やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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戸部翔②

修学旅行初日の前半は移動が殆んどだ。千葉から東京駅に行きそこから京都駅に向かう。

新幹線で数時間程度の移動になる。その間に俺は前から川崎から相談されていたトリガーの内容について話す事にした。

ある程度、内容が決まったので着くまで俺は寝る事にした。葉山達の面倒事についてもある程度は考えているので三日目の夜までのんびり楽しもうと考えている。

 

「八……幡……八幡」

 

「ん?戸塚?どうした?」

 

寝ていると戸塚が肩を揺らして起こしてくれた。もう着いたのか?

 

「後、十分位で着くから起こしたんだけど。迷惑だったかな?」

 

「いや、そんな事はない。ありがとな、戸塚」

 

「うん。どういたしまして」

 

戸塚は笑顔でそう言ってくれた。ああ、まさに癒しの天使トツカエルだぜ。

 

「!?」

 

俺が戸塚の笑顔に癒されていると『ぞくり』と背中に悪寒が走った。葉山達の方に視線だけ向けたが葉山達ではない事はすぐに分かった。

葉山達はそれぞれワイワイ騒いでいたからだ。この車両で一番騒がしかった。

 

「どうしたの?八幡」

 

「な、何でもないから気にしなくていい」

 

「そう?それじゃあ降りる準備しないとね」

 

戸塚を初めに次々と生徒達が降りる準備を始めた。それにしてもさっきの悪寒は結局なんだったんだ?

……まさか、戸塚を狙った誰かが俺に向けた殺気か?だとしても俺の癒しの天使の戸塚は誰にも渡さないぞ!

 

そんな考えていると京都駅に着いて生徒が外に出始めたので俺もそれに続いて外出た。ここからは京都の名所めぐりを始める事になる。

最初は確か清水寺だったかな?他にも五重塔とか金閣寺や銀閣寺などを回るようになっていたな。

 

京都駅を出るとすでにバスがいつでも出発出来るように待っていた。生徒は自分のクラスのバスに乗り込んでいた。

俺も自分のクラスのバスに乗り込んだ。

 

「時間が押しているから早く席に着け。……それじゃあ出発するぞ」

 

平塚先生がそう言うとバスは駅を出て清水寺に向かった。市街地を抜け広い駐車場にバスは停車した。どうやら目的地に着いたらしい。ここからは徒歩での移動だ。

石段を上がり門をくぐり見えてきたの京都の町並みだ。資料写真ではなく高い所からの見える光景の存在感に感動に似た感情を感じながら写真を何枚か撮った。

中々上手く撮れたな。帰ったら小町に見せてやらないとな。

 

「凄い光景だね!八幡」

 

「そうだな。実物の迫力は凄まじいな」

 

戸塚は興奮気味に聞いてきた。戸塚でなくともこの光景を見れば誰だって興奮してまう。

正直、ここまで凄いとは思わなかった。ここが京都で屈指の名所なのも頷ける。

 

「これ!マジでヤバいっしょ!写真!みんなで写真撮るしかないべー」

 

「ちょっと、落ち着けよ。戸部」

 

「でもでも隼人君!この景色は凄すぎだべー!!」

 

すぐ側で戸部がはしゃいでいた。興奮するのは分かるが、もう少し静かにしてもらえないものだろうか。周りには俺達以外の観光客がいるのにな。まあ、あのグループが静かになる時なんてあんまり無いか。

 

「あ、そうだ。八幡、僕達も写真撮ろうよ」

 

「おう。いいぞ」

 

「川崎さんも一緒に撮ろうよ」

 

「……いいの?」

 

「うん。八幡もいいよね?」

 

「ああ、いいぞ」

 

戸塚も写真を撮ろうと言うので撮る事にすると近くにいた、川崎を誘った。川崎は少し照れ臭そうにしていたが、それでも写真に入ったきた。

俺達は交代で写真を撮ったが、葉山達は相模にやらしていた。まあ、ボッチ扱いされるよりマシだろう。

 

