくは言わないが、ご両親には話したのか?」

「ええまあそれはもう説得しましたよ」

 

両親は両親で「え?ヒーロー科じゃないのか?」「昔ヒーロー目指してたでしょ?」とか言って来て説得するの大変だったけどなんとか言いくるめてやったぜ。

いやぁ、あの時ほど頭を回転させるのなんてもうないんじゃないかな。

 

「ま、焦凍とは今後とも仲良くしてやってくれるとありがたい。今まであんな時間まで出歩くことなんてなかったからな」

「俺と遊ぶのが気分転換になるならいくらでも」

 

俺としてもクラスメイトと遊びに行くより楽しかったし大歓迎だ。なんというか、駄目だね。あまり交友のない奴等と遊ぶと一歩尻込みしちまう。その代り轟君とはなんも意識せずに遊べたから良き友人でありたいものだ。

 

「だがこれからは、私に連絡をして欲しいものだな」

「じゃあメアド教えてくださいよ」

 

え、教えてくれるんですか。あざーす。

 

 

 

その日、掲示板にて興味が引かれる書き込みを見つけた。

 

一つは「フラッシュライト包囲網作戦会議が発足」

一つは「フラッシュライトへ、これを見ているのなら迎えを送るから来てくれたまえ」

 

この二つ。

上の方は俺は見れなかったが書き込みされた十分後程で削除され、その後もコピペした奴らが大勢現れちょっとした削除祭りとなった。

本来はもっと堅苦しい名前らしいがネット上では砕くに砕いてこうなったようだ。どうしてこうなった。

なんでもヒーロー達が街の外側から中央に向けて進軍するらしい。頭悪い作戦だなーって思ってたら参加リストに八木さんの名前があった事で絶望した。相手の得意分野?腕力の前にはそんなの関係ねぇ!を地で行くオールマイトの正体がヒョロヒョロガリガリの八木さんだって知ったら無責任なネットの連中はどう思うんだろうか。

 

下の方は・・・何か良く分からん。ネットではヤンホモ説が一番強い。その結論はたまげたなぁ。

一部では「ヴィラン達のすくつ(なぜか変換できない)からのお誘い」「これはこれまでのヴィラン達が復讐するための罠だ!」「今日は止めろ、止めておくんだフラッシュライト!」等々心配する様なレスであふれていた。

心配すんのはいいけどお前等、俺の後に続こうとか考えないのな。別にいいんだけどさ、なんかこう・・・いやいいか。

 

さーて、包囲網開始まではまだまだ時間が空くだろうから今日も今日とて頑張りますか。

この包囲網で夜に暴れる馬鹿が少しでも減ればいいなーと言うか俺だけを対象とするんじゃなくてちゃんと毎夜見回りしてくれよなー。

 

 

 

とか思って出発して早一時間。

誰も暴れる奴のいない平和な夜なんて久々だった。恐らくあの下の方の書き込みが原因なのだろう。

迎えってなんじゃ、どこの誰か知らんがお前が来いや。

 

でもこんなこと言ったら・・・

 

「私が来た!」

 

うん、違うそうじゃない。包囲網の方じゃない。

 

「いやあ!探したよフラッシュライト君!君はあのネットの書き込みは見たかね!」

 

背筋を伸ばし、いつも通りの笑顔で所々笑いながら語りかけてくるオールマイト。

どーしよどーしよ、逃げる?正体明かす?八木さんって呼んでみる?

 

あ、そうだ、正体明かしてこれから迎えとやらについて行ってスパイするって感じはどうだろうか。

いやー、でも俺ヴィラン絶対警察に届けるマンだろ。俺のやってる事からどういう奴かは分かってる相手がどう出るかさっぱりわからないんだよなー。

ま、アレだ。為せば成る、何事も当たって砕けろ。だ。

 

「オールマイト・・・いえ、八木さん。どうも、星遠です」

 

ネックウォーマーとゴーグルを首にかける様にずらして顔を見せる。

するとオールマイトは少しの間目を見開いていたが、溜息をつきながら他の屋上からは見られない死角に移動してから八木さんモードになった。いつ見てもホント謎だわ、そういう個性なんじゃねぇの、とすら思ってしまう。

 

「まあ、何かあるだろうとは踏んではいたものの・・・フラッシュライト君だったとはね」

「現状、結構危うい状況だから辞め時かどうか悩んではいたんですけどね。あの書き込みに目の前に八木さん、と来ればこっちの考えを伝えといた方がいいかなと」

「・・・迎え、だったね。どうするつもりだい」

「俺をどうにかするつもりなら徹底抗戦。ただの勧誘なら・・・まあこっちのやりたい事受け入れてくれるってんなら混ざって八木さんに情報流しますよ」

「・・・本来なら止めるべきなのだろうけど、私には君に押し付けることは出来ない。あまり無茶なことはしないでくれよ」

「どうですかねぇ。見てわかる通り馬鹿な事やってるんで、どうなる事やら」

 

てっきり止められるかと思ったけど、俺の考えを酌んで心配してくれる。賭け値無しにいい大人だぜ八木さん。

ゴーグルとネックウォーマーを元の位置に戻すと「時間もないからメールアドレスだけ口頭で伝える」と言われたので携帯を取り出し一字一句間違えないように打ち込み、八木さんと登録してから試しに一通だけメールを送ってから携帯を仕舞う。

数秒後に八木さんが携帯を取り出して確認してから俺と目を合わせて頷き、屋上の扉へと入って行った。

 

さーて、鬼が出るか蛇が出るか。

その前に軽くここから移動しておこう、一か所に留まってたら待ってると勘違いされるのは何か癪に障る。

 

俺、迎えって奴が来たら言ってやるんだ。自分で来い、って。




轟ねーちゃんの口調ががが
フラッシュライト活動危うし!
ヒーロー、ヴィラン。どっちの道を進むんじゃろな。


物語を動かしてやるぜええええええ!

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