やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷八幡⑬

総武高校文化祭『総武祭』の二日目が始まった。一般公開の今日は校外から大勢のお客さんが来ていた。

生徒の保護者、他校の生徒、OGの人達などで校内は賑わっていた。

浅葱は午後から実行委員の仕事があるので午前までしか一緒に居る事が出来ないのでその間、楽しもうと思う。

 

そこで初めに夜架のクラスに行く事にした。パンフレットを見る限り夜架のクラスは喫茶店になっていた。

名前が『アニマル茶屋』となっていた。アニマル?何となくだが、どんなものか想像出来るな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど、これが『アニマル茶屋』か」

 

「はい。主様」

 

『茶屋』と言うだけあって教室の壁には山が描かれていた。食べ物や飲み物を運ぶ子は全て『割烹着』を着て、その上頭に『イヌ耳』を付けていた。もしくは『ネコ耳』を付けていた。

 

「……なあ、夜架。聞いてもいいか?」

 

「はい。なんなりと」

 

「……『割烹着』を着ているのは『茶屋』だからと分かるかが、どうして夜架は『イヌ耳』を付けているんだ?」

 

「はい。それはですね、最初は『喫茶店』だったのですが、それではつまらないと言う意見がありまして、そこで『喫茶店』ではなくいっそ『茶屋』にしてはどうだろうと意見がでてきまして……」

 

夜架は一呼吸置いて続けた。

 

「……しかしそれではインパクトに欠けるので、そこに更に『耳』をつけてはどうだろうと意見がでまして最終的にこうなってしまったのです」

 

「……うん。説明ありがとうよ夜架」

 

「いえ、この程度問題ありません」

 

夜架の説明を聞いて少し頭痛がしてきた。文化祭準備の妙なテンションでこうなったんだろう。でなければ、ここまでのものにはならなかったろう。

配膳係の生徒はどことなく顔が赤く見えた。間違いなく恥ずかしいんだろう。

 

「それにしてもやっぱり黒髪に和服は結構合っているな」

 

「それじゃ八幡。私は似合っていないって事?」

 

夜架の服装について素直な感想を言った所、浅葱が不機嫌気味に俺に聞いてきた。

夏に着ていた浴衣の事を言っているんだろう。そんなに不機嫌になる事か?

 

「いや、浅葱の浴衣姿も似合っていたし、俺は好きだな」

 

「そ、そう?まあ、八幡がそう言うなら間違いないと思うけど」

 

さっきの不機嫌はどこにいったのやら?少しだけ機嫌が良くなった。

 

俺は浅葱と少し早い昼飯をこの『茶屋』で食べたが、中々美味しかった。

メニューはそんなに多くは無かったが、充実したものだった。

 

「それじゃ八幡。私は閉会式の打ち合わせとか集計をしないといけないからここで」

 

「おう。頑張れよ浅葱」

 

浅葱は会議室に向かい閉会式の時に発表する賞の集計をする事なので昼飯を食べてすぐに分かれた。

俺は一人になったので一人適当に他の模擬店巡りでもしようかと思ってまずは二年の教室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二年の教室がフロアに到着して看板に『喫茶店』と書かれていたので、夜架のクラスとどの程度違うのか比較するために入る事にした。

 

「あ!比企谷君。いらっしゃい」

 

「よう三上」

 

三上歌歩。

風間隊二代目オペレーター。

宇佐美の後任にオペレーターでかなりの凄腕で風間隊の戦闘をサポートしている。下の兄弟が多いためか面倒見がよく女性隊員から結構慕われている。

高二の女子にしては少し身長が低いので隊長の風間さん同様に『小型で高性能』と言ってもいい人物だ。

 

「三上のクラスは普通の『喫茶店』なんだな……むしろ俺的にはこっちの方が落ち着くな」

 

「?普通じゃない喫茶店ってどんなのよ?」

 

「ああ、実は……」

 

