世界が俺に輝けと囁いている   作:凡人9号

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迷走中
何処向かったらいいんですかねぇ


遭遇

ここ最近、なにやら血なまぐさいニュースが新聞の一面を飾ることが多い。

「連続失血死事件」

物凄い物騒な事件が起こってるなぁ・・・一体どんな個性持ってるヴィランだ?というか欠片も遭遇してないってどういう事なんだろうか、遺体すら見た記憶ないぞ。

それどころか最近、俺がヴィランシバいてると別の場所で別の馬鹿が暴れ始めたりしてるから手が回らない。

 

うん、もうアレだな。目から光出すだけじゃ見回れ無いって事だな。

仕方無い、これからの活動は一枚の手札を使うしかないか。

 

ビルの屋上で目からの光をライト代わりにして読んでいた新聞を畳んでポケットに突っ込み、屋上の縁へと移動してから目を一瞬だけ光らせる。

全身から発光する、というどうしようもない個性ではあるが。この個性の特訓をしている時に気が付いたのだ、なんと光の反射で目を瞑っていても周囲の把握が出来るのだ!初めの頃はなんも分からなかったけど、授業で聞いた「物が見えるのは、そこにある物にあたった光が反射して目に入ってくることで知覚出来るから」という情報を元に頑張ってたらいつの間にか出来た。

唯一の問題は目から出してるだけだからその分しか分からない事。利点は単純に俺の視力以上の遠くを見れること。

と言うよりもこの個性、光に関係することなら何でも出来そうで怖い。だからあんまり妙な事は考えず、考えたとしても訓練しないようにしている

目を瞑って鍛え続けた結果上半身全裸になって光れば真後ろの事まで分かったりもするんだが、流石にまだそこまで手札は切れない。

 

そのまま屋上をグルりと一周しながら光を使って見回りをし、何も発見できなければ隣のビルに移動してまた光を使う。

 

そんな事を繰り返していくと当たりを引いた。

路地裏で女の子を襲っている異形型が一人、後二人。もしかしたら連絡を交わして二か所同時にヴィランが犯行をしてる、なんて可能性があるからさっさと終わらせてあの三人から情報を聞き出そう。

 

屋上から飛び降りて、そのままの勢いで異形型の頭を掴んで押し倒す。ギョッとしてる二人に目を向けて目を眩まして鳩尾を片方にはぶん殴り、もう片方は肘鉄を入れる。

 

地面に倒れた三人を見ながら、起こすのが面倒だからやり過ぎたなー。とぼんやり考えていると後ろから地面を強く蹴った音が聞こえたので体を捻るとさっきまで体があった場所にナイフがあった。と言うよりも、先ほど襲われていた女の子がナイフを突き出していた。と言う方が適切だ。

 

「あ、避けられちゃった。でもうん!初めましてフラッシー君!トガヒミコです!」

 

セーラー制服の上にカーディガンを羽織った小麦色の髪を頭の両側でお団子の様に纏めている少女。年相応なのだろうかあどけない顔でケラケラと笑いながらまさかの自己紹介をしてきた。

 

こんな目を見るのは初めてだ。キラキラとオモチャや御菓子を目の前にした子供のような眼。一点を直視しているはずなにのどこか俺を見ていない様な目。

俺が遭遇したヴィランやチンピラ達は必ず、社会や誰かへの恨みで動いていた。そんな目は飽きるほど見てきたので見れば分かるようになってしまったが、こんな目をした奴は初めて見る。

いや、初めて見るわけじゃない。何度も、見飽きるほど見た記憶はある。

 

活動を終えた後で見る、鏡に映る俺の目だ。

とは言ってもここまでじゃない、こんなに一直線じゃない。俺の方が曇ってるね!

