やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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相模南③

浅葱、綾辻との昼飯を食べた時に綾辻から文化祭の実行委員の事で相談を受けた。

このままでは文化祭を開催出来ないので、その打開策を聞きに来たので俺は二つの策を綾辻に言った。

 

一つ目がサボリの元凶たる相模の排除。

だが、これは受けいれられないと否定されてしまった。今更、実行委員長の変更は流石に無理なようだ。

 

そこで二つ目が各クラスのルーム長に手伝ってもらう事だ。

去年の卒業式にルーム長に生徒会から手伝いを呼びかけて卒業式を準備をした。これなら人手不足は何とかなるので、文化祭を開催出来ると思う。

 

一応、三つ目があったが、これは言わなかった。

三つ目は文化祭開催を諦める事だからだ。流石に楽しみにしていた連中も居たので綾辻には言わなかった。

綾辻も生徒会の一員として頑張ってきたので、ここで諦めろとは言えない。だから言わなかった。

 

そして綾辻はさっそく俺の二つ目の案を生徒会長と話し合って実行に移して今日の放課後からルーム長に手伝ってもらうようだ。

それならなんとか文化祭を開催出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後の授業が終わり、それぞれが文化祭の準備に取り掛かろうとしていた。俺は今日も会議室で実行委員の手伝いだ。

 

「おっと、そうだ。ルーム長はこの後、生徒会室に来るように、と生徒会長が言っていたぞ」

 

俺のクラスの担当の教師が最後にそう言って教室を出て行った。流石は綾辻だな、もう生徒会長と話を付けたんだな。

ルーム長は首を傾げながら生徒会室に向かって教室を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

限界だ……ああ、駄目かもしれない。脳の糖分が枯渇している。働く事が出来ない位、俺の脳は糖分が不足していた。その所為か目が濁っているのが分かる。

『最近は濁っていないね!』と小町に言われていたのに……。

今、会議室には真面目組みと生徒会役員と俺だけしかいない。人数にして13人。

 

しかもこんな時に限って犬飼先輩と氷見は防衛任務でまだ来ていない。

氷見にためにも頑張ろうとしていたが、俺もサボリたくなってきた。そんな事を考えていると、会議室の扉が開いて大勢の人が入って来た。

 

会議室に入って来た人は各クラスのルーム長の人達だ。人数は20以上だ。

彼らがどうしてここに来たのかを知らない真面目組みと雪ノ下はあまりの出来事にぼう然としていた。

そんな中、俺の知っている人物が近付いて来た。

 

「よお、比企谷。今日は一段と目が濁って見えるな」

 

「……荒船先輩!来てくれて、ありがとうございます!」

 

俺の所に来てくれたのは、パーフェクトオールラウンダー育成計画を一緒に練っている荒船先輩だった。この人が来てくれたなら心強い。

思わず椅子から立って腰を曲げてお辞儀をしていしまった。

 

「まあ、お前から頼まれたからな。それで俺は何をすればいい?」

 

「それじゃこっちの書類をお願いします」

 

「分かった。任せておけ」

 

流石は荒船先輩だ、頼りになりすぎる。他のルーム長の人達も手が足りていない所を手伝っていた。

 

「あれ?人が大勢いるね?」

 

「ホントですね?」

 

助っ人のルーム長の人達と作業をしていると防衛任務を終えて犬飼先輩と氷見が会議室に入って来た。これは説明が必要だな。

 

「お疲れ様です。犬飼先輩、氷見」

 

「比企谷ちゃん。彼らって誰?」

 

「彼らは各クラスのルーム長ですよ。生徒会が助っ人に呼んだんですよ」

 

「へぇーそうなんだ。なら今日から少しは楽が出来そうだね」

 

俺が説明し終わったら犬飼先輩は自分の作業に入った。俺も彼らのおかげでだいぶ楽が出来そうだ。

 

「すいませ~ん。クラスの方に出てって、遅れました~」

 

俺達が作業をしていると相模がやってきた。会議室にいる真面目組みとルーム長の人達が相模を一度睨み付けてから作業に戻った。

 

「あれ?うち、何かしました?」

 

自覚がないのはある意味タチが悪い。睨まれた事を何一つ理解していない相模。

由比ヶ浜と仲良く出来るのではないかと思う。似た者同士だ、由比ヶ浜と相模は。

 

「相模さん。これらに目を通しておいてくれるかしら?」

 

「OK。ほい、ほい」

 

雪ノ下から仕事を貰いろくに目を通さずに判子を押している相模。このまま楽をして文化祭を楽しめると思うなよ。

 

「荒船先輩、犬飼先輩。ちょっといいですか?」

 

「どうした?比企谷」

 

「ん?何、比企谷ちゃん」

 

俺は相模を懲らしめるために二人の先輩を呼んだ。覚悟しろよ、相模。

浅葱を倒れさせたのは不味かったな。しっかりと委員長として仕事をしていれば、まだ救えたがお前は救う事すら出来ないバカだ。

 

「実はお二人にお願いしたい事があるんです」

 

「俺達は何をすればいいんだ?」

 

俺は荒船先輩と犬飼先輩に相模を少し懲らしめる策を話した。

 

「……比企谷。正直、やりたくはないが……少しは懲らしめた方がいいな」

 

「任せてよ、比企谷ちゃん。あの委員長ちゃんは懲らしめた方がいいよね」

 

二人の先輩は俺の頼みを受けてくれた。まあ、今までの相模の行動を聞けば動いてくれると信じていたがな。

さっそく犬飼先輩が動いてくれた。

 

「委員長ちゃん~この前、頼んでおいた書類に判子押してくれた?」

 

「し、書類ですか?えっと……」

 

