やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷八幡②

俺こと比企谷八幡は、ボーダー本部内のある場所に向かいながら考え事をしていた。

それは平塚先生と雪ノ下の事だ。

 

(あの二人は間違いなく自己中な人間だ。説得するにしても材料が少なすぎるな。ここは浅葱にでも相談したほうがいいかもしれないな)

考えを纏めていると、目的の場所に着いた。

 

目的の場所とは開発室だ。

今日は、数日前に材木座からお願いされた新型トリガーの実験に付き合うためにここへとやって来た。正直、面倒だなと思っていたが、ギャラが出るそうなので即行で承諾した。

 

「すまん、遅れた。…………材木座?」

小太りで指抜き手袋に総武高の制服の上から白衣を着込んだ男。そんな男が、入り口の俺へと笑いながら話しかけてきた。

 

「なはぁはははっは!! 待ち侘びたぞ、八幡よ! ついにおぬしに最強のトリガーを渡すことが出来、嬉しく思うぞ!!」

 

「……さっさとしろ、材木座」

 

材木座義輝

 

この目の前の男とは、それなりの付き合いになる。っても入隊の同期で、入隊初期は元々のコミュ症で他人とまったく話さない中で話していた数少ない内の一人が、材木座だったと言うだけだ。

この男、トリオン量はそれなりにあるが戦闘がからっきしだめでC級の時に訳のわからないことを叫びながら、弧月を振り回していた。

 

「むっ、そう急かすものではないぞ八幡よ「いいから、説明しろ。弧月でズタズタにするぞ」――……はい。では、こちらをご覧下さい」

 

キャラがぶれぶれだぞ。こいつは平塚先生や雪ノ下とは違うベクトルで疲れる。実験が終わったらすぐに帰って寝よ。

 

「おほん!! ……これが我が作り上げた新しいブレードトリガー! ……その名も『攻撃拡張型ブレード 天月(てんげつ)』だ!」

キャラの復活は早かった。

 

「へぇ、これが」

俺は材木座が差し出した新型ブレードを見た。

形状は両刃の十字剣で刀身が弧月より少し長いといったところか。

 

「さよう。両刃の十字剣をイメージして作り、ついに完成したのだ、最強のトリガーが。すごいであろう!」

 

「ああー、すごいなすごいな(棒)。つか、最強かは置いといて、これ俺で実験する意味あるのか?」

 

「ふむ。実はこのトリガーはトリオンのコントロールが必要故にお主が最適なのだ。他の候補に出水殿や二宮殿もいるが、お二人はシューターである故、ブレードトリガーを使わない。トリオン量やそのコントロールが優れている上にブレード使いとなれば、お主しかおらんのだ」

 

「なるほど、確かに二人はブレードは使わないな……わかった。で、何をすればいいんだ?」

 

「うむ。八幡にはひたすらにソロ戦をやってもらい、定期的にトリガーのデータを提出してもらいたいのだ。無論、八幡なら見事使いこなすだろう…………と思う」

 

「思うってなんだよ! ……これ、使えるのか?」

 

「もちろんだ!! 我の自信作なのだからな!!」

 

「……はぁ、わかったよ。使いこなしてやろうじゃないか。……俺、もう行くわ。じゃあな、材木座」

 

「ふむ。ではさらばなのだ、八幡よ」

 

こうして、俺は材木座と別れて自隊の作戦室に向かった。

まずは防衛任務を優先しないとな。でないと雪菜に小言を言われてしまう。

中三女子に説教される高二男子ってダサすぎだろ……。

作戦室に着いた俺を出迎えたのは夜架だった。

 

「お帰りなさいませ、主様」

 

「……夜架。頼むから、その主呼びを直せとは言わない。でもな、せめて先輩呼びにしてくれ……」

 

「分かりました。主様」

 

「…………もう、諦めたわ。主呼びでいいから……」

そんなやり取りを夜架としていると、浅葱が話に加わってきた。

 

「それにしても八幡。あんた少し機嫌が悪い? 何かあったの?」

 

「分かるのか? そんなこと自分でも分からないのに。スゲーな、浅葱は」

 

「まぁね。一体、何年一緒に居ると思ってんの。それで何があったの?」

浅葱からの再度の問いに、俺は放課後に平塚先生に連れられて奉仕部に行った事やそこに居た雪ノ下の事をそのまま話した。

浅葱もそうだが、隊室にいた他のメンバーも話を聞いてかなり機嫌が悪くなってきていった。あの夜架ですらかなり機嫌が悪くなっている。

両親を亡くして、そんなに表情が変わらかったのに、これはある意味では良い傾向かもしれない。

 

「そんなことがあったんだ……。うん、決めた」

 

「何を決めたんだ、浅葱……?」

 

「私、その奉仕部に入部するわ!」

 

「浅葱、俺は別にその奉仕部に入っている訳ではないんだが……」

 

「そうなの? なら、もう行かなくていいんじゃない?」

 

「そうしたいけど、顧問の平塚先生がな……。あれは絶対に俺を奉仕部に通わせるつもりだから、行かないで済む真っ当な理由がいると思うんだよ」

 

「何それ、入部届もだしてないのに? 部に強制参加させるってそれでも教師なの、平塚先生は? それに、奉仕部って部員は何人なわけ?」

 

「部長の雪ノ下一人。それだけだ」

 

「だったら部の創設は無理でしょ。私も入れば部として活動できるって言えば問題ないと思うけど? それに夜架だって入れれば人数も解決できるしょ?」

そう浅葱に言われて、初めて気がついた。

 

(それもそうか。人数が足りなかったの解決して、その後で抜ける事を考えればいいか)

そんなやり取りをしている間に、時間になったので俺達は防衛任務へと向かうのだった。

俺は防衛任務が終わった後、個人戦のブースに向かっていた。

材木座が作った新しいブレードトリガーを試すためだ。この時間なら誰かしらいるだろうと辺りを見回していると、丁度望んだように俺を呼ぶ声が聞こるのだった。

 

「おーい!! ハッチ!!」


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