世界には二種類の人間が存在する。
優良な個性を持つ人間と、使えるかどうかも良く分からない個性を持つ人間。
大衆の為に個性を扱う
二種類だけじゃなくなったが。
誰しもがヒーローに憧れる世界で、俺は「全身が発光する」という個性を手に入れた。地味に世界初の個性と同じ様なものだ。
インパクトだけならその辺の個性にも負ける気はしないが、「使えるの?」と聞かれた場合出来る反応は苦笑いだ。
なんて言ったってメリットは光るだけ。待ち合わせ場所で光っていれば少し便利かな?と言う程度。
デメリットは熱中症になる事。個性は生まれた時から発現し、体がある程度個性に慣れるまでは病院で点滴暮らしだったらしい。そんな経験のおかげか四時間光り続けて運動しても水分を一切取らなくてもよくなったし、そのおかげかそこそこ頭おかしい身体能力も手に入れた。
「全身が光るヒーローって、なんか凄い大物感あるよな」
年始に集まった時。親戚の兄の、何気ない一言が。六歳の子供には強く響いた。
一晩考えて「俺の個性で出来るのは相手の視界をつぶす事くらい」という結論を出し、個性を生かすために何をすべきか。それは体を鍛える、というシンプルな答えだった。
翌日。朝一番でパソコンに飛びつき体の鍛え方について調べ、子供の内から筋トレ等をするとよくない、しかし動きのキレを鍛えるために武道をやると良い。と言う情報を得て過去の個性が存在しなかった時の達人、と呼ばれる人々の動画を見続け、頭に叩き込み。昼食を取ってから庭に飛び出して覚えた動きを繰り返して行った。
親から心配されたが「ヒーローになりたい!」と答えると最初は「どうせすぐに止めるだろ」と楽観視していた両親達が俺が如何に本気かと言う事に気付いたのは四年後の十歳の時。
眠れない夜にいつも通り全身を光らせながら修行をした結果ぶっ倒れたと言う時だった。
親曰く、お隣さんが「急に庭の光が消えたから様子を見てみれば息子さんが倒れていたから」気付けたらしい。サンキューお隣さん。
そして俺は親に怒られた。
「自分の体調も管理できない奴がヒーローなんかなれるか!」と。
ぐうの音も出ないほどの正論だった。
怒られてから色々と考えた結果、個性の方を少しでも向上させることにしてみた。
この考えに至ったのは理科の授業で「太陽の光は熱を持っている」「虫メガネで太陽光を一点に集めれば燃える」と言うのを教わった時だった。
学校が終わってすぐに全身の光を指先だけに集める訓練を始めてみたがそう簡単に行かなかった。
指先だけに集められるようなるまで何度熱中症寸前になった事か。
そして俺の個性は「体のどこでも自由自在に発光する個性」へと進化した。問題としては、光を指先に集めるだけで五分くらい集中しなければならない事だ。まだまだ修行の必要があった。
それからまた四年後の十四歳の時。
個性修行は順風満帆、四年で指先から光のビームを五メートル先まで照射出来る様になった。集中も十秒まで縮めた。
しかしその代わりに体を動かす修行に伸び悩んでいたので修行方法を調べていた時だ。
「ヒーローが遅れたから息子がヴィランに殺された」
「ヒーローが到着してからすぐにヴィランを捕まえないから家が壊された。ヒーローは壊れた家の上でヴィランと戦っていた。俺の、大事な物がたくさん詰まった家を、土足で踏み荒らした結果。ヴィランを逃がした」
「銀行強盗を倒す時に俺事巻き込んで入院、全治二か月。仕事は首に」
「ヴィランとヒーローの争いのせいで職場が壊れたのでヒーローのファン辞めます」
何気なしに開いたとある書き込みサイトにあった【ヒーローとは】俺氏、ヒーローに足を折られる【うごごごご】というスレッドでは無力さを嘆いた書き込みが書き連ねられていった。
ヒーローの所属する事務所はそんな事件に誠意に対応したり、金を積んでもみ消そうとしたり、もみ消そうとした事務所とヒーローは潰されたりと、ヒーロー業界は俺の思っていた以上に暗いものだと知った。
事故を起こしたヒーローはどんなに頑張ってもその悪評が付いて回り、中には心が折れてしまってヴィランになった者もいるらしい。
そしてその時、俺は天啓を得た。
ヒーローには常に様々な責任が付いて回る。
ならばヴィランなら?全てが自己責任。ヴィランを倒しても喜ばれず、ヒーローに捕まって喜ばれる。何か問題を起こしてヒーローからヴィランに転落することもない。
大衆の為のヴィランを倒すのが
俺が、俺自身の為だけにヴィランを倒す
我ながら子供特有の馬鹿らしい理論だと思うが、今もそれから一年しか経ってないのであまり笑えない。
そう、俺はその日から行動を始めた。
いつも修行用の服を買う店で真っ黒の新しいスウェットを買い、同じく真っ黒のネックウォーマーと帽子とゴーグル、新しい靴も買って、その翌日から行動を始めた。
まだ誰にも知られてない「体のどこからでも光を出せる個性」で目から光を放ち、裏路地などの人気のない所を歩いて行く。
そんなことを繰り返して一年。見かけたヴィランっぽい奴はふん縛って警察署の前に放置する生活を続けた。
俺の住む街の夜間犯罪発生率は去年に比べ二割三分ほど減り、やりごたえを感じられるようになった。
ヴィランネームとして「フラッシュライト」なんてあだ名をつけられるくらいにはヴィラン、ヒーロー両方に注目されるようになり、要注意ヴィランの情報が纏められるサイトに「ヒーローの仕事を奪う謎のヴィラン」と掲載されたりや、俺に天啓を与えてくれた情報書き込みサイトでもスレッドが建てられたりと順風満帆なヴィラン活動だ。
ったのになぁ・・・
「こんな時間に私が来た!!」
なーんで
なんか俺の一話は困難ばっかりですね。
次が書けるかどうかわからないけど書くつもり。
書けなかったらいづれ削除します。