やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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太刀川隊

材木座を相手に新型試作トリガーを試したが、中々にいい仕上がりだったと思う。あいつのウザいテンションがもう少しどうにかなれば、いいんだがな。

材木座をボッコって遊んだので帰ろうかと思っていたら本部ではあまり見かけない迅さんに呼び止められた。

なんでも近々ネイバーフット遠征に行く部隊の訓練に俺も参加してくれと頼まれた。

 

雪ノ下隊と葉山隊の合同防衛任務はしばらく無いので参加してもいいと思ったので参加する事にした。

最初は驚いたが、俺としてもこれはいい経験になると思うし遠征部隊の実力を見ておく事は次のA級ランク戦の参考に出来るからだ。

 

そして最初は太刀川隊が相手だという事だ。俺が思うにボーダーの部隊の中でもかなり火力がある部隊だ。若干一名お荷物がいるが、それでもA級一位の座についているのだから凄いと言うほかない。

そんな太刀川隊が相手と聞いて展開がなんとなく予想出来る。太刀川さんが一番に迅さんに斬りに掛かるだろうな。ライバルだからな、あの二人。

 

だったら俺は出水と唯我の相手でもしているか。迅さんと太刀川さんの戦いに巻き込まれるのはゴメンだ。

だから俺は例え太刀川さんと会っても迅さんの方へ誘導するだけだ。そして最初に出来るだけ唯我を先に倒しておきたい。

唯我は弱いが出水と一緒に攻めてきたら対応しずらい。それに弱いから倒し易いからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「市街地Aか……しかし天候が暴風とはな。これからどうするか」

 

ステージは市街地Aで天候が最悪の暴風とかやりずらいな。雨や風の所為で動きが鈍くなるし一度跳んでしまうと、そこを狙われてしまう。

迅さんと合流するか、それとも単騎で進むかの二択だからな。……単騎で進むか。

 

「……あ、唯我」

 

「ひ、比企谷先輩?!」

 

しばらく歩いていると唯我を発見した。唯我は完全にビビっていた。

 

「とりあえず、くたばれ!バイパー!!」

 

「し、シールド!」

 

俺はバイパーを27分割して唯我に発射した。唯我はシールドで防ごうとしたが、それでは不正解だ。何故なら……俺のバイパーはシールドを避けるように弾道入力しているからギリギリまで近付けてからシールドで防がないと防げない。

 

「し、しま―――」

 

「―――シールド!」

 

唯我にバイパーが当たりそうな所で出水がシールドを唯我の側面に展開して代わりに防いだ。出水が来る前に唯我は仕留めておきたかったんだがな。そう簡単にはいかないか。

 

「唯我!比企谷のバイパーはギリギリで防げって言っただろうが!」

 

「す、すいません!出水先輩!」

 

唯我はビビリながらも出水に謝っていた。出水と唯我が合流したのは仕方ないが、なら二人まとめて倒すだけだ。

 

「バイパー!」

 

「アステロイド!」

 

俺のバイパーに対して出水はアステロイドを広範囲に向けて発射した。広範囲に発射した事もあって俺のバイパーの殆んどを打ち落とした。

俺のバイパーは射程と弾速にトリオンを注いでいるために威力は低い。だからこそ、シールドで防ぐ前にある程度、弾数を減らしておいた方がいい。

 

「ちっ!?……だったら!ディード!バイパー!」

 

俺はディードを起動して分割せずに一枚の円盤として打ち出した。狙いはもちろん、唯我だ。出水はバイパーで足止めを忘れていない。

 

「ッ?!アステロイド!!」

 

出水は唯我を守ろうとアステロイドを放つがもう遅かった。まさにディードが唯我の首を切ろうとした。

しかし唯我の首が飛ぶ事は無かった。

 

「―――旋空弧月」

 

「……はぁ?」

 

ディードが旋空弧月によって破壊された。旋空を放ったのは言うまでもない、太刀川さんだ。迅さんが相手してと思ったらどうしてここに?

 

「……念のために聞きますけど、太刀川さん。迅さんはどうしたんですか?」

 

「迅なら倒したぜ」

 

「……マジかよ」

 

太刀川さんの言う事が信じられないとは言わない。だが、あの迅さんがこんなにもあっさりやられるか?今回の訓練では迅さんはブラックトリガーの『風刃』を持ってきてるからだ。

ノーマルトリガーとブラックトリガーでは性能が段違いはずなのに迅さんが太刀川さんにあっさりやられるのか?

