やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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嵐山隊

川崎達と共に食べた浅葱の特製炒飯で腹を壊したが胃薬のおかげで、そんなに寝込む事もなかったのは幸いだったと言えるだろう。

そして夏休みは後2日で終わってしまう。こうして見ると短い気がしないでもない。

新学期の準備はすでに終わっているので、焦る事はないが、それでも忙しい奴が俺の目の前に居る。

 

「早くしないと新学期が始まってしまうぞ?米屋」

 

「だぁー!!分かってるって!!だから、こうしてがんばっているんだろう。……なぁハッチ?ここの式ってこれで合ってるか?」

 

「ここは前のページの公式を当てはめるんだよ」

 

「おお……なるほどな!……よっしゃー!これで何とか終わったぜ。サンキューハッチ。これで怒られずに済むぜ」

 

「だったら、次からはそうならないために頑張れよ……って米屋!」

 

「またな、ハッチ」

 

米屋はそれだけ言ってボーダーの比企谷隊の作戦室から出て行った。あいつは勉強を何だと思っているんだか……。

 

「八幡。米屋君は帰ったの?」

 

「ああ、米屋は帰ったし、少し弟子の様子でも見てくるわ」

 

「何を言ってんのよ。これから嵐山隊と9月の入隊日の打ち合わせがあるの忘れたの?」

 

米屋の勉強を見ていて、浅葱に言われるまですっかり忘れていた。

俺が防衛任務が無くランク戦の約束もしていない中、こうして本部に来ているのは米屋の勉強を見るだけではないく、9月の入隊日の打ち合わせをするために来ていたのだった。

 

「……八幡。あんた、やっぱ忘れてたんだ?」

 

「ま、まさか。俺のサイドエフェクトを持ってすれば、予定を忘れるわけないだろ……」

 

「ふ~ん……まあ、そう言うことにしといてあげる」

 

浅葱の冷たい目は身も心も凍りそうだった。ヤバかったな……話題を変えないと。

 

「嵐山さん達がここに来るんだっけ?」

 

「そうよ。まあ、私達はサポートに入る感じだって、遥に聞いたら今日の打ち合わせは誰がどこのサポートに入るかを確認するだけだそうよ」

 

「そっか……それなら良かった」

 

嵐山隊みたいに前に出て説明するのだったら、意地でも休んでいたからな。

そんな時に呼び鈴が鳴った。嵐山さん達が来たのだろう。

話を早くに終わらせて家に帰りたい。

 

「来たみたいだから出て来るわ」

 

浅葱は扉の方に歩いていき、嵐山さん達をで迎えていた。

 

「比企谷どうした?ぐったりしているようだが……」

 

「さっきまで米屋の夏休みの課題を見ていたんですよ。終わったと思ったら嵐山隊と入隊日の打ち合わせがあった事を思い出して、打ち合わせが始めるまで休んでるんですよ……」

 

「そうだったのか。だが、来たからにはしっかりしてくれよ?」

 

「分かっていますよ、それ位……」

 

嵐山さんに言われて俺は身体を起こして、打ち合わせを始めようとした時に嵐山隊ではない人物が現れた。

 

「久し振りだな、比企谷」

 

「お久し振りです。東さん」

 

東春秋。

B級東隊隊長にしてスナイパー。

ボーダー初のスナイパーで豊富な戦闘経験で培われた狙撃技術はボーダーでも一流だ。戦術と指揮に優れていて、数多くの隊員を師事した事のある人物だ。

人望が厚く切れ者だ。

俺も前にランク戦について色々と教えてもらった事がある。

 

それにしても何で東さんが嵐山隊と一緒に来たのだろうか?そこで少し考えて思い出した。

 

「……そう言えば、東さんも嵐山隊と一緒に入隊日の説明をするんでしたっけ?」

 

「ああ、そう言うことだからよろしくな。それにしても比企谷が引き受けるとは思わなかったがな」

 

「俺も受けた自分を殴りに行きたいですよ……」

 

東さんとそんな話していると浅葱が全員に紅茶とお菓子を出してきたので、打ち合わせを始める事にした。

入隊日の大雑把な説明を嵐山さんが始めた。

 

「それじゃ当日のアタッカー・シューター担当は俺と充と木虎、比企谷と羽々斬と姫柊の6人でスナイパーの担当が東さんと賢と朝田の3人にしてもらう。比企谷、ここまでに何か質問はあるか?」

 

「いえ、これと言ってないですね。あるとすれば、次回にでも聞きます。初めてですし、まずはやってみないと分からない事もありますから」

 

「そうか、分かった。だが、分からない事があればすぐに聞いてくれ」

 

「はい。その時は聞きます」

 

やっぱり嵐山さんは凄く丁寧で頼りになる。本当に分からない事があれば、聞きに行こう。

 

「賢、充、木虎はどうだ?」

 

「大丈夫ですよ、嵐山さん。もう何度もしているんですから」

 

「俺も大丈夫です。心配はありません」

 

「私も何も心配いりません」

 

佐鳥、時枝、木虎はもう何度もしているだけあって、余裕な気持ちでいるようだ。

俺なんて今から緊張しているのに……。

 

「東さんはどうですか?」

 

「俺の方もなんの問題もない」

 

「それじゃ、打ち合わせはこれで終わりという事で」

 

嵐山さんが最後に東さんに聞いたが、問題ないと東さんが言ったので、打ち合わせを終わる事にした。

俺としては新学期が来ないでほしいが、入隊日は来て欲しい。

新学期になれば、面倒な連中と顔を合わせないといけないからな。葉山とか由比ヶ浜とか雪ノ下など顔も会わせたくはない。

 

「それじゃ、俺は先に失礼する。またな、比企谷」

 

「はい。お疲れ様です、東さん」

 

新学期の事を考えていると東さんが先に退室したが、嵐山隊は何故か残ったままだった。え?何で今も居るの?

