やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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冬島隊

ボーダーの部隊には様々特徴がある。バランスの取れた部隊から偏った部隊などがある。

比企谷隊はアタッカーが2、オールラウンダーが1、スナイパーが1と言う具合で自分で言うのもなんだが、バランスは良い方だと自負している。

そして偏っているもしくは独特な部隊がある。

その一つが冬島隊だ。メンバーはスナイパーが1、トラッパーが1と直接攻撃出来るのがスナイパーしかいないという変わった部隊だ。

 

今回のネイバー遠征の3部隊の一つで訓練の最後の相手だ。戦闘員が二人だけでA級2位になっているのは本当に凄いと思う。

いずれ比企谷隊が遠征に行くにも倒さないといけない部隊だ。

だから遠征の訓練相手に俺を誘ってくれた迅さんには一応感謝はしている。だが、今回も太刀川隊と風間隊のような事にならないか心配だ。

 

「お、比企谷じゃないか」

 

「当真さん。どうも」

 

訓練室に向かっていると当真さんが声を掛けてきた。この人の髪型は相変わらずだな。

色んな意味で凄い。

 

当真勇。

冬島隊スナイパー。

型にはまらない自由な感覚型凄腕スナイパーで遊び心を忘れない自由な隊員だが、それでも№1スナイパーに君臨してる。

そしてトレードマーク髪型がリーゼントが今日も決まっているな。

 

「今日はよろしくな」

 

「こっちもいつか戦うから今から勉強させてもらいますから……そう言えば……」

 

「おっさんなら寝不足でまだ寝ている」

 

俺が周り見て当真さんが察してくれて答えてくれた。当真さんが言うおっさんとは冬島隊の隊長の冬島慎次さんの事だ。

 

冬島慎次。

冬島隊隊長でトラッパー。

元エンジニアで頭脳派のトラッパーだ。学生が多い隊員の中で数少ない学生ではない大人だ。よく他の隊の部屋で麻雀をしている。

そんな人だが、上層部からの信頼は厚い。

 

冬島隊のオペレーターの真木理佐がいるが、あまり話した事は無い。腕は良いらしい。

俺は当真さんと訓練室に向かって歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の訓練ステージは市街地Aになった。狙撃するには邪魔になるものは殆んど無い。高い建物がいくつかあり、そこそこ狙い易い。

この訓練では俺は試作トリガーではなく、普段から使っているノーマルトリガーを使う事にした。

その最大の理由がバックワームとライトニングがあるからだ。

試作トリガーには入れていないのでレーダーで位置がバレバレになる。スナイパーしか攻撃手段がない冬島隊に位置情報が伝わるのは出来る限り避けておきたかった。

 

「……二人しかいないから向こうの位置を探るのは一苦労だな」

 

向こうが見つけてくれればいいが、それだと狙われ放題だからな。自分は見つからないようにして、隠れている相手を探さないとな。

そう思って動いた瞬間、何かが頬を掠った。そして何が掠ったのかはすぐに分かった。

当真さんの狙撃だ!

 

「?!……もう見つかったのか?!」

 

俺は撃ってきた方向から当真さんの位置を確認してすぐ移動した。スナイパーの基本は1、2発ごとに位置を移動するというものだ。

だから当真さんはもう先程の場所にはいない。次の狙撃位置に向かっているか、着いている事だろう。

建物に隠れて周りを見て次に移動して狙撃するならどこだ?と考えている間に2発目が左足に当たった。

 

「……チッ!グラスホッパー!」

 

俺はバックワームを解除して、グラスホッパーを起動してその場から離れた。それでも弾丸は俺を追ってきた。

なんとか建物の影に隠れてやり過ごしたが、左足をやられて機動力が落ちた。

流石は№1スナイパーだなと思い知らされる。こっちがどこに居るかなんて把握している

こっちが向こうを確認した時にはやられているな。しかも当真さんは超長距離狙撃をしてくるからな。

 

「それにしても迅さんはどこにいるんだ?」

 

今回に関してはすぐにやられていないので大丈夫かと思うが、これまでの事があるから不安でしょうがない。

俺はゆっくり建物の影から顔を少しずつ出して周りを確認しようとしたら弾丸が顔スレスレを横切った。

 

「危なっ?!……それにしてもかなり離れていると思うのによく当ててくるな」

 

当真さんの狙撃の腕は誰から見ても凄いと思うだろう。伊達にボーダー№1スナイパーではないからな。

当真さんは後回しにして、先に冬島さんを倒しておいた方がいいな。

 

「……え?」

 

俺が建物の影から身を出した瞬間、左肩を撃ち抜かれた。一瞬、驚きで動きを止めたが、すぐに意識を入れ替えその場から移動して別の建物の影に逃げ込んだ。

俺はバックアームを解除してライトニングを出した。

 

「……一発勝負だな」

 

左足に続き左肩までやられた。次にどこを狙ってくるか大体、わかった。当真さんは射撃で遊ぶ癖があるからな。

俺としてはここは何としても一矢報いたい気持ちだ。

俺は建物の影から出た。するとすぐに弾丸が俺の正面から左目を貫通した。俺はライトニングを構えて引き金を引いた。

 

「……これでも食らえ!!」

 

ライトニングの弾丸は吸い込まれるように飛んでいった。そして俺のトリオン体は崩壊した。

 

『伝達脳破損!ベイルアウト!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これで三度目となる固いベットへのダイブだ。この固さは改善するべきだと強く思う。

試しに上層部に言ってみるか?

