やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー 作:新太朗
イレギャラーゲートから出てきた新型の空飛ぶトリオン兵は謎の鎖のおかげで街への被害は最小限で済んだ。
あの鎖を使ってトリオン兵を川に落した奴が何者なのかは分からないが少なくとも敵では無いと思う。
それはさて置き、俺と雪菜は夜架とシノン、木虎と合流した。避難誘導を任せた三雲のもとに向かった。
シェルターの入り口で三雲を見つけた。見つけたはいいが、何故か周りの人達に賞賛されていた。
「ありがとう。あんたがいたおかげで助かったよ」
「ホント、そうだよ。ありがとね」
「ありがとね。本当にボーダーの人は凄いよ」
等と次々と街の人達は三雲に言っていた。三雲は褒められて照れ臭そうにしていた。あいつもそれなりに頑張ったのだからこれくらはいいだろう。
「ふざけるな!何が助かっただ!さっきの攻撃で家が壊れたんだぞ!」
「そうよ。ボーダーは何をしているの!?」
「こっちは大怪我をしたんだぞ。そもそもどうして街にネイバーが出るんだ」
褒めた次は非難の声が上がった。無理もない事だ。ボーダーがいながら街に被害をだしてしまったのだから。
すると木虎が三雲の前に出た。
「ネイバーによる新手の攻撃です。詳しくは近々ボーダーから発表があると思うます。損害の補償に関する話はその時に」
街の人達はどこか納得してなかったが、渋々散っていた。俺は三雲に近付いた。
「ご苦労さんだったな。三雲」
「い、いえ。僕は……」
「お前が避難誘導してくれたから人的被害は最小限に抑えられた。そこは誇っていいと思うぞ」
今回の三雲の働きは賞賛できるものだろう。こいつの働きがなかったら人が死んでいたかも知れない。
そう考えてしまうと目覚めが悪くなる。
「そうだぞオサム。オサムはよくやった」
「空閑……」
いつの間にか空閑そこにいた。いつの間に来たんだ?まあ、それはさて置き、街の人達の護衛を付けた方がいいな。
「夜架、シノン、雪菜。お前らは街の人達を避難所まで護衛してくれ。俺は本部に戻って今回の事を報告してくるから」
「「「了解!」」」
3人に指示して俺は木虎、三雲と共に本部に向かった。一先ずこれで終わったな。
本部に戻った俺は忍田本部長に報告書を出して、戻ったと連絡が来た夜架、シノン、雪菜の3人と合流しようとした。
その時だった。あの男と出会ってしまったのは……。
「待っていたぜ。比企谷」
「うげぇ……迅さん」
本部でこの人と会うなんて、どうせ面倒な事になりそうだな。てか、さっき待っていたぜと言わなかったか?迅さん。
「そう嫌そうな顔するよ。俺、城戸さんに呼ばれているんだ。比企谷、付いて着てくれ」
「え?どうしてですか?」
「いや~『比企谷も連れて言った方がいい』って俺のサイドエフェクトが言っているんだ」
出たよ。迅さんのお決まりのセリフ。それを聞いたらもはや嫌な予感しかしない。
「……どうしてもですか?」
「どうしてもだ。それじゃ行こうか」
俺は迅さんに捕まり、そのまま指令室に連れて行かれた。行きたくは無い。
迅さんに連れられて指令室に向かっていると俺と迅さんの前をある人物が箱に入った資料を運んでいた。
迅さんはその人物の尻を触った。
「ぎゃっ!……迅君!」
「やー沢村さん。今日もお美しい」
沢村響子。
ボーダー本部長補佐で迅のセクハラに悩まされる女性だ。忍田本部長に好意を寄せているが、任務優先のために隠し続けている。
元隊員でアタッカーだったが、現在は本部運営に転属し、防衛任務での経験を活かし現場隊員へのサポートを行っている。
「最低!最悪!セクハラは犯罪よ!両手が塞がっている所が狙うなんて!比企谷君、居るなら止めてよ!」
「……いや~この人を止めると後で面倒な事になりそうなので、沢村さんが犠牲になってもらおうと思いまして……すいません」
「謝るくらいなら止めて!」
そうは言うがボーダーで迅さん以上に面倒な人はいないからな。この人がやる事に一々相手にしていたらきりがない。
「まあまあ」
迅さんは沢村さんが持っていた箱を代わりに持った。
「お詫びにこれ持つよ。沢村さんも『上』行くでしょ?」
「…………その程度ですむかっ!」
「あだっ!?」
沢村さんは迅さんの足を思いっきり蹴った。是非、俺の分も蹴ってやってください。
迅さんと沢村さんの後を俺は少しだけ距離をおいて指令室まで付いて行った。
「迅悠一。お召しにより参上しました」
迅さんはそう言って会議室に入った。それなりに人がいた。
城戸指令、忍田本部長、鬼怒田開発室長、根付メディア室長、唐沢営業部長、林藤支部長に何故か三輪の姿までもがあった。そして三雲もいた。
それにしても木戸指令と三輪が並ぶと怖さ四割増しだな。怖い。
「おっ!君は?」
「あ……三雲です」
「ミクモ君ね。俺、迅。よろしく」
会議室に入るなり迅さんは三雲に話しかけた。迅さんの様子を見るに三雲とは初対面なのか?