俺は三上に案内された椅子に座ると夜架のクラスの『喫茶店』について三上に説明した。話を聞いた三上は少し苦笑していた。

 

「……その喫茶店は凄く斬新だね……」

 

「ああ、行ってみて凄く驚いたな……あ、卵サンドとコーヒー頼む。それと砂糖は出来るだけ多めに頼む」

 

「うん、分かった。でもあんまり比企谷君のために砂糖は使えないからね」

 

「ああ、もちろん。分かっている」

 

三上は俺の注文を聞いてから五分後には頼んだものが出てきた。

 

「それじゃごゆっくり。あ、そうだ。比企谷君は打ち上げ行く?」

 

「ああ、行くけど。三上はどうなんだ?行くのか?」

 

「うん、行くよ。他にも奈良坂君や辻君も来るって」

 

奈良坂や辻も来るのか。てか辻は大丈夫なんだろうか?まあ、別にいいか。

 

「あ、比企谷先輩」

 

「ん?烏丸と氷見か。お前らもこの店に来たんだな」

 

三上と打ち上げの話をしていると玉狛のもさもさしたイケメンこと烏丸京介が氷見を連れて現れた。しかし烏丸と氷見の距離が妙に離れていた。

 

「はい。氷見先輩に誘って貰って色々見て回ってお腹も空いてきたのでそろそろ昼食にと思いまして」

 

「色々と見て回ったら腹空くからな。で、どこ回ったんだ?」

 

「比企谷先輩のクラスの劇を見たり三年の喫茶店などに行きましたかね」

 

「……俺のクラスに行ったのね……」

 

まさか烏丸と氷見が俺のクラスの劇を見ていたとはな。氷見、腐っていないよな?大丈夫か?

それにしても烏丸と氷見の距離がさっきから気になるな。からかうついでに氷見の手助けでもしてやるか。

 

「せっかく文化祭に来たんだ。写真でも撮ってやるよ」

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

烏丸に写真を撮ってやろうと言った途端、氷見の顔が赤くなった。分かり易いな。

他人の恋愛を邪魔する気などないし、これと言ったアドバイスが出来る訳でもないので俺に出来るのはある程度の手助けをしてやる事ぐらいだろう。

俺はスマホを取り出してカメラモードにして烏丸と氷見に向けた。

 

「……氷見。もう少し近付けないか?離れすぎだ」

 

「で、でもこれ以上は……は、恥ずかしい……」

 

鳩原さんのアドバイスである程度の人見知りは克服出来ても好意を寄せている相手では駄目らしい。しかたない。

 

「じゃあ、俺が指示するからその通りに動け。いいな」

 

「う、うん。頑張る」

 

氷見はガチガチに緊張していた。これで将来的に大丈夫だろうか?そこは頑張れ氷見。

 

「んじゃ並んで……烏丸はそのまま……氷見はもう少し右に……あ、そこで止まってくれ。それじゃいくぞ?」

 

パシャリ

 

一枚を撮ったので、本格的に氷見をからかうか。

 

「あ、折角だから手でも握ってみたらどうだ?」

 

「ひ、比企谷君……そ、それはちょっと……」

 

俺の提案に氷見は顔を赤くして自分の手を見た。それで想像したのか更に赤くした。

 

「折角撮るんだからもう少し見栄えがいい方がいいだろ?烏丸」

 

「そうですね。氷見先輩がいいなら俺は構いませんけど」

 

「そ、それじゃお願いします!」

 

脳がオーバーヒートでもしたか?氷見が烏丸に敬語を使っているよ。

 

「それじゃ失礼します」

 

烏丸は固まっている氷見の手に自分の手を絡めた。俗に言う『恋人繋ぎ』だ。

氷見が烏丸が恋人繋ぎをしたと分かった途端に顔が今まで以上に赤くなったしまった。氷見は大丈夫だろうか?顔が沸騰して倒れたりしないだろうか?

