やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー 作:新太朗
八幡は文化祭実行委員になりません。
しかしなんらかの形で関わる予定です。
では、どうぞ。
比企谷八幡⑫
ボーダーC級入隊日のレクリエーションは無事に終わったとは言いがたい……俺的には。
それは葉山、由比ヶ浜、そして雪ノ下の姉の雪ノ下陽乃さんが俺に弟子入りをお願いしてきたからだ。
最近、川崎を弟子にしたばかりなのに……だからしばらくは絶対に弟子は持つつもりはない。
なので弟子入りにある条件をだした。その条件は俺の3人の弟子―――那須玲、黒江双葉、川崎沙希から一ヶ月以内に百本中六十勝以上しろと言うものだ。
これならしばらくは何とかなるだろう。問題を川崎に丸投げしたのは悪いと思うよ。ホントに悪いと土下座で謝ってもいいとさえ思っている。
後で川崎から聞いた話によると葉山達と戦った戦績は由比ヶ浜が十勝で完勝した。雪ノ下さんが六勝三敗一引き分けで勝ったようだ。
どういう訳か何故か戸部までもが川崎に挑んできたそうだ。十勝で完勝だったそうだ。
まさか戸部まで俺の弟子になりたいとか……もう、あの連中に関わりたくない!!
「これはどう言う事ですか?平塚先生……」
朝方の防衛任務を終えて学校に着いてみるとギリギリ朝のSHRが終わっていたが、問題はそこでは無い。
黒板に文化祭実行委員『比企谷八幡』と書かれていた。
「説明が必要かね?」
「……ええ、もちろん。納得のいく説明をお願いしますよ……」
俺が低い声で話し掛けたが、平塚先生は何の悪びれもないかのような態度を取っていた。何だこの教師は?
「もう次の授業が始まろうとしているのにまだ決めずにグダグダとやっていたんだ。それにSHRに比企谷が居なかったのでお前にしておいた。まあ、頑張れ」
「……平塚先生。俺は防衛任務があるんですよ。無理ですよ」
「君のシフト表には放課後は入っていなかったぞ」
……あ、しまった!そう言えば、浅葱の奴が放課後に防衛任務を入れないようにしてないんだった。
これでは防衛任務を理由に逃げる事が出来ない。考えろ、俺……何かないか。
この独身暴力アラサーを黙られるには…………ん?待てよ。あれが使えるな。
「……平塚先生。いくら教師だからと言って横暴すぎませんか?」
「何を言っている。学校では教師が法だ。君は大人しく従っていればいいんだよ」
「そうですか。それが本音ですか。だったら、こっちにも考えがありますよ……」
俺はスマホにある動画を消音にして他の生徒には見えないようにして平塚先生に見せた。
「……っ!?!?」
平塚先生は予想通りに驚いていた。俺が見せているのは千葉村最終日に平塚先生が俺を突き飛ばしてスマホを踏みつけている動画だ。録画していて良かったぜ。
「……比企谷。それはもう話し合った事ではないか」
「可笑しいですね?あの時は音声だけで動画についてはまったく触れてませんよ?」
千葉村で平塚先生をおど……お願いした際に出したのは音声だけで動画については触れてない。
俺と平塚先生の話を聞いていた生徒は何の事か分からずにいた。
「どうします?あんまり長引くと他の生徒が気にしますよ。それに一時間目は現国ですし、最初の数分で決めれば大丈夫ですよ。ね?平塚先生」
「……っ!?……分かった。皆も少し待っていてくれ。準備してくる」
平塚先生は教室から出て行った。そして俺はと言うと自分の机に着いて授業の準備を始めた。椅子に座ってから視線を感じたのでその方向を見てみると由比ヶ浜が俺の事を見て、いや睨んでいた。……何で睨まれているんだ?俺。
平塚先生が教室から出てから約十分が経った頃に教室の扉が開いて息を切らした平塚先生が入って来た。手には使い捨てたと思う大きめの茶封筒が二つあった。
くじでも引かせるつもりなのだろうか?まあ、何か仕掛けてくるならたたき……じゃなくて『お願い』をするまでだ。
「はぁ…はぁ…すまないな……待たせた。では引くがいい!比企谷!!」