でも迅さんは推薦までして三雲をボーダーに入れたんだぞ?なのに初対面なわけがない。どういう事なんだ?
「さっきぶりだな三雲」
「どうも。比企谷先輩」
「お前、迅さんと知り合いじゃないのか?」
「えっと……前に警戒区域に入った時に助けてもらった事があるだけです」
「そうか……」
迅さん。民間人の記憶処理していないのか!?後で問題になったりしないよな?巻き込まれないか心配だ。
「揃ったな。では本題に入ろう。昨日から開いているイレギュラーゲートの対応策についてだ」
城戸指令がそう切り出した。そもそも俺は必要ない気がするんだが?もう出られる空気ではないな。諦めるか。
「待ってください。まだ三雲君の処分に結論が出ていない」
城戸指令がイレギャラーゲートの話をしようとしたら忍田本部長が三雲の処分で待ったを出した。
てか、三雲の処分まだ出ていなかったのか。
「クビだよクビ。重大な隊務規定違反、それを『一日に二度』だぞ?」
「……あの~鬼怒田さん。ちょっといいですか?」
「なんだ?比企谷」
鬼怒田さんがまだ俺のした報告を知っていていないので一応言っておくか。
「三雲の二度目のトリガー使用は俺……自分が許可しました」
「何!?」
「……比企谷隊長。説明を」
鬼怒田さんが驚き、城戸指令からは説明を求められた。もしかしたら迅さんはこうなる事が分かっていたから俺を連れてきたのだろ。
「……はい。今回の新型トリオン兵は飛行する今までに見た事がないものでした。嵐山隊の木虎だけでは対処が難しいと思い、比企谷隊全員で当たりました。そうすると住民の避難などが出来なくなってしまいます。それで訓練生の三雲に住民の避難誘導を頼みました」
「……そうか。その事は報告書には?」
「もちろん。書いています」
「……なるほど」
城戸指令は顔の傷を触りながら俺を見ていた。いや、少し睨んでいるように見えるな。怖っ!?
「だが!一回目は隊務規定違反なのは変わらない!」
「それに他のC級隊員にマネされても問題ですし、市民に『ボーダーは緩い』と思われたら困りますしねぇ」
鬼怒田さんはテーブルに手を叩き付けて、根付さんは市民への対応を口にした。市民の信頼があってこそだからだな。ボーダーは。
「そもそもコイツのようなルールを守れないやつを『炙り出す』ためにC級にもトリガーを持たせとるんだ。バカが見つかった。処分する。それだけの話だ」
鬼怒田さん。ばっさりするようだな。俺も流石に上層部には逆らえないからな。
「おお、すごい言われようだな」
「…………」
三雲があれだけ言われているのに迅さんは助ける素振すら見せないな。三雲をボーダーに入れたのは迅さんだよな?じゃあ、どうして助けない?
「私は処分に反対だ。三雲君は市民の命を救っている」
「ですが、ネイバーを倒したのは木虎君と比企谷隊なのでしょう?」
「その木虎が三雲君の救助活動の功績が大きいと報告している」
迅さんの代わりに忍田本部長が三雲を庇っている。迅さんはやっぱり助ける気がない様に見える。
それにしてもあの木虎が三雲の事を評価しているとはちょっと驚きだ。
「さらに比企谷隊と嵐山隊の報告に寄れば三門第三中学校を襲ったネイバーを単独で撃退している。隊務規定違反とはいえ、緊急時にこれだけ動ける人間は貴重だ。彼を処分するよりB級に昇格させてその能力を発揮してもらう方が有意義だと思うが?」
「……本部長の言う事には一理ある……が、ボーダーのルールを守れない人間は私の組織にはいらない」
忍田本部長の三雲を庇うような言葉を城戸指令はばっさりと言い放った。
「三雲君。もし今日と同じような事が起こったら君はどうする?」
「……!それは…………目の前で人が襲われていたら……やっぱり助けに行くと思います」
城戸指令の質問に三雲は少し考えてから答えた。その答えを聞く限り、正義感が強いのか、ただのバカなのかどっちか分からないな。
でもこれはいい機会かもしれないな。迅さんがどういう訳で三雲をボーダーに入れたのか。しっかりと見ておくか。
来年の更新は1月8日の予定です。
未定ですけど、来年から更新速度が遅くなる可能性があるので。
出来る限り更新していくのでよろしくどうぞ。
では良い御年を