世界が俺に輝けと囁いている   作:凡人9号

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特になんでもない繋ぎ回


友好関係

緑谷と八木さんと知り合ってから早一週間。

学校に行っては海浜公園に顔を出して緑谷見守り、買い物へと自転車を漕ぎ、夜には町の見回りをするいつも通りの日々。

なんか世間一般と大分間違ってる気もするけどそれが俺のいつも通り。

 

だったんだけどなぁ・・・

 

「星遠少年、君は何か武道や武術を習っているのかい?」

不意に八木さんからそんな言葉が飛び出した。

 

「え?いえ、個性の無い時代の凄い人らの動画をネットで見てそれのマネし続けてただけですけど」

「それはまた、どうして」

「この辺道場とかないじゃないですか。なら便利なネットに頼るしかないでしょ?」

 

そんな風に返すと八木さんは顎に手を当てて何やら悩んでいるようだ。いや、出来るだけ俺=フラッシュライトの法則を遠ざける様にしているが、相手はあのオールマイト。

俺の動きとフラッシュライトの動きを重ねられでもすれば詰みだ。でもだからと言ってここで拒否をしても違和感を感じさせるだけだ。

フラッシュライトとして使ってる技以外を使うか。いやでも習得したものほぼほぼ全部使いまくってるし・・・あ、投げ技とかの組技どうだろうか。実戦ではやった事のない合気道なんかにもここで練習するのもいいな!なんだ、使ってないの結構あるじゃないか。

と言うか、相手の目を眩ませて殴ってたり蹴ったりしてるだけだ。流派としてはその場で殴る蹴るの空手とか地面を踏んだ勢いを殺さずに殴る八極拳モドキになるからそこまで絞られる訳ではないか。

 

俺の技を組技、フラッシュライトの技を力技と使い分ければさらに俺=フラッシュライトの可能性は減らせるか。いいな、これで行こう。

 

「で、それがどうしました?」

「いや、緑谷少年にね。体だけを鍛えさせるのもいいのだけど、やはり対人訓練も少し早めにやっておこうと思ってね」

「なるほど、まあ俺も体鍛えてるだけなんでお互い探り探りでよろしければ」

「ハッハッハ!最初から強い相手と戦うよりも同じくらいの腕前同士の方が得られる事の方が多いからね!」

 

八木さんは笑いながら電子レンジを運んでいた緑谷の所へと歩いて行き、会話を始めた。

しっかし、こうしてみる分に八木さんがオールマイトだ!って言っても誰も信じないだろな。むしろ点滴ぶら下げるアレでも持たせればアッという間に病院から抜け出した患者だ。なんかそう思った途端に笑えてくる。

 

話が済んだのかゆっくりと歩いて戻って来て八木さんがグッと親指を立てた。嫌なんだけどなぁ。

 

「緑谷少年からもオッケーの返事をもらったからさっそく始めようじゃないか」

「なんでそんなにノリノリなんですか八木さん」

「実は緑谷少年がどれだけ動けるのかを確認しするのをすっかり忘れていてね!一回はみたんだが、あれは勇気からの行動だったからね。それとはまた違う、本来の運動能力を見たかったんだよね」

 

チラッと緑谷を見ると申し訳なさそうにしていた。

 

「ま、やりますか。緑谷、筋肉が付いたって事は前とは全然動きも全然変わってるはずだ。ゴミ運びと同じ運動だよ」

 

左手を軽く開いて前に突き出し右手は脇の下に添える。左足を半歩前に動かすと体は右側を向いた。

フラッシュライトの時は基本棒立ちで目を点滅させながらゆっくりと相手に近寄る不審者スタイルだからな・・・冷静になって考えてみたら俺怪しすぎだろ、ネットでスレッドが立ち上がるわけだ。

 

緑谷も覚悟を決めたのかグッとファイティングポーズを取った・・・うん、なんか違う。

そんな訳で「緑谷、少し動くな」と声をかけてから近寄って行き、ポーズを整える。

足を肩幅に、腰を少し捻らせて半身に、両拳を口より少し高い位置に。

よし、構えはこれでいい。

 

最初の位置に戻って構えを取り直す。

それと同時に「東方、星遠輝永!西方、緑谷出久!いざ尋常に・・・始めッ!」と八木さんの声が響き、

 

お互いに動かない。

そりゃそうだろ、俺はどうしようか悩んでる。緑谷はそもそも戦い方というか喧嘩の仕方も分からないだろう。

ならこっちから近づいてやろう。

ジリジリと近づいたら緑谷が右足と右腕を同時に動かして来たが左手で拳を受け止める。

 

「攻撃の時に足動かす時は先に左足を半歩前に、拳を突き出す時は腰を捻って相手の体の中心に向けて突き出すように、抉る様に打ち込むように」

 

右拳を掴んでいた左手を解いて右手首を掴み、右手を伸ばして首を掴み、左足を股下に差し込んで右足に引っ掛け、首を掴んでた左手を離してそのまま胸板を押すと尻餅をついた。

そんな緑谷に手を伸ばしながら続けて少しアドバイスをあげよう。

 

「もうちょい腰を落としてみ、押されても多分転ぶほどじゃなくなるはずだ。自宅で筋トレしながらネットで動画を少し見てみろ。一杯学べるぞ」

 

少なくともしっかりファイティングポーズとったヴィランはぶん殴ったくらいじゃ体勢崩してもすぐに持ち直すからな。

 

手を掴み返して来たので引き起こして八木さんの方を見る。

 

「うん、緑谷少年。もう少し星遠少年に付き合って貰うか?」

「い、いえ、言われた通りネットで動画探してみます」

「お勧めは柔道とかボクシング。緑谷が組技に進むにせよ立ち技に進むにせよいい勉強になると思う。実際に体を動かして慣らしていくのが良い、と思う。プロじゃないからな、あんまり信じるなよ」

「う、うん、教えてくれてありがとう」

 

握ったままの手を上下に振りながら「気にすんな、俺は緑谷のファンだからな!」と返してから手を離して八木さんに向き直る。

 

「ま、こんな感じでいいですかね八木さん」

「うん。体の通り喧嘩慣れしてないね、緑谷少年。代わりに星遠少年は随分と慣れているようだね」

「練習がてら、ひたすら体動かしてましたからね。反復練習は体に染み込みますから」

 

光り輝くヒーローに憧れてからもう九年か。一体なにがどう拗れて目から光が出るヴィランに・・・自己責任の名の下に誰にも当たり散らしはしない。ヴィラン?人じゃないからセーフ。

あれ、俺も人じゃなくなる?・・・自己責任自己責任。自分の言葉には責任を持とう、例え俺がヒーローにリンチされる側になっても俺は何の情報も渡さないぞヒーロー共めッ!

 

「星遠少年ッ!」

「急にどうしたの星遠君っ!だ、大丈夫?」

「ん?ああ、大丈夫。ちょっと昔を思い出しただけ」

 

隣で「頭抱えて振り出すなんてどんな昔?」と慄いてるけど一年前って昔だよね。




ゴリ押し気味でデク君強化フラグを立てた所で、ここら辺にて原作師弟コンビとの絡みはちょっとお休み。
字の分でとかならあるかもしれないけどやりたい事を思いつきました。

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