やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷隊⑧

「おまえ、つまんないウソつくね」

 

空閑の一言に木虎はまるでお化けでも見ているような表情をしていた。そんなに恐ろしいか?

それよりも俺は空閑の一言が気になる。

空閑は木虎の言葉に『つまんないウソつくね』と言ったのだ。どうして空閑には木虎の言葉がウソだと分かるのか。

それについてはだいたい、予想が付く。サイドエフェクトだ。

能力は『相手の嘘を見抜く』サイドエフェクトだろう。とりあえず、空閑と木虎を早く離した方がいいな。

 

「嵐山さん。後は俺達がやっておくんで大丈夫ですよ」

 

「そうか?それじゃ任せた。時枝、木虎、撤収するぞ」

 

嵐山隊が撤収準備を始めた。すると木虎が俺に近付いてきた。

 

「比企谷先輩。彼……三雲君を監視してください。本部には私が連行しますので」

 

「別に三雲は逃げたりしないだろ?監視しておく必要が無いと思うが?」

 

「それでもです!お願いしますよ!!」

 

そう言って木虎は嵐山さん達と撤収した。ホント、面倒だな。

とりあえず、今はここの事態の収拾だ。教師に指示しておくか。

 

「先生方は生徒を体育館に誘導してください!その後で生徒の確認と怪我などしていないかを見てください」

 

「は、はい!生徒は体育館に!!」

 

俺の指示を聞いて先生方の行動は迅速だった。早めにトリオン兵を倒されたのと嵐山隊が来た事で冷静になったのだろう。

そうだ。体育館に行く前に三雲に話を聞いてみるか。

 

「三雲。ちょっといいか?」

 

「は、はい!」

 

急に俺に呼ばれたので少し緊張した表情をしていた。

 

「……お前はもし今日と同じ事が起ったら同じようにトリガーを使うか?」

 

「……使うと思います」

 

「それはどうしてだ?木虎の言う通り、ヒーローにでもなりたかったのか?」

 

「……いえ、違います。僕は弱いですし、それに僕が戦うのはそれが僕にしか出来ないことだと思うからです」

 

三雲がヒーロー気取りになる事は無いな。むしろ貧乏くじを引きそうな奴だな。

 

「……そうか。引き止めて悪かったな。もう行っていいぞ」

 

「は、はい」

 

三雲は空閑と体育館に向かった。俺は夜架、シノン、雪菜の方を向いて指示を出した。

 

「これから校舎の中を確認する。安全が確認出来次第、生徒と教師を全員家に帰ってもらう。何か質問は?」

 

「ありませんわ。主様」

 

「……私もない」

 

「いいえ、ありません」

 

「よし!行動開始!」

 

「「「了解」」」

 

3人はそれぞれ散って校舎の安全確認を始めた。俺は3体目のモールモッドがいると思う階に向かった。

モールモッドが倒された階に着いた。その階だけが一番酷い有様になっていた。

 

「……やっぱりな」

 

三雲が倒したと思われるモードモッドは鋭い得物で斬られたような後を残していた。三雲が使っていたのはレイガストだ。

アレのブレードモードの切れ味はそれ程無い。なのにこのモールモッドには『鋭過ぎる』跡があった。

トリオンを調整すれば出来ないとは思えないが、入隊したての三雲にそんな芸当が出来るとは到底思えない。

 

『主様。こちら確認終わりましたわ』

 

『……こっちも終わった』

 

『私の方も終わりました』

 

「そうか。浅葱、トリオン兵の反応は無いよな?」

 

3人から安全の確認が終わったと連絡があったので最後に浅葱に確認を取った。

 

『うん。大丈夫よ。レーダーには一つも反応はないわ』

 

「そうか。生徒と教師を帰宅させる。浅葱は引き続きレーダーを頼む。3人は学校から全員が出るまで待機しておいてくれ」

 

『『『『了解!』』』』

 

俺は全員に指示を出して体育館にいる先生方に安全確認が終わったので生徒を帰して大丈夫だということを伝えた。

生徒達は帰る準備を整えて次々と帰路についた。

俺は校門付近で生徒が帰るの見ていた。一応、木虎から三雲を監視しておくように言われたからな。

三雲が空閑と一緒に歩いていた。それにしても校門の外が少し騒がしいな。有名人が着ているのか?

 

「……ホント、真面目だな」

 

校門の外にいたのは木虎だった。しかも写真を撮られていた。木虎は微妙にポーズをとっていた。

見た感じ生徒はもう8割方学校から出たな。

 

「夜架、シノン、雪菜。後、10分くらいしたら校内を見て回って誰もいないか最終確認をするぞ」

 

『『『了解』』』

 

俺は3人に指示を出した。もう少しすれば学校には誰もいなくなる。

そしたら一度、本部に戻った方がいいかもしれないな。三雲は逃げる様子は見られなかったからな。

 

「……そろそろ頃合いか。これより校内の確認を行う」

 

『『『了解』』』』

 

そろそろ10分経ちそうだったので、校内に誰も残っていないかを4人で散策した。そして誰も残ってはいないのを確認した。

と、言っても教師が確認したのを確認しただけだ。

 

「よし、確認終了」

 

『八幡!大変!!』

 

確認が終わったので本部に戻ろうとした時に浅葱から連絡がきた。その声は焦っていた。どうしたんだ?

