やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷八幡&藍羽浅葱⑤

ついに来た。修学旅行三日目だ。

昨日の夜に雪ノ下と平塚先生が俺を総武から追い出そうと計画しているのを偶然聞いてしまった。

その事を浅葱に言ったら『モグワイ』を使って平塚先生のスマホに潜り込んで盗聴した。

別にウィルスを送っていないので多分大丈夫だろう。まあ、バレないなら問題ないだろう。

問題なのは二人が俺を追い出す作戦として俺の強姦未遂で立場や居場所を失くすと言うものだ。

これをモグワイから聞いた時は怒りと呆れの二つを感じた。俺に下手に関わると面倒な事になるのは分かっていないのだろうか?

 

この強姦未遂を防ぐには俺が雪ノ下の呼び出しに行かなければそれでいい。だが、もし平塚先生に呼ばれて生徒指導室のような密室空間に入れられたらそれは非常に不味い。

だからこそ、俺を強姦未遂にされる前に二人を潰そうと決めた。

そこで俺は朝食前にある人物に電話をした。雪ノ下、平塚先生の二人をどうにかしてくれそうな俺の『協力者』に。

 

『やっはろー♪比企谷君』

 

「どうも陽乃さん。朝からすいません」

 

そう俺の電話の相手は雪ノ下陽乃さんだ。雪ノ下の姉で元平塚先生の教え子のこの人ならどうにか出来そうと思ったので電話した。

 

『いいよ。気にしないで。それで?朝から私に電話をしてきたのは雪乃ちゃん関係かな?』

 

「はい。そうです。実は……」

 

俺は雪ノ下と平塚先生が俺を総武から追い出そうとしている事を全て話した。陽乃さんは最後まで黙って聞いていた。

雪ノ下建設の乗っ取りのために妹を犠牲にしたのにその妹が俺に関わろうとしているからな。

それに陽乃さんとしても俺がいなくなっては会社の乗っ取りが出来なくなってしまう。それはこの人の望む所では無いだろう。

せっかく、自分の望みが叶いそうなのにそれが妹の所為で台無しにされては困るだろう。

 

『……ふ~ん。雪乃ちゃんと静ちゃんがね……最近の雪乃ちゃんは詰まらないと思っていたけど、とことん詰まらなくなっちゃたな。いいよ、雪乃ちゃんの事はこっちでやっておくね。それで静ちゃんに関しては比企谷君がするの?』

 

「ええ、あっちから仕掛けて来る前に潰します。それに俺は前に忠告したはずなんですけど、それを無視したからにはそれなりの罰を受けてもらいますよ。それじゃ雪ノ下……貴女の妹の事は任せるんで。後で会話の録音を送っておくんで、自由に使ってください」

 

『OK♪出所を聞かれても適当にはぐらかしておくから君からだってのは分からないと思うよ』

 

「そうですね。その方がいいでしょう。それじゃお願いしますね。では」

 

俺は電話を切って朝食を摂るために部屋を出た。これで一先ず大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

修学旅行の三日目は大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン。通称USJに来ている。

三日目の今日一日、総武の生徒はここで過ごす事になっている。

それにしても流石はUSJだなと思う。平日と言っても大勢の人で溢れていた。浅葱と今日は色々と周る予定だが、俺はどう周るのかまったく聞いていない。

浅葱の事だから心配する必要はないな。だが、他の事が心配だ。

葉山グループと雪ノ下の行動が不安でしかたない。戸部は今日の夜に告白するために出来る限り好感度を上げておきたいはずだから結構アピールして来ると思うし、周りもそれに協力するだろう。

俺が動くのは告白の直前だからそれまで特に行動する必要はどこにもない。あるとすれば、雪ノ下と由比ヶ浜辺りが余計な事をしないか見ておく事くらいだろう。

 

USJに着いて自由に移った時に由比ヶ浜と葉山の二人が周りをキョロキョロしていたので俺を見つけよとしたのだろう。二人に見つかると面倒な事になりそうだと予感がした。

朝食の間、ずっと俺の方を見ていたからだ。海老名が俺と葉山を交互に見て鼻を押さえながら笑っていたのを見て背筋がゾックとした。

だから急いで浅葱と合流しようとその場から離れた。どうしてグループの問題に入ってもない人間を巻き込もうとするのかが分からないな。

とりあえず俺は浅葱との合流場所に向かった。合流場所については事前に話し合っていたのですぐに見つける事が出来た。

 

「悪い待たせた。浅葱」

 

「そんなに待っていないから気にしなくていいわよ。八幡」

 

「それで、どこから周るんだ?」

 

「まずはジュラシック・パークの絶叫系に行くわよ!」

 

まずはジュラシック・パークか。しかも絶叫系とは王道だけど、浅葱が考えた通りに回るか。どう回ればいいかちゃんと考えてありそうだからな。

そもそも最初から絶叫系なのが浅葱らしいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の俺の状態は非常に参っていた。ベンチに座り気分を落ち着かせていた。浅葱に付き合って絶叫系を乗りまくった。

流石に気分が悪くなった俺に対して浅葱はまだまだ余裕が見られた。

一体、どこにその元気を隠し持っていたのか知りたいくらいだと思ってしまう。

 

「もうなさけないわね。いつもトリオン兵相手に暴れている癖に」

 

「……トリオン兵は簡単な行動パターンがあるから対処しやすいけど、ジェットコースターはそうはいかないだろ?コースは分かっても何本も乗ったら疲れる。そういう浅葱はまだ、余裕だな?」

 

「もう三回はいけるわよ」

 

「……勘弁してくれ」

 

ここ暫くは絶叫系には乗りたくないと言うのが本音だが、ここでもう乗りたくないと言ったら浅葱が悲しみそうだからな。少しは我慢しておくか。

 

「……次はどれに乗るんだ?」

 

「大丈夫?別に無理しなくていいけど……」

 

「いや、無理はしていない。小町に思い出を聞かせてやらないといけないからな」

 

正直な所、結構限界が近いのだが……頑張るしかない!