 

「はい。チーズ」

 

パシャリ

 

早めに撮ってやらないと氷見が昇天しまいそうだな。写真を撮っても氷見は固まったままだった。

 

「データの方は後で送っておくから。時間取らしたな」

 

「いえ、それじゃ氷見先輩。行きましょうか」

 

「……はい」

 

烏丸は顔を真っ赤にした氷見を連れて空いている席に向かった。

丁度、俺が頼んだ物が来たのでそれを食べてからこれからどうしようか等考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三上のクラスを出た俺は一先ず三年のクラスに行って見る事にした。荒船先輩や犬飼先輩のクラスはどのような出し物か気になったからだ。

向かっている途中で氷見から『写真の事は内緒で』とメールが来た。

もしあの写真が烏丸に好意を寄せている人間の目に入れば、氷見がどんな目に会うか分からないからな。

 

「あ!お兄ちゃん!」

 

「お、小町。それと雪菜」

 

「こんにちは。八幡先輩」

 

適当に回っていると小町と雪菜がやってきた。二人とも制服だ。

 

「良かった。お兄ちゃんと会えたよ。あれ?浅葱お義姉ちゃんは?」

 

「浅葱は実行委員の仕事があるから結構前に別れたよ」

 

「そうなんだ。折角、から……どんな風にイチャついているのか見たかったのにな~」

 

イチャついているのか見たかったと言っているが小町よ。今、『から……』と言っていたが、からかうつもりだったのか?妹と言えど油断出来ないな。

 

「そうだ。お兄ちゃん!これから小町達と回らない?」

 

「もちろん。回るに決まっているだろ!」

 

「……ホント、シスコンですね」

 

小町が一緒に回ろうと言ってきたので即答したら雪菜にシスコンと言われてしまった。

まあ、今更だと思うな。

 

「それで行きたい所はあるか?」

 

「う~ん……そうだ!小町。お兄ちゃんのクラスに行きたい!」

 

「それなら私も」

 

小町と雪菜が俺のクラスに行きたいと言ってきた。俺としてはあれを二度見るのは正直嫌だが、小町のお願いを無下には出来ない。

 

「……どうしても俺のクラスじゃないと駄目か?」

 

「もちろんだよ!雪菜ちゃんも楽しみにしていたんだから!」

 

「……それとも八幡先輩には何か見せたくない理由でもあるんですか?」

 

小町はテンション高めでいいが、雪菜は俺の事をジト目で見て来る。見せたくない理由?

そんなの若干BL受けだからだよ。雪菜もそうだが、小町が腐女子になったらもう生きてはいけない。

 

しかし説明した所で二人が納得してくれるとは限らない。ここは見てもらうしかないと思い、俺のクラスに向かって劇を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごくいい劇だったね!雪菜ちゃん」

 

「うん。戸塚さんの演技力がすごく良かった。それにしても八幡先輩が見せたくない理由が分からなかったですね?」

 

劇を見た後、小町と雪菜は少しだけテンション高めだった。雪菜は俺の劇を見せたくない理由を考えたが、分からず首を傾げていた。

まさか理由が二人が腐女子にしたくなったからなんて言えるはずもない。

まあ二人が腐女子にならなかったのは良かった。

 

「あ、もうこんな時間だ。それじゃあ小町達はもう帰るね。お兄ちゃん」

 

「それでは失礼します。八幡先輩」

 

「ああ、二人とも気を付けて帰れよ」

 

二人は劇を見た後、すぐに帰った。俺も閉会式があるので体育館に向かう事した。

他にも向かっている生徒がいるから少し遠回りをしてから行く事にした。人ごみって、面倒だからな。

 

「……あれは、相模?何であいつあんな所に?」

 

俺が体育館に向かって歩いているとある生徒を見つけた。それは取りまきを誰一人連れていない相模だった。

もうすぐ閉会式が始まるのに何をしているんだ?

 

まあ、別に関係ないかサボるなら相模の責任だしな。精々、後悔しないように行動しろよ相模。

相模の事を無視して俺は体育館に向かって歩き出した。

 


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