平塚先生は二つある内の一つを俺の目の前に持って来た。しかしこれは可笑しい。
平塚先生がこんなにも素直に俺の言う事を聞くとは考えにくい。罠だな、これは。
「分かりました。それじゃ引きますね……」
俺は出された茶封筒から『三枚』の紙切れを取り出した。
「比企谷。引きすぎだ!!余計に引いた分は戻せ!」
平塚先生の慌てようからこれは絶対に何かあると思い、何枚か余分に引いたのだが当たりだった様だ。
俺は引いた紙切れを開いて何が書いてあるかすぐに確認した。
「……平塚先生。これはどう言う事ですか?可笑しいですよね?」
俺が引いた紙切れには全て『文化祭実行委員』と書かれていた。これは可笑しい。
封筒が男女で別れているなら一枚以上あるのは可笑しい。
この場合、『文化祭実行委員』と書かれた紙切れは一枚しかないと可笑しいのだ。同じ封筒に三枚も出て来るのはどう考えてもあり得ない。
「ふっ……平塚先生の考えって浅いですね」
俺は思わず平塚先生の事を鼻で笑ってしまった。今更だが、笑うのは不味かったな。
平塚先生は肩を震わして耐えてた。
「……衝撃のファーストブリット!!!」
「ぐはっ!?!?」
我慢の限界だったのか平塚先生はあろう事か生徒である俺に手を上げてしまった。マジで腹パンは痛い……。
「調子に乗るなよ!!比企谷!」
怒らしたのは俺なので悪いと思うが、だからと言って生徒に手を上げるのは不味いだろ。しかも大勢の生徒が見ている前で、やる事ではない。
「平塚先生!いくらなんでもやりすぎです!八幡、大丈夫?」
「……ああ、助かったぜ。戸塚」
平塚先生に腹パンされて蹲っていると戸塚が心配して俺に近寄ってきてくれた。流石は俺の癒しの天使なだけはあるな。
「ホント、大丈夫なの?比企谷」
「ああ、多分。……悪いが手を貸してくれ。川崎」
戸塚の次に俺に寄ってきたのは川崎だった。手を貸して貰って何とか立つ事が出来た。未だに殴られたダメージがある。どんだけの力で生徒を殴ったんだよ、平塚先生は。
「……どうします?平塚先生。他の生徒が見ている中で俺を殴りましたね。俺もさっきの言葉は悪いと思います。それについては謝ります。すいません」
「………………」
俺は平塚先生に頭を下げて謝罪した。平塚先生は無言だったが、これで平塚先生も謝らないと平塚先生だけが悪者になってしまう。
「……私も悪かった。委員決めは公平にする……君達もすまないが順番に引いてくれるか」
平塚先生もようやく観念したようで今度こそ公平にくじを引かせてくれるようだ。
こうして俺は平塚先生から腹パンを食らう事にはなったが、文化祭実行委員を何とか回避する事が出来た。
「それじゃ出席番号順に引いていってね」
現国の授業は一時くじ引き大会になった。今はクラスの日直が仕切っている。平塚先生がするより安心出来る。
俺は引いた紙切れを日直に渡した。
「ほらよ」
「えっと……実行委員じゃないね」
「よし!!」
俺は小さくガッツポーズをして喜んだ。これで文化祭実行委員なんて面倒な事をしないですむ。
次々とくじを引いていき全員が引き終わった。俺のクラスの実行委員は誰だ?
「えぇ~うち無理ぃ。誰か代わって~お願い~」
「まあまあ、相摸さん。くじで決まった事だし言いたい事は分かるよ。でも相模さんならやってくれるって俺は思うからさ頑張ってやってみてくれないかな」
「……まあ、葉山君がそう言うなら……うち、がんばってみる」
このクラスの女子は相模南と言う生徒で男子は『元』葉山グループに居た大岡だった。
男子は大岡なんだな。
葉山が職場見学の前に言っていたな。大岡は人懐っこくて誰の味方もしてくれる気のいい奴で上下関係に気を配って礼儀正しい、と。
それに引き換え相模と言う女子は大丈夫なんだろうか?葉山に乗せられていたが、まあ俺としては無事に文化祭さえ出来れば何の問題もない。
それにしても葉山は相模の事を知っているのだろうか?説得していたようだが?
そこは俺が気にする事もないだろう。
だが、俺は知る事になる。相模南がどれ程無能なのかを嫌と言うほどに……