やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷八幡&藍羽浅葱③

三門市で行われた花火大会は何事もなく無事に終わる事が出来たと言えるだろう。

だか、その帰りはもはや最悪と言ってもいい位だ。理由は約1年と少し前に俺を轢いた車に出会ったからだ。

そして浅葱に事故の関係者を知られたことだろう。

浅葱はまさか奉仕部に関係者が居たとは思ってもいなかったはずだ。あの事故に雪ノ下が関わっていたと知った時の顔は酷く歪んでいた。

事故に関しては浅葱を含めて比企谷隊のメンバーは殆ど何も知らない。てか、何もするなと俺が言ってあった。

 

「……八幡はさ、知ってたの?」

 

「……何がだよ」

 

帰り道で会場からここまで黙っていた浅葱が話しかけてきた。惚けているが俺は浅葱が何を聞いてきているのかは大体想像出来る。

 

「……去年の春にあんたが車に轢かれた事故に雪ノ下さんが関わっている事よ。それも加害者だったなんて……」

 

「正確には雪ノ下は乗っていただけで運転していたのは別の人だけどな。それにあれは俺が道路に飛び出しただけで、雪ノ下は加害者と言うわけではない」

 

高校に入ってもいない奴がハイヤーなんて高級車を運転できるはずもない。そもそも俺が車に轢かれる原因は別にあるのだが、それは言わない方がいいな。

 

「それでも雪ノ下さんの八幡に対しての態度は余りにも酷いわよ。乗っていただけかもしれないけど。だからこそ、それ相応の態度があってもいいんじゃないの!!」

 

浅葱は今までの雪ノ下の態度が余程気に入らない様子だ。まあ、俺もあいつの態度には何度キレ掛けたけど。

しかし今度はそんな事もない。放課後に奉仕部へ行く理由はないし、行く事を強要していた平塚先生は黙らす事が出来た。

学校では雪ノ下とはクラスが違うので教室で会うことはない。

 

「まあ、悪く言うなとは言わないけど。ほどほどにしておけよ」

 

「でも!!……八幡は怒らないの!?」

 

「あいつに怒った所で俺に何かいい事でもあるのか?ないだろ。それに勉強と運動で俺は雪ノ下に勝っているからな。それであいつの悔しい顔を見られるのは結構楽しいぞ」

 

「……八幡って、ホントSよね……」

 

浅葱は俺がSだと言うがそんなにSだろうか?まあ、別にいいか。

そんな事を話している内に比企谷家に着いた。話しているとあっと言う間だな。

 

「どうする?先に風呂に入っていいぞ」

 

「私は後でいいわよ。八幡が先に入りなよ」

 

「そうか。分かった、それじゃ先に入るわ」

 

家に着いたので浅葱に風呂を勧めたが、自分は後でいいと言ったので先に俺が入らしてもらうことにした。

夜とはいえ夏だけあって、少し汗をかいてしまった。早めに洗い流したかった。

 

 

 

 

 

風呂は花火大会に行く前に沸かしておいた。最近は温泉の元を入れての入浴が比企谷家のブームだ。少々年寄り臭い事だな、これは。

しかしこれは中々に気持ちがいいのでやめられない。今日はどれにしようと考える前に髪を洗うことにした。

入る前には頭と身体をしっかり洗ってから入るようにしている。まあ、今夜は浅葱が入るから普段より力を入れて洗っている。

『ガラガラ』と風呂場の扉が開いたのでその方を見てみると全裸の浅葱の姿が目に入ってきた。

俺は咄嗟に手で顔を覆った。泡の付いている手でだ。

 

「ぎゃぁぁぁぁーーーー!!泡が目に入ったーーー!!」

 

当然と言えば当然ではある。だが、それよりも重大な事がある。浅葱が俺が入っている風呂にやってきたのだ。これは由々しき事態だ。

 

「ちょっと、八幡!!あんた何をやってんのよ!!」

 

「それはこっちのセリフだ!!何で入ってきた!?俺が入っているのは分かっていただろうに!!」

 

「背中でも流してあげよかなと思ってね」

 

俺は浅葱が何を言っているのかが分からなかった。それだったら服を脱ぐ必要はないのではないか?何が狙いなんだ?