 

「比企谷は次のA級ランク戦はどうするんだ?」

 

「それはどう言う意味ですか?」

 

俺は嵐山さんの質問の意味が分からないでいた。どうも何も勝ちに行くに決まっている。

 

「比企谷はB級に上がりたての頃は参加していなかったろ?だからA級になってもそうなのかと思ってな」

 

「なるほど、そう言うことですか。今回はそんな事はないですよ。俺は一応遠征を目指していますから。他のやつにはまだ確認していないんで、分かりませんけど」

 

「そうか。戦う事になれば、手は抜かないからな」

 

「望む所ですよ、嵐山さん」

 

俺は嵐山さんがここに残った理由が分かった。嵐山さんは確認をしたかったのだ。

ここは一つ宣戦布告でもしてた方がいいいかな。

 

「嵐山隊より上に行く予定なんで、覚悟していてくだいよ。嵐山さん」

 

「それは楽しみだな」

 

嵐山さんは少し笑いながらそう言ったので向こうのやる気も十分なようだ。

 

「それじゃ俺達はこれで失礼しよう。そろそろ時間だしな」

 

「何かあるんですか?」

 

「雑誌の取材があるんだ」

 

嵐山さんが時間を気にしていたので、気になって聞いてみたら雑誌の取材だそうだ。メディアに出ているとこういった事が増えるんだろうな。

 

「それじゃね、浅葱ちゃん。文化祭もよろしくね」

 

「うん。それは大丈夫だから。防衛任務の時間帯は放課後に入れてないから」

 

「何の話だ?」

 

綾辻が浅葱と文化祭の事を話していたので、何の事か聞いてみた。

 

「文化祭の実行委員の事よ。遥によかったら出てくれないかって言われてね」

 

「浅葱ちゃんが居てくれたら、文化祭のホームページの事とかいいようにしてくれそうだから。比企谷君もよかったら、実行委員になる?」

 

「いや、全力で遠慮する」

 

綾辻が俺にも文化祭実行委員を進めてきたが、すぐに俺は遠慮した。誰が好き好んで、あんな面倒な事をしないといけない。

新学期になったら、決める事になるだろうが、俺はやるつもりはない。

 

「……ホント、比企谷君らしいね。それじゃ、またね」

 

「おう。またな綾辻」

 

綾辻は即答してきた俺に少し呆れていた。仕方ないだろ、実行委員って面倒な気がするし。

 

「失礼します。比企谷先輩」

 

「ああ、当日はよろしくな時枝」

 

時枝は中々、可愛げがある後輩だからかよくジュースを奢っている。

 

「藍羽先輩、よろしくお願いしますね~」

 

「はいはい。またね佐鳥君」

 

佐鳥はこう言う所がちょっとウザいな。普段から妙にテンションが高いからな。

 

「それでは比企谷先輩、藍羽先輩。当日はお願いしますね」

 

「ああ、分かっているって、木虎」

 

「またね、木虎ちゃん」

 

木虎は生真面目だからか態度が堅い気がするんだよな。まあ、そこがあいつの良い所でもあるんだけどな。

嵐山隊が全員出て行き、また浅葱と2人に戻った。

後で夜架、シノン、雪菜の3人に今日の打ち合わせの事を話しておかないとな。

 

「そうだ、八幡。これ9月の防衛任務のシフト時間の予定なんだけど、一応見ておいて」

 

「ああ、分かった。……平日は朝や昼には終わるようにして放課後に間に合うようにしているんだよな」

 

「うん、そうよ。夜架達にはもう言ってあるから」

 

「前と違って今は時間を気にしなくてもいいからな」

 

職場見学の前は基本平日は放課後にして、朝や昼は避けていたからな。けど、今は俺がボーダー隊員だとバレてしまったからそんな事も無くなった。

 

「それで八幡は大丈夫?」

 

「ああ、これで別にいいぞ。その辺りは浅葱任せだしな」

 

比企谷隊の防衛任務のシフトは浅葱が決めていた。と言っても俺の都合に合わせてくれていたからな。

 

「なら、問題はないわね。それじゃよろしくね」

 

「ああ、それじゃ俺は弟子の様子でも見て来るけど。浅葱はどうする?」

 

「私は少しする事があるからまだここに居るわ」

 

「そうか。だったら、こっちが終わったら寄るから一緒に帰ろうぜ。途中まで送るからよ」

 

「うん、分かった。待っているから」

 

俺は比企谷隊の作戦室を出てC級ブースに向かって歩き出した。

もうすぐ、夏休みが終わり二学期が始まる。

ボーダー入隊、文化祭、A級ランク戦、修学旅行、今上げるとしたらこの位だろう。

 

特にA級ランク戦では是非、上位に食い込みたいと思っている。遠征の事は考えているが、今回は見送ろうと思う。

比企谷隊の練度を考えたら、今回は無理だ。それでも目標としてはA級4位だ。

そんな事を考えているとC級ブースが見えてきたので考えるのを一旦止めて小町と川崎の戦い方について考え出した。

 




これで今年の更新は終わりです。

予定としては来年元日に更新しようと思います。

出来れば来年も是非読んで下さい。

では良い年末を。

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