「時間もあんまりないし出来るだけ周ろうぜ。戸塚、川崎」

 

「うん。そうだね」

 

「……うん」

 

俺達はバスに乗って次の目的地である金閣寺と銀閣寺に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の目的地に着いた俺達の目の前には黄金に輝く金閣寺があった。一度全焼したが復旧して元の姿を取り戻した。

金閣寺は外国人にかなり人気のようで外国人が多くいるように見えた。

 

「金だべ!金!隼人君!!金ぴかだべ!?」

 

「戸部。興奮するのは分かるが、もう少し声を抑えろよ。周りの人達の迷惑になるだろ」

 

「ご、ごめんだべ……」

 

寺一つであんなにも興奮するとは、まあ分からなくも無いがあそこまで大きい声は出さないな。悪目立ちもいい所だ。

そんな葉山達は無視に限るな。変な目で見られたくないからな。

 

「銀じゃない?!」

 

金閣寺の次は銀閣寺だ。由比ヶ浜は銀閣寺が銀じゃない事にショックを受けていた。由比ヶ浜は銀閣寺の成り立ちを知らないのか?……知らないと言うより忘れているな、あいつ。

金閣寺よりかは見栄えしないが、一応撮っておくか。

それからバスに乗って次の目的地に向かった。バスの中で由比ヶ浜は未だに銀閣寺の事を引きずっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次は清水寺だ。ここに来たなら絶対に行っておくべき場所がある。それは地主神社だ。

この神社は恋愛成就で有名で願う参拝客で混んでいた。清水寺に来たならここは外せないとクラスの連中が言っていたのを聞いたので俺も来てみたかった。

 

クラスの大半がここに居た。特に恋占いの石に興味があるようで、多くの女子が集まっていた。

恋占いの石とは離れた位置にある石の間を目を瞑り到達出来れば、その恋は叶うと言うものだ。よくよく見ると由比ヶ浜と三浦もやっていた。

 

そんな恋占いの石の列に戸部の姿があった。勇敢なのかバカなのか分からないな。普段はチャラいのに今回の告白はそれだけ本気と言う事なのだろう。

応援してやりたいと思うが、葉山グループでなく自分の意思で俺の所まで来たなら手伝ってもよかったが、そうではないのでしない。

 

「戸部っち!少し右にズレているよ!」

 

「み、右!?」

 

戸部の番になってやっていると少しズレてきていたのか由比ヶ浜が大声でサポートしていた。戸部は由比ヶ浜の指示を聞いてズレを直した。

 

「戸部!右じゃなくて左だし!」

 

「ひ、左!?どっちなんだべ!?」

 

由比ヶ浜の次は三浦が戸部に指示を出していた。由比ヶ浜が右と言うのに三浦が左だと言うものだから戸部はどちらの指示が正しいのか分からなくなっていた。

それでも戸部は何とか渡りきる事が出来た。

 

戸部の恋占いの石渡りを見た俺達はおみくじをする事にした。こっちは恋占いの石よりかは混んではなかったのですんなりとする事が出来た。しかも大吉で少しテンションが上がった。

戸塚と川崎もそれぞれ引いて特にがっかりしていないからいい結果なのだろう。

 

「戸塚と川崎はどうだった?」

 

「僕は大吉だったよ。川崎さんは?」

 

「……あたしも大吉」

 

三人揃って大吉とはな。運がかなり強いって事なのだろうな。

 

「見てよ、隼人君!大吉だべー!!これは絶対成功するべー!」

 

「分かったから少し落ち着け戸部。周りに他の人も居るんだから」

 

「戸部!声、うるさいし!!」

 

おみくじが三人揃って大吉に少し興奮していると葉山達の声が聞こえてきた。戸部は大吉でかなり興奮していた。高校生になって大吉一つであそこまで興奮出来るとはな。

葉山は戸部を落ち着かせようとして三浦はうるさいと戸部を黙らした。

 