 

「どうした?何かあったのか?」

 

『イレギュラーゲートがまた開いたのよ!しかも新型よ!』

 

「新型!?それでそいつはどこに?」

 

『街の方に居るわ!木虎ちゃんが対応しているみたい!』

 

「分かった。すぐに向かう」

 

俺は3人を連れて新型トリオン兵が出現したと言う場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は現場に到着した。そこで自分の目を疑う光景を見にした。トリオン兵が飛んでいたのだ。

 

「……トリオン兵が空を飛んでいるな」

 

「……ええ、飛んでいますわ」

 

「……凄い」

 

「……って、のんびり見ている場合ですか!?八幡先輩、指示を」

 

雪菜の的確なツッコミで意識をトリオン兵に向けた。魚に似て非なるトリオン兵は優雅に空を飛んでいた。

 

「あれは……?」

 

一瞬、トリオン兵の上で赤い何かが動いたのが見えた。気のせいか?

 

「比企谷先輩!」

 

「はちまん先輩」

 

「三雲……空閑……」

 

俺に声を掛けてきたのは木虎と一緒に本部に向かっているはずの三雲だった。てか、何で空閑がいるんだ?

それと木虎がいないという事はさっきの赤いのは木虎か。

 

「木虎はあのトリオン兵の所だな?三雲」

 

「はい。そうです」

 

木虎と言っても新型が相手では何かあったら不味いな。と言っても周辺の住民の避難もしておかないと後で、色々と言われそうだな。

 

「仕方ないな。三雲、周辺の住民の避難誘導をしろ。念のためトリガーを使え」

 

「え?で、でも流石に……」

 

三雲も流石に一日に二度も本部以外でトリガーを使うのは気が引けるか。

 

「俺が許可したと言ってもいい。それにボーダーが住民ほったらかして行くわけにもいかないだろ。三雲、お前が避難誘導をしろ。いいな?」

 

「……は、はい!トリガーオン!!」

 

三雲はトリガーを起動して避難誘導をしに行った。

 

「空閑はシェルターに避難しておけよ」

 

「うむ。そうだな。それじゃはちまん先輩」

 

空閑はマイペースだな。とりあえず、切り替えて被害が大きくなる前に仕留めるか。

そんな事を考えて新型のトリオン兵を見てみると人口密集地に何かを落した。そして爆発した。

あいつ、空爆するのか!?

 

「シノン!狙撃で出来る限り下に落ちる前に破壊しろ!夜架は木虎の援護で上からあのトリオン兵を落せ!雪菜は俺とシノンが撃ち漏らした爆弾を処理する!何か質問は?」

 

「「「ありません!」」」

 

「よし!掛かるぞ!」

 

「「「はい!」」」

 

俺達はすぐに行動した。シノンは高い建物で狙撃態勢で投下されている爆弾を撃ち落したが、それで数が多くて全部は無理だった。

夜架はグラスホッパーで飛んでいるトリオン兵の上で戦っているであろう木虎の援護に行った。

俺と雪菜はシノンが撃ち漏らした爆弾を処理しにトリオン兵の下に回り込んだ。

 

「「旋空弧月!」」

 

俺と雪菜は旋空で爆弾を破壊した。新型の空飛ぶトリオン兵は円を描くように飛んでいた。そして奴が爆弾を落す所は人が集まっている場所だけのようだ。

川の上には一つも落さなかった。それどころかトリオン兵自体が落ちているような?

 

「夜架、そっちの具合はどうだ?」

 

『それが主様。このトリオン兵、落ちているようなのです』

 

「はぁ!?落ちているだと!?だったら口の中の目を破壊しろ!」

 

『出来ませんの。口を閉じてしまって!このままだと街に落ちてしますわ』

 

冗談ではない。大量の爆弾を積んでいるあいつが落ちて爆発した時には街の被害が尋常では済まないぞ。

その時だった、新型トリオン兵の身体に鎖のようなものが伸びている事に。しかもそれが引っ張っている事に。

雪菜が俺に鎖について聞いてきた。

 

「八幡先輩。あれは?」

 

「分からない。でも利用させてもらうか。夜架、上からトリオン兵の羽を切り落とせ。それでそいつは落ちる!」

 

『はい』

 

「切ったらすぐに木虎と一緒に退避しろ」

 

『分かりましたわ』

 

俺はトリオン兵の上で戦っている夜架に指示を出した。羽さえ破壊すればもう飛ぶ事は出来ないはずだ。

俺の予想通りにトリオン兵は羽を失って、鎖に引っ張られるまま川に吸い込まれていった。

 

「シールド。各員、衝撃に備えろ!」

 

トリオン兵が川に落ちて数秒後、大きめの水柱が立った。そしてその衝撃波が俺達を襲った。

その爆発の衝撃波は凄まじいものだった。これが街に落ちて爆発していれば第一次大規模侵攻とは言わないが、それくらいにはなっていかもしれない。

それにしてもあの鎖は一体何だったんだ?

 

「八幡先輩。あの鎖は何だったんですか?」

 

「……俺にも分からん。少なくとも『敵』ではないだろ。まずは状況確認だ。行くぞ、雪菜」

 

「はい!」

 

一端、鎖については置いておくとして今回の被害を把握しておくか。空閑はちゃんとシェルターに避難したのか?

しかしこの時の俺はまさか鎖と空閑が関係しているとまったく知らなかった。


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