「え?まだなの?あれ喫茶店関係の書類で保健所に出さないといけないものだから早めにって頼んでおいたよね?」

 

「す、すいません!すぐにしますから……」

 

流石の相模も年上の先輩には強く気になれないからな。それにしても犬飼先輩はいい仕事をしてくる。

相模は相当焦っているな。毎日来ていれば慌てる事も無かっただろうに。

 

「委員長。これもまだ判子が無いんだが?どうなっているんだ。期限ぎりぎりだぞ」

 

「は、はい。すぐに押しますから」

 

「早くしてくれ。でないと文句を言ってくる奴が出るかも知れないからな」

 

「……はい」

 

荒船先輩達と相模のやり取りは俺から見て姑が嫁をイジメているように見えなくもない。まあ、散々サボっていたんだ。

仕事をサボった相模が悪いからしかたがない。だから相模がこの後、どんな仕打ちを受けようが俺には関係ない。

 

「……すいません……ここどうすればいいんでしょうか?」

 

「……ちっ……ここはこうするんだよ」

 

あの荒船先輩が舌打ちをしたよ。まあ、するのは無理もない。

サボリまくっている相模が今更、ちゃんと仕事が出来るはずもない。簡単な仕事ですらサボっていた相模には手こずってしまう。

荒船先輩は舌打ちをしたが、それでも相模に説明していた。

 

「……あれで実行委員長とかありえないな」

 

「サボっていたんだ。そのツケが回ってきたんだろ。荒船も可哀相にな」

 

「実行委員長は別の奴の方が良かったんじゃないのか?」

 

「ホント、それな!こっちにだってやる事あるのに……!!」

 

「あの子の所為で文化祭が台無しになる所だったよね?今年は大丈夫なの?」

 

真面目組の3年の方々は今にも爆発しそうだった。それにしてもどうして今日に限ってきたんだよ相模。来なかったら不満が膨れる事はなかったのに……。

まあ、この事態を招いたのは相模自身で、自業自得なので俺には関係ないが。

 

「比企谷。これで良かったのか?」

 

「ええ。ありがとうございます、荒船先輩。これで相模は懲りてサボる事はなくなるでしょう。まあ、またサボってもより自分の立場を悪くするだけなので、こっちには害はないと思いますよ」

 

「そうか。だが、大丈夫か?あいつ後で何をするか分からないぞ?」

 

荒船先輩は相模の精神面の事を心配していた。確かにあの手のタイプは何をするか分からない。

サボリ宣言を出した張本人だ。もしかしたら自分の仕事を放棄するかもしれない。

現在進行系で相模は精神的に追い詰められている。それは盛大に特に3年の先輩にだ。

 

「まあ、一応保険を掛けておくんで大丈夫でしょう。その辺りは俺に任せておいてください」

 

「そうだな……じゃあ頼んだぞ、比企谷」

 

荒船先輩は俺にそう言って自分の作業に戻った。仮にもし俺が相模のように責められたら間違いなく逃げ出していただろう。だからこそ保険を掛けていた方が安全かもしれない。

まあ、あって困るような事もないだろう。

 

「えっと……相模の仕事は1日目の挨拶に2日目の挨拶と総評と最優賞ならびに地域賞の発表か……『保険』を掛けるなら集計結果だな……」

 

俺は文化祭当日の相模の仕事を確認したが、思ったより少なかった。

そして俺は賞などの集計結果に保険を掛ける事にしたが、今は無理なので諦めた。

集計は当日、会議室に詰めている人が入れ代わり立ち代わりで行うらしい。

 

「モグワイ。仕事だ」

 

『やっと出番か?ケケッ』

 

俺はスマホを起動してAIの『モグワイ』を呼び出した。

賞の集計結果はパソコンに入力してから発表なのでこいつが居ればもしもの事が起っても大丈夫だろう。

 

「文化祭当日、お前はこのパソコンに入って集計結果をまとめていつでも見られるようにしといてくれ」

 

『了解だぜ。まかせておきな、旦那。ケケッ』

 

モグワイに指示したのでこれで集計結果が紛失しても大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モグワイに指示してから大分時間が経って、最終下校時間になった。作業は昨日より大幅に進む事が出来た。

油断は出来ないが、それでも文化祭開催には問題は無い。

 

「今日はありがとうございました。荒船先輩」

 

「いや、気にするな。明日も手伝いに来られるからよろしくな」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

俺は荒船先輩にお礼を言って学校を後にした。もうすぐ文化祭だ。

保険を掛けたので例え相模が何かしても問題はないが、それでも警戒はしていた方がいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだ。八幡、文化祭終わった後に打ち上げをやらないって遥と話しているんだけど。どうかな?」

 

「打ち上げ?クラスの方じゃなく、ボーダー関係者でか?」

 

「そう」

 

学校から帰る途中で浅葱が文化祭の打ち上げの話をしてきた。クラスの方は出る気しないし、いいか。

 

「ああ、俺は構わないぞ。で、どこでやるんだ?」

 

「影浦先輩の実家で。良かったら八幡の方から連絡してくれない」

 

「分かった。連絡しておく」

 

カゲさんのお好み焼きは絶品だからな。あれにハズレはない。

俺はさっそく電話して聞いて見る事にした。

 

 

 

 

 

『おう。どうした、ハチ』

 

「どうも、カゲさん。実は俺の高校で文化祭があるんですけど、その日に打ち上げをしたいんです。カゲさんの家のお好み焼き屋でしたいんですけど、いいですか?」

 

『ああ、構わないぞ。だったら2階を貸しきりにしておくからよ』

 

「ありがとうございます。それじゃ当日に」

 

俺はそう言って電話を切って文化祭をどう乗り切るか考えていた。

 

 

 


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