浅葱はシャワーの温度を調節して髪と手に付いた泡を洗い流した。

 

「……一体どうしたんだよ。浅葱?」

 

「……ごめん。ちょっと、事故の事聞いてから落ち着かないんだよね」

 

浅葱に何でこんな事をしたのを聞いてみる事にした。返ってきた答えに驚いた。

事故の事は浅葱が気にする必要はないんだが、俺の事を思ってくれているからこそ落ち着かないんだろう。

でも、一緒に風呂に入るのはどこか間違っている気がする。

 

「それに付き合っているのに八幡は全然、私を求めて来ないし……」

 

「いや、俺達は付き合い出してそんなに時間が経ってないだろ?そんな中で手を出したら、身体目当てみたいで嫌なんだよ」

 

「……そっか……」

 

浅葱は少し納得してくれたようだった。その後すぐに浅葱は俺の背中に抱き付いて来た。それもかなり強い力で抱きついてきた。

浅葱の胸が俺の背中に押し当てられている。胸は温かく柔らかくマシュマロのような弾力があった。

 

「あ、浅葱?ど、どうしたんだよ?」

 

あまりの事に動揺がハンパない。想像してくれ。幼馴染で胸が大きい美少女に背中から抱き着かれたらどうなってしまうか?そんなのは決まりきっている。

 

「……ちょっと!八幡。あんた鼻血、出ているけど。大丈夫!?」

 

そう浅葱の言う通りに俺は今、絶賛鼻血が出ている。この状況で鼻血が出ない男はいないと断言してもいい。出ない男はゲイもしくはホモだと言っていい。

 

「……こんな状況で鼻血が出ない方が可笑しいわ」

 

「それは私に興奮してくれたってことよね?」

 

「そうだよ。頼むから離れてくれ。……でないと理性が崩壊しそうだ」

 

「……そっか、そうだよね……だったら八幡。今夜、私をあんたの女にして!!」

 

「……………」

 

俺は浅葱の言った事に絶句してしまった。今、こいつはなんて言った?女にして?それはそのままの意味でいいんだろうか?

 

「浅葱。それはそのままの意味と受け取っていいんだな?」

 

「……うん……」

 

俺の問いに浅葱は頷き背中から離れた。俺は後ろに振り返り、浅葱の顔を正面から見た。

浅葱の顔は赤く涙目になっており、俺は目の前の少女を自分だけのものにしたいと思ってしまった。

 

「……ホントにいいんだな?浅葱」

 

「……うん。私を八幡のものにして……」

 

「でも、避妊とか大丈夫なのか?」

 

「それなら服と一緒に薬があったから大丈夫よ」

 

菫さんは迅さんと同じく未来視のサイドエフェクトでも持っているんだろうか?

てか、この展開は間違いなく菫さんが描いた事なんだろうな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やってしまった。浅葱と男女の一夜を過ごしてしまった。浅葱の懇願でやってしまったが俺としてはそれほど後悔はしていない。

責任を取れと言われれば取るつもりだ。それ位の覚悟をしてから行為をやったからだ。

しかしながら理性が壊れてしまうとは自分でも驚いている。やはり相性が良かったんだろうか?

 

「……俺、やってしまったな……」

 

朝方までやっていた気がするがあんまり覚えてはいない。今の時間は昼過ぎだ。

今日は防衛任務があるがそれは深夜からなので時間は十分あるので家を出る前に部屋の片付けなどが出来る。

部屋には臭いが篭っているので換気をしておきたかった。

 

「……すぅ……すぅ……すぅ……」

 

浅葱は俺の左腕を枕にして熟睡していた。昨日からの行為によるものが大きいだろう。

しかし寝息をする度に胸が揺れて、非常にけしからん!