最後のライトニングの弾が当たったかは俺には分からないが、当たったと思う。俺は起き上がって訓練室を出た。

 

「お、比企谷」

 

「当真さん。お疲れ様です」

 

訓練室を出たら当真さんと出くわした。聞いて見るか、俺の最後の攻撃がどうなったのか。

 

「当真さん。聞いてもいいですか?俺の最後の攻撃は当たりました?」

 

「ああ、あれか。肩に当たった。よく当てたな」

 

「……まぐれ当たりですよ。自分でも少し驚いています」

 

あれは正直、当たったのはまぐれだ。当たっていない可能性の方が高かった。

俺と当真さんの距離はかなり離れていたはずだ。それで当たったのは運が良かった。

 

「比企谷は遠征を狙っているのか?」

 

「ええ、次辺り狙ってみようかと」

 

俺としては遠征に行ってみたいが、小町と離れるのはかなり辛い!!だが、遠征には行きたい。

ここは頑張るしかない!!

 

「そう言えば、今回の遠征はどういう予定なんですか?」

 

「特に戦うわけでもないからな。未知のトリガーを手に入れる事が主な目的だな」

 

未知のトリガーか。俺が使っている試作トリガーも様々なネイバーフットの技術が詰まっている。

そう言えば、材木座の奴が試作トリガーの使った感想を自分が書いた小説と共に聞かせてくれって、言っていたな。

あいつの心がズタズタになるまで小説の批評を言ってやるか。安心して逝け材木座。

 

「比企谷はこれから何か予定あるのか?」

 

「試作トリガーの報告書を書かないといけないんですよ。何かあるんですか?」

 

「ああ、せっかくだから比企谷を麻雀に誘うかと思ったんだがな」

 

麻雀か。ルールはある程度分かるが、辞めておこう。

 

「すいません当真さん。遠慮しておきます」

 

「そうか。またな」

 

当真さんはそれだけ言って行ってしまった。俺も早く作戦室に行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当真さんと少し話してから俺は比企谷隊の作戦室に向かった。流石に疲れたので比企谷隊の作戦室で仮眠をしようと思ったからだ。

作戦室に入るとそこには小町と雪菜の二人が楽しそうに話していた。

 

「あ!お兄ちゃん!」

 

「こんにちは。八幡先輩」

 

「おう。小町に雪菜はここで何やっているんだ?」

 

現在の比企谷隊と川崎隊の防衛任務はもう終わって結構な時間が経っていた。この二人、ここで何をしているんだ?

 

「雪菜ちゃんと一緒にお兄ちゃんを待っていたんだよ。雪菜ちゃんがお兄ちゃんに修学旅行でのお土産にお礼が言いたいんだって!」

 

「そうか。お礼は別に構わないんだがな」

 

「いえ!そういう訳にはいきません!」

 

雪菜は立ち上がり俺の目の前まできた。近い近い!!ヤバイ、少しシャンプーの香りが漂ってくる。いい匂いだ。

俺、雪菜が近付くと匂いを嗅ぐ癖がついているな。流石に止めないと何か言われそうだな。

 

「折角、八幡先輩が買ってくれたのにお礼も何も言わないなんて、できるはずも無いじゃないですか!」

 

「そ、そうだな……」

 

「それで、ケーキを作ってきたので良かったら食べてください」

 

雪菜は冷蔵庫からケーキを3人分出した。流石女の子だな、かなり綺麗に出来ているな。

いや、女の子だからと言って全てがそうではないな。特に由比ヶ浜が……。

もしあいつがケーキを作ったらケーキとは言えないものが出来そうだな、断言できる。

 

「それじゃ、いただきます」

 

「はい。召し上がれ」

 

「小町もいただくね!」

 

俺と小町は雪菜が用意してくれたケーキを一口、口に運んだ。食べて分かった。

 

「こ、これは……マッ缶の味がするだと……?!」

 

「はい。八幡先輩が好きなMAXコーヒーを入れてみました。一応味見はしたんですけど、どうですか?」

 

「ああ、最高だ!もう一皿貰ってもいいか?」

 

「はい。良かったら私の分を食べてください」

 

雪菜は自分の皿を俺に差し出した。このケーキ、本当に最高だ。マッ缶を使っているのがポイントが高いな!

雪菜の分もぺろりと平らげてしまった。

 

「……ご馳走様。美味しかったぞ、雪菜」

 

「うん!さすが、雪菜ちゃん!!」

 

「お粗末様です。八幡先輩はこの後、何かありますか?」

 

なんか今日はそれを聞かれるの二度目だな。

 

「俺はこれから遠征部隊との戦闘のレポートを書かないといけないんだ。何かあるのか?」

 

「はい。実は今日……」

 

「雪菜ちゃんがこれから家に泊まりに来るからお兄ちゃんに知らせておこうと思って!」

 

ああ、そう言うことね。まあ、小町が寂しく無いなら別にいい。

 

「分かった。でも俺はここから直接、学校に行くから帰ったらすぐに戸締りをしておけよ」

 

「うん!わかっているよ!それじゃ、がんばってね!お兄ちゃん!」

 

「それじゃ失礼します。八幡先輩」

 

小町と雪菜は作戦室から出て行った。俺は二人が出たのを見送って、レポートを書き始めた。そっちはすぐに終わった。

しかし俺の目の前には材木座から預かった奴の書いた小説の紙の束がある。

こいつを読んでから仮眠でも取るか。結局、俺が読み終わったのは学校に行く2時間前だった。

 

 




次回からワートリの原作に入ります。

仕事が忙しくてしばらく更新出来るかどうか分かりません。

11月になれば仕事が落ち着くので更新出来ると思います。

それでは。

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