 

「そう?だったら、遠慮はしないわよ!次も絶叫系に乗るわよ!」

 

「……了解」

 

ここを乗り越えて行くしかないようだ。頑張れ俺!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶叫系アトラクション巡りを終えて俺と浅葱は少し早めの昼食を摂っていた。少し気分は優れないが、ここは無理をしてでも食べておかないと午後から持たない。

浅葱はアトラクションに満足したようで、げっそりしている俺とは対照的に生き生きしていた。

 

「……それで午後一番はどこに乗るんだ?」

 

「一時間くらいは歩くわよ。このままだと吐くわよ、八幡」

 

「……それは嫌だな」

 

「でしょ?それにお土産を見ておきたいしね」

 

浅葱の言う通りだ。飯を食べてすぐに絶叫系に乗れば間違いなく吐く。しかも公衆の面全で、盛大に吐くだろう。そんな事は絶対に回避しておきたい。

確かに少し時間を置いた方がいいな。それに小町や雪菜、夜架、シノンにお袋や出来るだけボーダー関係者にお土産を買っておきたい。

買うとしたら忍田本部長と太刀川隊と嵐山隊、那須隊に川崎隊くらいだろうか?後は浅葱の両親にも何か俺から買っておくか。

昔からお世話になっているし、親父が亡くなってからは更になったからな。

 

「八幡。お土産はどれを買うか決めた?」

 

「ああ、ある程度はな。小さいのは買って、大きいのは帰りに買う事にするわ。荷物になるからな」

 

「まあ、そうよね。それじゃあ、次行くわよ」

 

「ああ」

 

「あ、ヒッキー!」

 

浅葱と食後の休憩がてらお土産を見ていると由比ヶ浜に出会ってしまった。その後ろには葉山グループと雪ノ下がいた。

雪ノ下、葉山、三浦は俺と顔を合った瞬間、三人とも俺を睨み付けてきた。

ホント、分かり易いなこの三人は。唯一戸部だけが何故葉山達が俺を睨み付けているのかが分かっていなかった。

いい奴とは思わない。俺の名字を間違えている時点で仲良くはなれない事は明白だ。

 

「…………」

 

俺は浅葱を連れてこの場から逃げるように立ち去ろうとした。関わる事は面倒だし戸部の件に巻き込まれそうな予感がした。

 

「無視すんなし!!」

 

「うげぇ?!」

 

立ち去ろうとしたら由比ヶ浜に制服の襟を掴まれた。地味に苦しいな。

 

「ちょっと?!由比ヶ浜さん。八幡にいきなりなにすんのよ!」

 

「ヒッキーが無視すんのが悪いんだし!!」

 

浅葱が俺と由比ヶ浜の間に割って入って来た。そして由比ヶ浜は俺が悪いと言ってくる始末だ。

 

「……由比ヶ浜さん。前から言おうと思ったのだけど、八幡の事を『ヒッキー』って言うの辞めてくれないかな」

 

「だ、だって……ヒッキーはヒッキーだし……」

 

「八幡と由比ヶ浜さんはそんなに親しくないのに初めて会った時からそう呼んでいたんでしょ?」

 

由比ヶ浜はいきなり俺の事を『ヒッキー』呼びしていたからな。それから何かあるたびに『キモい!』と罵倒していたな。

 

「はっきり言って八幡は貴女の言葉で傷付いているのよ。だからもう二度とそのあだ名で呼ばないで。呼ばれる人の気持ち考えた事がある?」

 

「…………」

 

由比ヶ浜はついに黙ってしまったよ。まあ、由比ヶ浜はこういう奴だからな。それにしても葉山がさっきから何も言ってこないな?必死に三浦を止めている。

ああ、なるほどな。葉山が何も言えないのではなく、何も言わないのか。

ここで割って入れば葉山自身も俺の名字をワザと間違っている事を指摘されてしまう。流石にそんな事になれば葉山は他人の名字をワザと間違えていると自分で言っているようなものだ。

 

「……貴女、さっきから聞いていれば好き勝手に言ってくれるわね。流石に低俗な男といるだけあるわね」

 

「……その低俗な男って、八幡の事?そう言えば雪ノ下さんにも言いたい事が「はい。そこまで!」―――八幡?!」

 

俺は雪ノ下に喧嘩を売ろうとした浅葱に割って入ってその場から連れ出した。店の中でこれ以上騒いだら悪目立ちしてしまう。

浅葱と雪ノ下は水と油ではなく炎とガソリンだ。近付けると危険だ。

 

「ちょっと、八幡。どうして言い返さないのよ!」

 

「とりあえず落ち着け。あの場で騒ぎを起こせば碌な事にならない。それに雪ノ下には『計画』の事を知られたくない」

 

あのまま喧嘩になっていたら浅葱がうっかり喋ってしまう可能性があった。そうなれば折角練った『計画』が台無しになってしまう。

それに修学旅行が終わった後に雪ノ下と平塚先生の計画を阻止するのにも情報は渡したくない。

待っていろ。雪ノ下と平塚先生、二人が俺に仕掛けて来るならこっちにだって考えがあるぞ。


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