やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー 作:新太朗
夏休みも中旬を過ぎて下旬に入り、もうすぐ新学期が始めるので夏休みの生活を改めてしっかりとしていかないと気を引き締めていた。
課題等は7月の内に終わらせているので焦る必要はどこにもない。
去年は米屋の課題を三輪隊と一緒になってやったのはよく覚えている。途中で寝た米屋を叩き起こして徹夜させた。
俺は今、姫柊家の雪菜の部屋に来ていた。それは何故かと言うとある事が起きたからだ。
「ほら、さっさと服を脱ぐんだ。雪菜」
「で、でも……恥ずかしい、です……」
「そんな事を言っている場合か?お前が脱がないんだったら俺が無理にでも脱がすぞ」
「うぅ~……やっぱり八幡先輩は鬼畜の変態です……」
「どうしてそうなる……」
俺は服を脱がない雪菜と格闘していた。早くしない取り返しがつかない事態になってしまう。それだけは避けないといけない。
「俺だってホントは嫌だ。だけどな、今頼れるのは俺しか居ないだろ?いい加減覚悟を決めてくれ」
「……わ、分かりました。でも、変な事をしたら浅葱先輩に言いつけますから!」
「……それは、恐ろしい未来が待っているな……」
もし雪菜が浅葱にない事まで言ったら、どんな事をされるか容易に想像出来る。幼馴染で今は彼女だからな。ここは雪菜の機嫌を取っていかないとな。
「そ、それじゃ……脱ぎますね……よ、余計な所まで見ないで下さいね!」
「分かっているって」
雪菜はこれでもかと確認をしてから服を脱ぎ始めた。改めて思うがこの状況を第3者が見たら、どう思うだろうか?
中三女子に服を脱ぐように言う高二男子は最早変態と言われても文句は言えない。だが、服を脱がないと出来ないのだから、ここは大目に見て欲しい。
「それじゃ、始めるぞ」
「は、はい。その、お手柔らかにお願いします……」
「善処する。だけど、俺も久し振りだしな。加減を間違いたらすまん」
「小町ちゃんにはした事はないんですか?」
「この所はした覚えがないな」
小学生の時に1、2回やった事は覚えているが、殆どは親父がしていた気がする。それも有給を使ってまでしていた。今更だが親父はアホ過ぎた。
そんな事を考えていると、雪菜が服を脱ぎ終えたので始める事にした。
「それじゃ始めるぞ。何か嫌な事があれば言ってくれ」
「はい。分かりました。お願いします。……ひぃ!?……」
「だ、大丈夫か?どこか変な所でも……」
「いえ、少し驚いただけなので、続けてください」
「そうか?それじゃ続けるぞ」
それから俺は続けるんだが、その度に雪菜が「あぁ…ひぃ……」などの喘ぎ声を言うもんだから気恥ずかしくなっていく。
早く終わせないと俺の理性が持たない。雪菜の背中の汗拭きを。
え?エロい展開とでも思ったか?残念だったな。雪菜の背中を俺が濡れタオルで汗を拭いていただけの事だったんだよ。
「それにしてもプールに行って疲れて帰ってきて、クーラーを点けたまま寝て風邪を引くとかアホと言われても文句を言えないぞ?雪菜」
「し、しかたがないじゃないですか!!楽しかったんですから……」
「いや、別に怒っているわけではないんだが……体調管理はしっかりとな?」
「……はい……」
しっかり者の雪菜にしてはやってしまった、としか言えないな。俺は雪菜の背中や手が届きにくい場所など汗を拭いて綺麗にしていた。
「……それにしても綺麗な肌しているな……」
雪菜の身体を拭いている時に思ってしまった。白く肌理細かい身体だと。
不意に雪菜が顔を手で覆ってしまった。何があった?
「どうした?雪菜」
「…………八幡先輩。出来れば思っている事は口に出さないでください……恥ずかしいです……」
「俺、声に出てた?」
「……はい……」
しまった!!無意識に思っている事を口にしていたか?でも褒めたのに恥ずかしがる必要はないと思うのだが?何がいけないんだろうか?
