やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー 作:新太朗
文化祭は終わり片付けも完了して俺は今、カゲさんの実家のお好み焼き屋に向かっていた。夜架と川崎の三人で。
浅葱、綾辻、氷見、犬飼先輩の四人は実行委員の確認で少し遅れると言ってきたので、とりあえず三人で向かう事にした。
他にもメンバーが居るらしいが、俺は把握していない。把握していない理由は俺がカゲさんの実家のお好み焼き屋の2階を貸しきりにして貰ったのを誰かから聞いた米屋が自分も混ぜろと言ってきて、とりあえず参加したい人間がいれば勝手に来てくれと事になってしまったので、把握していないのだ。
学校から店に向かう途中で川崎のトリガーについての質問に答えていった。
川崎は弧月メインでハウンドがサブのオールラウンダーになるようだ。他にもBランク戦の戦い方など様々なことを聞いてきたので丁寧に答えた。
そうしている内に店に着いた。
「……ここが比企谷の言っていた人の店?」
「まあ、な。カゲさんって言って、結構怖いんだけど、根はいい人だから。だけど、サイドエフェクトの所為で色々と大変なんだよな」
「その人のサイドエフェクトって、何?」
「『感情受信体質』って言うもので相手からの『敵意』や『悪意』を痛みとして身体に受けるものだ」
「そんなのがあるんだ」
川崎はサイドエフェクトに結構興味があるようだ。まあ、持っている奴はそれなりにトリオン量があるからな。
そう言えば、小町のトリオン量は俺並だと前に言っていたが、サイドエフェクトはあるんだろうか?
サイドフェクトを持っていなくともトリオン量が多い奴は居るからな。出水とか二宮さんとかな。
まあ、今は打ち上げだな。
「こんにちは~」
「おう。来たか、ハチ」
店に入ってみるとカゲさんが出迎えてくれた。お好み焼きを焼いている姿はカッコよく決まていた。
「……こんにちは」
「こんにちは。影浦先輩」
俺に続き川崎と夜架が挨拶をした。するとカゲさんが川崎の方を見た。
「おい、ハチ。誰だ?その女は」
「俺の三人目の弟子ですよ」
「ああ、そいつが言っていた奴か。2階にはもう何人か来ているぞ。後で注文聞きに行くからよ」
「分かりました。夜架、川崎。こっちだ」
俺は2階に続く階段に二人を誘導して上がって行った。それにしても一体何人来ているんだ?
米屋の事だから大人数いると思った方がいいな。
「お!やっと来たか。ハッチ」
「よお、米屋。それにしても結構連れてきたな」
2階には結構な大人数がいた。
米屋、三輪、奈良坂、古寺、出水、唯我、那須、熊谷、宇佐美、小南、烏丸、三上、歌川、菊地原、荒船先輩など総武の生徒も居れば他校の生徒も居た。
それに後から合流する浅葱、綾辻、氷見、犬飼先輩なども居るからこれは相当の大人数だな。
俺が周りを見ていると意外な人物達が挨拶してきた。
「どうも、比企谷先輩」
「こんにちは、比企谷先輩」
「うお、古寺。それとお前が来ているとはな、ちょっと意外だな染井」
古寺章平。
A級三輪隊スナイパー。
三輪隊の二人目のスナイパー。戦況解析に長けている分析型のスナイパー。
奈良坂と比べるとまだまだ発展途上だが、それでも高度な射撃技術を持っている。
染井華。
B級香取隊オペレーター。
香取隊の指令棟を務めているメガネ女子。常に手袋をしているのは第一次大規模侵攻の時に親友を助ける際に出来たものであまり人には見せたくないものらしい。
暴走しがちな隊長をよく支えているオペレーターだ。
「はい。私は歌川君に誘われてまして、行ってもいいかなと思いましたので」
「そうか。最近はお前の所の隊長はどうなんだ?」
「まあまあですかね……」
「そうか。お前も大変だな……」
「慣れていますから」
ホント逞しい女子だよな、染井は。真面目系女子でも雪ノ下とは大違いだな。
いや染井と雪ノ下を比べるのは失礼だな。染井に対して。
染井はそのまま夜架の近くに行った。クラスが同じだからそれなりに話すと夜架が言っていたな。古寺は歌川達の方に行った。
しばらくしてから米屋が近付いて来た。
「早く注文しようぜ、ハッチ」
「そう、はしゃぐな。まったく、貸しきりだからいいものを……」
「そう言えばまだ来ていない連中は何しているんだ?」
「実行委員は片付けの確認とか色々あるんだよ。最後の方で問題が起こったからな」
「問題?」
「後で話してやるよ」
米屋が首を傾げてきたがとりあえず俺は席に座ることした。席は那須と熊谷の向かいの席が空いていたのでそこにした。
席には奥から熊谷、那須、小南と言う順番座っていた。向かいの奥に川崎でその隣が俺と言う具合に座った。俺の空いている隣は浅葱が座る予定だ。
座るついでに川崎の事を紹介しておくか。
「よお。那須、熊谷、小南」
「こんにちは、比企谷君」
「久し振り、比企谷」
「おそいじゃないの、比企谷」
那須、熊谷、小南の順に俺に返してきた。見た感じ那須の体調は良さそうだ。
顔色もいいな。
「今日は調子よさそうだな、那須」
「うん。ここ最近はよくなっているの。それで隣のが比企谷君が言っていた私の妹弟子の子?」
「ああ、そうだ。川崎、こっちお前の姉弟子の那須」
「始めまして那須玲です。よろしくね川崎さん」