海老名と由比ヶ浜の二人が俺に視線を向けてきた。海老名は戸部の告白をどう止めるのかを心配していて、由比ヶ浜は俺に戸部の告白の協力して欲しいのだろう。

誰が手伝うものか。それに手伝えば雪ノ下が俺を罵倒してきそうだし、早めに離れた方がいいな。

 

「戸塚と川崎は次、周りたい場所あるか?」

 

「そうだね。あ、だったら僕、音羽の滝に行ってみたいんだけど、八幡と川崎さんどうかな?」

 

「戸塚が行きたいなら俺は全然いいぞ。川崎は?」

 

「……あたしはそれで別にいいけど」

 

戸塚が行ってみたいという音羽の滝に行く事にした。あそこは確か学問・恋愛・健康の願いが叶うパワースポットと有名で特に女性に人気が高い。

俺と戸塚、川崎は地主神社を後にして拝観順路に従って音羽の滝へ歩いて行った。見ると物凄い並んでいた。

流石に人気があるな。それでも早く捌けているので俺達の順番はすぐにきた。

 

「戸塚と川崎はどれを飲むんだ?」

 

「僕は健康かな?健康は大事だと思うから」

 

「……あたしは長寿かな。出来るだけ長生きしたいしさ」

 

「八幡はどれを飲むの?」

 

「俺は戸塚と同じ健康だな。やっぱり大事だからな」

 

「そうだよね!」

 

俺と戸塚は健康で川崎は長寿を選んで飲んだ。少し冷たくて飲み易いとは思うが、まあこれを飲んだ所で健康が保証されるわけでもない。

ようは気持ちが大事だろう。だが、ジンクスは必要だろ。

 

「隼人君!この水、飲み易いしょ!いくらでも飲めるべ~」

 

「戸部。飲んだら他の人に譲るんだ。まだ並んでいる人がいるんだぞ」

 

「戸部!さっさと行くし!」

 

「優美子!?」

 

音羽の滝で健康の水を飲んで移動した時に後ろから戸部の大声が聞こえたきた。近くにいなくて良かった。

あれは恥ずかしいな。現に由比ヶ浜は恥ずかしいのか俯いている。

三浦が戸部を引っ張って移動していた。

 

「葉山君達、なんか大変そうだね」

 

「まあ、そうかもな」

 

戸塚は戸部を見ながら苦笑いをしていた。俺もなんとなくだが、分かる。

戸部は海老名に必死にアピールしていた。まあ、三日目の夜までに好感度は上げておきたいのだろう。

だが、海老名は戸部の告白を受ける気がないので、無意味な事だ。

 

海老名が戸部を振る事を分かっている俺は笑いを堪えるので必死だった。戸部が振られたらそのままグループ崩壊に直結しているからな。

俺が告白を阻止しなかったら、きっと俺の望む最高な結果になるが、今回は一先ず置いておく。

海老名さえ俺に関わって来なくなれば、自然と葉山達も俺に関わっては来ないだろう。そうなれば俺のストレスも少しは和らぐと言うものだ。

 

清水寺の参拝を終えて今日はすぐにホテルに向かった。初日は殆んどが移動で疲れている生徒がそれなりにいた。

まあ、無事に初日が終わって安心した。戸部が予定を繰り上げて告白しないかったのもあるな。

 

だが、気は抜けない。それに問題は他にもある。

奉仕部の二人だ。雪ノ下と由比ヶ浜が今後、どのような動きを見せるかが、俺の行動を左右する。

特に別のクラスの雪ノ下には要注意して置かないといけない。あいつはあいつで何かしでかすか分からないからな。

 

ちなみに音羽の滝に平塚先生も並んでいた。飲んだ水はもちろん、恋愛だ。あの性格と歳で結婚出来るとは思えない。俺は哀れみの目で平塚先生を見て笑いを必死に堪えていた。

平塚先生はいつか結婚詐欺に引っ掛かりそうだな。例え騙されてもいいから少しでもいい夢を見れたらいいな。

その時は盛大に笑ってやるけどな!


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