「その、すまん」
「謝られると何だかムカつきます……」
「どうしろと言うんだよ……」
褒めたら恥ずかしいと言うし、謝ればムカつかれてし、乙女心は複雑だな……。
「そう言えば両親はどうしたんだよ?居ないのか?」
「両親は今は旅行中ですよ。今頃温泉にでも浸かっているんじゃないですか」
「一人娘を置いて旅行とはいい気なもんだな」
「違います!私が2人にプレゼントしたんです!感謝の気持ちを込めて!!」
「そ、そうなのか。すまん。言いすぎた……」
両親が居ないのは雪菜が旅行をプレゼントしたからだったのか。それにしてもいい娘さんに育っていますよ。
「……これは将来いいお嫁さんになるな」
性格は少し真面目だが優しいし、料理も大抵は作れる。なりより美少女だから将来はそうとうな美人になるのは分かりきっている。
「だから!思っている事を口にしないでくさい!!私が恥ずかしいんで!!!」
「……また、口にしていたか……」
とりあえず、話を逸らした方がいいな、これは。
「雪菜。腹へっていないか?軽く昼食でも作るから食べるか?」
「……昼食はまだです。でも、今はそんなに食欲がなくて……」
「まあ、風邪だしな。でも何か食べた方がいいだろ。そうめんでも食べたらどうだ?あれなら食べ易いだろ?」
「……お願いしても、いいんですか?」
「ああ、任せておけ。それじゃ買い物に行ってくるから大人しくしておけよ?」
「……先輩。いくらなんでも子供扱いしすぎです……」
さすがにやり過ぎたか?でもこれ位言っておけば大丈夫だろう。俺は買い物のため外に出ることにした。
風邪を引いた雪菜と俺の昼食のため近くのスーパーに買い物に来た。食欲のない雪菜のために軽めの昼食としてそうめんにした。
あれなら食べ易いし作るのにもそんなに手間はかからない。食後のデザートに桃缶でも買うことにした。
他にも熱冷ましシートなど買った。
「あら、比企谷君じゃない」
「ん?……どうも、月見さん」
買い物をしていると後ろから声を掛けられたので、振り返って見るとそこに居たのは月見さんだった。
月見蓮。
A級三輪隊オペレーター。
指揮、戦術能力が高く三輪隊を支えている熟練オペレーターだ。A級隊員に弟子が数人いて、部隊からも信頼の厚い凄い人だ。
「比企谷君も買い物?」
「はい。雪菜が風邪を引いたもので、その看病に。そう言う月見さんは?」
「私は昨日の防衛任務の後にお腹を壊した太刀川君のお見舞いに」
太刀川さんがお腹を壊した事を月見さんから聞いた俺はその原因がすぐに分かった。
間違いなく加古さんの特製炒飯を食べた所為だろ。
もしかしたら俺も太刀川さんと同じ末路を辿ってたかもしてない。
あのハズレ炒飯は浅葱だけで十分だ。いや、浅葱もいい加減、炒飯を上手くなってもらいたい。
「比企谷君。大丈夫?顔が青いけど……」
「……いえ、少し不味い料理の事を思いだしていただけです……太刀川さんにお大事にと伝えておいてください」
「ええ、伝えておくわね。それじゃまたね」
月見さんはそう言ってスーパーを出て行った。俺も早く買い物を終わらせよう。
姫柊家に戻ってきた俺はさっそく昼食の準備に取り掛かった。まあ、麺を茹でるだけなのでそんなに手間はかからないから楽だ。
さすがに風邪を引いているので雪菜は大人しく待っていたようだ。そこまで子供ではないか。
「お待たせ。昼食作ってきたぞ」
「すいません先輩。お客さんなのに……」
「病人が何を言っている。お前は早く風邪を治せよ」
「はい。分かっています」
見た感じ雪菜の体調は大分良くなっているようだ。これなら明日辺りには元気になっている事だろう。一先ずは安心できる。
「……八幡先輩に聞きたい事があるんですけど、いいですか?」
「聞きたい事?何だ。俺に答えられるなら、いいけど」
「それじゃ……浅葱先輩とはどの程度進んだんですか?」
「……ぶっ!!?……」
雪菜の質問に思わず吹き出してしまったが、何とか手で口に有る物は吐き出さずに済んだが、まさか浅葱との関係の事を聞いてくるとは思いもしなかった。
「だ、大丈夫ですか?八幡先輩」
「ごほっ、ごほっ……すまん。ビックリな質問だったもので驚いただけだ……でも何でそんな事を聞いて来るんだ?」
「それは、その……最近のお2人の様子が気になると言うか……」
流石に雪菜も気が付いていたか。ここは正直に話した方がいいな。
「ああ、俺と浅葱は付き合っているよ。すまんな、今まで黙っていて」
「いえ、これで私も覚悟を決めました。……八幡先輩。私は先輩の事が好きです。もう浅葱先輩と付き合っていても、この想いを伝えないと後悔すると後悔してしまう私がいると思いまして、だから先輩の気持ちを教えてください」
これは雪菜の本音だ。俺も答えなくてはいけない。よし八幡よ。男を見せてみろ!!
「お前の気持ちは正直嬉しいよ。でも、俺はすでに付き合っているけど……それでもお前の気持ちは受け取った。……雪菜はいいのか?俺はこの時点で三股掛けている最低の男だぞ?」
「はい。まあ、最低だと思いますけど。それでも先輩は素敵な人ですから好きになったんです。だから、もう後悔はしません」
雪菜の強い瞳を見て、俺は彼女の覚悟は生半可なものではない事を悟った。だからこそ俺も覚悟を決めた。
「そうか。分かったよ。その、これからよろしくな」
「はい。こちらこそ、不束者ですがお願いします」
雪菜は頭を下げてきた。礼儀正しいのにもほどがある。でも、そこが雪菜のいい所でもあるんだけどな。
雪菜の風邪も良くなってきたので、俺は帰る事にした。
「それじゃ俺は帰るよ。お大事に雪菜」
「はい。先輩、帰る前に一つお願いを聞いてくれますか?」
「うん?何だ」
「……キ、キス……してください……」
「…………ぐはっ!?!……」
雪菜のお願いに思わず吐血してしまった。あの美少女の雪菜から上目遣いでお願いされたら、可愛さのあまり吐血してしまう。
「だ、大丈夫ですか!?先輩、無理しているんじゃ……」
「だ、大丈夫だ。何も問題ない。……その、いいのか?」
「はい……お願いします……」
俺が肩に触れるとビクッ!と驚いてたが目を閉じて俺を受け入れよとしていた。
そして俺は雪菜にキスをした。これで3人目だな、彼女以外の女の子とキスをするのは……。
それでも雪菜の唇はもの凄く柔からかった。
「…………はぅ………」
キスをした後に雪菜が顔を更に真っ赤にして気絶してしまった。雪菜には刺激が強すぎたのかもしれない。
余り長いしても悪いので雪菜を寝かせて、そのまま俺は自宅に戻る事にした。
「ハクシュン!?……風邪でも引いたか?まあ、その内治るだろう」
少し風邪っぽい気がしたが、そのまま家に向かって歩いて帰った。