多分だが、この子は俺とは違い。彼女自身として日常生活を送り、そして彼女としてナイフを握っている。

昼と夜を使い分けてる俺とは違う。制服着てるのもその説に拍車を掛ける。

 

と言うかフラッシーってなんだ、あだ名?フラッシュライトのあだ名なの?随分かわいくなっちゃってまぁ・・・

 

「あ!そう言えば一切話さないって噂だったね!秘密主義って感じでカッコイイね!」

 

なんだこれ、なんだこれ。確かに女性のヴィランやチンピラはいたけどここまでぶっ飛んだ奴は初めてだ。

今だってナイフの刃を指でなぞってるしヤベェよ、ヤベェよ・・・

 

「うーん、でもフラッシー君ってヴィラン狩りしてるんだよね?じゃあ私はこれで!」

 

あ、路地裏から飛び出して夜の街に走って行ってしまった。慌てて路地裏から出たはいいが「また会おうねー」なんて声が聞こえたが見失った。

 

いや、誰だったのあの子。トガヒミコって言ってたけど、ネットで調べたら出てくるかね。

 

しかし、うん、なんだ。中身と目はともかく顔はかわいかったなトガヒミコ。

俺だって健康優良男児だ、仕方ないだろう。ヴィランとっちめる度に、襲われてる女の子と連絡先交換したいと何度思ったことか!襲われる女の子に限ってかわいかったり美人だったりするから悔しい。と言うかヴィラン、いい加減女の子襲うのやめろや、たまにトラウマレベルに刻まれちゃったのか助けた後に走ってどっかいく子が多いんだよな。男性恐怖症量産すんじゃねぇよ、悲鳴上げて逃げられるとダメージ受けるんだからなんだからやめろよな。

 

 

 

最近は緑谷&八木さん師弟コンビからは「こちらの都合で悪いのだが、緑谷少年が力を試したいと思った時に呼ぶ」と言われてしまって日中が暇になった。緑谷が強くなるの楽しみだなぁ、とワクワクしているそんなある~夜、路地裏で~、

 

「あ!また会ったねフラッシー君!」

 

血に濡れたナイフを持って足元に人を転がし、ナイフからビンに血を垂らしているトガヒミコに出会った。

昨日の今日で何故また遭遇したんだ、どんな確率だよ。つーかなにこの猟奇的な風景。俺の目からの光で更に酷いことになってるし。おのれトガヒミコ!

 

「あ!この人?なんでも詐欺師らしいから殺しちゃってもよかったよね!」

 

なんというか、凄い気持ちは分かるけどその一線はまだ越えられないかなぁ。

多分こういう所も目が違う所だろう。

ん、女子高生くらいだよな。いや高く見積もってね。低く見たら中学生くらい。それくらいの女の子がどうやって詐欺師だって分かったんだ?

 

「ブローカーさんが教えてくれたんだよ!ブローカーさんは私たちが住みやすい世界にする為に殺すべき人間を教えてくれて、それを私たちが殺してるんだ!それに殺したらお金もくれるしフラッシー君も一緒にどう!」

 

いや、どう。と誘われても人殺しはNGで、そしてそういう連中は俺の獲物じゃないから。

頭の中で結論を出すと「そうなの?残念!」と口から出てる言葉と顔とテンションが明らかに釣り合っていない反応をされた。笑顔で「残念!」って言われてもどう受け取ればいいものか。

 

「じゃあまた住みやすい世界にするために頑張ってくるから!じゃあねー!」

 

じゃあねー、じゃないがな。まーた逃げられたし・・・ブローカーって存在が気になるな。

多分どっかから依頼受けてそれを下に流してるって形だろう。冒険者ギルド、みたいな?依頼は全部殺しだろうけどな!

 

うーん、俺個人じゃそんな所まで手を伸ばせないし。現状オールマイト、もとい八木さんに言うのは確実にアウト・・・トガヒミコ、利用してみるか?

でも俺、ヴィラン共みたいに誰かに怒りをぶつけたり、一般人に危害を加えたい訳でもないし、個性を持て余してる訳でもないんだよな。

なんか面倒な地下組織みたいなのが出てきちゃったよ、もしかして俺の邪魔してるのブローカーってのが原因か?畜生、どこの誰かは知らねぇがコネが大量にある奴が俺みたいな一般市民に喧嘩売りやがって・・・見つけ出して視力潰してやろうか。




トガちゃんかわいいよトガちゃん。イッちゃってる子は書くの難しいです。イッちゃってなくても難しいです。
原作でチラッと出て来たブローカー、大物らしいし便利に使っちゃお。
こうすることによって死柄木への紹介シーンがマッチポンプになって面白そう。

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