筋肉痛になるなら適応してしまえばいいじゃない。
翌日。我ながら馬鹿らしい発想の元、筋肉痛も収まったので手足を光で動かそうと思い付き、試しに意識してその辺走ってみた。みたのだがー・・・
「ぜんっぜん痛くねぇんだけどなんなんだ?」
もしかして意図的にやるとそこまでじゃないのか?速さもいつもより早いな、と確信持てるくらい。初めての時より全然普通。
それとも手足よりも一か所に集中してやるべきなのか?と右手だけに集中してみたけれども、うん。
分かった事と言えば、これ・・・能動的よりも受動的に重きを置いた力なんだわ。
自分から最速で殴りに行く!というより。目の前で木の枝から降って来た葉っぱを気付いたら掴んでいた、という力だ。
なんというか・・・使いづれぇ・・・そして右腕がイテェ、昨日程じゃないけど痛いものは痛い。
湿布をペタペタ張った状態で気にせず光信号を意識してランニングランニング。
何が問題かって?普段体光らせると体表だけ熱くなるだけだから四時間持つけど、体内だからかなり熱持ってヤバい。一時間持つかどうか分からん。
翌日全身筋肉痛で悶えた事は言うまでもないだろう。自由登校だからいかねーけど強制だったら死んでた。
「ってのが最近起きた事かな。面白みがなくて悪いね」
「いや、訳が分からなくて十分面白いんだが・・・」
休日、一軒家な我が家に轟君を招き入れてピザとコーラでパーティーを開いた。脂肪が体につく?俺はちょっと個性使えば代謝が上がって消費されるし気にしなーい。
ピザも楽しんで貰えたようで今はパーティーゲームで楽しんでいる。
「しかし、お前の両親初めて見たけど・・・母親凄い美形だな」
「せやろ?せやろ?なんてったって舞台女優だぜ?自慢のママンやで」
呆れたように「なんで似非関西弁なんだよ」そういう轟君をよそに俺は我が親愛なる両親の事を思い返す。
我が母、星遠響歌は舞台女優。外見が良いだけでなく内面も良く、さらに「全身から声を出せる」という個性も相まって主役張ってる。
我が父、星遠明は舞台の裏方。個性は「範囲十メートル以内の光の色を変える」という個性で劇団のライト役を担っている。
何が惜しいって子供が俺だけだってこと。姉か妹がいれば母譲りの美形になるのは確実なのに・・・こんな息子で申し訳ない限りだ。僕、頑張ってヒーローになるよ!
「ま、見たのは仕事に出たからすれ違った時だけだったけど・・・いい人だな」
「頭撫でられて照れてたな轟君、写メ撮りたかったぜ」
「目線で阻止されてたな」
「かーちゃん最強だからな」
「呼び方安定しないな」
「普段はかーちゃん。晩飯食ってく?何食べたい?」
「お前が作るのか・・・」
「両親が仕事の時は疲れて帰ってくるからな。あと、ウチの飯は基本はとーちゃん」
「そうなのか。なんでモテないんだろうな」
「いや普段の学校での俺知らんでしょ轟君!ちょっと憐れみの視線止めて!」
「姉ちゃんから聞いてる」
「おのれ先生!」
この後無茶苦茶飯食わせた。
一緒に夕食を食べた母親は轟君が気に入ったらしい。素直ないい子だから当然だよなぁ!父親?仕事が長引いたらしい。
ベルトを新調しようと思ってフラっと近場のショッピングモールへ繰り出すと、
「あ、あんた」
「おっ、元気?俺スッゲー元気」
イヤホンガールがいた。まさかこんな所で出会えるだなんて運命かな?
「あー、あんたに聞くのもアレだけど・・・受かった?」
「言わずもがな。そちらは?」
「なんとか受かったみたい」
「じゃ、自己紹介だ。星に遠い、輝くに永いで星遠輝永だ」
「ウチは耳郎響香。耳に一郎とかの郎で、響くに香水の香」
「あら素敵な名前。俺のかーちゃんと同じ響きの名前だ、いいね」
「・・・マザコン?」
「どっちかって言うとファミコン。で、今日は何しにモールに?」
「CD買いに来たんだけど、そっちは?」
「ベルト新調しに来た、高校だから新しいのにしようって思って・・・折角だからなんか見繕って?」
「いや、急だね・・・飯奢ってくれるならいいよ」
「女の子と食事出来るなら喜んで奢らせて貰うさ!何がいい?」
両手を広げてそう言って見ると「牛丼」と返って来た。マジかよそんなんでいいの?寿司とか焼肉とか奢るよ?あっはい、牛丼特盛ね。とろろもつける?ええどうぞ。
ロック、って言っておきながらドクロっていうメタルなバックルをお勧めして来た耳郎さん・・・まっ、買ったんですけどね!その場のノリってコエーわ。一応普通のベルトも買ったよ!あの、穴が二つ空いてる奴。
CDに関してはさっぱり分からないのでついて行って試聴用のヘッドフォンで楽しむだけだった。
んで、牛丼奢って無事分かれた。いやー、良い子だわー、なんでこう、俺は良い子に良く遭遇するかね。自分が虚しくなるわ。
さて、無事家に帰った所で特に何もせず座って意識しながら体に光を送る。体ってより神経。神経って良く分からないから調べたりしてみたけど結局良く分からなかった。
良く分からなくてもなんか使えるし、なんなの俺キモい。
自分の個性と体にドン引きしながら個性を使うんだけど・・・そもそも個性ってなんだろうな。いや、俺が考えてもドツボにハマるから忘れる事を前向きにしていくことにして、練習に集中しよう。
さて、色々やれることを試していたらいつの間にか入学当日。
何も考えずひたすら練習に練習を積んでそこそこ制御できるようになった所なので丁度良かった。
正面、側面、背面、どこから見てもHの様な恰好の巨大な校舎。
ヒーロー科は入試で入れるのはわずか36名。そこに推薦4名の40人しか入れない。そのため倍率は頭おかしいことになっている。
そうやって考えてみると・・・俺ってスゲーズルしてんなー。
と、思ったけど入学式がないというフリーダムな雄英だ。何も問題は無かった。
新能力試行。
轟君と宴会。
両親の事。
イヤホンガールと自己紹介。
自分の事を思い返したけどもっとヤバいのがいた。力こそパワー!