それにしても人生とは何があるか分からないな。俺が浅葱とこんな関係になるとは思いもしなかった。

 

『中々熱い夜だったな、旦那』

 

「モグワイか……覗きとはいい趣味とは言えないぞ?AIネズミが」

 

考え込んでいると浅葱製作のAIのモグワイが話しかけてきた。しかも昨日の事を見ていたらしい。いつからだ?

 

『断っておくが、撮れって言ってきたのはお嬢だぜ?旦那との既成事実で縛り付けておくつもりらしいぞ。モテる男は辛いな、旦那』

 

「あんまり、からかうな。今だって実感ないんだからよ。俺が浅葱とこんな関係になるなんてな」

 

『お嬢は旦那とのこんな関係にずっと憧れていたようだったぜ。まあ、俺様からはおめでとう、とだけ言っておこう。ケケッ』

 

モグワイはそう言って話し掛けてこなくなった。どうやら引っ込んだらしい。まったく余計な事を言い残して行きやがって、あのネズミは……。

 

「こんな関係を望んでいたのはお前だけじゃないんだぜ。俺も……」

 

「……お兄ちゃん?もうお昼過ぎているのにまだ寝ているの?小町的にポイント低いよ。入るね」

 

部屋の片付けをしようかなと思っていると扉から小町の声が聞こえてきた。お泊まり会から帰ってきたようだった。

しかし今の俺の部屋の状況を見られるのは非常に不味い!ここは何とか誤魔化さないとな。

 

「……すまん小町。今起きた所なんだ、起こしてくれてサンキューな」

 

「いえいえ、これ位なんのそのだよお兄ちゃん。それより部屋に入るね」

 

小町は俺の返事を待たずに扉を開けてきた。俺の急いで浅葱を布団で覆い隠した。

 

「……お兄ちゃん、何してるの?」

 

「いや、これは、その……お前が急に入ってくるものだから、ビックリしてだな……」

 

今の俺は布団から首だけをだしている状態だ。小町は近付いてくる感じはないのでこのまま乗り切れると思っていたが、現実はそう甘くはなかった。

 

「……あぁぁぁ!!八幡、あんたは私を布団で窒息させる気!?それに…暑い…のよ……」

 

「…………」

 

「……あちゃ~……」

 

浅葱は布団から勢いよく起き上がってしまった。しかも全裸でだ。

その際に部屋の入り口に立っていた小町と目が合ってしまった。小町は絶句しているし、俺は手を頭に押し付けて後悔していた。

こんな事になるなら早めに起きて片付けをしておくのだった、と。

 

「……こ……」

 

「「こ?」」

 

小町は何かを言いかけているが、きっと碌な事ではないな。

 

「これで心置きなく『浅葱お義姉ちゃん』って言えるね!!それと今日はお母さんに言って、晩ご飯は赤飯してもらわないと。それじゃお2人さん、続きをどうぞ。小町はお邪魔なので、これで」

 

「「…………」」

 

小町はそう言い残して勢いよく部屋から出て行った。俺と浅葱は何も言わずにぼう然としていた。

ある意味最悪の展開だったが、知られてしまったものはしょうがないと諦めることにした。

 

「……とりあえず、浅葱。シャワーでも浴びた方がいいな、お互いに少し臭いしな」

 

「……そうね。一緒に入る?」

 

「……それは遠慮しておく。またしてしまいそうだから。先に浴びてこいよ」

 

「……それじゃ、お先に」

 

浅葱は着替えを持って風呂場に向かって行った。俺はそれを見送ってから着替えの準備をして浅葱が出た後にすぐ入れる準備をした。

俺がシャワーを浴びた後で浅葱と一緒に小町に色々と聞かれてので喋ってしまった。

その日の晩ご飯は小町の希望で赤飯になったのは言うまでもない。


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