あっさりやられたのには理由があるのか?……流石にあの人の思考を読むのは俺でも難しい。

 

とりあえず、理由はどうあれ気持ちを切り替えて出水と太刀川さんを相手にしないとな。唯我はすでにどこかに隠れた。後で斬りに行くか。

俺は新しいブレードトリガーの『牙月』を出して構えた。出水は警戒してたが、太刀川さんはギラギラと目を輝かしていた。

 

「比企谷。それ、新しいトリガーか?」

 

「ええ、そうですよ。名前は『牙月』って言います。削り斬る剣と言った所ですよ」

 

「そうか。……それ、楽しめそうだな」

 

太刀川さんは凄いいい顔している。戦闘狂だと改めて思い知らされるな、この人。

俺は『牙月』を腰に添えるように横に構えた。一撃必殺で仕留めると太刀川さんに思い込ませる。

それで本当の狙いは出水だ。太刀川さんを仕留めると見せかけて出水を先に倒す。出水の援護ありの太刀川さんを相手にして勝てる気がしないからだ。

 

先に仕掛けてきたのは太刀川さんからだった。出水は後ろでいつでも撃てる構えをしていた。俺は構えたまま動こうとしなかった。

太刀川さんを出来るだけ引き寄せてから仕掛けないと出水を倒す事が出来ない。

 

「エスクード!!」

 

「な?!」

 

エスクードを太刀川さんの足元から出現させて太刀川さんを押し上げた。試作トリガーではなく俺の専用のトリガーだとグラスホッパーでする所だが、太刀川さんはグラスホッパーを入れているから効果はない。

 

だが、今回はエスクードだ。下からせり出て来るのには対応が出来なかったようだ。

しかも本来は横にするのが普通なのだが、今回は縦にしている。なので出水の姿はしっかりと見える。

 

「テレポーター!」

 

俺はテレポーターを起動して一瞬で出水の目の前に現れた。そのまま『牙月』を出水に目掛けて振り下ろした。

 

「チッ?!シールド!!」

 

出水は舌打ちしながもシールドを二枚重ねして牙月を防ごうとしたが、俺は牙月のスイッチを押して刃を回し始めた。

牙月は出水のシールドガリガリと削りついにはシールドを破壊して、そのまま出水を真っ二つにした。

 

『トリオン体活動限界!ベイルアウト!』

 

出水のトリオン体は崩れ飛んで行った。それにしても流石は牙月だな。シールドを削り斬るなんて事が出来るなんてな。

 

「旋空弧月!!」

 

「エスクード!!」

 

太刀川さんが間髪入れずに旋空弧月を放ってきたが、俺はエスクードで防いだ。シールドだったらこうはいかない。

太刀川さんの旋空は他と一味違うからな。俺のシールドでもそう簡単に防げない。

 

「そうでないとな!比企谷!!」

 

「まったく!戦闘狂は相手にするのは面倒ですね!!」

 

俺は牙月を、太刀川さんは弧月を、それぞれの得物をぶつけた。その度に火花を散らした。こっちは一刀だが、太刀川さんは二刀で向こうの方が小さく立ちまわれるので押されつつあった。

それに俺は牙月を使い始めて間もないのに比べて太刀川さんは弧月を使い慣れている。この差は大きい

 

徐々にトリオン体に無数の傷ができ始めてしまった。そこからトリオンが漏れ出してきた。このままではいずれトリオン漏れで終わってしまう。

俺は一つの賭けに出る事にした。一先ず太刀川さんから距離を取った。

 

「エスクード!」

 

エスクードで互いの姿を隠した。俺は牙月を肩に置くように構えた。エスクードが消えた時が勝負だ。太刀川さんがこのまま正面から突っ込んでくれば、振り下ろして決める事が出来るが、左右のどちらかに廻ってしまうと俺の負けだ。

そしてエスクードが消えて、太刀川さんは真っ正面から突っ込んで来た!賭けは俺の勝ちだ!

 

俺は牙月を太刀川さんに振り下ろした。このまま削り斬れば勝てる!と思っていたら太刀川さんは弧月の内一本で牙月を受け流し、もう一本の弧月で俺の喉を突き刺してきた。

すでに時遅しだった。思いっきり振り降ろしたので回避も防御も間に合わずに終わってしまった。

 

『トリオン体伝達神経破損!ベイルアウト!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太刀川さんに斬られた俺の目に見えたのは部屋の天井だった。それと少し固いベットの感触だ。どうにもベイルアウト後のこのベットは嫌だ。

もう少し柔らかいものにしては貰えないだろうか?ベットの上から落ちて、その衝撃が伝わってくるのがどうにも嫌な気分を二割増しにしてしまっている。

 

「どうぞ、主様。MAXコーヒーでございますわ」

 

「おう。サンキューな、夜架」

 

そうそうこれが俺の心を小町や戸塚以外で癒してくれる。この絶妙な甘さが身体全体に染み渡る。

…………ん?あれ?俺はこれを誰に渡させたんだ?横を見てると夜架が立っていた。

 

「?!……夜架。いつからそこに立っていた?」

 

「主様が落ちてくる少し前ですわ」

 

「……そうか。マッ缶、ありがとな」

 

「いえいえ、これくらい構いません。それに私は主様にお礼を言いたかったので」

 

「お礼?」

 

俺は夜架からお礼を言われる事をしたかな?覚えがないな。すると夜架は一本の簪を持ち出した。それは俺が修学旅行で買って夜架にあげた物だ。

 

「どうして簪を私に?」

 

「ああ、それはな。夜架って、髪が長いから何か留めるものがあったら便利かなって思ってな」

 

「そうですか。ありがとうございますわ、主様。では、私はこれで」

 

「そうか。またな」

 

夜架は満足したかのように部屋から出て行った。俺は次の隊の相手のため少しでも休んでおくか。

 

 


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