やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー 作:新太朗
小町のボーダー入隊試験は無事に終わり、その後で川崎と鶴見と隊を組むと聞いた時は驚いたが、小町がいいなら俺からは特に何も言わないことにした。
さらに試験に落ちた戸塚をオペレーターにして、まだどの部隊にも所属していない羽々斬鏡夜をメンバーに予定している。
部隊が出来たら、出来る限りアドバイスをするつもりだ。
ただ、問題があるとすれば葉山達の事だろう。まさか、あいつらも入隊を考えていたとは思いもしなかった。
出来れば、本部で会いたくはない。
しかし、俺はA級部隊の隊長だ。どこかの支部にならともかく、会わない事はまず無理だろう。マジで、メンドクサイ。
まあ、今はそんな事はおいて置いてあいつらにB級ランク戦中位での勝利を労って差し入れを渡すつもりだ。
あいつらも大分勝ち星を付けてきたから、上位入りも見えてきたと言うものだ。
俺は目的地の作戦室の呼び鈴を鳴らして、返事を待った。
『は~い。どちら様でしょうか?』
「あー比企谷だけど。今、入っても大丈夫か?」
『比企谷先輩!ちょっと、待ってください。今、開けますから』
返事が返って来て、すぐに扉は開いた。そこには白い隊服を着た少女がいた。
「お久し振りです!比企谷先輩!」
「よお、日浦」
日浦茜。
B級那須隊のスナイパー。
普段は明るく人なつっこいが、一度泣くと普段からは想像も付かない位に号泣する。
俺の隊だと雪菜と同い年なのと猫が好き所があるのでよく家や作戦室に遊びに来る。
スナイパーの腕はそれ程高くはないが、それでも本人は必死に努力している。
「他のメンバーは居るのか?」
「はい!次のランク戦のミーティングをしていた所なんで。どうぞ」
俺は日浦に案内されて、部屋の中に入った。そこには日浦と同じ隊服を着た少女が2人とオペレーターの服を着た少女が1人居た。
「こんにちは。比企谷君」
「よっす、那須。身体は調子いいのか?」
那須玲。
B級那須隊の隊長でシューター。
俺の弟子の1人でバイパーの事を色々と教えた事がある。バイパーを使わせたら、ボーダーで並ぶ者はそうはいない。
元々はボーダーが行っている病弱な人間をトリオン体で元気にする事は出来ないか?と言う実験に協力している。
シューターの実力は既にマスタークラスなので相当強い。
「うん。最近はそれなりに調子はいい方だよ」
「そうか。それはよかった」
那須の体調の事を聞いて、本人が良いと言っているので大丈夫だろう。
その後で男前風の少女が俺に話しかけてきた。
「それで今日はどうしたのよ?比企谷」
「ランク戦で上位入りも見えてきた那須隊に差仕入れを持って来たんだよ」
熊谷友子。
那須隊アタッカー。
アタッカーだが、ランク戦は那須の守備に回り、近付いてくるアタッカーなどを足止めして、那須に取らせるのが熊谷の戦い方だ。
その為、弧月に十字の鍔が付いているのを両手で使っている。
男前な性格なので男子だけではなく、女子にも結構人気がある。那須隊の頼れる姉貴分だ。
「それで何を持ってきてくれたんですか?」
「シュークリームとショートケーキだ」
志岐小夜子。
那須隊オペレーター。
元は引きこもりで1人暮しの部屋で水と塩昆布で生活しており、熊谷にスカウトされてボーダーに入隊した。
年上の男性が苦手らしいのだが、何故か俺とはすんなりと話せる。志岐に言わせれば、自分と似た雰囲気が俺にはあるらしい。引きこもった事は一度も無いんだが……。
ちなみに那須隊の隊服を考えたのは志岐で、一部男子隊員から賞賛されている。
「それじゃ、ここで一息つこうね。比企谷君は紅茶で大丈夫?」
「いや、俺は自販でマッ缶を買ってきたから気にすんな」
「そう、分かったわ。それじゃ皆、待っていてね」
「お手伝いします。那須先輩」
紅茶の準備のために那須と日浦は部屋のキッチンに向かった。俺はその間に熊谷と志岐から今回と次回のランク戦について聞いておくか。
「今回はどこと戦ったんだ?」
「漆間隊と松代隊です。比企谷先輩」
俺の質問に志岐はすぐさま答えた。
「そうか。とりあえず、B級8位おめでとう。それで次はどことだ?」
「ありがとね、比企谷。次は鈴鳴第一と荒船隊よ」
俺が8位になった事を祝って、次の対戦相手を聞いた所、今度は熊谷が応えてくれた。
しかし、鈴鳴第一と荒船隊か……。那須隊にキツイ相手かも知れないな。