「えっと、川崎沙希です。よろしくお願いします」
「そんなに敬語でもなくてもいいよ。同い年だから」
那須に敬語を使っている川崎に気を利かせてくれる那須。ホント、那須の性格が温厚で助かったな。
それから那須と川崎は話し合っていた。打ち解けたようで良かった。
そうしていると実行委員組がやってきた。
「おまたせ~みんな~」
「お待たせ。八幡」
犬飼先輩に続き浅葱も入って来て浅葱は俺の隣に座ってきた。綾辻も氷見も来たので俺達はカゲさんに注文する事にした。
俺は浅葱にある事を聞いてみた。
「それで浅葱。相模はあの後、実行委員の集まりには来たのか?」
「……結局、来てはいないわ。体調不良で帰ったみたい。まあ、その所為で監督役の平塚先生は教頭先生に酷く怒られていたんだけどね」
相模の逃げが平塚先生を苦しめる事になるとはな。ある意味、逃げた相模に感謝したいくらいだ。
しかし平塚先生って、今年結構問題を起こしているからな。そろそろ教員免許停止させられるんじゃないだろうか?それは俺にとって願ってもないことだ。
あの独身暴力教師がいなくなれば、俺の高校生活は安泰と言える。
「なあ、ハッチ。さっきの問題って何なんだよ?」
「ああ、実はな……」
米屋に聞かれて、俺は文化祭の準備からあった事を包み隠さずに話した。
相模が卒業生の言葉を自分に都合がいいように解釈して、サボリを公認して危うく文化祭が開催出来ない所まで行ったなど。
それを聞いていた総武以外の連中が顔を険しくしていた。あの那須ですら結構怒っているようだった。
小南に関しては激怒していた。
「なんなのよ!その相模って、女は!!そいつは今どこにいるのよ。私が一発殴ってやるわ!!」
「……いや、小南。流石にそれは不味いだろ。それに今は家に居ると思うぞ」
小南の怒りはもっともだが、それでも過ぎた事をグチグチと言ってもしょうがない。今は打ち上げを楽しまないとな。
小南が怒っていると注文したお好み焼きが来た。
「小南、いつまでも怒ってないで食べたらどうだ?」
「言われなくても食べるわよ!!」
小南はお好み焼きをやけ食いしそうな勢いで食べていた。そんな食べ方では喉に詰まりそうだな。
「桐絵。そんな食べ方だと喉に詰まるわよ」
「浅葱!次から何かあれば私に言いなさい!!力になるから!」
「うん。ありがと、桐絵」
浅葱は小南にお礼を言った。この二人は親友と言っても良いくらいの関係だ。
まあ、小南の機嫌もよくなって良かった。これ以上ここで暴れられては敵わない。
「あ、八幡。修学旅行の事なんだけど」
「ん?修学旅行がどうしたんだ?」
「三日目の自由時間、一緒に色々回らない?」
「それ位、別に構わないぞ」
「うん、ありがとね」
浅葱が修学旅行の話をしてきたと思ったら三日目の自由時間に一緒に回らないかと誘ってきたので即答した。
俺としても浅葱と回ろうとしていたので、全然良かった。
それに由比ヶ浜が文化祭と同様に誘ってきそうな予感がするので、その対策があった方がいいと思う。
総武祭のボーダー関係者だけの打ち上げは盛り上がり米屋が歌い出したりなどのバカ騒ぎがあったが、俺は十分楽しめる事が出来た。
ちなみに総武祭で問題を起こした相模は一週間程学校を体調不良で休んだ。
そして学校に来た相模を待っていたのは、クラス全体での『無視』だ。文化祭で色々とやらかして最後に逃げ出した奴を受け入れるほど現実は甘くなかった。
取り巻き二人ですら相模を無視した。そして相模はボッチに降格してしまった。
おめでとう!相模。お前は今日からボッチの仲間入りだ。
今、クラスいや学校で相模に近付こうとする輩は誰一人として居ない。
それと文化祭終了と同時に雪ノ下に関してのある噂が流れた。
『雪ノ下が相模の暴走を止めずにその暴走を利用して自分の有能さをアピールした』
と言う噂が学校全体に流れた。その所為もあって、雪ノ下の立場は前よりも悪くなって来ていた。
俺としては笑いが止まらなかった。自分の事を完璧だと豪語してた奴が悔しがっている顔を想像しただけで笑える。
恐らくだがこの噂を流したのは雪ノ下陽乃さんな気がする。
この噂が母親の耳に入れば、間違いなく雪ノ下は再教育されるだろう。そして母親も娘の再教育に関わるので俺と雪ノ下さん……いや陽乃さんが計画している『乗っ取り計画』の事がバレる事はないだろう。
本当に恐ろしいなあの人は。目的のためだったら妹すら犠牲にしてしまうとはな。
だけど、これで時間が稼げるからいいか。
それともう一人自業自得な人がいる。平塚先生だ。
文化祭実行委員の監督役なのにまったく出ていない事が校長と教頭にバレてしまって、減給処分になってしまったとか。
ただでさえ、これまでの事で給料減らされたのに『トドメ』と言わんばかりに減らされてしまったのだ。
それの所為かこの所、生徒によく怒鳴り散らしているとか。あの人の教師生活がもう終わっていると言ってもいいな。
近い内に俺が『トドメ』を刺した方がいいかもしれない。
だが、その前に文化祭の次のイベントである2年生の修学旅行がある。『トドメ』はその後でもいいだろう。
イベントは楽しまないとな。
次回の更新は少し間が長くなります。
早めに更新しますので、読んでやってください。
では、次回に。