「あの部隊が相手とはな……。でも、どの道避けては通れないからな。作戦とか、まだ考えていないのか?」
「まだ、考えてはいないよ。今は反省会をしていた所だからね。比企谷が居ることだし、あんたからも少し意見を言ってほしんだけど。いい?」
「別に構わないぞ。今日は特にやる事はないからな」
熊谷と話していると那須と日浦がキッチンから戻ってきた。
「皆、おまたせ。それじゃ少しお茶にしよう」
「比企谷先輩。ケーキ、ありがとうございます!」
「おう。しっかりと食べないと大きくはなれないからな」
「私は女の子で今は成長期なんです!これから大きくなります」
日浦を少しからかってから、俺は那須隊のメンバーと雑談をしながらシュークリームとケーキを食べた。
その後で今回のランク戦の反省点などを何点か言った。
「とりあえず、今回の反省点はこんなものか?他に質問はあるか?」
「うん、大丈夫。ありがとね、比企谷君。そういえば、小町ちゃんが入隊するのよね?」
「ああ。仮入隊して、ポイントを貯めているからB級になるのは結構早いと思うぞ」
那須がランク戦の反省点の事でお礼を言った後で小町の事に触れてきた。小町と那須隊はかなり仲がいい。
よく那須の家で泊まって色々と話をしているかなら。
「比企谷先輩!小町ちゃんが新しく部隊を作ってそこに入るんですよね?」
「そうだぞ、日浦。隊長は俺のクラスメイトがやる予定だ。他にも小学生が1人と夜架の弟がそこに入る予定になっている」
日浦が小町の事を聞いてきたので、隊長の事やそこに入るメンバーの事を話すと日浦は何だかやる気を更に出している様子だった。
恐らく、小町と戦うことを考えているんだろう。ライバルと考えているのかも知れないが、小町はオールラウンダーを目指している事は黙っおく。
まあ、その内知るだろうからな。
「あんたが小町と男を一緒にするのを良く承諾したわね?」
「まあ、な……それに夜架の弟だし、それなりに信用しているからな」
熊谷は俺が小町と男と一緒に居るのを許可したのを驚いている様で聞いてきた。それに対して俺は思っている事を言った。
那須達と話しているといい時間になったので帰ろうと思った。
「そろそろ、俺は帰るから。それじゃな」
「あ、比企谷君。ちょっと待ってくれる?」
「どうした?」
帰ろうとした所で那須に呼び止められた。
「帰る前にソロ戦を少しだけ相手してほしんだけど。いいかな?」
「ソロ戦か……まあ、その位なら問題ないぞ。十本位してもいいぞ」
「ホントに?それじゃお願い。くまちゃん達はどうする?」
那須は熊谷隊達にこれからの聞いた。那須は俺がいる時に出来るだけ相手をしてほしいけど、熊谷達は違うからな。
「私達は玲がソロ戦している間に次の相手のログを見直しておくから」
「はい。那須先輩は比企谷先輩とソロしててください」
「データの見直しはこちらでやっておくので」
熊谷、日浦、志岐はそれぞれ那須を気づかっていた。俺と那須はあまり本部で時間が合わないので、それを考えているのだろう。
「ごめんね、皆……」
「玲はしっかりと比企谷から教わりなよ」
「うん。それじゃ、比企谷君。行きましょ」
「おう。それじゃな、お前ら」
俺と那須は個人戦ブースに向かうために那須隊の作戦室を後にした。
「「バイパー」」
俺は那須との戦いで例の本部で作った試作トリガーを使って戦っていた。
お互いにバイパーを使い、トリオン体を削り合っていた。
『トリオン体 戦闘不能 ベイルアウト』
先に那須のトリオン体に亀裂が走り、光の塊になって飛んで行った。
「はぁ……やっぱり、まだ勝ち越せないね」
「まだ、そんな簡単に弟子に負けねぇよ。でも、今回は中々よかったぞ」
那須との成績は10本中7勝3敗だ。
それにしてもこいつの成長は中々侮れないと素直に思った。
那須はメインとサブでバイパーを使うので頭の回転は凄まじく早いことは分かっていたが今回で更に早くなったのではないかと思う。
「それじゃ那須。後でログを見直しておけよ?」
「もちろん。いつか必ず比企谷君に勝ち越して見せるから」
「それは面白い。まあ、俺は帰るから那須もあんまり帰るの遅くなるなよ」
「うん。くまちゃん達と一緒に帰るから大丈夫よ」
「確かにな。熊谷は中々男前だからな」
「そんな事を言ってるとくまちゃんが怒るよ」
「それは怖いな。じゃあな那須」
「うん。またね比企谷君」
俺は那須に別れの挨拶をしてから本部を後にした。那須隊はこれから強くなる要素があるのでたまにアドバイスをしていくつもりだ。